獣医療における輸血医療の現状
近年、獣医療は進歩を遂げ、様々な病気を診断する事ができるようになり、多くの種類の医薬品、動物用医薬品が流通し、数多くの動物たちの命を救えるようになってきました。
しかし、貧血を患っている動物たちの治療に必要な輸血用血液は、人医療で存在する血液バンクのようなシステムは無く、多くの動物たちが輸血を受ける事が出来ずに、苦しんでおります。現状では、当院で用意できる血液のみでは対応することが困難な状況にあります。
現在は、飼主様にお知り合いに声をかけて頂き、お友達犬、お友達猫にご協力を頂ける場合には、輸血医療を行う事が出来ております。しかし、それには限界があり、供血を承諾してくれるお友達を探す事が出来ずに、輸血医療を実施する事が出来ない動物たちがたくさんいます。
献血ドナー登録のお願い
その様な現状を打開すべく、献血にご協力をして頂ける犬猫を募集させていただきます。献血を安全に実施しドナー様のご負担を最小限に抑えるため、 献血ドナー登録していただける要項を設けさせて頂きました。この募集要項は、日本小動物血液療法研究会様が提唱しております献血ガイドラインを基に、当院で定めさせて頂きました。ドナー登録ご希望の方は、当院まで(Tel:03-3921-4111)ご連絡をお願いいたします。当院で、ドナー登録リストを作成し、有事の際にお声がけをさせて頂きます。その際に、もし、日程等各種条件が合いましたら、献血のご協力をお願いいたします。
年齢 | 満1歳~8歳程度 |
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体重 | 犬10kg以上、猫4kg以上が望ましい |
性別 | 妊娠出産歴のない避妊手術済みの雌 交配予定のない雄(去勢、未去勢は問わない) |
生活環境 | 犬:屋内外生活は問わない 猫:完全屋内生活(出生環境は問わない) |
必要な予防 | 犬:5種以上の混合ワクチンを一年以内に接種、フィラリア予防 猫:3種以上の混合ワクチンを1年以内に接種 |
次に当てはまる場合には ドナー登録は出来ません。 |
海外渡航歴がある、輸血歴がある、妊娠出産歴がある 慢性疾患に罹患している、感染症に感染している 重度の皮膚疾患に罹患している、アレルギー体質である |
献血にご協力いただく際の実際の流れ
ドナー登録をして頂いた場合に、どの様な流れで、供血をさせて頂く事になるのか、記載させて頂きます。
- 貧血を患っている動物の受診、もしくは、出血を伴う事が予想される手術を実施する必要のある動物が受診し、獣医師が輸血医療の実施が必要と判断する。
- 当院で用意可能な血液の投与を検討。可能な場合は、輸血適合試験を実施。輸血医療が実施できなかった場合には、3へ。
- 飼主様のお知り合いのお友達犬、お友達猫の献血協力を得られるかを検討。可能な場合は、輸血適合試験を実施。輸血医療が実施できなかった場合には、4へ。
- 当院から、献血ドナー登録を頂いている方にご連絡をさせて頂き、当日、ないし近日中の献血のご協力を要請。(もちろん、献血を強制するわけではありません。日程等、各種条件が一致し、ご協力を頂ける場合には、5へ。最大限、献血をして頂けますドナーの飼主様のご都合に合わせて、ご来院日時をご相談させて頂きます。
- お約束の日時にご来院を頂き、最初に少量の採血を行わせて頂き、血液検査にて健康診断を行います。健康体で、献血をして頂く事がドナー様の負担にならないかどうかを確認します。健康状態に異常がない場合には、先程採血した血液を用いて、レシピエンド動物(輸血を受ける)の血液との間で、血液交差反応試験(ドナーとレシピエントの血液が、適合するかどうかを確認する検査法)を実施し、適合した場合には、6へ。残念ながら適合しなかった場合には、健康診断(血液検査)結果をお渡しさせていただき、ご帰宅いただきます。(当然、費用は当院で負担いたします。)
- 献血用の採血を実施させて頂きます。短時間で終わらせ、負担を最小限に抑えるため太い血管(頸静脈)から、採血をさせて頂きます。万が一、採血時に動いてしまい安全に採血を行えない場合には、獣医師の判断で、軽い鎮静をかけさせて頂く事もあります。その場合には、鎮静前に飼主様にご連絡をさせて頂きます。
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献血終了後、献血量に応じて皮下補液をさせて頂き、献血の負担を軽減させて頂きます。
不慮の事故や病気で貧血に陥って苦しんでいる動物たちにとって、輸血治療は小さな命の助かる可能性を広げてくれる唯一無二の治療法です。輸血を必要とするときに頼れる「血液の寄付」というペット同士の助け合いの為、献血ドナー登録へのご協力をお願いします。