Core i7に関して
Intelから発売されている新シリーズのCPUであるCore iプロセッサーの中で、i7シリーズに関して簡単にご説明します。
Core i7は、Core iの中でもハイエンドからメインストリーム向けの製品に位置づけられており、4つのコアを持っていて、Hyper-Threadingを使用することで8つのスレッドでの処理が可能です。
まずは、最近発売されているデスクトップ向けCore i7シリーズのスペックを見てみましょう。
プロセッサ | ソケット | 動作周波数 | 最大周波数 | バス・スピード | TDP |
---|---|---|---|---|---|
975 | LGA1366 | 3.33GHz | 3.60GHz | 6.4GT/s | 130W |
965 | LGA1366 | 3.20GHz | 3.46GHz | 6.4GT/s | 130W |
960 | LGA1366 | 3.20GHz | 3.46GHz | 4.8GT/s | 130W |
950 | LGA1366 | 3.06GHz | 3.33GHz | 4.8GT/s | 130W |
940 | LGA1366 | 2.93GHz | 3.20GHz | 4.8GT/s | 130W |
920 | LGA1366 | 2.66GHz | 2.93GHz | 4.8GT/s | 130W |
870 | LGA1156 | 2.93GHz | 3.60GHz | 2.5GT/s | 95W |
860 | LGA1156 | 2.80GHz | 3.46GHz | 2.5GT/s | 95W |
900番台と800番台の2種類のシリーズが用意されており、各々に共通している仕様と異なる仕様があります。
また、900番台でも末尾が5のシリーズは、Core i7 Extreme Editionという名称のモデルで、性能が最も高いモデルに位置づけられています。
全体的な傾向は、900番台のほうが高性能である位置づけになっていますが、ベンチマークなどでは下位の900番台と上位の800番台が多少入り混じった結果も見受けられます。
まずは、基本的な仕様に関してご説明します。
共通している仕様
2種類用意されているシリーズは、Core2ExtremeやQuadの後継にあたります。
Core i7の基本仕様には、いくつかの共通した項目があります。
コア数
Core i7は4つのコアを持っており、これをHyper-Threadingを使用して8つのスレッドでプログラムを処理できます。
そのため、ソフト側が対応していれば、今まで以上の処理能力を発揮することが期待されます。
Hyper-Threadingに関しては、うまく働くプログラムと、逆に処理能力を落としてしまう場合があるようで、ベンチマークでも様々な結果がでています。
Pentium4の頃に使用されていた技術ということもあり、悪くない機能ではあると思います。
キャッシュ
8MBのL3キャッシュを用意しており、今までモデルがL2キャッシュまでしか持っていなかったことから変更されています。
L1キャッシュとL2キャッシュは、各コアに独立して用意されています。
AMDとは異なり、各コアのL1キャッシュやL2キャッシュに他のコアのキャッシュメモリと同じデータが存在する「インクルーシブ方式」を採用しており、Intelとしてはこちらのほうが処理がスムーズに行えると判断したようです。
ターボ・ブースト・テクノロジ
この機能は、Core i7の共通仕様の中でも、重要な機能のひとつといえるでしょう。
上記の表でも、今までのCPUとは異なり動作周波数と最大周波数が記載されています。
これは、4つのCPUコアを均等に使用しているより、他のコアを停止して1つのコアの動作周波数を上げてしまい、最大動作周波数を上げることで処理能力を上げようという機能です。
これにより、4つのコア全部を使用しないような処理の場合、TDPの範囲内で自動的にオーバークロックの恩恵を受けることができます。
また、オーバークロックするコアの数は1つとは限らず、2つをオーバークロックする場合もあるなど、柔軟な対応を行えるようになっています。
本機能で注意していただきたいのは、マザーボードのBIOS設定で有効にしないと機能しないということです。
Intel製マザーボードでは標準で有効になっているようですが、確認されたほうが無難でしょう。
メモリへのアクセス方法
今までのIntel製CPUは、メモリへのアクセスはCPUからチップセット経由で行っていました。
しかし、Core iシリーズでは、CPUから直接メモリへのアクセスを行います。
この方式は、すでにAMDが発売しているCPUと同じような仕組みとなります。
そのため、メモリへのアクセスが効率よく行え、処理能力が向上すると期待されます。
対応メモリの種類
今までは、チップセットやマザーボードの種類によって、同じCPUでも対応メモリの種類は異なっていましたが、Core iシリーズではCPUによって対応するメモリの種類が決まっています。
対応する種類は900番台と800番台では異なりますが、どちらもDDR3シリーズのみ対応になっています。
DDR3メモリには、以前までのDDR2やDDRとの互換性はありません。
また、CPUの種類によって対応するメモリの種類が決定される傾向が高くなりますので、CPUを購入する際には注意が必要かもしれません。
しかし実際のところは、マザーボードによって対応できるメモリの幅は様々で、一概にCPUの仕様に記載されているメモリしか使用できないということでもないようです。
その他の共通仕様
これら以外に、Lithographyは45nmに共通化され、これは以前までのCore2Quadシリーズの機能が高かったモデルと同様です。
また、現在のCPUではほとんど当たり前ですが64bitOSにも対応しています。
異なる仕様
上記のように共通している仕様がある一方、異なる仕様もあります。
この違いが、上位モデルと下位モデルの差になっていると思われます。
ソケット
900番台はLGA1366、800番台はLGA1156を採用しています。
どちらも今までのLGA775とは互換性がありません。
800番台のLGA1156は、Core i7の下位モデル、Core i5でも使用されています。
ターボ・ブースト・テクノロジの設定内容
Core i7のプロセッサーにはターボ・ブースト・テクノロジがどのモデルにも搭載されていますが、ExtremeEditionにのみ異なる設定が用意されています。
他のCore i7がターボ・ブースト時の動作倍率を変更できないのに対して、ExtremeEditionでは最大動作倍率を各コアごとに変更することができます。
これにより、ターボ・ブースト時の動作クロックを規定以上に引き上げることが可能です。
また、TDC(熱設計電圧)とTDP(熱設計電力)の最大値を設定可能で、
対応メモリのグレード
900番台と800番台は対応メモリの種類が異なります。
先に発売された900番台はDDR3-800とDDR3-1066、後に発売された800番台はDDR3-1066とDDR3-1333に対応しています。
対応するメモリの性能は800番台の方が高いのですが、実際にパソコンの性能にどの程度影響を与えるのかは難しいところで、ほとんど変わらないのではないかと思います。
また、マザーボードによっては、これら以上のメモリも対応している場合があります。
メモリのトリプルチャンネルとデュアルチャンネル
900番台は3枚のメモリを同時に使用することで、メモリへのアクセスを速めるトリプルチャンネルに対応していますが、800番台はCore2Duoと同様の2枚同時に使用するデュアルチャンネル対応となっています。
単純な性能で考えればトリプルチャンネルの方が優れてはいますが、同じ規格と容量のメモリを3枚そろえなければならないというコストを考えると、デュアルチャンネルでも十分な気もします。
バスタイプとシステムバス
900番台はQPIでExtremeEditionは6.4GT/sで他のモデルは4.8GT/s、800番台はDMIで2.5GT/sとなっています。
これらは、どちらもCPUとチップセットをつなぐインターフェースの名前です。
QPIは今までFSBと呼ばれていたものにあたります。
DMIはCPUから接続されているチップセットであるノースブリッジとサウスブリッジを接続するためのもので、これはCore i7 900番台にも、Core2シリーズのチップセットにもあります。
QPIは、今までのFSB1600MHzと比べ2倍程度の転送速度も持ち、今まで以上に広帯域での通信が可能になっています。
グラフィックボードへのアクセス方法
900番台はQPIで接続されているチップセットを経由して、800番台はCPUから直接接続されています。
どちらもCrossFireやSLIに対応できる仕組みになっていますが、大きな違いとして、900番台はフルレーン(16レーン)での接続が可能であるのに対して、800番台は半分のレーン(8レーン)での接続しかできないという差があります。
新しいCPUと古いCPUのダイアグラムの比較
文章だけですと、CPU・メモリ・グラフィックボードやインターフェースの関係が分かりにくいと思いますので、下記に簡略図を描いておきます。
もし良かったら、参考にしてください。
Core i7 900番台のダイアグラム
CPUと2つのチップセットの関係は、今までのCore2シリーズと同様の配置になっています。
メモリへのアクセスをCPUから直接行う構造が特徴的です。
上図のQPIは6.4GT/sの場合の双方広帯域幅を表しており、QPIが4.8GT/sの場合は19.2GB/sとなります。
トリプルチャンネルでのメモリアクセスが可能なため、3枚のDDR3メモリを記載しています。
CPUとX58の間をつなぐQPIはCore2のFSBより帯域が広くなっており、グラフィックボードへの接続も36レーン以上用意することで、フルレーンでのCrossFireやSLIを使用することができます。
Core i7 800番台のダイアグラム
Coer i7 900番台やCore2シリーズと比べ、シンプルな構造になっています。
CPUからの直接接続を、メモリに加えグラフィックボードにも拡張しています。
デュアルチャンネルでのメモリアクセスが可能なため、2枚のDDR3メモリを記載しています。
CrossFireやSLIでは、1枚でグラフィックボードを使用する場合の16レーンから、半分の8レーンになってしまうため、900番台に比べると性能面で見劣りするところもあります。
QPIで広帯域を確保する必要がなくなっていますので、CPUとチップセットの間にはDMIしか存在しません。
そのため、Core2まで使用されていたFSBと比較するような数値を持っていません。
Core2のダイアグラム
今までの、一般的なIntel製CPUのダイアグラムといっていいでしょう。
上図のCPUとP45チップセットの接続は、FSBが1333MHzの場合を例に記載しており、1600MHzの場合は12.8GB/sとなります。
CPUからノースブリッジ(ここではP45)への接続で、全ての部品への接続を行っていたため、FSB周波数によって性能が左右される傾向があります。
また、メモリへのアクセスは、新しいCPUに比べ多少不効率であったと言えるでしょう。
デュアルチャンネルでのメモリアクセスが可能なため、2枚のメモリを記載しています。
対応するメモリはDDR2とDDR3ですが、両メモリのコネクタ形状が異なるため、マザーボードによってどのメモリが使用できるのか、また何枚使用できるのかに差があります。
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