IntelとAMDのCPUの違い
一般的に自作パソコンに使用するCPUは、IntelとAMDの製品の場合が多いのが現状です。
そのため、CPUを購入しようと考える際には、大体この2社のどちらにしようか悩むと思います。
そこで、本ページでは、IntelとAMDのCPUにどのような違いがあるのかをご説明します。
IntelとAMDが製造するCPUの違い
IntelとAMDの販売するCPUは、ほぼ同じような動作周波数の製品が販売されています。
また、CPU自体の構成も同じような設計になる傾向があります。
CPUの性能を比較する場合、同一の規格(プロセスやシステム)で製造されているCPUであれば、動作周波数が高い方が高性能である事は、先の「CPUの性能とは」でご説明しました。
現在主力のCPUとして販売されているIntelのCore i7シリーズと、AMDのPhenomIIシリーズの動作周波数はほぼ同じで、これは第二世代のCore i7シリーズとAMDのAシリーズの関係でも続くようです。
しかし、CPUの様々な違いから性能には差があり、IntelとAMDのCPUの周波数自体を比較してもあまり意味はありません。
どちらの性能が高いかはさておき、ここではIntelとAMDのCPUにどのような違いがあるのかをお話します。
CPUに内臓されたGPU
GPUとは、グラフィックボードに使用されるCPUのような物なのです。
「グラフィックボードの基礎知識」に簡単な説明がありますので、もし良かったらご覧ください。
さて、パソコンの中にはグラフィックボードが搭載されておらず、マザーボードに内臓されている製品が存在していました。
このようなパソコンの事を一般的に、グラフィック機能がオンボードされているパソコンと呼んでいました。
しかし、現在主流になりつつあるのが、CPU自体にGPUを搭載してしまうと言う製品です。
結果から言ってしまうと、IntelのCore iシリーズとAMDのAシリーズを比較した場合、内蔵GPUの能力はAMDの方が優れていて、CPU自体の演算能力はIntelの方が優れていると思われます。
ただし、本ページでは違いに関しての記載ですので、具体的なCPU自体の差に関しては差し控えたいと思います。
Intelより発売されている第二世代のCore iシリーズには、全てのモデルにGPUが内蔵されていて、使用の可否はマザーボードのチップセットの種類に依存します。
具体的な性能は、現在搭載されているHD Graphics 3000の場合、Radeon HD 5450やGeForce 7800GTあたりの性能を想像していただければ良いかと思います。
AMDより発売されているAシリーズには、全てのモデルにGPUが内蔵されていて、現在発売されているFM1ソケット対応マザーボードは確認している範囲では全て内蔵GPUを使用できます。
内蔵されているGPUには既存のAMDシリーズと同様の名称を使用しており、少しは下回るようですがほぼそのナンバーのグラフィックボードと同様の性能を持っていると考えて良いかと思います。
ちなみに、AMDではこの様なCPUをAPUと呼称しています。
キャッシュメモリ
キャッシュメモリの使い方
IntelとAMDのCPUには、ほぼ同じ容量のキャッシュメモリが搭載されています。
しかし、キャッシュメモリの使い方に違いがあり、Intelがインクルーシブ方式、AMDがエクスクルーシブ方式を採用する傾向があります。
現在新たに発売されているCPUに用意されているキャッシュは、L1~L3までの3段階が用意されていますが、L1とL2は1つのCPUの中に複数ある各コアに対して用意されています。
CPUでデータ処理を行う際、各コアに必要なデータであれば重複しても各L1やL2キャッシュに同じデータを保持するのがインクルーシブ方式、各L1やL2に同じデータを保持しないようにするのがエクスクルーシブ方式です。
エクスクルーシブ方式では、例えばL2キャッシュにある情報をL1キャッシュに移動する場合L2キャッシュはデータを転送後破棄しVictim Bufferの内容を格納します。
データを重複して持たないためキャッシュ容量を有効に活用できる反面、CPUに余計な処理をさせなければならなくなります。
一方、インクルーシブ方式ではL1キャッシュとL2キャッシュに同じデータを保持しますのでCPUに余計な処理をさせることはないものの、重複するデータを保持するためキャッシュメモリの容量を無駄に使用してしまうことになります。
私たちが使用する際に意識することはないものの、両社のCPUのキャッシュメモリの使用方法にはこのような違いがあります。
オーバークロック
CPUの動作周波数などを引き上げることで、性能を定格以上に引き上げる行為をオーバークロックといいます。
一般的に言われるオーバークロックは、ベースクロックを変更することでCPUやメモリなどのクロックを引き上げますが、メーカーの保障範囲外の行為になるため、破損などが起こった場合は自己責任となります。
また、Intel・AMDともにベースクロックを変更するオーバークロックは可能ですが、それ以外にもオーバークロックの方法が別にあったり、定格内で自動的に行う機能を搭載したシリーズもあります。
内部クロックを変更できるAMD
AMDのCPUの中で、Black Editionと言う名称で呼ばれるシリーズは、CPUの内部クロックを変更できるため、CPU単体のオーバークロックが可能です。
そのため、CPUの温度や耐性のみに依存したオーバークロックが可能で、CPU以外の周辺部品にオーバークロック耐性を求めずに済みます。
自分で調整しながらオーバークロックを楽しみたい方には向いている機能と言えます。
これ以外に、Turbo CORE Technologyに対応するCPUもありますが、性能の向上に関してはあまり評判が良いとは言えません。
今後の改良に期待したいところです。
自動で動作周波数を変更するIntel
Intelが発売しているCore i7・i5では、コアの動作を制御してオーバークロックを自動で行う、ターボ・ブースト・テクノロジが搭載されています。
この機能を有効にしておくだけで、使用者は特に意識することなく、定格内でCPUのクロックを上昇させることができます。
有効にしている場合と無効にしている場合では、ベンチマークなどでスコアにはっきりと差が現れるようです。
しかし、これは全てのコアを定格以上にする、いわゆるオーバークロックではありません。
また、メモリに関してもIntel XMPを使用することで、比較的簡単にオーバークロックを行うことができます。
この機能は、Intel XMPに対応したメモリを使用することで、メモリモジュールに搭載されたSPDと呼ばれるROMチップに記載された情報を読み出すことで、オーバークロックを行うというものです。
それ以外の方法でのオーバークロックはと言うと、ベースクロックの変更が必要なため、今まで同様にメモリなどへの負荷も考慮した操作が必要です。
省電力機能
省電力機能を有効にするためには、OSの電源オプションから省エネの項目を選択する必要があります。
単に各機能を有効にしただけでは機能しない場合がありますので、これらの機能を使用したい場合にはご注意ください。
拡張版インテルSpeedStepテクノロジ
Intelが省電力機能として搭載しているもので、CPUの動作モードを多段階用意することでアイドル時の消費電力を抑制するものです。
BIOSには、EISTと表示されていると思いますが、これはEnhanced Intel SpeedStep Technologyの略です。
ターボ・ブースト・テクノロジはこれを拡張子、性能を高める方向に使用した機能といえます。
そのためCore i7では、アイドル時こそ機能を発揮するものの、負荷が高まるとターボ・ブースト・テクノロジが機能することで逆に消費電力が高まる傾向があります。
Cool'n Quiet
AMDが省電力機能として搭載しているもので、CPUの動作モードを多段階用意することでアイドル時の消費電力を抑制するものです。
現在販売されているPhenomIIにはCool'n Quiet 3.0が搭載されており、以前までの2.0より更に細かく動作周波数や電圧を変化させることができるようになっています。
また、Phenomシリーズでは、CoolCoreテクノロジによりプロセッサの未使用部分をオフにすることで、消費電力を低減する機能も搭載しています。
IntelとAMDともに、同様の機能を備えているといえるでしょう。
また、消費電力自体は、CPUの省電力機能も大切ですが、グラフィックボードの消費電力も大きくかかわってきます。
そのため、パソコン全体のバランスを考える必要があると思います。
同時マルチスレッディング
同時マルチスレッディングとは、単一のCPUから複数の実行スレッドを同時に実行するという機能です。
もう少し簡単に言うと、CPUの各コアは命令された内容をある決められた手順で処理していきますが、いくつかの命令を同時に処理してしまおうということです。
シングルコアCPUの場合のデータの処理を下図で見てみましょう。
外部から入力されたデータは、fetch・decode・execute・writebackと4段階の処理を行います。
その際に必要なデータをL1・L2キャッシュから取得するわけです。
このデータの処理を、同時に複数行うのが同時マルチスレッディングです。
一つずつ命令を処理するパイプライン方式と、並列処理するスーパースケーラー方式を下図で見てみましょう。
ここで言うスーパースケーラー方式が同時マルチスレッディングの一種で、1周期の中で処理できる命令が限られる中、同時に複数の処理を一つのコアで行うというもです。
ちなみに、パイプライン方式は、一連の命令を全て処理する前に次の処理を開始することで効率を上げる方式で、それ以前は4つの処理が終了するまで次の命令の処理ができませんでした。
スーパースケーラー方式は、このパイプライン方式をマルチスレッドで行う方式です。
Intelのマルチスレッディング
Intelは2002年、Pentium4の途中からHTテクノロジ(ハイパー・スレッディング・テクノロジ)を採用しました。
その後、Core2シリーズでは搭載されなかったものの、Core i7シリーズから再度採用されました。
HTテクノロジは1つのコアをOS上から2つに見せる技術で、スーパースケーラーの手法に似ています。
HTテクノロジでは、2つのデータを並列化して処理する事で効率を上げるものですが、処理する必要があるデータが1つの場合はHTテクノロジに対応していないCPUと同じような動きをします。
そうする事で、HTテクノロジに対応していない同周波数のCPUに性能面で劣る事がないようにしています。
基本的な性能が同じであれば、1つの作業だけと言う場合は論理的に2つに処理を分けられる事があだになってしまうと考えられる為、それを防ぐ工夫も行っているわけです。
それ以外にも、スーパースケーラーではどこかでデータにエラーが発生すると並列処理している他のデータにも影響が出る場合がありますが、HTテクノロジでは独立した並列処理を行うため、片方の処理にエラーがあってももう片方はそのまま処理をする事が可能です。
AMDのマルチスレッディング
AMDは、Athlon64でスーパースケーラー方式を採用、早くから同時マルチスレッディングを取り入れていました。
スーパースケーラー方式の採用によって、AMDはIntelに対してCPUの動作周波数では劣るものの処理能力では同等の性能を発揮していました。
IntelがCore2でマルチスレッド機能の搭載を見合わせたように、Phenomではスーパースケーラー方式のようなマルチスレッディングの搭載は見送られているようです。
CPUからチップセットへの接続
CPUからパソコンの各部品への接続は、CPUから直接行う場合と、ノースブリッジやサウスブリッジと呼ばれるチップセットを経由して行う場合があります。
IntelとAMDでは、この接続にも違いがあります。
IntelのQPI
Intelは、Core i7の900番台シリーズではCPUとノースブリッジの接続にQPIを採用しています。
Core2シリーズまでは、ノースブリッジとの接続にFSBを採用していました。
FSBはパラレル通信でしたが、QPIでシリアル通信へと変更、接続速度は最大で25.6GB/sです。
なお、FSBの接続速度は最大で10.6GB/sです。
CPUにメモリとグラフィックボードを接続しているCore i7の800番台では、チップセットとの接続をDMIとしています。
これは、ノースブリッジとサウスブリッジを接続するために今までも使用されていた接続方法で、ノースブリッジが必要なくなったためCPUから直接サウスブリッジに接続している見た目になります。
DMIの接続速度は2GB/sと他の接続方法と比較して低速で、Core i7の900番台でもノースブリッジとサウスブリッジの接続に使用しています。
AMDのHyperTransport
AMDでは、CPUとノースブリッジの接続にHyperTransportを採用しています。
PhenomIIではバージョン3.0を採用、接続速度は最大で16GB/sです。
AMDでもAthlon XPの頃にはFSBを使用していましたが、Athlon 64の頃にはすでにHyperTransportを採用していました。
現在では、ほとんどのCPUがHyperTransportでの接続を行っています。
メモリへの接続はCPUから、グラフィックボードはノースブリッジを経由して接続しています。
IntelとAMDの毛色の違い
IntelとAMDはお互いライバル関係にあるわけですが、あくまで個人的な見解ではとの断りをいれますが、この2つの会社は全く目指している物が違うと言う印象を受けます。
どちらも、低価格と高性能の両立を目指しているわけですが、「初期設定のまま使って満足できるIntel」・「低価格なのにちょっといじると定格以上の性能を発揮するAMD」と言った感じを受けます。
CPUにはそれぞれ対応するソケットの種類がある訳ですが、これに対してもIntelに比べAMDは下位互換性がある傾向が高いです。
もちろん購入時期にもよりますが、以前から使用しているパソコンのCPUだけを最新の製品に交換したいと考えた場合、今までの傾向で考えた場合、AMDの方が圧倒的に実現できる可能性が高いと言って良いでしょう。
ただし、これはあくまで3~5年程度の間にCPUを交換する場合の話で、10年などの期間で考えた場合はどちらのCPUでも最新の製品を古いマザーボードに取り付けるのは、現実的ではありません。
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