向ノ岡

むかいのおか

東京都多摩市連光寺1丁目

写真

聖蹟桜ヶ丘駅からバス
「対鴎荘前」停留所そば

王朝文化をしのび、小野小町の話題です。

川崎街道を稲城方面に進み、連光寺の坂道を登っていくと「向ノ岡」という交差点があります。実はとても古い地名です。

武蔵の国府(現在の府中駅付近)から、多摩川をはさんで対岸に見える小高い丘だったので、そう呼ばれたのかもしれません。
(多摩丘陵には「向が丘」など類似地名が点在しているので、向ノ岡がどこかについては諸説あるようです。)

平安時代の六歌仙のひとり小野小町が、奥州への旅の途中、このあたりで歌を詠んだと伝えられています。

   武蔵野の向の岡の草なれば
     根を尋ねても哀れとぞ思ふ

これを記念した歌碑が向ノ岡にあります。以前は雑木林の中にひっそりと隠れていましたが、すぐ近くで大規模なマンションが建設されたときに、歌碑の周辺も区画整理されました。遊歩道が整備され、散策に訪れる人を見かけるようになりました。

周囲はきれいな住宅地となり、昔の情景を想像するのは難しいですが、目を細めて府中の方向を眺めれば、平安時代の旅人の気分になれるかもしれません。

(2007年1月)
(2009年7月訂)