−11月−

11/1 −聞く(26)−「立ち読み」
本屋で長い間立ち読みをした時,終わってから足のだるさを感じても,途中は立っていることも忘れているものです。何もせずにそれだけの時間じっと立っておくのは相当の鍛錬になるはずです。興味のある本に集中しているとその辛さも感じずに足腰を鍛えることになっているのかもしれません。「聞く」ということも,興味を持ってある程度の時間集中して聞くという経験を繰り返していくうちに,自分では気づかなくてもそれなりに「じっとしている筋肉」「聞く耳」が育っていくのではないかと思います。

11/2 −聞く(27)−「聞かないくせ」
聞くことに慣れさせるといっても,ただ何分間か話しているだけとか,長々とした注意や矢継ぎ早の指示,説明では,子どもに忍耐力はついても,より「聞かないくせ」をつけてしまいそうです。音読でもただ文字を声に出しているだけのような読み方をしていては,目と口だけの作業になってしまいます。音読では中身を味わう読み方,聞く時は話を味わう聞き方をさせたいものです。そのためにはそれだけの力のある文章,話であることが前提になります。

11/5 −聞く(28)−「そーなんだ」
知り合いの先生から「聞くことの指導で効果をあげる方法はないか?」という内容のメールを携帯に頂いて,思いつくまま書いていたらいつの間にかこんなに冗長な展開になってしまいました。もうやめます。最後に,4月の始業式の日から3月の修了式の日まで,1年を通して意識的に毎日毎日「聞く態度」の育成をめざして様々な取り組みを精一杯行ったとして,それで子どもたちの聞く姿勢に変化の兆しがほんの少しでもみられたら大成功だと思っています。話のネタを探すために,新採の頃は事典や歳時記,いろんなマメ知識の本にあたっていましたが,今はデアゴスティーニ・ジャパンの発行している「そーなんだ」など便利な書物がたくさんあります。ちょっとした話を子どもたちはずっと覚えていてくれたりするものです。また先日は朝会で「走れメロス」の話になり,最後メロスはどうなったか?で終わったところ,休憩時間に図書室に確かめに行く子もいました。「聞く」ということを意識した取り組みからは別の効果も派生してくるように思います。

11/6 −トドのダイビング−
この連休に城崎に行って来ました。ヒットは城崎マリンワールドでした。以前行った時と比べて随分変わっていてそのダイナミックさにびっくりしました。あんなストーリー性の高いイルカショーも初めてでしたが,「トドのダイビング」には本当に驚かされました。体重500kgもある2頭のトドが岩場を登り7mの高さから気持ち良さそうに何度も何度もとび込むのです。そして夜はお決まり,カニのフルコースで一年分?のカニを食べてきました。6日の今日からはズワイガニの解禁だそうです。この冬お勧めのポイントです。

11/7 −損−
最近ようやく分かってきたのは,「自分が損をしている」とか「自分が我慢をしている」と感じている間は,万事何事も波風が立たず平穏に時が過ぎていくということです。自分が損していると感じるぐらいで,社会的な人間関係の天秤は釣り合うようです。

11/8 −エスプリ−
「機知に富んだ発想のことを,フランス語でエスプリといいます。」ある本の書き出しです。この本から先日子どもたちに問題を出しました。「二人の少年が,一軒のエントツ掃除を終えて,エントツから下りてきました。一人はススで顔を真っ黒にしていましたが,もう一人はまったくススで顔を汚していませんでした。さて,顔を洗うのはどちらのほうでしょうか。」「英語で,トラはタイガー,ゾウはエレファント,ではカッパは?」

11/9 −顔−
エントツの問題の答えは「顔を洗うのは,顔を汚していない少年のほう」です。「顔の汚れた少年は,顔のきれいな少年を見て,自分の顔もきれいだと思います。しかし,顔のきれいな少年は,顔の汚れた少年を見て,自分の顔も汚れていると思うでしょう。(人のふり見てわがふり直せ)といいます。けれども,自分の欠点が他の人にはなくて,しかもだれもその欠点を指摘してくれなければ,汚れた顔のまま,仕事をし続けることになるでしょう。(大人の論理)欠点を指摘してくれる人間に感謝せよ。・・・トップに立った人間は,自分のまわりに忠告者がいなくて,孤独なことがあります。くれぐれも,顔の汚れにはご注意を。」とその本には書いてあります。

11/10 −カッパ−
「英語で,トラはタイガー,ゾウはエレファント,ではカッパは?」の答えは「レインコート」です。「前例や過去の経験が,固定観念というものをつくってしまいがちですね。人間の思考というのは,ごく簡単に固定されてしまうのです。(大人の論理)固定観念が重すぎて・・・・アア,沈没!」とその本には書いてあります。この本は「−−論理力が身につく−− 大人のクイズ」 逢沢明(京都大学助教授)PHP文庫 です。「アフリカのある部族が,雨乞いの踊りを踊ると,かならず雨が降るそうです。なぜでしょう。」「直径20センチの丸い穴をあけた新聞紙があります。その穴にバスケットボールを通すには,どうしたらよいでしょう。ただし,穴を広げてはいけませんよ。」「アリは夏中働いて,冬の間の食べ物をせっせと蓄えました。キリギリスは夏中楽しく歌って過ごしました。あなたがキリギリスだったとして,その冬をどうやって乗り切りますか?」「タバコの吸い殻3個から,1本のタバコを再生できます。だったら,30本のタバコがあれば,何回の喫煙を行えることになるでしょう。(答えは45回ですが,その説明が問題になります。)」「ウサギとカメが競争をしました。ウサギは途中で寝なかったのに,負けてしまいました。どうして?」・・・というような問題が載せられています。もし興味を持たれたら続きは本屋で立ち読みでもしてみて下さい。

11/11 −海亀スープ−
子どもたちへの問題の話といえば,以前「海亀スープ」の問題を出したこともありました。これはキャンプや合宿の時などにするこわい話の一つとしてお薦めの話です。私はずっと昔この話をラジオ放送で聞いたことがあるのですが,その時から強く印象に残っていました。少し前にはテレビの「世にも奇妙な物語」でも放送していました。今までのクラスの中で一人だけこの「スープの謎」を解いた子がいました。どんな話かというと。

11/12 −ヒット話−
この「海亀スープ」の話はこの欄では紹介しにくいので,「先生の話2」にまとめていこうと思います。この話は推理問題としてよくできた話だと思います。また,この話とは全く違う話で,「おさる日記」というヒット話もあります。これはあの三谷幸喜さんの作品だと思われます。これもコワイ?話として是非紹介したい話です。実はこれはビデオでも発売されています。「やっぱり猫が好き」という題名のシリーズ物の中に「おさる日記」と副題がついています。もし興味のある方はレンタル店で探してみて下さい。

11/13 −アドリブ−
今,「発表会」のための劇の練習をしています。何回か繰り返していると,段々アドリブも出てくるようになってきます。先日は,峠で旅役者が弁当を食べる場面で,いつの間にか一人の子が携帯を開く真似をして,弁当屋に注文しているのです。そんなことはシナリオには書いてありません。セリフが無い時の動きこそ気をつけるようにとは指導しているのですが,ここまでくるとちょっと心配になってきます。しかし,ふざけすぎと注意されることを覚悟でできるだけ伸び伸びとやらせてみようと思っています。

11/14 −水溶液−
6年生の理科で「水溶液の性質」を学習します。先日は水溶液には臭いのあるものとないものがあることを確かめたり,固体や気体が溶けているものがあることを確かめていました。その中で「うすい塩酸」「アンモニア水」は強いにおいがするが,「食塩水」「石灰水」「炭酸水」などはにおいがしない,ということを確かめようとしていたところ,「食塩水」のところで子どもの一人が「塩のにおいがする。」と言いました。それが周りの子に影響を与えたようで,「うん,海のにおいがする。」と言い始めました。ここの答えとしては「においがしない」と押さえておかなくてはいけません。「え〜,うーん・・・。」と困ってしまいました。

11/15 −塩のにおい−
理科ノートに各水溶液のにおいを記録していきます。食塩水の欄は,においは「しない」と当然書くようになるだろうと思っていたところ,「塩のにおい」「海のにおい」との反応になってしまいました。きっと思い込みが働いたのだろうとは思ったのですが,それを否定する訳にはいきません。結局その時は「ちょっとそこは空けておいて。」としか言えませんでした。次の授業の時までにどうすればいいか考えることにしました。

11/16 −実験−
「ちょっと空けておいて」と言った日,後から反省していました。その通り記録させれば良かったと。そこで,次の授業の時,食塩水のにおいはどうだったかなと聞くと,「塩のにおいがした。」「海のにおいがした。」と言うので,「はい,じゃあそう書きましょう。ただその時のしおは,塩より,潮とした方がいいね。だからそこは潮の香りと書いておきましょう。」と一応認めた形にしておきました。しかし,このままでは科学的に気になるので,この後,試験管に水と食塩水を入れたものを数本用意し,名前は表示せずににおいを調べさせて,においがはっきり分からないことは確認しておきました。以前は石灰水が白くにごることで二酸化炭素の判定をする実験をしている時,二酸化炭素ではない気体の時も石灰水が白くにごって困ったことがありました。その時の原因は,石灰水を入れた集気瓶の内側が汚れていてそれで石灰水を振った時に濁ってしまったというお粗末なものでした。実験には細心の注意が必要です!?

11/17 −森村誠一−
夏休みにふと手に取ったのが森村誠一の本だったのが運の尽きでした。もう止められません。未だに次々と一度読んだ本までまた読み返しています。朝起きては読み,帰ってきては読み,寝る前に読み,本屋で新しく買ってくると,以前読んだ本が2冊も交ざっている始末。しかし,このおかげで近頃はどんな待ち時間があっても少しも退屈しません。あっという間に時間が過ぎてしまいます。その原因はきっと彼の文章が,例えば次のような一節の反対側にあるからだろうと思います。こんなところから,多分に作者自身の意識が窺えておもしろいところです。つい引き込まれる展開,は私たちの仕事にも必要な部分だと思います。

11/18 −親指−
先日大きな研究会(行ってみて分かったのですが)に行ってきました。ここも授業2時間と児童発表,講演のみでした。1学年100名以上の学校でしたが,どの子もすばらしい学習意欲を持った集団でした。大きな体育館がいっぱいになるほどの参加者から察するにどうも有名な学校のようでした。大変参考になる研修でした。ただ一つだけ気になったのは,子どもたちの鉛筆の持ち方です。クラスの中で3分の1ほどの子が親指の先で鉛筆を持たずにぐにゅっと伸ばして親指の根元で持っているのです。

11/19 −合理性−
以前,小学校で1年間教えたクラスがそのまま中学に進学し,小中交流で参観に行った時,鉛筆の持ち方を見ると,約50%の定着率でした。その場で50%の定着だった反省を発言し,中学ではそういう指導はしないのか尋ねました。すると,他の小学校の参加者から「いちいち持ち方なんて。」という意見と,その中学の校長先生から「パソコン入力でキーを打つ正しい指使いを最初に身につけるとその後の速さが違ってくるように,鉛筆の持ち方にも合理性があるはず。」という対照的な意見が聞かれたことがありました。

11/20 −基本−
パソコンの学習を始めるときは,いつもキーに置く指の位置から教えます。そしてまずローマ字打ちで「あいうえお」をそれぞれ決まった指で押さえる練習を何度も繰り返します。その後キーを見ずに画面だけを見ながら確実に「あいうえお」が打てるかどうかテストしていきます。キーボードに置いた手の上に目隠しの布を置くこともあります。こうして順に全てのひらがながキーを見ずに正しい指使いで打てるように練習していきます。ここまでできるようになると,後の様々なパソコン学習はとても楽になります。これと同じように,鉛筆の持ち方にも字がくずれにくく,長時間書いても指が疲れにくい方法があるはずです。昔からの持ち方にはやはりそれなりの合理性があるはずです。この基本中の基本を身につけさせるような仕事が小学校ではまず必要ではないかと思います。

11/21 −大根−
9月20日にこの欄で発芽した学級園の大根の写真を紹介しました。その大根が2ヶ月経ってここまで育ちました。今では立派にトイレから見える冬の学級園の緑化に貢献しています。今年で3年目ですが,ここでは大根は食べる観葉植物としての存在になっています

11/22 −ノートパソコン−
最近ノートパソコンを買いました。本当はDVDマルチ付のものにしたかったのですが・・・。それでも,ペンティアム4の1.5GHz,60GB,USB2.0×4と頑張りました。やはりUSB2.0はいいですね。あのIEEE1394よりも速くて,従来のUSB1.1の40倍の速さです。これにAC電源不要のポータブルHD(USB2.0対応)を組み合わせると職場のPCと自分のPCとの間で,写真の入ったプレゼン用ファイルなど大きなデータもあっと言う間にコピーできます。またPCを替える時に一気にHD内のデータを移動できます。

11/24 −イメージ(1)−「しみじみ」
「先生しみじみしてる。」女の子が私を見て笑いながら言いました。先週の金曜日,2時間目の授業が始まるチャイムが鳴った時のことです。私はその時,教室に持って行っていた水筒のお茶を飲んでいただけです。が,飲んでいる途中で授業始まりのチャイムが鳴ってしまいました。一度は飲みかけのお茶を置いてイスから立ちかけたのですが,全部飲んでからにしようと思い直しました。それもまるで縁側でおじいさんがゆっくりお茶を味わっているように。

11/25 −イメージ(2)−「抵抗」
こんなことは年に一度あるかないかです。私は意識的にこの時わざとゆっくりしました。普段は始業のチャイムに合わせて授業を始め,授業終わりのチャイムと同時かそれより前に終わりを告げるので,こういうことが一度あるぐらいでは子どもたちから文句は出ません。というより,この女の子のように珍しがって笑ってくれます。これは私の小さな演出で,どうにかして教室にのどかで落ち着いた雰囲気を創り出したいという思いが働いています。自分だったら,子どもの時どんな先生に出会いたいかと考えてみて,それに対して自分の役不足を痛感してのささやかな自分への抵抗でもあります。

11/26 −イメージ(3)−「感情」
機械を相手にするのだったら,正確に同じ事を熱心に繰り返すほどに効果をあげます。しかし感情を持つ「人」を相手にする場合は,熱心であるだけでは通じないこともあります。それどころか独りよがりの熱心さが逆効果になることもあります。今まで多くの失敗を積み重ねて分かってきたことです。人は理屈の上では大切だと分かることでも,それを受け入れるかどうかは感情の面が左右します。中学では教科の成績がその担当教師との人間関係に左右されることがあるというのはよく言われる話です。

11/27 −イメージ(4)−「右脳」
感じとしては,クラスの約5分の4にあたる子はどんな教師であろうと,熱心に本気で教えていさえすれば効果があるように思います。しかし,5分の1の子にとっては,私のような,学校の中でしか生活してこなかった世間知らずの平凡な教師を感覚的に受けつけられないところがあるのではないかと思っています。左脳では認めても右脳では反応してもらえないという感じです。

11/28 −イメージ(5)−「キャラクター」
自分のキャラクターに自信のある人は素のままの自分を堂々と出して日々体当たりで仕事にぶつかっていけばいいのでしょう。時には劇画チックな教師がドキュメンタリーで紹介されることもあります。しかし自分をそのまま出して十分魅力があるとは思えない者は,日々自分の枠との戦いをしながら,少しでも子どもにとってより上質な教育条件であろうとして,もがいていかなければなりません。

11/29 −イメージ(6)−「不遜」
同じ「人の前に立つ」でも,映画やテレビの俳優なら思い切り自分の個性を出して,できるだけ多くの人の心をつかむように努力していけばいいのでしょうが,「子どもの教育」を行うために前に立つ者は「できるだけ多くの」では失格になるでしょう。やはりどの子に対しても,その心に受け入れられる努力をしていくのは当然のことです。その時,自分はいつも自分の個性を大事にして自分流に熱心に子どもにぶつかっていくんだなんていうのは,一方通行の危険性を感じ,不遜な態度ではなかったかと昔の自分を今反省しているところです。自分に対するイメージが自分の中からしか見えていなかったように思います。

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