国見山(霜野山)の麓の山岳密教寺院                          文字サイズ:               
康平寺バナー
熊本県山鹿市の
  鹿央町霜野に
  ありますよ
トップページ 
康平寺案内図 
堂舎配置図 
霜野村とは 
康平寺の歴史 
真堂廃寺 
地蔵菩薩立像 
千手観音立像 
二十八部衆 
天部リスト 
日吉山王宮 
考古学資料 
古文献資料 
昔話と伝説 
康平寺管理組合 
写真いろいろ 
仏像を描く 
説明パンフレット
英文の説明 
        霜野の昔話と伝説    No.2 



国見山の大天狗と日吉山王宮
*『鹿央風土記』(角田豊著)の
 「霜野むかし話」をもとに、熊本
  弁にして再構成したもの


「昔話と伝説のもくじ」へ




2.
国見山の大天狗
 熊本県山鹿市鹿央町霜野の西のはずれには、玉名郡と接して、国見山の霊峰(388.8m)が聳えとるよ。
 山の姿は、それはそれは美しゅうて、雄岳(おだけ)と女岳(めだけ)の二峰がつらなって、奈良の有名な二上山(にじょうざん)のごつ、厳かで、里人は昔から敬もうてきたよ。この山にゃ、魔性の動物が住んどって、昔から里人を脅(おびや)かしたり、たぶらかしたりしたそうな。狐や狸、猪に大蛇・・・。


 そして、この国見山の松の大木のてっぺんには、「大天狗」がいて、小枝には「小天狗」どもが侍(はべ)っていたそうな。
 『肥後国誌』(山北郷稲佐村の条)に、国見山の玉名郡側の麓にある、稲佐村から見上ぐると、「国見山、兀山(こつざん)ニテ、岩巒(がんらん)峙(そばだ)テリ、上宮権現(じょうぐうごんげん)大天狗、国見嶽頭(くにみだけとう)ニ鎮座(ちんざ)スト言ヘドモ森も祠(ほこら)モナシ。」て書いてある。
 つまり、「国見山は、大きか岩がゴツゴツとそばだっとって、山頂に上宮権現が鎮座しとんなはるが、森も祠ものうて、大岩そのものが権現様じゃ。そこにゃ、神の使いの大天狗・小天狗が控えとる。」てち。


 大天狗は、真っ赤な顔に、長か鼻の岩のごつ出っ張っとる。目の太うして、えすかごつ光っとる。黒紋付きに、一本歯の高下駄。手にはヤツデの葉っぱの団扇(うちわ)をかざし、自由自在に飛行しなはるて。
 小天狗がうんとおって、目玉の太うして、鳥のくちばしのごつとんがっとる。「烏(からす)天狗」てもいうよ。大天狗に命令さるっと、パーッと八方に飛んで行くって。


 夕方、小天狗どもは、餌を取りに人里に飛んで行って、遊びほうけとる子どもばさらって行く。
 そるから、国見山の太か松の木の上で、宴会の始まる。うまかものを腹一杯食べて、上機嫌の大天狗が、ヤツデの団扇ば翻(ひるがえ)しながら、舞い始むる。
 「ワーレハ、コノ山ノ大天狗、権現様トハ、オレノコト、狐ヤ猿ヤ蟒蛇(うわばみ)ヤ鼠(ねずみ)・鼬(いたち)ニイタルマデ、コノ俺サマノ眷属(けんぞく)ジャ。人間ナドトハ片腹痛イ。・・・」と豪語すると、小天狗どもはギャッギャッと鳴きながる羽ばたきして・・・、
 「天狗、天狗、三天狗(みーてんぐ)、オーレモ加担(かたっ)テ四天狗(よーてんぐ)、泣キ虫、弱虫、洟(はな)垂レ小僧、オレサマタチガ引ッ捉エ、ゴ覧ニ入レテ見セマスル。・・・」
 さんざん賑(にぎ)おうて、松の枝もたわんで、今にも突(つ)っ欠(か)ぐるごたる。
 夜の山中は、百鬼夜行、あらゆる動物や魔物が虚勢ば張って、わがもの顔に振る舞うそうな。


 夜が明くると、今まじの噪(さわ)ぎはどこへやら、朝日が木々の葉ば透かして差し込み、雫がポトリと垂れて、また、いつもの静けさに戻っとる。

 大天狗がおる上宮権現は「国見山」ばってん、中宮権現は、熊野権現社を祀ってあった「権現山」で、中世の頃は、内空閑(うちのこが)九代鎮房(しずふさ)が、山城ば築城したって。でも、鎮房は、天正15年12月に、佐々成政(なりまさ)に攻められて落城、翌年3月3日には、筑後(チクゴ)の柳川(ヤナガワ)で殺されたって、かわいそうかなぁ。
 上宮・中宮に対して、下宮(げぐう)はどこか、て言うと、あの「日吉神社」、またの名は「日吉山王(さんのう)権現宮」て。つまり、日吉神社は、神体山である国見山を拝む拝殿だったつたい。


 ところが、その大事な国見山が、明治の終わり頃、山火事になってしもうて、全山紅蓮(ぐれん)の炎に包まれたって。一早く逃げ出したものもおったかも知れんが、ほとんどは死んでしもうたらしか。

 里人はえすか目に合わんでようなったばってん、なんかちょっと寂しかね~。
 でもね、こっそり教えると、「天狗」はま~だ今でも、霜野におるよ。
 日吉神社の高か階段ば上った所に神殿のあって、その中の左右の柱に「火王(ひのう)さん」と「水王(みずのう)さん」という、長か鼻のお面の掛かっとる。
 大天狗はね、今ではその2つのお面(神さま)になって祀られ、霜野の人々が大事にしとるとよ。(おしまい)

  「昔話と伝説のもくじ」へ
        TOPページに戻る