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LOVELY、LOVELY、HAPPY !

 体育祭編






「なんだ、全然いけるな」
何度か練習してみて、竜くんはそう笑った。
私にしてみれば竜くんも小山君も本当に速くて、ギリギリの状態だったと思う。
バトンの受け渡しはトップスピードのままスムーズに行わなければ意味がない。 小山君から受け取るときは かなり前に走り出していなければならないし、 竜くんの場合は彼がスピードに乗る前に渡さなくてはいけない。
大丈夫かな…。
私は心配になっていた。
補欠は もう一人 三年の井上先輩だったが、彼女は、私の方が速いので 私が出た方がいいと言って、結局 私が出ることになった。

入場門に来て不安は最大になる。
竜くんといえば小山君と何やら企んでいるようで、ぼそぼそと笑いながら話している。 練習をずっと一緒にしてきて仲良くなったようだ。
「小山、行け!」
入場して、レッドの応援席の前を歩いていると竜くんが言った。
「うっす!」
小山くんは列を外れると勢い良くタッと駆け出した。
くるくるっとバク転。
「いよっ! おサル〜!」
「もっかい やれー!」
わーわー!
「怪我したらどうすんの、もー!」  ← レッドの姐御 高岡先輩
最後の競技でどこのカラーも応援に熱が入っている。
今の順位はオレンジが一位、レッドが二位で、これにリレーの点数と応援合戦、BBの点数が 加算される。
(優勝が掛かってる…のよ、ね)
すごく不安だ。
バトン落としたりしそう…。

ぽふぽふ。

「…?」

ぽふ。

「竜くん?」
私の後ろを歩いている竜くんが私の頭を ぽふぽふと叩いている。

「だーいじょぶ だって」
ニカリ。
「俺がアンカーなんだから いくら伊集院がカメでも関係ね〜」
ぽふぽふ。
「か、カメじゃないですっ」
「ほ〜?」
「私が活躍して竜くんの出番なんてないんだから!」
「ほほう? ま、口で言うならタダだし? 嘘でも別に」
「嘘じゃないですっ」
「ふ〜ん」
ニヤニヤと笑って、私の前髪をグシャグシャにする。
竜くんは髪をいじるのが気に入っているのか、よく私の髪を滅茶苦茶にする。
「もーー!!」
「…まぁ、伊集院は、さ。 大丈夫だ」
「?」
「いっつも すげー勢いで追い掛けて来たじゃん?」
「え…」
「俺ビビったもんな」

 竜くんに再会して。

 やっぱり竜くんが好きで。
 好きだって伝えた。

 逃げる竜くんを追い掛けて、追い掛けて。


「追い着かれるかと思った」


第一走者が走り出す。 第二走者、第三走者。
ぼんやりと眺めた。
第四走者が受け取る。
私は ゆっくりレーンに入った。
バトンが、手に入った。

走っていく。

先に、竜くんが見える。

竜くんが、待っている。

いつもの不敵な笑みと、向けられた背中。

竜くんが走り出した。

振り返らない。スピードも上がっていく。

でも。

  それは届いた。




わあぁあ !!


テープを切る。
竜くんが、大きく右手を振り上げた。

私は一直線に竜くんに向かって走り出した。

「伊集院、速かったじゃん…って、おわ!」
ぎゅーーっと抱きつく。

「こら! 放せ!! 伊集院!!」
イヤ

「そこ! イチャイチャしない!!」
「してねぇ!」


 追い着いた。
 やっと振り向かせた。


 そう。


 勝負は、 これから。









つづく




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