「 渇ッ ! 」
「 いてーっ!!! 」
「気合が足らん! 気合が!」
腑抜けの弟子など いらんわ!とジジイに投げられた。
「いてて…」
ちくしょー。
「お主 最近いい気になっておるのではないか?」
「なってねーよ」
ジジイに赤ん坊扱いされたままなのに どうやって いい気になれんだよ。
「雑念が多い」
「ぐぅ…」
そうなのか?
桐香にまで遅れを取ったからなぁ…。
あの後 俺はバイト先から呼び出しをくらったため、
伊集院が使うはずだったメットを被ってバイトに行った。
野島さんに桐香と一緒に伊集院を送ってもらうよう頼んだけど、なんか真っ青になってたな。
はぁ。
伊集院ならまだしも桐香にまで…。
「シショー…、俺、スキ多い?」
「 多い 」 (どキッパリ !!! )
「甘すぎるな」
「う…」
「…まぁお前の場合は…」
「え?」
「……いや」
「なんだよ?」
「竜が隙ありなのは〜♪」
おわっ!
シズカ!!!
「悪意にしか反応しないからです♪」
くい、と最小の動きで また投げられた。
「だから真琴に簡単にやられるんだよ」
「いでででで!!!」
シズカ!
てめ、関節…っ!!
「このままじゃ勝負にも負けるよ?」
「あ、ってことは俺にも負けるね」
シズカは笑いながら関節から流れる動作で絞めの体勢に入った。
やべ。
完璧 入ってる。
「 苦しい…?」
シズカが無表情で見下ろしてくる。
落とされる……!!
「…ゲホ! ゲホッゲホッ」
やっと首を外されて、咽(む)せ込んだ。
「あはは、やっぱり隙あり〜」
シズカはパッと俺から離れて立ち上がると、そう言って笑った。
「…シズカ?」
「なぁに、隙あり竜くん」
「一言 多いわ!」
「あはは」
シズカはいつものように飄々と笑っている。
「…? お前」
「ん?」
「…どうした?」
俺が訊くと、一瞬 シズカは無表情になった。
「 やっぱ、野生動物には敵わないなぁ」
ゆるやかに微笑む。
「なんじゃそりゃ」
なんで動物の話になんだよ。
オメーが変だから訊いただけじゃねーか。(いや いつも変だけど)
「動物ったら動物だよ。ケモノ」
ガッと羽交い絞めにされる。
「…こ、のっ!」
何度もやられて堪るかよっ!
「だりゃっ!」
バァン、と道場にいい音が響く。
へん。
ざまーみろ。
体重かけて投げてやったぜ。
「ぷっ! あははははは! やっぱ敵わないかー」
ぎゃははは!とシズカが爆笑した。
頭 打ったか??
「…真琴が苦労するわけだよ」
「シズカ?」
ホントどーした?
「うぷぷ、竜ったら、
や・さ・し・い v
俺のこと愛しちゃってる?」
………安心しろ。
もう二度と言わねぇ。
「ん〜でも俺のことより自分のこと心配した方がいいぜ?」
「は?」
「親父が…」
「 一宮 竜也 … 」
…れ、冷気…?
「 貴様…そこに直れ … 」
凄まじい冷気に恐る恐る振り返る。
ぎぇーーー!!
日本刀ッ!
「貴様は真琴がありながら他の女とキスを…っ!」
「ちが…っ、ごか、誤解ですっ!」
「 問答無用 !!! 」
無用じゃねーーー!!!
「竜くん…」
「あ!」
伊集院!! いいところに!!
助けてくれー!
「ごめんなさいっ!」
「へっ?」
「 あんな キス 、
気にする方がおかしいって…
竜くんと桐香ちゃんの関係 を考えれば…」
ひぃいいいーー!!!
更に誤解を招く言い方すんなーーーー!!!
「いーちーみ〜や〜」
いや、誤解ですって!!
「そんな、竜くんが恋しいなんて当たり前なのに…嫉妬なんかして…」
涙ながらに伊集院が言う。
「 ごめんなさい……っ」
タッ !!!
この状況のまま立ち去るなーー!!!
「 一宮………」
「 覚悟は いいか…?」
何の覚悟っ!!!?
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