国見山(霜野山)の麓の山岳密教寺院                          文字サイズ:               
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熊本県山鹿市の
  鹿央町霜野に
  ありますよ
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        霜野の昔話と伝説    No.1 



日吉神社の神のお使いのおサルさん
*『鹿央風土記』(角田豊著)の
 「霜野むかし話」をもとに、熊本
  弁にして再構成したもの


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1.
百谷あれば阿蘇山が来る
 霜野には、ちょうど京都の町の後に比叡山のあるごつ、国見山という高~か山の聳えとっとよ。それに、谷が百もあって、昔は、大蛇やウワバミやイノシシなどがた~くさん住んどったそうな。

 国見山のこつば、霜野の人たちは「大山(ううやま」と呼んどるよ。「大」は「うう」と発音するとたい。たとえば、「大事」は、「ううごつ」。「あゝ、ううごつの起こった。困ったねぇ」という具合に。

 そして、「谷」のことは「たん」と発音するよ。「大谷」ていう谷は、「ううたん」。康平寺の4つ「宝塔(ハットウ)」の一つ「長福寺」がある「北谷」は、「きただん」、白山宮のあった「白山谷」は、「はくさんだん」。実は、その「白山谷」の下に、今の康平寺があるよ。


 「大山」の山頂には、大天狗も住んどったて。康平寺の二十八部衆の「迦楼羅王」のごたる太か羽の背中にあって、赤か顔に高~か鼻、眼はランランとして、一本歯の高下駄はいて、ヤツデの葉っぱの団扇(うちわ)ばかざして、木から木へピーンと跳びよんなはったて。
 康平寺は、天台宗の山岳密教寺院で、山伏(やんぼし)姿の修行僧が、いつも集まってきよったけん、それと見間違えたかもしれんけれど、ヤッパほんなこて天狗のおんなはったて思う。『肥後国誌』て言う本にもちゃ~んと書いてあるけん。


 ところが、ある時、「ううごつの起こった!」
 なんと、あの火の山「阿蘇山」が、「谷が百もあるなら、霜野さん行く。」て言いなはったて。

 あの阿蘇山は、「建磐龍命(たていわたつのみこと)」て言うて、えらい太か神さまてったい。
 その建磐龍命さまは、阿蘇の外輪山の中に満々と水のたまっとったけん、立野の所ば蹴破って、水ば落として広~か田畑ば確保してやんなはったて。お百姓さんたちがえら~い喜んで感謝したけん、そるから、どこそこから「いっちょ、どうぞ蹴破ってはいよ。」て頼まるると、「よかよか、まかしとけ。」て言うて、気軽う出かけなはる神さまらしか。

 昔、山鹿の茂賀の浦にも来て、鍋田横穴古墳で有名な鍋田の所ば蹴破って、田底三千町歩の田を現しなはったくらいだから、「霜野に来る」というのは、きっと本気ばい。
 それに阿蘇山は、昔から何万年も燃え続けとるけん、もうそろそろ燃え尽きる頃で、「百谷ある山ば探しよんなはる」ち、うわさばい。

 「阿蘇山が来なはる。」といううわさば聞いた霜野村では、人間ばかりではなく、サルもイノシシも大蛇も、生き物はみ~んなびっくり仰天して、上を下への大騒ぎになったて。

 そん大騒ぎの最中に、阿蘇山が下見に来なはるちゅうことになったそうな。ほんとに百谷あるか確かめに。

 そん時、「大山(ううやま)」のサルたちが、集まって相談したて。そして、一谷隠して出さんだったそうたい。
 阿蘇山は、どしこ数えても「九十九谷」しか無か。百谷揃うとらんと、来られんて、残念がって帰って行きなはったてったい。サル智恵のお陰で、霜野村は助かった。康平寺も助かった。なにしろ、康平寺あっての霜野村だけん。そんおサルさんについて、大事な話のあるよ。


 実は、平安時代から千年間ばかり、お寺(仏教)とお宮(神道)は仲良うして、特に、お寺を保護する役目ば、お宮が背負うとったらしか。
 あの最澄が開いた天台宗の比叡山延暦寺は、比叡山の坂本ていう所にある「日吉神社」が守ってやっとったて。その「日吉神社」が、霜野にもちゃ~んとあって、明治時代に神仏分離令が出るまで、天台宗の「康平寺」を守護しとったわけたい。
 日吉神社の神のお使いは、サルて言われとるよ。比叡山ナもちろん、全国にあるどの日吉神社もね。
 だけん、霜野の日吉神社の神殿の後には、こまかばってん見事な「見ザル」、「言わザル」、「聞かザル」の彫刻があるよ。


 ところで、九十九谷もある谷の名前ば全部言える人は、もうおらんようになってしもうたばってん、あの阿蘇山が探し出しきらんだった谷の名前はね、「出ン助谷(でんすけだん=出てこない谷の意味)」だったて。(おしまい。)


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