−10月−

−活用力1−
最近算数の学習では「活用力」を育てることが課題となっています。活用する力とは,今まで身に付けてきている知識や技能を使って問題を解決する力ということだと思います。この力を育てるために,実際には何から始めればよいのでしょうか。

−活用力2−
「活用力」を「問題解決のために,これまで身につけた知識や技能を効果的に選択し利用する力」とすると,算数の授業の中で活用が求められる場面は大きく分けて3種類あると思われます。

−活用力3−
まず本時の課題に取り組む場面が第1活用場面です。次に問題解決した後の適応題に取り組む場面が第2活用場面です。そして,単元のまとめの問題に取り組む場面を第3活用場面と呼ぶことにします。

−活用力4−
第1活用場面では「確認」と「見通し」と「評価」をポイントに取り組みます。「確認」は本時とかかわりのある既習事項の確認です。「見通し」は既習事項の何を使えるように考えるかという方向性を考えます。そして一番大切だと思うのは何を「評価」するかということです。

−活用力5−
算数の授業では問題に対してお互いの考えを出し合い,最後は「まとめ」として,最初に立てた「めあて」に対する学習の成果を確認します。例えば分数の計算では結局どの部分に注目して計算すればいいかをはっきりさせます。これは「解き方」のまとめです。この授業の終盤にもう1つの「まとめ」をします。

−活用力6−
算数では「解き方」のまとめと共に,「考え方」のまとめを「評価」という形でしていきます。つまり,「今日の問題が解けたのは,○○君の,リットルをデシリットルに直して計算するという考え方や,○○さんの0.1をもとにするという考え方のおかげで,今まで習った計算を使うことができたからです。ありがたくて,すごい考え方ですね。」

−活用力7−
「考え方の評価」を意識的にしっかり行っていくことが第1活用場面ではポイントになると思っています。第2活用場面は,全体で練り合いをして問題解決の方法を確認した後の適応題への取組み場面です。ここは全国学力調査の内容ともかかわる大事な場面です。

−活用力8−
例えば6年生の「体積」の学習の時間に,直方体の体積は「たて×横×高さ」で求められるということを最終的にまとめた後,体積を求める適応題として,


のような問題が提示されます。

−活用力9−
教科書では下図のような問題が出されますが,「活用力」を刺激し,育てるために適応題に次のような問題も加えます。

−活用力10−
数字が3つあるだけでは,「たて,横,高さ」を意識せず,単にかけるだけの思考になりがちです。そこで,その時間に学習して手に入れたばかりの「たて×横×高さで体積を表すことができる」という理論をどうしても再度確認しなければならなくなる適応題を用意することで,思考力や判断力,つまり「活用力につながる力」を引き出すことができるのではないかと考えています。という意味で,ここではもう1つ逆のパターンの適応題も用意しました。

−活用力11−
逆のパターンは下図と同じように数字が3つ入ったです。しかしこの問題は解くことができません。「解けない」というところに価値があります。「先生,この問題はできません。」と言ってきた子が正解となります。つまり第2活用場面では「情報量のコントロール」がポイントの1つになると思います。昨年の全国学力調査で算数の活用力をみるB問題でも,この情報量が鍵になっていました。

−活用力12−
全国学力調査では平行四辺形の面積についてA問題ではこのような問題が出されました。

これは大半の児童が正解しました。

−活用力13−
しかし,これがB問題として,「公園の面積を求める」ということになると正解者は2割に落ちました。本当の理解ができていないと,必要な情報の取捨選択ができないということが分かります。そこで,活用力を育てるための適応題のポイントの1つは「情報量のコントロール」により,情報の過不足を意図的に設定することだと思うのです。

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