練馬区狂犬病集合注射は中止となりました。
新型コロナウイルスの影響で、延期されておりました狂犬病集合注射は、今年度は中止と判断されました。詳しくは、練馬区保健所のHPをご覧ください。
集合注射は中止となりましたが、狂犬病の予防接種を飼い犬に受けさせることは、狂犬病予防法で定められた、飼主様に課せられた義務となっております。狂犬病予防注射は、当院で常時行えますので、ご来院ください。
最近は、“狂犬病は日本にはないから、予防接種を受けさせなくても、いいんじゃない?”とか、“むしろ受けさせないほうが良い!!”という話を、ネット上をふくめ、眼にしたり、耳にすることが多くあります。
しかし、本当にそうでしょうか?
狂犬病について、記載します。
5月22日、愛知県でフィリピンから入国後に狂犬病を発症した患者様(人間)が報道されました。狂犬病は、人間からは感染することは無いのですが、世界中では、今だに年間5万人以上の方が亡くなられているとても怖い感染症です。発症してしまった場合の致死率は、100%と言われています。
我が国での動物における狂犬病の発生は1957年に猫で発生したのを最後に認められておりません。かつては日本でも、犬、猫、人で猛威を振るっていた時代がありました。しかし、予防接種を義務化し、野良犬対策を行い、犬における予防接種の接種率を100%に限りなく近づけたことで、たった7年間で我が国から狂犬病を根絶する事に成功しました。
しかし、狂犬病は、日本、英国、オーストラリア、ニュージーランド、フィジー、グアム、ハワイなど、わずか11か国を除いた、全世界の国々で今だに猛威を振るっております。その為、いつ何時、日本国内で動物の狂犬病が発症しても、おかしくないと考えます。例えば、寄港する外国船に犬が乗っている事もあるらしく、検疫を受けずに港をうろつく事があったり、海外から来たコンテナの中に犬が紛れて入ってくることもあると聞きます。もしも、その犬が、狂犬病ウイルスを持っていたら?とても、恐ろしい話です。
現在の日本国内における犬の狂犬病接種率は、残念ながら50%程度まで低下しております。危機的な状況です。この様な状況で、国内に動物の狂犬病が発生してしまったら、蔓延を防ぐことは到底出来ない集団免疫率です。
新型コロナのニュースで耳にするようになった集団免疫という言葉ですが、狂犬病の蔓延を防ぐには、少なくとも70%以上(理想は80%以上)の集団免疫率を保たなくてはなりません。その為、“うちの子だけは予防接種を受けなくてもいいや“ではなく、“うちの子だけでも予防接種を受けさせなきゃ”と考えて頂き、万が一に備える必要が間違いなくあると思います。
その証拠に、数年前に台湾で52年ぶりに動物(アナグマ)での狂犬病の発生が確認されました。この狂犬病の発生以前は台湾も、日本と同じ狂犬病清浄国でした。台湾は、日本と同じ島国で50年以上狂犬病の発生がありませんでしたが、それにも関わらず狂犬病が発生してしまいました。
その為、同様に日本での動物における狂犬病がいつ何時発生するか分からない状況だと思います。万が一、狂犬病が発生してしまってからでは、間に合いません。なぜなら、残念ながら日本国内の狂犬病ワクチン年間製造数は、現在の飼育頭数よりも少ないからです。なので、現在のマスク、アルコールと同様に、有事の際にはワクチンは間違いなく不足します。
事前の準備(予防接種)が、人、愛犬ひいては、社会を救う一手に繋がるものと考えます。