−8月−

−剪定−
ゴルフのスウィングをする時,「身体を速く動かす」ことに力を入れてはいません。それより,「身体にいらない動きをさせない」ことに力を入れます。庭木の剪定をしてみて分かったのは,枝を伸びるだけ伸ばして元気よく見えていた時より,剪定した後の方が数段美しく見えるということでした。今教育センターでの実践報告用のスライドを作っていますが,ついあれもこれもと入れてしまって,スライドの数が100枚を越えてしまいました。きっとこれも剪定した方がいいはずです。これは授業でも話でも同じことです。ぜい肉は削り落とさなければなりません。これから増やすことより,減らすことを考えていくつもりです。

−教具−
今まで作ってきた教具が段々傷んできたので,この休み中にリニューアルしています。また公開研等で紹介した教具をいる人に差し上げたり,知人にあげたりしてなくなっている物も再度作っています。中でも「組み分け帽子」はよく作ってきました。二度目三度目になると同じ物でも段々と改良点が見つかってきて,使いやすくなってきます。またそれを使う時の子どもたちの反応が楽しくて熱が入ります。今年は体積の学習で使った教具を子どもたちが大変感心してくれました。

−雪だるま1−
「言語技術」の指導の研修で,1枚の絵を見てそこから様々な情報を読み取る実習を時々校内でしています。今回提示された絵は洋風の2階建てで煙突のある家の前に大きな雪だるまがあり,そのまわりに3人の子どもが描かれているというものでした。近くで兎が3人を見ています。さらに2階の窓には母親らしき人影がうっすら映っています。

−雪だるま2−
この絵から次のような項目について分析していきます。
1.何の絵か
2.場所はどこか
3.季節はいつか
4.どんな天気か
5.時間はいつか
6.絵に登場する重要な人物,物は何か
7.何が行われているか
8.この絵のタイトルは何か
等ですが,よく見ると,この絵には不思議な部分が多くあります。お分かりでしょうか。

−雪だるま3−
この絵について研修中も何となく気になっていたことがいくつかあるのですが,それが段々はっきりしてきたのは家に帰ってからでした。まず場所です。家の造りが洋風で,雪が降っていることから「外国」,「北欧」,「雪国」等が考えられますが,ちょっと気になることがあります。

−雪だるま4−
家の正面は普通太陽の見える側を向くように建てます。この家について見ると,玄関は立地条件によって東西南北どちらにでも造ることがありますから,玄関以外で正面を判断するにしても,窓がたくさんあり出窓もあるということからこちら側が正面と考えられます。すると手前から日が差すはずですが,木の陰を見ると,真っ直ぐこちらにできています。ということは家の裏側から日が差していることが分かります。この家は太陽に背を向けて建っているのでしょうか。もし家の正面が東を向いているとしたら,今は夕方ということになるし,もし西向きの家だったとしたら,今は朝ということになります。しかしこれだけの立地条件を見れば,家の正面をわざわざ東西に向ける制約はなさそうです。家が北半球にあれば家の正面は南に向けるでしょうし,南半球にあれば家の正面は北に向けるはずです。

−雪だるま5−
(これはただ絵の分析を屁理屈的に楽しんでいるだけで,大した意味はありません。が,夏休みということで,だらだらと続けていきます。)このままではこの家の場所の特定はできなくなってしまいます。そこで,この家の正面を出窓の位置から推定して向かって右側ということにします。すると,もし北半球にある家の場合は右側が南ということになり,家の向こう側が東でこちら側が西になり,木の陰から今は朝ということになります。これは子どもたちの足跡の量からも考えられます。次はこの3人の子どもたちの関係や,玄関から先に出てきたのは誰か考えてみます。

−雪だるま6−
足跡から,左の2人はきょうだいで,右の子は遊びに来たのではないかと考えられます。そして,2人のきょうだいはどちらが先に家を出てきたのでしょうか?私は最初,左の子が先に出てきたとばかり思っていました。それは,この雪だるまに関係しています。実はこの雪だるまはこの子たちが作ったものではないのではないかと考えたからです。

−雪だるま7−
この雪だるまはこの子たちが作ったのでしょうか。自分たちの身長ほどの高さの胴体を作り,その上に大きな頭を乗せているように見えます。しかし,やってみれば分かりますが,これだけの胴体にするために雪玉を転がしてくることはできません。重すぎます。そこで,横にスコップがあることからも,ここで雪山を作ってだるまの形にしたものと思われます。しかしそういう作業を何日か前からしてきたとしたら,雪だるまの周りはもっとでこぼこしているはずです。

−雪だるま8−
これだけ大きな雪だるまのまわりに,それを作った形跡がないということから考えられるのはただ1つ。この雪だるまは作ったものではないということです。ある朝忽然とこの場所に現れた・・・ということにすると,足跡から考えて,最初は左の子の方が先に家を出たと思っていました。

−雪だるま9−
左の子の足跡は真っ直ぐ雪だるまに向かっていません。外に出て雪だるまの方向からずれた方へ歩いて行き,そこから一回転して雪だるまに向かっています。これは何を表しているのでしょう。もし炭の入ったバケツを取りに寄ったのだったら,足跡はくの字になり一回転はしないはずです。また雪だるまの所に行きかけて炭の入ったバケツを思い出して取りに帰ったのだとしたら,玄関を出た後の最初の足跡はもっと雪だるまの方向に向かっているはずです。しかし,この子は玄関を出てすぐ雪だるまのある方に行こうとしていません。少し違う方向に向かって歩き始めています。もし雪だるまが自分たちで作ったものであったら,余裕を持って雪に足跡をつけたりして遊んでから来るということもあるでしょう。しかし,この雪だるまは様々な状況から考えて,突然現れているのです。もし外に出て,こんな雪だるまがあったら一目散に真っ直ぐ駆けつけるはずです。

−雪だるま10−
もし,突然庭に大きな雪だるまが出現していたとして,それなのに玄関を出て真っ直ぐ雪だるまに向かっていない足跡がある。ここから考えられるのはこの足跡を残した子は外に出た時,すぐには雪だるまに気付かなかったのではないかということです。まずはいつものように地面に張った氷を踏みに行ったのかもしれません。しばらく歩いてふと先を見て雪だるまに気付く。そこで軒下の炭を入れたバケツを取りに帰ってから雪だるまに向かった。と考えると,この子が先に玄関を出たということになります。なぜかというと,最初だから雪だるまがあることに気付かないということです。もし後から出てきたのなら,先に雪だるまの所に行っている子の声や動きで気付き,真っ直ぐに雪だるまに向かうはずだからです。ということで左の子が先に出てきた・・・と最初は思ったのですが,実は重要な点を見落としていることに気付きました。

−雪だるま11−
最初は以上の理由から,左の子が先に出てきたとばかり思っていたのですが,玄関の前をよく見ると,2人の足跡が重なっていません。最初から左右に分かれて2人の足跡がついています。このことから分かることは2人が同時に玄関から出て来たということです。もしどちらかが先に出ていれば,玄関を出て階段を降りるところまでは足跡が重なるのが普通です。ということから,2人は同時に玄関を出て,雪だるまも見つけているはずです。すると改めて疑問に思うのは,左の子の足跡です。真ん中の子は真っ直ぐ雪だるまに向かっているのに,左の子は違う方向に向かって歩き出しています。そしてぐるりと回って(きっと炭の入ったバケツを取って)雪だるまの所に来ています。もし途中で炭のことを思い出して取りに帰る場合は,まず2人の足跡が同じように雪だるまの方に向かっていて,その途中からぐるっと回るか,引き返す足跡がついているはずです。

−雪だるま12
左の子は玄関を出て雪だるまとは違う方向に歩き始めています。左の子の足跡の先には何があるのか・・・私は研修の時,この子はウサギを見つけてウサギの方に向かったのだと思いました。そして途中まで行った時,ウサギの姿が見えなくなり,炭の入ったバケツを取りに帰ったのではないかと。そして,ここから一気に想像の世界が膨らんでしまい,つい,このウサギこそがこの絵の中のキーポイントで,この絵には「ピョン太と3人の冒険物語」という題名がついていて,この後この雪だるまが動き出してみんなで冒険の旅に出るのです。・・・と研修の場で言ってしまいみなさんの失笑をかってしまいました。

−雪だるま13−
笑われてしまって,途中でやめたのですが,この勝手な話にはまだ続きがあります。実はあのウサギも雪だるまも本当は魔法をかけられたある国の王子とその友人だったのです。その魔法によって太陽の位置も変わり北から日が差すようになりました。その魔法をかけた人物もこの絵の中に描かれています。あの2階から暗い横顔が見えているお母さんです。というよりお母さんの身体に魔物が乗り移っているのです。横顔が映っているのは,このお母さんは子どもたちではなく,ウサギの方を見つめているからです。子どもたちはそのことを知りません。これからウサギ(ピョン太)と,目鼻をつけてもらって動けるようになった雪だるま君と魔法を解く玉を見つけに行くのです。ラストはその玉でお母さんから魔物が去り,2人の魔法も解けて人間にもどるというのはいかがでしょう。ここで1つ問題なのは,あの雪だるまの横にあるスコップです。これは雪だるまが突然現れたのではなく,やはり「作ったもの」という証拠になりそうですが・・・。

−雪だるま14−
雪だるまをここで作ったものではないことは,まわりの状況がなめらかすぎることから明らかです。だからあのスコップは雪だるまを作ったスコップではないのです。あれは,一番右の子が隣の家からソリに乗って来る時,持ってきたものと考えられます。雪だるまがあるのを見て,雪遊びに使おうと思ったのか,またはソリをこぐための道具として持ってきたのかもしれません。妄想の世界はこれぐらいにして,最後にこの絵の中で一番不思議に思うことがあります。

−雪だるま15−
一番不思議に思うこと。それは雪だるまの顔です。今,目と鼻がつけられています。この雪だるまはなぜこちら側を向くように顔を作られるのでしょう。普通,家の庭に雪だるまを作る時,その家から見える向きに顔を作るものです。ところがこの雪だるまは家に背を向けて顔を作られようとしています。その理由として考えられるのは3人の子どもたちの力関係です。今鼻をつけている子はこちら側に家があると思われます。その子が家から見えるように雪だるまの顔をこちらに向けているのかもしれません。せっかく炭をバケツに入れてもって行った2人のきょうだいは,それを静かに見ています。仲良く見えるような3人ですが,実は一人の子に牛耳られているのかもしれません。普通ならどちらの家からも見えるように向かって左か右側に顔を向けるはずです。確かに最近のクリスマスのイルミネーションのように,わざと家から外側に向かってデコレーションする風潮もありますが,それは大人の感覚です。それにこの家の前に人通りのある道があるような景色にも見えません。一体なぜ雪だるまの顔をこちらに向けるのでしょうか。これが一番不思議です。

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