−4月−

−教える1−
うろ覚えですが,ある本に,何かにつけて自分の感覚と違いがあったり,自分にとって具合の悪い相手に対してどういう考え方,対応をすればいいか書いてあったのを見た覚えがあります。確か,「この人は自分に何を教えようとしているのだろうか。」と考えるのでした。例えば前の車がのろのろ走っていて,ついいらいらするような時です。

−教える2−
うろ覚えのままでは気分が悪いので,片付けていた本を探してみると,「小さいことにくよくよするな!」(リチャード・カールソン著)でした。これは「たいていは相手が正しい」(たいていの場合,せっかくの出会いを台無しにするのは,相手より自分の方が正しいと思いたいエゴのしわざだ。)「思いやりは訓練で育つ」「頭で悩み事の雪だるまをつくらない」「人はそれぞれにちがうことを理解する」等々の「心のもちようで人生を変えられる」内容について書かれた1998年に出版されベストセラーになった本でした。

−座席1−
4月に転勤して行った学校は児童数578名の中規模校で,5年生の担任になりました。私のクラスには34名いるので,座席は2つの机をつけた列が3列できます。これをA隊形と呼び,6つの班に机をつけるのをB隊形と呼ぶことにしました。そしてもう1つ,C隊形も作っています。これは机は前を向けたままで全部離し,机は動かさず,人間だけが筆記用具を持って出席順に並び替わるものです。

−座席2−
机の移動はせずに,子どもだけ出席順に並び替えるC隊形はテストや調査物の事後処理の効率化を図るためです。この時,子どもは筆記用具だけを持ち1番から順番に前から座っていきます。そして,テスト等が終わると各列の一番後ろの子が用紙を集めてきます。この時,気をつけさせるのは一番後ろの子の用紙が上になるように集めてくるということです。すると各列の用紙を番号がつながるように重ねると出席番号最後の子が一番上にくるようになります。この用紙の順番のまま採点していくと,今度は出席順に採点の済んだ用紙が並びます。これで点数の記録を取りやすくなります。

−出会い1−
4月7日,新しい学校で新しい出会いがありました。30余名のクラスで,わいわい騒がしくこちらからの語りかけにもあまり手応えが感じられませんでした。しかしその日の日記に,男子は「ぼくが3年生の時に一番すきだった○○先生にせいかくやこえがにている。」「先生はすごくおもしろいときがあったり,たまにおこってくれる先生です。」と書いてくれていました。女子は「最初はハンサムだと思った。みんな言ってた。先生は,とっても明るかった。楽しい先生だった。これで毎日きっと楽しいと思う。」「先生のかみ型はどうやったらあんなになるのかなぁ?先生がねぐせって言った。すごいなぁ・・・。」「給食休けいはだじゃれをいっぱい言ってくれた。おもしろかった。きっとみんなうけると思う。けっこうおもしろいからだ。」と,あまりにも無防備にとても嬉しい評価をしてくれていました。新学期の超多忙で疲れ切ってしまう時期ですが,こんな子どもたちのおかげで,どうにか克服できています。

−出会い2−
「好きだった先生に性格が似ている」と言われても,私がどんな性格かはまだはっきり分からないはずです。しかし「好きだと言われるようになろう」とつい思ってしまうものです。これは逆に子どもも同じはずです。出会いの新鮮な時期に,「明るいね。」「すばやいね。」「優しいね。」・・・と言われれば,そのようになろうとする意識が働くはずです。人は「だめだね。」と言われればだめになっていくし,「できるね。」と言われればできるようになっていくものかもしれません。

−日記−
日記を毎日書かせようとすると,その日のうちに日記を見て返さなければならなくなります。そこで,日記を一人2冊にし,それを交互に出すようにしています。これで放課後ゆっくり目を通すことができ,赤ペンのコメントも落ち着いて書くことができます。今は30余名ですが,以前の少ない児童数の時も2冊にしていました。

−連絡1−
人数が多いと家庭からの反応も多くなってきます。転勤した学校でも通信は手書きで出していますが,その通信の内容について「今日帰るなり『グッドラック』(通信名)に日記がのった!と見せてくれました。一文,一言に先生からの解説?・・・批評?・・・見解?・・・がうれしくて何度も子どもと読みました。これからの励みになります。」と嬉しい反応をしていただきました。今は個人情報の保護で日記1つ載せるにも気を遣いますが,こういう連絡をいただくとこちらの方が励みになります。

−連絡2−
クラスの人数は変わっても,以前と同じ感覚で話しているつもりでしたが,やはり力が入っていたのでしょう,のどを痛めてしまいました。2日間ほどはほとんど声が出ない状態で,このままかすれた声になってしまうのではないかと思ったほどです。そんな時期の4月14日,ある保護者から「毎日,先生や学校の出来事を楽しく話してくれるので,笑いが絶えません。」と連絡帳に言葉をいただきました。こういう連絡で,のどの痛みもやわらぎます。

−連絡3−
連絡の中には嬉しいものばかりがあるわけではありません。同じ日に「新しいクラスになって友達関係で学校に行きたくないと言い出した。」というものもありました。確かにお互いをけなし合うような殺伐としたはしゃぎ方が最近の子どもの世界にはあるように思います。こういう問題は即対応しなければなりません。その日全員にこの問題についての自分の考えを言わせ,もしこれから先,自分がからかったせいで友達が学校に来なくなったらどういうことが自分の身の上に起きるか,家族を巻き込んでの具体的なシミュレーションを行い,私自身も断固として戦うことを宣言しました。

−連絡4−
次の日,その家から連絡がきました。「○○の事,ありがとうございました。今日はすっきりした顔で,いろいろ話してくれました。」とのことでした。

−Act1−
最初の出会い方はなかなかいい感じではありました。しかし,毎日毎日騒がしい状況が続きます。これをどうにかして一人ひとりが「聞く」態勢にもっていかなくてはなりません。また様々な問題も起きてきています。お互いに慣れてきた頃でもあり,そろそろ締めていく頃です。しかし今までの反省を思い出してもいます。

−Act2−
今までの反省とは,指導のきつさです。今まで,子どもの程度によってはどうしても指導がきつく,ストレートになってしまうことがありました。それで表面的にはどうにかまとまっていましたが,やはりそれは稚拙な方法です。そこをもう少し我慢して共感的な立場を演じていく努力をしていこうということです。自分自身のつくりかえです。

−言葉遣い1−
始業式の日,まず気になったのは子どもたちの言葉遣いです。誰一人として教師に対して敬語を使う子はいませんでした。いわゆるため口です。まずはここから指導していく必要性を感じました。しかし,この30余名たちの習慣を変えていけるのだろうかと,先の見えない労力の膨大さが予感され,少し滅入ってしまいました。

−言葉遣い2−
新しい学校で,新しいクラスとの出会い。その最初からせっかく話しかけてきてくれる子どもたちに「もう一度言って。」と言葉遣いを注意するには少し勇気がいります。こんなことを最初から始めて子どもたちとの人間関係はうまくいくのかな・・・,堅苦しいことは言わず,友達的にサラッと行く方がイメージいいかな・・・と躊躇してしまいました。

−言葉遣い3−
躊躇しましたが,もし変えるなら最初が肝心と早速「先生○○するん?」ときいてきた子に敬語の使い方を説明しました。すると,案の定「えーっ!?」ときました。この「えーっ!?」との戦いもいつものことです。何でもかんでも「えーっ!?」というくせもなくしていかなくてはなりません。

−言葉遣い4−
何でもかんでもすぐ「えーっ!?」と言う子には間髪を入れず反撃します。「またえーっと言う。」「すぐえーっと言うんだから。」「君はエーエー教の教祖か?」・・・と,すごーく不愉快そうな表情で対応します。「えーっ!?」と言われるとどんなに気分が悪いかもはっきり言います。そしてとにかく「えーっ!?」と言うと何か批判されるというすりこみを行っていきます。

−言葉遣い5−
「先生○○するん?」と言ってきた子にすぐ返事をしません。「○○するんですか,と言いましょう。」と最初は説明します。何度もこの繰り返しになりますから,そのうち「ん?もう1回言ってみて。」で分かってきます。これは子どもとの根比べです。ため口につい返事をしていてはいつまでも変わりません。中には「もう1回。」と言われて,「ですか。」だけを後から付ける子もいます。これは許しません。最初から正しく言わせます。最初子どもたちはこの指導に驚いていました。そして他のクラスから入ってきた子に「この教室では敬語を使うんで。」と珍しそう?に言っていました。こちらは涼しい顔はしていましたが,胸の奥では「堅苦しい物分かりの悪い教師」として浮いてしまうのではないか,こんなことがいつまで続くのだろうか,と冷や汗を流していました。

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