ALS患者の尊 厳





2002年 ALSシンポジュ-ム

2002-- シンポジュ-ム
  1. 緩和ケア -- この項目では、ALS患者に対する精神的なケアを支えるために、どのタイミング(人工呼吸器の有無、胃瘻の導
             入)で、何をすればいいかが載っています。
  2. 人生の終末 -- この項目は、終末を迎えるにあたってどの様な選択肢を取るか。それに於ける決断とは何か、ALS患者の自
             立性を考え、十分な情報を与えて終末を迎える。
  3. 言語機能 -- この項目では、言語機能の低下で失語症の症状が出ると書いてあるが、それがほんとかどうか理解出来ない点
             が多い。
  4. 経管栄養 -- この項目は、経管栄養を必要とする人には、とても重要な情報になると思います。



The 緩和ケア

治療不可能な疾患を抱える患者に対する積極的なケアを目的とした者で、心理的、社会的、精神的、痛み 痺れ、その他の症状が問題のコントロールが主なものである。
  またその最終的な目的は、『患者及びその家族にとって可能な限り、最高の生活環境を達成できる。』
   特にALSのような進行性の神経疾患は、未だ有効な治療がないため、各症状の<緩和>が主なケアの方法となる。その為には、今までに無かった医療システムを、地域でのサービスと各医療機関との円滑な連携が必要とされる。   最も重要なポイントは“タイミング”であると指摘した。そのタイミングとは、医師が患者の身体的、社会的ニーズを予測すべきタイミングであり、また患者自身が取るべき治療の方法を決定するタイミングを指す。
  また治療に関する決定をサポートするものとして、予後判断の因子は非常に重要であるとし、発症年齢やALSスコアおよび肺活量の変化の速度、最初の症状が表れた時点から、最初に神経内科医の診断を受けた時点までの期間。

            

The 肺活量については

            
                  
  • 直立した状態で測定した肺活量は、より良好な予後判断の因子である。
  •               
  • 仰臥位状態での肺活量は、横隔膜の機能低下をより敏感に予測し得る。
  •               
  • 仰臥状態での肺活量は、呼吸機能症状と相関があり、横隔膜の異常な動きを示すものである。
  •             

      といった報告例が紹介された。
      また、肺活量が50%以下になってから6ヶ月後には、88%の患者が死を迎えていることや、血清中の塩化物量が疾病の後半5ヶ月中に急激に減少するという観測結果も挙げられ、呼吸機能をモニターすることは患者のみならず、医師自身の良きガイドにもなると指摘した。

        経腸的栄養法も、慎重かつ適切なタイミングでの決定を必要とするもので、その導入のための指標とし1999年に発表されたALSプラクティスパラメーターによるガイドラインが参照された。
        これによると、内視鏡的胃瘻造設術は嚥下障害が現れたら速やかにその導入が考慮されるべきで、最も安全で効果的な導入時期は肺活量が50%以下になる前である。この他にも、呼吸障害に伴う諸症状のコントロールおよび生存率を延長する目的で、肺活量が50%以下の患者に対するNIPPVの導入も推奨されていることが挙げられた。
         NIPPVについては、約半数近くの患者が耐性を示し、生存率も2ヶ月から15ヶ月に延長されたという最近の報告例が挙げられ、その有用性が改めて強調された。



The 人生の終末

人生の終末を迎えるに付いて

  • ALS患者がどの様な選択肢を取ることが出来るか?
  •                 
  • 人生の終末における決断とは何か?
  •                 
  • ALS患者の自律性とは何か?
  •                 
  • どの様にALS患者に十分な情報を与えることで、人生の終末でのケアを決断が出来るのか?

人生の終末にあたって、意思決定が為されるのだが、生命維持装置を付けるか井中の決断で終末のケアが変わってくる。患者自身どちらを望むかを決めないといけない。栄養不足、呼吸不全、に陥ったときの末期でのケアのタイミング、死を迎える場所を決めること決断しないといけない。人工呼吸器や経胃管栄養の使用によって生存率が改善されたことが知られており、これらは事前にその使用を計画することが可能である。それと前もってケアに対する計画を持ってない末期患者も >救出< することが出来る。

    
          

生命維持に関する治療を行うのか行わないのかの是非の患者側の態度。

  • 全く計画を持たない患者。(受動的)
  •                     
  • 治療を受け入れるための計画がある患者。
  •                     
  • 治療を受けないが計画のある患者。

また、?死ぬ権利?に関する認識も強い。『自殺幇助』 『尊厳死』 の合法化を求める人々の多くはALS 患者であることや、患者自身の関心が非常に高いといった現状がある。緩和ケアについても、ALS患者は人生の終末に対して、特に注意が要る神経疾患の1つである。
   これは、何が人生の終末におけるベストなケアであるか、医療従事者や介護者は、患者の人生の終末における意思決定を助けるために何ができるか、といった点に対する見解や、意思決定の際に参考とされている資料や支援団体を育てて行かないと駄目!

ここで、西洋医学における意思決定のモデルとは、患者の自律性を増進させることであり、人生の終末では、患者のニーズと希望を中心に決断が下されることが重要である。またこの時、可能な選択肢についての思慮深い、しかし真実に満ちた情報が与えられるべきであるとも強調された。



患者自身、またはその家族からの質問

                     
  • 重篤な心理的、社会的、または精神的な苦しみ
  •                  
  • 高用量の薬物を必要とするほどの痛み
  •                  
  • 経管栄養の導入
  •                  
  • 呼吸困難、呼吸亢進、肺活量が50%以下といった症状の顕在化
  •                  
  • 2ヵ所の身体部分での機能喪失
  •             
            

また、的確な決断を介助するためには患者との良好なコミュニケーションが望まれるが、そのための有効な手段として、 病状のみでなく、患者のあらゆる側面(心理的、社会的、精神的等)についての評価と診断患者のみでなく、その家族及び他の医療関係者(他科専門医、各種療法士、ソーシャルワーカー、在宅ケアおよびホスピス関係者等)との潤滑な意思伝達。 上記の各医療関係者の役割の明確な説明当面のケアおよび長期的な展望についての話し合い。
迅速な治療開始のための各症状の的確な診断 早期での生命維持手段についての議論 (これに関する決断がない場合は患者の望まない治療を引き起こすこととなる)機能低下判定のための試験の実施と、その意味するところの明確な説明などを挙げ、特に病状の進行に伴い人生の終末の段階が接近するに連れて、患者の生命維持手段に関する意向や決断を確認するとともに、ホスピスでのケアプランを作成することが望ましいと述べた:。

            ALS患者の人生の終末は、その臨床状態よりむしろ患者自身の判断による社会的サポートの程度や質、社会経済状態、およびムードに依存していることが示唆された。従って、患者が家族や社会から充分なサポートを得ているかどうかに留意するとともに、患者の持つ経済的障害をできる限り取り除く努力がなされるべきである



The 言語機能

運動ニューロン疾患における認知機能障害は、20世紀当初から報告されているにもかかわらず、近年まで臨床的には軽視されてきた。文献による最初の記述は1890年ごろから見られ、うつや苛立ち、感情の不安定さといった情緒の変化とともに貪欲さや猜疑的になるといった行動の変化および知的活動の劣化等が観察されている。言語機能に関しても、1900年代初頭に言語数の減少を始めとして、綴りのミスや名称の間違い、理解力の低下といった症状が観察されている。これらの諸症状は現在では前頭側頭型痴呆として知られるものである
  ここで初期の典型的な所見として、55才の患者のケースでまず人格の変化が見られ、次いで失語症を発し、6ヶ月後には運動ニューロン障害のほとんどの症状を呈し、中でも特に球症状が顕著であった、というものである。剖検にて、前頭側頭部の萎縮、グリオーシス、海綿状変化、舌下神経核での細胞消失等が確認されている
  患者の全てが名詞より動詞の処理能力により顕著な障害を呈している点を挙げ、脳の造語能力と理解力が影響されていることの証拠であると述べた。また、これらFTD を呈する患者に共通した病理学的所見として、前頭の眼窩部と内部、側頭前部、および基底核の萎縮や皮質からの神経細胞の消失、皮質の海綿状変化といったものが挙げられた。


The FTD

  • 痴呆を伴う運動ニューロン疾患患者の臨床例全てに、ユビキチン陽性封入体が確認されている。
  •                     
  • 運動ニューロン疾患を伴わないFTDの患者にもユビキチン陽性封入体が見られる。
  •                     
  • 痴呆を伴わない運動ニューロン疾患にもユビキチン陽性封入体が見られる。

といった観測事実が挙げられ、FTDとユビキチン陽性封入体との関連は臨床的に重要であると強調された。             
  FTDを伴う運動ニューロン疾患患者は、その急速な行動の変化が失語症とともに表れ、特に動詞の処理能力に障害が見られるのが特徴であり、また、全てのケースに、ユビキチン陽性封入体が確認されるわけではないが、痴呆を呈していない患者にも皮質の病理的変化が見られる。さらに、今後はこのユビキチン陽性封入体の痴呆の発症における役割の解明と、運動疾患における認知機能障害の詳しい特徴づけが必要とされる。
  作業療法に関する研究で、水中療法を45分間週に一度26週間施したところ、治療前は3人の補助が必要であった患者が単独で50m泳ぐことができた、という文献があったが、その研究の質は非常に低くエビデンスとはなりえない、と判断された。同様に理学療法についても、筋力や肺機能の改善に対する十分なエビデンスは得られなかった。しかしながら、スピーチセラピーに関しては、口蓋を上げる運動が構音障害に有効であったというエビデンスが得られた。

            

The 経管栄養

次に、RIG(Radiologically Inserted Gastrostomy)が呼吸機能の低下している患者にとって安全な経管栄養法であるとともに、PEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy:経皮的内視鏡的胃ろう造設術)と比較して生存率が2倍に改善されたという発表が紹介された。
  PEG(内視鏡的胃ろう術)のような経腸的栄養法は、嚥下障害や栄養失調がみられるALS患者のケアとして定着している。しかしながら呼吸機能障害を持つ患者や、肺活量が50%以下の患者にはリスクが大きく不適当である。
  一方、PRG(Pgicaercutaneous Radiological Gastrostomy:エックス線透視下での胃ろう術・・・RIGと同義語)は、PEGに代わる別法としてALS患者への適用例が知られている。 今回、中程度から重度の呼吸障害を呈するALS患者におけるPRGの安全性と効果を検討した。


2000年10月から2002年3月の間に、16名のALS患者に対しPRGを導入した。PRG群の肺活量は50%以下であった。また、比較対照として、2000年10月までにPEGの導入を行った患者が抽出された。
  PRG、PEG両グループの年齢、男女比、病型、肺活量、罹病期間等はほぼ同じであった。PRGの導入は鎮静剤の投与なしに覚醒状態下で行われ、栄養士による指導をうけた後、同日の退院が可能である。栄養摂取は施術後2日目から開始される。
 成功率はPRGは100%、PEGは25例中23例であった。PEGの失敗例は患者の胃の位置が高すぎたのが原因としている。施術所要時間はPRGが約5分間、PEGが約22分間であった。両グループとも施術中及び施術後なんら重篤な合併症は見られなかった。PRGグループの1名が2ヶ月後にチューブを交換がしなければならなかった


肺活量と動脈中の血液ガスを測定することにより呼吸機能をモニターしたところ、PEGグループに著しい機能の低下が認められた。生存率はPRGグループが平均183日、PEGグループ85日とPRGグループに顕著な改善がみられた。 ここでPRGの問題点として、チューブのゲージが小さいため、閉塞しやすい、位置がずれやすい、胃粘液のモニターが不可能であること等があげられた。
結論として、PRGは呼吸障害をもつALS患者にとって安全で効果的な経腸的栄養法であり、成功率も高く、PEGに比べて呼吸機能に対する影響も少ないことが明らかになった、と述べている。
また、今回の試験はコントロール試験ではないため、結果の注意深い検討が必要であると指摘したうえで、生存率が約2倍に改善された事実に触れ、今後これらの事実を裏づけるためのさらなる研究が望まれると結論している。