−9月−

−ドリル1−
「昨日,あ〜ぁ夏休みが終わるな〜,と寂しかった人?」
「ハーイ。」
と全員挙手。
「今日からは,冬休みを楽しみに生きていこうと思う人?」
「ハーイ。」
とまた全員の挙手。新学期が始まりました。
今日2学期のドリルを配っていると,「答えが切り取ってある。」と言う声が聞こえてきました。それに続いて,「先生,答えもぼくらの払ったお金のうちなんだから,答えも付けて下さいよ。」という声。

−ドリル2−
国語や計算のドリルには最後に答えのページがあります。本当は自分で答え合わせをするのが一番いいのですが,宿題などではつい写してしまう子もいるので切り取ることにしています。またちゃんと切り取り線もついています。1学期もそうしていたので,別に今に始まったことではありません。しかし,「お金のうちなんだから,答えも付けて下さいよ。」の声には,私もそれはそうだと思いました。答えのページの代わりを私がしているつもりで,そのページは使わずじまいでしたが,代金の件では後ろめたい気持ちがしていたからです。

−ドリル3−
そこで,「それはそうだ。先生もそう思っていた。お金払ってるんだからね。よし,じゃあやっぱり答えをつけよう。切ったページ渡すから悪いけどテープで貼って下さい。でも,これからは先生も大変だ。みんなが宿題でドリルをやってきても,それが答えを見てやっているかもしれないからということで,学校でもう一度同じ問題をプリントにしてやってもらわなくちゃならなくなる。いや,でもその方が同じ問題に二度取り組むことになるから力がつくことになるね。よし,先生も頑張る。じゃここに・・・」と話している途中から,その男の子は「いいです。いいです。先生,なくていいです。答えなくていいです。いらない,いらない。」と言い出しました。「そうか,じゃあ申し訳ないけど,答えはやっぱり切り取ることにしましょう。」と言うと,その男の子は「ありがとうございます。」と言ってくれました。隣の女の子は「先生,うまいね。」と言ってくれました。

−馬1−
ドリルの答えの件でもそうですが,生活の中のいろいろな場面で,こちらに向かってくる様々な要求,課題,また時には不当な批判や揶揄等に対してできるだけ次元を変えて,こちらが押しつけるのでなく,波風立てずに相手も納得する方向で解決していきたいものだと思います。そういう意味で1つ,とても機知に富んだ切り返しの話を以前聞いたことがあるので紹介します。

−馬2−
その話の前半を紹介します。

ヨーロッパのある2つの国がお互いに何かにつけて敵対し,自分の国の自慢をしあっていました。ある日,それぞれの国に住んでいる2人が出会って,片方が「お前の国の国民が食べているイモは私の国では馬の餌になっている。」という言葉で相手の国の経済性をバカにし,自分の国の豊かさを自慢しました。

さて,この言葉に対して相手は何と言ったでしょうか。

−馬3−
「お前の国の国民が食べているイモは私の国では馬の餌になっている。」と言われた相手は「その通りだ。」と認めました。そして,「だから,私の国では国民が優秀で,あなたの国では馬が優秀なのです。」と言ったそうです。

−馬4−
切り返しの極意はここにあるように思います。つまり「まず,相手の言い分を認める」ことです。そして相手を認めたその先に,謙虚でありながらもう一面からみた別のエスプリを効かした真実を見つけるのです。これは,都合の悪いものをほんの少し見方を変えることで自分の役に立つように変えていく知恵です。相手のエネルギーをそのまま生かすことができるようになると,何より自分が楽になります。世界一と言われる手品師のどこが他の手品師と違っていたかというと,その人は「自分は全ての観客を愛していると思っていつも舞台に立っていた」という話があります。口先や小手先の技術では通じないのでしょう。本当に相手を認めようとする誠意があれば,事態は変わっていくのかもしれません。

−宿題−
ある子が時々「先生,宿題が多いです。」と言うことがあったので,ある日「そうか,何時間ぐらいかかるの?」と聞くと,「大体1時間くらい。」と答えました。テレビも見ながらのようです。そこで,高学年では家で最低1時間は勉強することが必要だという話をし,だからちょうどいい量になっているという説明をしました。その後「でも,その1時間しなければいけないことがめんどうなんでしょ。」と聞くと,「そうです。」と答えました。「じゃあ,そういう時は宿題が多いと言うのじゃあなくて,宿題をするのがめんどうです,と言うんだよ。」と教えました。で,実際に言わせた後,「はい,でも自分のために頑張って下さいね。」と言って終わりにしました。その後彼の口から「宿題が・・・」ということは出なくなりました。

−言葉の力1−
朝会の最後には1日の活動のウォームアップになるものをと思っていろいろな試みをしていますが,その中に読み聞かせもあります。今は新美南吉の「花のき村とぬす人たち」を読んでいます。しかし,読み聞かせを子どもの誰もが喜ぶわけではありません。じっと聞き入って時には笑ったりしている子もいれば,きょろきょろしていつ終わるのかなというような姿を見せる子もいます。確かに誰もが読書を好むとは限らないように,読み聞かせに全員が興味を持つ訳ではありませんが,この現象は子どものせいだけではないはずです。興味のある話なら本気で聞くかもしれません。また読み方がもっとうまければ集中して聞くかもしれないのです。

−言葉の力2−
読み方がうまいとは,言葉に力がある,声に力があるということです。同じセリフでも俳優の発するものと素人の発するものとでは天と地ほどの違いがあります。例えば,ラジオから流れてくるドラマやちょっとしたCMでの俳優のセリフを聞いていると分かります。また同じ歌でも歌手が歌うと何度でも聞けて,素人の歌では聞く気になれないことがあります。このようなことと同じ現象が「読み聞かせ」にもあるはずです。そしてこの言葉,声に力があるかないかは3つの要素で決まるように思います。

−言葉の力3−
読み聞かせをしている時きょろきょろしていて,あまり興味を示さない子がいます。つい何か「聞く態度」について注意したくなりました。が,どうにか思いとどまりました。「聞きなさい。」と言って聞かせる読み聞かせなんて最悪だと思ったからです。そして,どうにかしてこの子が時計をちらちら見たりせず,こちらに注意を向けてくれるような読み方をしてやろうと思いました。そこで意識したのは,「声の張り」「臨場感」そして「間」です。読み聞かせにはあまり感情を込めてはいけない,と聞いたこともあります。確かにどんな読み方をしても聞く子は聞くし,自分でイメージを作られるでしょう。しかし,目の前に聞けない子がいる場合は「読み方」でしかこちらに心を惹き付ける方法はないと思いました。それからは,いつもその子の様子をバロメーターにして読み聞かせをしていきました。

−言葉の力4−
ただ漠然と読み聞かせをしているより,一人の子の関心度を気にしながら読んでいく方が断然「力」のある読み方になります。「声の張り」1つを意識して読むだけでも変わってきます。それに「間」が効果的に入るともう以前とは随分違ってくるはずです。そして,強く,弱く,速く,遅くと場面に応じて変化をつけ,声優になりきって読んでいきます。しかし,これだけでは到底本物のラジオドラマの臨場感にはかないません。プロの声には命があります。映画と学芸会の表現力の違いです。昨日今日読み始めて,その道の鍛錬もしていない者に味わいのある読み方などできるはずがありません。涙まで自由に流せるところまではいかないにしても,聞けない子の関心をつかみ取ってこられるような力のある読みができるプロの教師に近づけるよう,毎日の修業をしていくしかありません。

−カルスト−
連休に山口の国定公園「秋吉台」に行きました。ここはカルスト地形で有名ですが,このカルストとは旧ユーゴスラビアの有名な石灰岩地の地名だということを今回知りました。また秋吉台はドリーネの密度が高いことで世界一だそうです。特別天然記念物の秋芳洞の入り口に続く道にはたくさんの土産物屋があります。そこで6年理科の地層の学習に使えそうなアンモナイトや魚の化石を買うことができました。あまり長いこといろいろ物色していたので,化石を買う時には店の人が小さなアンモナイトの立体的な化石をオマケに付けて下さり,ホクホクで帰ってきました。更に,家に着いてメールをチェックすると,「読み聞かせ」についてのありがたいメッセージが届けられていてまたまたホクホク!ありがとうございました。

−Tea Break−
子どもたちと同じように私も水筒を持参しています。教室でちょっとした休憩時間にこの一口は気分の転換にも役に立っています。最近使っているのは,片手で全ての操作ができる優れものです。ワンタッチで蓋がバネの力で開き,そのまま缶ジュースのように水筒ごと持って飲みます。上部を回して外すと,開口部が本体と同じ大きさで,中も洗いやすくなっています。お勧めの一品です。

−友情−
どこで聞いたのか忘れましたが,ある印象深い言葉を今でも覚えていて,それを時々使うことがあります。例えば次のような場面にです。
テストや宿題の答えの写し合い等に類した小事件?が発覚した時,全員の前で静かに次のように話します。「○○君と○○君の今回の行動は,お互いに助け合おうとする美しい行いではありますが,これは友情というものではありません。こういう行動は・・・愛情というものです(笑い)。すぐに答えを見せるより,その人の力にまかせたり,ヒントをあげるような行動が友情というものですね。」

−評定1−
先週,学級で地層の見学に行きました。ここは最近の道路工事で見つかった大規模ではっきりした地層の見学ができる所です。この近くからはオキナワアナジャコの化石も見つかっています。しばらく化石を探した後,全員が斜面にへばりついたところを写真に撮りました。先日その写真を印刷した学級通信を配って,「えー,地層の写真を家の人にも見てもらって説明してあげて下さい。」と言った後,「それから,その時地層と一緒に写った,ピースをしている珍しいおサルさんたちのことも話してあげて下さいね。」と言うと,大変受けました。そこで気をよくして,「右のおサルさんは・・・。」とか言っていると,女の子が「これを撮ったのがボスザルでぇ・・・」とお返しをしてきて,これがまた大受けでした。

−評定2−
女の子の「ボスザル」発言には私も思わず感心して笑ってしまいました。そして,「うーん,いいねぇ。今のは5点!」と評定をしました。こういうユーモアのある切り返し,パロディーは賢さの証明です。普段から子どもたちはいろいろなダジャレを言っています。私はそれを横で聞いていて,勝手に5点満点で点をつけて「今のは何点!」と言っています。ほとんどの場合は1点です。が,この時のようなタイミングとユーモアに優れたものには高得点をあげます。これを続けていると,今度は子どもたちの方が私の評定をしてくれるようになります。

−評定3−
私がある日何気なしに言った言葉を聞いて子どもが「1点!」と言ったことがありました。その時とても嬉しかったのを覚えています。それまで,私の方から子どもに点数はつけていましたが,子どもから点数をつけられたのはこの時初めてだったからです。何というかつながりとはこういうことかなあと感じました。で,1点と言われて,つい出た言葉は「いや〜それほどでも〜。」子どもたちから「ほめてないよ!」には,「照れるな〜。」・・・「クレヨンしんちゃん」を見ている子どもには分かります。

−会員1−
先日の日曜日,今年4回目のゴルフに行きました。5月に市民ゴルフに行ってから4ヶ月振りです。今回は会員になっているコースの月例杯で,今年初めてようやく参加することができました。結果は周りも本人も驚くようなまぐれの連続(1パットが10回!)のおかげで,36,41の77で,もう一人の方と1位タイスコアとなりました。普段はもっといいスコアを出す方がおられるのですが,今回はみなさん調子が悪かったみたいです。これで今年は81,78,75,77で平均が77.75となりました!高い買い物でしたが,会員になって得たものの方がその何倍もの価値があります。

−会員2−
会員になると,月に一度の月例杯に参加することができます。そしてこの競技ゴルフを始めると本気で練習をするようになります。私は朝5時に起きてアプローチの練習をするようになって,スコアを縮めることができるようになりました。1月や2月の早朝5時はまだ真っ暗なので,専用のライトを点けます。朝霜がヘッドに付いてそれが凍っていきます。そんな練習でもする気になるのは競技に出場する機会があるからです。ということで,会員になるとまず技術が向上することになります。

−会員3−
そして,会員になって最も大きな収穫は様々な職種の方と知り合えるということでした。月例杯では毎回いろいろな方と回ることになります。初めて出会う人と半日の間,仕事の利害関係なしで素の自分をお互いに出してゲームを楽しみます。学校関係に勤めていると毎日がほとんど限られた範囲内の人との付き合いになります。それがこの月例に参加することで,それまでの自分の閉鎖的な狭い世界を少し広げることができました。これは今ではいくらお金を積んでも得ることのできない大きな私の財産になっています。

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