−2月−

−動機付け8−
今,私のクラスでは朝私が教室に入ると,気がついた子どもたちが次々と大きな声で挨拶をしてくれます。これが1,2学期,指導し練習してもなかなか続きませんでした。それが,3学期が始まって2日目の朝,私が教室に入った時,いつもより大きな声で挨拶してくれたことに感激して(したことにして),お祝いだということでその日宿題をなしにしてから,今まで続き,習慣化してきています。「タイミング」というのは,このような「始まってすぐ」の新鮮な気分の時をねらうということです。

−動機付け9−
「先生,○○したら宿題なしにしてくれるー?」というような恥ずかしい言葉が聞かれないように,「宿題なし」は,子どもたちが忘れた頃,2ヶ月に一度程度しか仕掛けることはありません。それも,ある日急に,子どもたちも意識していなかったような行動の中から理由を説明し,価値付けを行い,短く「なし。」と宣言して終わりにしています。しかし,時にはもう少し演出を加えることもします。

−動機付け10−
この学校では明日の連絡を朝会が始まるまでに連絡帳に写して,前に提出しておくことになっています。つまり,朝の時点で,子どもたちはその日の宿題が何か分かっています。そこで,今日は宿題なしにしようと思っている日でも,普段通りに宿題を連絡黒板には書いておいて,その日の間にいろいろな理由をつけて1つずつ宿題を消していくという演出をします。例えば「○○君が今日はけんかをしなかった。」「○○君の連絡帳の字がとても綺麗に書けていた。」「○○さんが大きな声で挨拶をしていた。」「○○さんの掃除態度がすばらしかった。」等々,いつもは問題のある子のイメージを逆転する意図をもった評価を理由としていきます。こういう日は,たとえ途中で逆に宿題を復活させるような問題があっても,目をつむる覚悟をしておきます。学期に一度くらいはこんな日があってもいいと思っています。

−動機付け11−
様々なお祝いでねらっているのは,子どもたちに「行動したらいいことがあった」という実感としての達成感を具体的な感覚として,短い周期でできるだけ数多くすり込みたいということです。すると生活の中で,いつの間にか「頑張ること」と「いいこと」が1つのセットとして感じられるようになると思っています。

−動機付け12−
当然,「頑張ればいいことがある。」「頑張ればいいことがある。」と優しく唱えているばかりではなく,徹底するところはとことん徹底しています。例えば,私のクラスで朝会に行われている挨拶はたぶんどのクラスよりも短く勢いがあるだろうと思っています。全国で比べてもベスト10に入る自信があります。4月に聞かれた全員での挨拶は日直の挨拶に続いて「お は よぉーー ござい す。」といった間延びしたものでした。

−動機付け13−
朝の挨拶に続いて日直が「今月の歌を歌いましょう」と言うと,今月の歌のCDを音楽係がかけることになっていますが,このCDは,日直の「歌いましょう。」の指示と同時に今はかかるようになっています。4月には日直が「歌いましょう。」と言ってから,係が用意するので,間が空いていました。挨拶にしても係の仕事にしても,気の抜けたような態度は全てやり直しを徹底して行ってきました。

−動機付け14−
「やり直し」による徹底は様々な場で行います。言葉遣いもそうです。気になる言い方が聞かれたら,「もう一回言ってみて。」と正しい言い方になるまでやり直しをします。ですからタメ口など一切なくなります。いたるところに,徹底する厳しさがあるから,逆に「お祝い」の効果も出てくるのだと思っています。もし,指示も通りにくいような実態の中で「お祝い」などしていては,よけい弛んでいくはずです。

−動機付け15−
現在,例えば日直は毎時間の号令や給食前と後の台拭き,帰りの会の開始等について「つい忘れていて周りから指摘される」というようなことが皆無になっており,大変快適に集団生活が営まれています。それは以前,この欄で紹介したようにポイント制で,仕事開始の遅延等によるマイナスポイントが365ポイントになったら次の日も日直ができるという特典による「動機付け」があるからです。日直の仕事の遅れによる迷惑度に応じて,一度にマイナス360ポイントということもあるので,日直になった子は1日を緊張感を持って大変充実した過ごし方ができているようです!?

−動機付け16−
人を動かすということは大変難しいことですが,「言っても聞かない」のは聞かない者のせいでもあるし,聞かない言い方をする者のせいでもあります。だとしたら,聞かない者には「聞いて動く」訓練をさせる必要があるし,言う者は「聞かせる」方法を考える必要があります。人を動かす勘所をつかむには,常に人の心理に寄り添いながら,しなやかでしたたかな深慮遠謀を繰り返していくしかないように思います。

−チェック1−
先月,全校で国語と算数の学力テストを行いました。先日結果が返ってきて,クラスの正答率を見ると,国語が全国平均より8ポイント,算数が6ポイント上まわっていました。特に国語では言語についての知識・理解・技能の項目が14ポイント,算数では表現・処理の項目が9ポイント上でした。それぞれの項目で,1年間続けてきた「チェック」の効果がいくらか現れたのかもしれないと思っていることがあります。

−チェック2−
漢字の学習については,まずK・K式で新出漢字を学習した後,毎日宿題でドリルの10短文を3回ずつ練習します。そして,学校では宿題で練習した場所の10短文の漢字テストを,漢字テストノートを使って毎日行います。(ノートでテストを行うと,得点の集計等が管理しやすくなり,テストプリントが散らばることもなくなります。)時間は5分で切ります。テストの目的は習熟のためと,間違って覚えていないか確認するためです。このテストによるチェックがない,宿題だけによる漢字練習では,子どもに目的意識を持たせることがなく,ただの流れ作業になり,しかも間違ったまま定着させてしまう恐れもあります。

−チェック3−
漢字練習帳の間違いも当然チェックします。間違いのある子は,その字を含む短文を再度3回ずつ新たに練習することになります。間違いのある練習帳とない練習帳を一緒に返すと,中を見ずに直さない子もいるので,ノートチェックの時分けておいて,間違いのある子だけ呼んで直すよう指示します。最初のうちは,渡されてもそのままの子がいたので,呼ばれた子は黒板に名前を書いてから練習帳を受け取るようにしていました。

−チェック4−
練習とテストのセットを毎日行うようになって,漢字力が定着するようになりました。これが宿題だけの練習だったり,間違い字のチェックと直しの徹底がなかったりすると,ほとんど効果がないように思います。直しの徹底は計算ドリルの宿題についても同じで,必ずこちらでチェックして,本人に直させます。これが,答えを聞いて自分で丸付けをするだけでは,できる問題はできて,できない問題はいつまでもできないという,やってもやらなくても同じ学習になり,本人の力量の向上はほとんどないはずです。

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