原因は、多岐にわたります。頚肩腕症候群、胸郭出口症候群、頚椎症、むちうちなどが挙げられます。
1) 頚肩腕症候群(けいけんわんしょうこうぐん)
首から肩、腕にかけて痛みや凝りが起こる病気の総称です。一般的に、検査などをしても特に原因のはっきりしないものを指します。
従って、多くは首や肩・背中の筋肉の疲労、過労、パソコン作業などのデスクワーク、なで肩、姿勢の悪さ、運動不足、ストレス、精神的緊張などが挙げられます。
肩の周辺には、僧帽筋や肩甲挙筋、棘下筋などの筋肉がありますが、これらの筋肉が疲労して、硬く緊張し、血行不良になると“乳酸”などの疲労物質が筋肉中に蓄積してきます。その結果、凝りや痛みが起こります。
しかも、こりや痛みがあるせいで、動かさなくなったり、姿勢が悪くなることで、さらに筋肉が緊張し、余計に悪化させてしまうのです。
2) 胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)
胸郭出口とは、鎖骨の上のくぼみの所を指します。(左図参照)
ここは、神経や動脈・静脈が通っており、このくぼみが何らかの原因で狭くなって、そこを通っている神経や血管を圧迫するために、肩や腕に様々な症状がでます。
具体的な症状は、首のだるさ・肩から肩甲部にかけてのこわばりや痛み・肩から指に走るような痛みやしびれなどです。また、手を上にあげると痛みが起こるという特徴があります。20〜30歳代の女性に多く、教師や美容師など腕を上げた状態で仕事をすることが多い人によく見られます。
3) 頚椎症
頚椎は、背骨の中でも首の部分を構成する骨のことで、第1〜7頚椎までの7つの椎骨が積み重なって形成されています。そして、第2頚椎以下の椎骨と椎骨の間にはそれぞれ“椎間板”という円板状のゴムマットのようなものがはさまっています。(図参照)
椎間板は、中心にゼリー状の「髄核」があり、周囲を線維輪という丈夫な組織が取り巻いています。そして、椎骨と椎骨の間でクッションの役割をもち、頚椎に伝わる衝撃を吸収しています。しかし、年齢とともにこの弾力性は失われ、クッションの働きが弱くなると、椎骨同士がぶつかったりして、やがて摩耗し、すり減ってきます。
この時、そのすり減った部分を補おうと、骨の形成が逆に過剰になり“骨棘”という骨の縁にでっぱりのようなものができます。そして、この骨棘が脊髄や神経根の通り道(脊髄が入っている脊柱管や神経根が出入りする椎間孔)を狭め、様々な症状を引き起こします。
症状は?
主な症状は“首の痛みやこり、後頭部や肩のこり、痛み、重だるさ、不快感”などです。さらに神経根が圧迫されるようになってくると“首から肩、腕へのしびれ”がでてきます。特に高い場所を見上げたり、棚の上のものを取る時など、上を向いたり、首を反らせたりすると症状が顕著になります。
鍼灸では、どのような治療をするのか?
鍼やお灸は、原因である神経に刺激を与えることにより、血流を良くします。その結果、痛みを抑える物質や免疫機能を上げる物質が生じ、痛みやしびれなどが和らげます。
また、鍼・灸は骨と骨を支える筋肉や靭帯、関節などにも効果的に作用します。これらを強化することにより、症状がかなり緩和されます。
東洋医学的な考え方では、これらは全て「経絡を流れる気血の滞り」といえます。首や肩のまわりには、たくさんの経絡が走っており、そこを流れる気血が何らかの原因でつまったり、スムーズにいかなくなると痛みやしびれとして感じるわけです。
経絡は、川の流れに例えると分かりやすいでしょう。川の中に泥や土があると淀んでしまい、うまく流れません。これと同じことが人間の身体にもいえます。目には見えませんが“気・血・水” といったものが全身を巡ってエネルギーとなっているのです。
どのようなツボが効果的か?
・天柱(てんちゅう)・・・後頭部、ぼんのくぼから指2本分外側。他に目の疲れや不眠にも効果あり。
・風池(ふうち)・・・天柱からやや上で指1本分外。ここは特に“邪気”が入りやすい場所で、カゼの特効穴でもある。
・肩井(けんせい)・・・首の根元と肩先の間のちょうど真ん中。肩こり、首の張り、頭痛、のぼせ、腕の神経痛など上半身の症状には万能なツボ。
・肩中兪(けんちゅうゆ)・・・第7頚椎と第1胸椎棘突起間の外2寸。
・曲池(きょくち)・・・腕の内側、屈曲した時にできるしわの外側。他に口内炎や歯痛にも効果あり。
・孔最(こうさい)・・・腕の前面、肘から下に3寸いった所。