ほとんどの人が、一生に一度は経験するという“腰痛”。厚生労働省の調べでも、国民の訴える症状の第1位だそうです。その原因は主に、背骨とその周囲の筋肉や靭帯・関節に過度の力が加わって起こります。おおまかに次の2つに分けられます。ぎっくり腰は、この急性型と考えられます。
1) 椎間関節型腰痛
背骨と背骨をつなぐ関節を椎間関節といいます。この関節自体に無理な力が加わったために引き起こされる痛みのことです。痛みはちょうど背骨を中心に腰とお尻の間くらいに及びます。ただ、痛みそのものは漠然としていてはっきりとした圧痛点があるわけではありません。ぎっくり腰の最も代表的なものです。
2) 筋・筋膜性腰痛
これは、主に腰やお尻にある筋肉が過度に引き伸ばされたり、ねじれたりして起こる痛みです。痛みは、椎間関節型よりもやや上にあります。また、臀部にも圧痛がある場合があります。全体的に痛みそのものも「はっきり ここ」と限局できる場合が多いようです。
原因は?
東洋医学的な考え方によると、過労で腰に疲れがたまっていたり、冷たい物の摂り過ぎで身体が冷えている状態、いわゆる身体が弱っている時に「風・寒・湿・熱」といった人体に害があるといわれているもの(外邪)が、皮膚の経絡上から体内に侵入して、経絡の気血の流れを障害し、発症すると考えられています。
例えば、風の吹く寒い雨の降る中で仕事をしたり、湿気の多い季節になると腰が重だるくなったりするのはこのためです。また、腰は“腎の府”ともいわれ、腎は生命力・元気を蓄える場所でもあり、年齢とともに“虚”しやすく、そのために腰痛がおこりやすいのです。
ぎっくり腰 〜こんな動作に要注意!〜
日常のふとした動作で突然起こるぎっくり腰。その激しい痛みはなった本人でしか分からないもの。特にぎっくり腰を起こしやすい動作をいくつか挙げてみました。
- 重いものを持ち上げた時
- 中腰の姿勢で何か物を取ろうとした時
- 身体をふいにひねった瞬間
- 椅子から立ち上がろうとした時
などが挙げられます。いずれも何気ない動作で、何でよりによって自分が?と思いますが、実は本人の気づかないところで上記に挙げた腎や胃腸がかなり弱っていて、そこへもって重いものを持った瞬間ギクッとなるのです。重いものは“誘因”であって“原因”ではありません。本当の原因は内臓にあるのです。なので、鍼灸治療も腰だけでなく、必ず内臓が集まっている腹部も調整します。
ぎっくり腰 〜こんな点に注意しよう!〜
- 患部を冷やすのは初日から2日目ぐらいまでにしましょう。それ以降は温めます。
- 発症直後から2〜3日は、絶対安静が条件です。仕事や家事も控え、家で休養して下さい。
- 急性期は必ずコルセットをし、腰を保護しましょう。なるべく腰を安定させ、筋肉を刺激しないことが重要です。
- 布団は、あまり柔らかいのだと腰が沈んでしまい、かえって負担がかかります。適度な硬さがあるのが良いです。
よく効くツボは?
・腎兪(じんゆ)・・・第2腰椎棘突起下、脊柱の左右外側1,5寸の所。他に泌尿器系や生殖器系の疾患にも効果あり。
・大腸兪(だいちょうゆ)・・・第4・5腰椎棘突起間の外1,5寸。
・委中(いちゅう)・・・膝の真後ろ、横ジワの真ん中。足のだるさやむくみにもよく効く。
直立している時、腰には体重の約1,5倍の負荷がかかるといわれています。それだけに、日頃から腹筋・背筋を鍛え、なるべく疲労を蓄積させないようにすることが予防につながります。