CD気まま聴き・・・



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その13
 
SAHIB SHIHAB / SAHIB'S JAZZ PARTY
この1枚につき、今まで如何にコレクター泣かせであったか、如何にこれを所有するコレクターが暴利ふるってきたか、様々な怨念の暁にあっけなくも再登場したこのアイテムが市場に出回ったことに拍手喝采を禁じ得ない。
 振り返ること5年。初めて聴いた時の衝撃とその後の右往左往。5年とはいかにも短く感じるが、実感すること何十年に匹敵する。それほど恋い焦がれてやっと手中に得たアルバムであることを信じて欲しい。
 しかし当初アレックス・リールのドラムスの魅力に取り憑かれて探し、澤野盤にあるTHE DANISH RADIO JAZZ GROUPにその片々でもありはしないかと聴き直したが報われず、その後入手したSENTIMENTSにも敢えなく忘失。
 結局このタイトル以外に長年の思いを満たすものはなかったわけである。
 しかしながら、僕の記憶は当初の感動とやっと手にして得たものとは大いに違っていた。この盤の魅力を牽引するのははアレックス・リールにあらずニールス・ヘニング・0・ペデルセンにありということだ。何故だ、この違いは。
云うまでもなく聴いたオーディオの違いである。
 残念ながら僕が初めて聴いたのが僕のジャズ喫茶の師匠のオーディオであり、云うも憚れるが残念ながらそれは僕の好みではなかった。かといって子細にそのディテールを云々することも出来ないが、大雑把に言っても僕が鳴らしていた装置とは、低音の出方に差異があったことは間違いない。(そんなことは店が永持ちするかどうかとは全く関係がないのだが)

 ともかくペデルセンの剛胆なベースにまみれてシハブのとフルートやバスクラあるいは他の個人芸に堪能するというのがこの盤の愉しみ方だろうか。その一つにアレックス・リールのドラムスに注目するのも当て外れではない。
 この盤は今まで感じてきたシハブのアンサンブルの妙に堪能するという類はCONVERSASHON PART 1〜3までの部分がそれであり、他はどちらかというと従来のバトンタッチの個人芸がメインである。CONVERSATIONにおいて、ニールス・ヘニングのベースランニングとアレックス・リールのドラムの刺激的なシンバリングは一言添えておこう。
 
SAHIB SHIHAB-fl,ss,bs ALLAN BOTSCHINSKY-fh OLE MOLIN-g NEILES HENNING ORSTED PEDERSEN-b ALEX RIEL-ds BJARNE ROSTVOLD-ds
1963.10.3

DEBUT
1.4070 BLUES 2.CHARADE 3.CONVERSATION PART 1 4.CONVERSATION PART 2 5.AONVERSATION PART 3 6.BILLY BOY 7.NOT YET 8.SOMEDAY MY PRINCE WILL COME
白崎彩子/EXISTENCE
小股の切れ上がった颯爽としたところもあり、楚々としたお嬢様風にもなり、かと思えば大胆に・・・とかく女性は魔物である・・・なんてね。ピアノで表現する彼女の「存在=EXISTENCE」の摩訶不思議さを感ぜざるをえない。
 AIRGINで表現するスピード感とジャイアント・ステップス=大闊歩で度肝を抜くところと、しなやかなさを披露し、オリジナルBE BOPPERSでもしなやかでもあり大胆さもあるという両面をみせ、フーガ風のLENNI'S PENNIESでは勝ち気な側面を、EMBRACEABLE YOUの心の深部に伝わる滋味、NOT YETではそれまでの端麗さを裏切って泥臭くなってもみる。FAR AWAYでは母性さえ感じさせ、EXISTENCEにいたっては、一掴みにできない存在の複雑さをここぞとばかりにアピールする。
 いったいこの人の正体は?いやいや、人間誰しも女性に限らず多面的であるのだが、それをピアノで表現出来るということが希有なのだ。白崎彩子というピアノから垣間見る存在をウォッチングしていると、何と人間とは多重な存在であることを、改めて思い知らされる。それだけに「怖い」とさえ思った。
 ESTATEの表現力に空恐ろしささえ感じる。この曲の持つ「哀しさ」を聴くもの深いところに伝えてくる技量。心に描くものを音にする時に否応なく現れる素質、それまで彼女が経てきた人生のプロセスに積もった芥をかみしめる感性。それらが秘められ、余分なものをそぎ落として音に籠め、「心(しん)よりいでくる」静謐感。いやはや、畏れ入る。
 随伴するベイシストのMARCO PANASCIAが随所で披露するソロなども聴き所だ。LEWIS NASHのしなやかなドラミングはEXISTANCEで顕著である。

 

AYAKO SHIRASAKI:p MARCO PANASCIA:b LEWIS NASH:ds
Feb 8.2003
WHAT'S NEW
1.AIRGIN 2.BE BOPPERS 3.LENNIE'S PENNIES4.EMBRACEABLE YOU 5.NOT YET 6.FAR AWAY7.EXISTENCE 8.ESTATE 8.PERFECT SUNDAY10.FALLING LEAVES

KENNY BARRON / LIVE AT BRADLEY'S
K.バロンのピアノは、まだ僕には確立したイメージがない。ベテランの域に達している彼のピアノを他と区別出来ないのだから、お粗末である。
 でも、このLIVE AT BRADLEYが例えば格闘技的なWANTON SPRITやENJA盤のSCRATCH等と比べて,如何にも「普段着」ぽいという気がしている。

 格闘技的にトリオが向き合うならそれも良いし、リラックスムードで穏やかに絡み合うというのも良い。
 しかし、どうも現代ピアノ・トリオにはムードもスタイルもごちゃ混ぜの傾向があるようで、最近そういうのが良いのだか悪いのだかわからなくなって来た。器用貧乏というが、何でも出来ますはかえって「残念!」な結果を生む。
 
 筆致が一貫してなくては個性が掴めない・・・と返す刀が我が身に降りかかる思いだが、独特の個性が僕らを「♪アドークテッドかも・・・」と思わせる何かが欲しい。アドークテッドになりやすいと言えば、ビリー・ホリディの歌とかエリック・ドルフィーのバスクラやアルトとか、いやそんなに毒性の強いものでなくても良い。「・・・かも」で良い。かも、で。

 座り心地の良い椅子に座っているようなゆったりとした出だしだが、こういう気分にさせることが出来るバロンとはやはり懐の深いピアニストだと実感する。優れたバイプレイヤーとして長年やってきて様々なスタイルをこなし、果てに熟成された味というべきだろう。

 スウィングし緩やかに絡むR.ドラモンドのベースとB.ライリーのブラシが心地よいドラムがバロンのピアノと解け合う冒頭曲が終わると一転して駆け足なマイルスのSOLARとなる。気合いの籠もった演奏だけれど、どこか余裕があって丁々発止を互いに愉しんでいる雰囲気が伝わってくる。
 
 さて、バロンが僕にとってアドークテッドになりやすいタイプだろうか?
 無個性の個性ということもあろうか?
KENNY BARRON-p BEN RILEY-ds RAY DROMMOND-b
Apr 3,4 1996
VERVE
1.EVERYBODY LOVES MY BABAY,BUT MY BABY DON'T LOVE NOBODY BUT ME 2.SOLAR 3.BLOON MOON 4.ALTER EGO 5.CANDISN SUNSET
SWEET JAZZ TRIO /VERY SWEDISHH
荒ぶる心なぞ最早毛ほども持ち合わせてないがそれでも染み渡り心を静めてくれるこのスウィート・ジャズトリオのアルバム。コルネットとギターにベースという組み合わせ。寂々と奏でる調べが今は良い。
 もの哀しいスウェーデンの古い民謡が懐かしく心打つ。北欧の地に伝えられた歌が蘇り、鍛錬された技の中に息づく。三人の音以上でもなく、それ以下でもない。寄り添った楽器の織りなす淡泊にして哀感籠もった演奏。素朴さが胸を打つのだ。北欧から届けられた心の籠もったプレゼントに、言葉もなく染みる感謝の気持ち。そんな趣である。
 荒んだトゲトゲした気持ちを柔らかくしてくれるこのアルバムは、冬のセーターの温もりである。編まれた毛糸から伝わる優しさそのものだ。冷えた冬の夜空の凛とした星を見上げ、聞こえてくる短い演奏の数々。どれも心乱さない静かさを湛えている。穏やかでありながら選ばれた音色と卓越した技は燻し銀である。ずっとこのまま浸っていたいささやかな時間。心は故郷に帰って懐かしい温もりに抱かれていたくなる。父の煙草の脂臭さや母の作った手料理の匂い。子ども頃の思い出のブリキの玩具。心躍らせたクリスマスの華やいだ家庭の団欒。最早、戻ってはこない郷愁がここにある。
 北欧が何故か故郷に思える一枚だ。

HANS BACKENroth:b LASSE TORNQVIST:cr MATS LARSSON:g
2001
SPICE OF LIFE

1.ACE VARMELAND DU SKONA 2.LIFE CAN BE SO SWEET 3.BYSSEN LULL
4.VA DA DU 5.JAG VET EN DEJLIG ROSA 6.ELVAN 7.DANNY'S DREAM
8.DET GATFULLA FOLKET 9.UNDERBART AR KORT10.VEM KAN SEGLA FORUTAN VIND 11.SODERMALM 12.SOMLIGA GAR I TRASIGA SKR 13.JILL 14.KRISTALLEN DEN FINA15.ELIN I HAGEN
FIVE CORNERS/DMITRI KOLESNIK
 煙で燻すようなまさしくジャズ臭を醸し出すミュート・トランペットにリーダーでベイシストのディミトリ・コレニスクのジャズ黄金期を彷彿とするベース、更にエリック・アレクサンダーのテナーとシングルトーンで楚々と弾くピアノでバップチューンを一捻りというあたりがセールスポイントのアルバム。なにせ美脚のクール・ストラティンが現代風に映し出されたジャケットが何より。事ほど左様に往年のハードバップを現代に移し替えたアルバムと言えよう。
 入手して約一年、何が面白い・・・と投げ捨てていた盤だった。今更ハードバップ?アレクサンダー憎し(これには曰く言い難い思いがある)・・・という思いが尽きた今、聴き直してみると、そう捨てたモンじゃない。
 僕は10曲目、このアルバムの最後が一番好きだ。エリック・アレクサンダーのALEXDER THE GREATを彷彿とする格好良さ。ずんずんと迫って来るパワー。単調なリズムをバックに縦横にインプロバイズするホーンやピアノ。案外こういうのに弱い自分を発見・・・というところ。
ERIC ALEXANDER-ts JIM RONTONDI,ALEX SIPIAGIN--tp,fh ANDREI KONDAKOV-pDMITRI KOLESNIK-b LENNIE WHITE-ds
May 2006
CHALLENGE
1.FIVE CORNERS 2.IN MONK'S MOOD 3.BITTER CHOCOLATE 4.BLUES FOR DAD 5.MASHA'S LULLABY 6.LONG NIGHTS WITHOUT YOU 7.SONG FOR KENNY 8.ANIUTA 9.GOODBYE 10.RUSSIAN CARAVAN
SCOLOHOFO/ OH !
 珍妙なユニット名、それぞれのファミリーネイムの頭をそろえて並べたネーミングだ。ツアーの為に組まれたバンドらしい。意外にもYOUTUBEで拾ってみると1990年代から続けているユニットらしいが、記録的には2002年にその活動が集中している。4人中3人がマイルス・バンドの出。そこらが微妙に臭ってくる。ジョン・スコのギターがアル・フォスターのドラミングが嫌でもそれを嗅ぐわせてくる。これだけのビッグ・ネームが揃って”いやらしい”演奏をするかと思えばさにあらず。通好みの渋い演奏に徹している。
 当初ラヴァーノ目当てに買い求めたが、今聴き直してみるとラヴァーノの熱くうねるテナーばかりでなくジョン・スコの冷めたギターワークとの寒暖それにフォースターのここぞという打擲が心地よい。

JOE LOVANO-ts,ss JOHN SCOFIELD-g DAVE HOLLAND-b AL FOSTER-ds
July 30-31 2002
BLUE NOTE
1.OH ! 2.RIGHT ABOUT NOW 3.THE WINDNG WAY 4.BITTERSWEET 5.SHORTER FORM 6.NEW AMSTERDAM 7.IN YOUR ARMS 8.THE DAWN OF TIME 9.BRANDYN 10 FACES 11.OH ! I SEE
COOKIN' /MILES DAVIS
 富良野に近い美瑛という町で水彩の「ジャズ画」を描いている人と巡り会った。
彼と話しているいるうちに、サン・テグジェペリの絵を思い描いた。代表作「星の王子さま」。ウィンドーごしに見えるバーの陰影が、テグジェペリの絵と重なった。このCOOKIN'をモジュールした絵もある。ジャケット・デザインが墨字で描いたように見えて最近墨字に凝っているので更に興味もわいた。
淡泊なガーランドのピアノにもマッチしたY氏の水彩。チェンバースのエッチングのようなゴツゴツしたペース。無愛想なコルトレーンのテナー。そしてテグジェペリの夢を音にしたようなマイルスのトランペット。
一枚の絵は一遍の詩なのだと思った瞬間であった。
 マイルスはマイルスであるということが、最近なんとなくわかってきた。

 そしてこれは56年のマイルスである。
いつを出発点としてマイスルとなったかは、定かではないが彼の音楽が時代を区切って変化し、その時代事に彼ならではのアルバムを残していった。決して後戻りも、リニューアルもせず、その時にしか残せなかったものを残して来た。
 象徴であり、エポック・メーカーであった。それ以外はあり得なかった。だからこそ、マイルスなのだ。
 彼は聴く者がどっちを向いていようが、お構いなしだった。俺の音楽はこれだと示しただけである。そして、常に鮮烈な印象を与え続けた。
 この時代のマイルスに愛着を持つが、それは聴く者の勝手でしかない。
 彼は共に演奏するものに示唆を与えたが、演奏の自由を束縛はしなかった。しかし、自然と彼の手中に収められていた。だから、このコンボもマイルスそのものなのである。長尺のBLUES BY FIVEを聴けば、いかに彼らが自由にやっているかを感じるだろう。マイルスの手から離れて、思う存分弾いて、吹いているかのようだ。しかし、そこにマイルスはいたのである。 
MILES DAVIS:tp JOHN COLTRANE:ts RED GARLAND :p PAUL CHAMBERS:bPHILLY JOE JONES:ds
Oct 26.1956
PRESTIGE
 1.MY FUNNY VALENTINE 2.BLUES BY FIVE 3.AIRGIN 4.TUNE UP / WHEN LIGHTS ARE LOW
BROTHERMAN IN THE FATHERLAND/ROLAND KIRK
 蜷局(とぐろ)を巻く怒濤のホーン・アクションと泣かせる歌心に毎度心服せずにいられないラサーンのアルバムのなかでも、特にこれは絶頂と言う気がしている。もし、ラサーンの愛聴盤を挙げろといわれたら、今までのフェバリットディスクを全部引っ込めて「これ!」といって出す。
 単なる管楽器が彼の口にかかると倍にも3倍にも厚みと強さと音の彩色度を増し、限界知らずのテクニックが彼のスピリットを天空に舞い上がる。勿論複数楽器をくわえ同時に鳴らすという技芸?がそういう厚みや彩色感を表現しうるのは当然とも言えるが、テクニックとスピリッチュアルな音楽性がこうまで高みにあがると余人の及ばぬ先に行ってしまっている。
たとえドルフィー、ミンガス、オーネット・コールマンと相次いで腹に押し込まれるより、腸のなかを全速力で尽きぬけられたかのようなもの凄さに「うっ!!」という声さえ挙げる暇を与えないストレートに腹にドスンと来て満たされるものがある。
 コルトレーン縁の曲、LIKE SONNY,LASH LIFE,BLUE TRAINと3曲も演奏しているが、LIKE SONNYやBLUE TRAINは圧倒的。特にBLUE TRAINはアルバム最後に収録されているが、それまでの演奏で腹一杯になっているのに、トドメをさすような怒濤の襲撃。末尾まで存分に愉しませてくれる。
RAHASAN ROLAND KIRK-ts,fl,manzero,strich,etc RON BURTON-p HENRY PETE PEARSON MATTATHIAS-b RICHIE GOLDBERG-ds JO HABAO TXIDOR-perc
March 3,1972 HUMBURG
HYENA
1.INTRO/LIKE SONNY 2.MAKE IT WITH YOU 3.RASAN'S SPRIT 4.MY GIRL 5.SEASONS/SERENADE TO A CHCKOO 6.PDAL UP 7.LASH LIFE 8.AFRO BLUE 9.BLUE TRANE

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