人間が、2足歩行をするようになり、立つ・歩く・走る・座るなどの動作に膝関節は、重要な働きを担ってきました。また、特に日本人は昔から正座や床に座る生活習慣だったため、なおさら膝に負担がくることが多かったようです。
なぜ、膝が痛くなるのか?
・まず第一に、膝の関節軟骨がすり減ったために骨と骨がぶつかり、痛みが生じるのです。
膝の関節軟骨の表面には、骨と骨がこすれても痛くないように、関節液という液が分泌されています。これは、いってみれば潤滑油みたいなもので、クッションの役割を果たし、膝がスムーズに動くのを助けます。(俗に膝に水がたまるといいますが、この水とは関節液のことです。)
しかし、この関節液が何らかの原因で、うまく分泌されないと骨と骨がぶつかってしまい、痛みが発生するのです。やがて、関節軟骨がすり減るとO脚になり、最終的には変形性膝関節症といわれるものになっていくのです。
・第二に、太ももの筋力低下が挙げられます。
特に、太ももの前面にある大腿四頭筋という筋肉は、膝で体重を支えるという重要な役割をしており、これが衰えるとO脚などの変形につながりやすくなります。普段、車ばかりであまり歩かない人や運動不足の人は、この筋肉が衰えがちです。
この他にも、体重の増加やスポーツでの怪我、肉体労働などで膝を酷使した人、もともとO脚やX脚であるなどの方に膝が痛くなりやすいようです。
東洋医学では、どのように考える?
一般に関節の異常は、東洋医学では“痺(ひ)症”と呼んでいます。痺とは、閉塞や詰まりを意味しています。これは、ストレスや寝不足、疲れといった身体が弱っている時に「風・寒・湿・熱」といった人体に有害な邪気が、経絡に入り込み、気血の流れが阻害され、関節の腫脹・変形・屈伸不可・重だるさ・しびれなどといった症状を引き起こします。
< 原因と症状 >
・風邪(ふうじゃ)・・・痛みが1ヶ所に定まらず、あちこちに移動する。関節の屈伸が困難。
・寒邪(かんじゃ)・・・関節が冷えて痛む。これは冷えにより、体内の陽気が巡らず、血が滞るために起こります。温めると楽。お灸が効きます。
・湿邪(しつじゃ)・・・重だるさ、浮腫、むくみ感がある。全体的に体内の水分が多いために、水はけが悪く、水が停滞しているために起こります。胃腸の働きを良くし、湿の除去をはかるのが先決。
・熱邪(ねつじゃ)・・・患部の熱感、発赤、腫脹がみられる。体内の熱がうまく発散されずに、内にこもってしまうために起こる。
鍼灸では、どのようなツボが効果的か?
・血海(けっかい)・・・膝のお皿の内側から上2寸。血液の循環をスムーズにするツボなので、生理痛・貧血などにも効果あり。
・鶴頂(かくちょう)・・・膝のお皿の上縁中央。
・膝眼(しつがん)・・・膝のお皿の下縁で両側のへこんだ所。内側を内膝眼、外側を外膝眼という。
・犢鼻(とくび)・・・膝のお皿の下縁、膝蓋靭帯の真上。
“膝が痛むのは、年のせいだから仕方がない”とあきらめてしまう方が多いようですが、決してそんなことはありません。努力次第では、充分に症状を和らげることができます。特に、次の3点を積極的に行いましょう。
@太ももの筋力アップ・・・椅子などに腰掛けて、膝を90度に曲げます。その状態からゆっくりと膝をまっすぐに伸ばすように上げていきます。そして、またゆっくりと下ろします。これを何回か繰り返します。
Aウォーキング・・・痛みがでない程度に歩きましょう。
Bストレッチ・・・筋肉や関節を柔らかくしておくと、膝にも負担がかかりません。
少しずつでいいので、毎日継続して行うようにしましょう。“継続は力なり”です。