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HAPPY、HAPPY、LOVELY ! − fight ! −





ひんやりと道場の床が気持ちいい。
木々に囲まれた道場に電気を消して寝転んでいる。

月明かりの淡い闇に意識が沈んだ。

ザワザワと葉擦れの音が届く。

森の中。

かさり、かさり、踏音。


「……う」

「竜」


呼ぶ声。


「竜?」



     「……じ…ちゃ…?…」



自分の声に驚いて、ガバッと起き上がった。
「シズカ」
夜闇の中、俺を見下ろしているのは、シズカだった。
腕時計を見る。
真夜中だ。
「風邪引くぞ」
「大丈夫だろ」
夏だし。
「しょっちゅう ここで寝てるな」
「そうか?」
なんか、居心地いいんだよな。
シャワーを浴びて身体の熱を収めているうちに時折ここで寝てしまって、 朝、伊集院に起こされる。


『 竜くん、起きて 』

       『 竜 、 起きろ 』


『 竜くん 』

       『 竜 』


誰かに朝 起こされるなんて、何年ぶりだったんだろう。

「シズカは何やってんだよ」
「俺? んー?」
シズカが首を傾げる。
「…さあ?」
自分で『さあ?』ってコトはないだろ。

……まぁ ちょうど いいや。

「ちょっと付き合えよ、っと!」
俺はシズカに向かって蹴り上げた。
間一髪でシズカが避ける。

「お前も暴れてぇんだろ?」

俺が言うと、シズカは少し驚いた顔をして、
「…そーだな」
ニヤリと笑った。

シズカの拳をガードする。
続けざまの蹴りを避けて距離を取った。
「寝起きで動きが鈍いな」
「は、お前こそ最近サボってんだろ」
隙だらけなんだよ!と脚を繰り出す。
ちっ。
防御しやがった。
「なんかノッて来た♪」
軽い口調とは反対にシズカの眼が集中する。
「俺もだよ」
顔を見合わせて、お互いニヤッと笑った。

お互いの息遣いと、風、森の音。
月明かりの暗闇なのに、いつもより見通せる気がする。

…なんでだろう。
再会してから何度も組み手をしてるのに。

なんか、すごく懐かしい気がする。





空気が澄んでいる。






「…ゅうくん」
眩しい。

「竜くん」
伊集院?

「兄さま まで!」
腰に手を当てて、眠り込んでいた俺達を伊集院が見下ろしている。
その後ろからは、朝日が差し込んでいた。
「朝…」
ゴシゴシと目を擦った。
そのまま道場で眠り込んでしまったらしい。
「もう、こんなところで寝ちゃ駄目だって何度も言ってるのに!」
「まぁいいじゃん」
なんかすげぇ熟睡したなぁ。
時間にしたら そんなに眠ってはいなかったが、妙にスッキリしていた。
「急がないと学校 間に合いませんよ?」
「あー…」
そうだ、夏期講習だ。
立ち上がって首を回す。
コキ、と一つ いい音がした。

身体が軽い。

ほら、兄さまも、とシズカを起こす伊集院の腕を掴む。
「…竜くん?」
驚いて大きく開いた眼を近くに、思わず笑った。
未だに俺が触ると緊張するのな。

「あのさ」

「負ける気がしねぇ」

「いま、ぜんぜん」

なんだろう、なんか、もう何も、

「竜くん?」
「すげぇ、勝負 楽しみ」
額を合わせて、ク、と笑う。
「りゅ、竜くん」
動揺した声に顔を上げて、真っ赤になった伊集院の頭をくしゃりと混ぜた。



「覚悟しとけ」








つづく













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