−5月−

−声−
今日,2つ隣のクラスの先生から「先生のクラスからは時々笑い声が聞こえてきますね。」と言われました。戸と窓を開け放していることもあって,近所にご迷惑をかけているのかもしれませんが,最近ちょっとテンションが下がってきたかなと思っていた時なので,つい喜んでしまいました。

−妹1−
この学校では毎年全学年でクラス替えがあります。今年初めて担任した男の子の家に家庭訪問に行くと,お母さんが「妹が先生に担任になってほしいと言っていた。」と言われました。その子とは全く話した覚えがありませんでしたが,その後理由を聞いて,「えー!あの時のー!?」という,こんなことが本当にあるのかと思うような,昔話の「恩返し」もの的展開を感じたのでした。

−妹2−
妹はにこにこしながらお母さんの横で正座をしています。お母さんが言われるには「先生がイスを持ってくれた。」ということでした。3月の卒業式の練習でイスを持って体育館に行く時に,一人の女の子がイスを2つ持って階段を下りていたので,1つを持って体育館まで一緒に行ったことがありました。

−妹3−
この話を聞いて驚いたのは,イスをちょっと持っただけのことを「ありがたい」と思い,ずっと覚えていてくれたことです。最近の子は社会の影響を受けて,ドライで,繊細な感受性の部分が破壊されていっているように感じていました。大人でも平気で虚仮にする傲慢さがみられることもあります。しかし,ひもが結べないようなことから始まって,これら全てのマイナス面は当然子どもが自らつくり出したものではありません。可哀想な被害者です。

−妹4−
イスを持った集団が廊下を歩いている中で一人の子がイスを2つ持っていました。私は何も言わず1つのイスを持ちました。それだけのことでしたが,それが2ヶ月後にこのようなかたちで自分に返ってくるとは本当に驚きでした。しかし,実はその子だったから,その家庭の子だったからではないのかということが,お母さんと話しながら分かってきたのでした。

−妹5−
まず,その兄妹は私が訪問している間,別に宗教的に特別な家ではありませんが,ずっとお母さんの両側で正座をして話を聞いていました。私が時々気になって「どうぞお楽にして下さい。」と言っても,ニコニコ笑うだけでした。そして,お母さんの話の中で「去年から・・・」という言葉を聞いた瞬間,気がついたのは去年の学校参観週間(1週間の自由学校参観日)に,廊下から一人授業を見ておられた方がこのお母さんだったということです。その時は誰か分からず,子どもたちに「今のどこのお母さん?」と聞いたことも思い出しました。

−妹6−
今回の件は,「私がイスを持って感謝された」という「恩返し話」ではなく,「学校に対して好意的に興味を持ち,人の話は正座して聞くような躾をしてこられた家の方の子どもが持っていたイスを私がたまたま持つことができた」という「幸運話」だったということが後で分かってきました。

−訪問1−
家庭訪問の次の日,子どもが「お母さんが先生は独身?って聞いたよ。」と教えてくれました。以前はこういう話を聞くと喜んでいましたが,最近は何だか軽く見られるようで,あまり喜んでもいられなくなりました。それどころか,去年はもっと衝撃的でした。

−訪問2−
去年の家庭訪問の後,男の子が「お母さんが先生のことイケメンと言ってた。」と言うではありませんか。喜んでいると,その後「でも,ああいうのはよそで悪いことをするから,結婚したら苦労するんよねえって隣のお母さんと話してた。」というすごいオチを教えてくれました。笑顔の後ろにはいろいろな憶測が含まれているのだと教えられました。

−GT−
GTとはゲストティーチャーのことです。クラブ活動に数名のGTの方を地域から毎年お願いしています。先日は一人のGTの方からお叱りの連絡をいただいてしまいました。今年もお世話になる旨と活動予定日の連絡は一度してあったのですが,その後詳しい打ち合わせの連絡がないがどうなっているのか,ということでした。去年通りと軽く考えていた自分を反省しました。以前は「石橋を叩いた後設計図を見るような奴だ。」と言われたことがありましたが,最近いろいろなところでボロが出てきて困っています。

−つき合い方−
連休に今年初のゴルフに行きました。結果は40,41の81。久し振りのラウンドでOBも出ましたが,バーディー3つのおかげでどうにか締まったスコアになりました。ゴルフを始めたおかげでいろんな人とのつき合い方を学ぶことができました。これが仕事でも大いに役立っています。

−笑い1−
「腹いてー。」先日,子どもたちが笑っている中からこういう声が聞こえてきました。学級を持って「話す,聞く」の関係がどうにかできてくると,こちらのペースで笑いを仕掛けていくこともできます。スムーズな学級経営の根幹には「遊び体験の共有」がありますが,「笑い」も大きな要素になります。これは生理学的にも証明されています。

−笑い2−
人が怒るときはノルアドレナリンという物質が出るそうです。恐れや不安がある場合にはアドレナリンという物質が出ます。この2つの物質は血管を強く締めて血圧を上げます。また血糖値を上げたり,癌を発生させる活性酸素を増やす作用もあります。よく怒ったり,いつも不安な人は高血圧や糖尿病になったり,癌になりやすいそうです。しかしその反対の作用をする物質もあると言われています。

−笑い3−
その反対の作用をする物質が,楽しいと感じる時に出ると言われているドーパミンです。脳の神経細胞同士が信号のやり取りをする時にその間にあるシナプスから放出される化学物質のひとつです。これはある酵素によって,怒る時に出るノルアドレナリンにも変化します。またこれが多すぎると,幻覚症状を起こしたり,行動のコントロールができなくなるようです。

−笑い4−
ドーパミンには快楽への鍵があります。麻薬やコカインなどの覚醒剤と煙草やコーヒーなどの嗜好品が,ドーパミンを増やし依存性を生み出すという点では脳にとっては同じものになります。そこで,「笑い」です。これもドーパミンを増やすと言われています。そういう意味では「笑い」にも生理的に大きな効果があるはずです。

−笑い5−
快楽の鍵ドーパミンの分泌を促す意味では,覚醒剤にも匹敵する効果が「笑い」にはあるのかもしれません。また「ほめられる」「感心される」「のせられる」状態も同じように「快楽」の鍵が働きます。ですから,もし子どもたちが「ほめられながら,大笑いしている」ような状態があったとしたら,その時は至福の世界に入り込んでいるはずです。

−笑い6−
笑いには連帯感が生まれます。映画館で見知らぬはずのまわりの人といっしょに笑うときに感じる感覚です。もしこれが毎日のように続けば,いくらかの効果があるはずです。そして,ドーパミンが生み出す依存性と共に無意識の共感や共鳴が生まれることもあります。スムーズな学級経営の根幹として,「笑い」も大きな要素になると思うのはこういうことからです。

−笑い7−
私たちにとって笑わせるということは仕事ではないですから,こんなことに力を注ぐ必要もありません。それに「笑い」など無関係で立派な経営をしておられる方は大勢おられます。個性の問題もあります。「何で笑い声が聞こえてくるのか。そんなにネタがない。」と言われることもありますが,私にもこれといったネタがあるわけではありません。子どもとのやりとりの中で自然に生まれてくることがほとんどです。ただ,何かおもしろいことを見つけようという意識をいつの間にか持つようにはなってきました。これも例のカリスマ教師の影響です。そしてこれによって私は教師生命を救われました。

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