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PhenomIIに関して

 AMDから発売されているCPUの中で、最も一般的に使用されているPhenomIIシリーズに関して、簡単にご説明します。
PhenomIIには3つのモデルが用意されています。
主な違いはCPUに内蔵されているコアの数で、Phenom X4は4個、Phenom X3は3個、Phenom X2は2個のコアを搭載しています。
まずは、PhenomIIシリーズのスペックを見てみましょう。

プロセッサ ソケット 動作周波数 L3キャッシュ HyperTransport TDP
Phenom X4(4コア内臓)
X4 965
Black Edition
AM3 3.40GHz 6MB 4GT/s 140w
125W
X4 955
Black Edition
AM3 3.20GHz 6MB 4GT/s 125W
X4 940
Black Edition
AM2+ 3.00GHz 6MB 3.6GT/s 125W
X4 945 AM3 3.00GHz 6MB 4GT/s 125W
95W
X4 925 AM3 2.80GHz 6MB 4GT/s 95W
X4 920 AM2+ 2.80GHz 6MB 3.6GT/s 125W
X4 910 AM3 2.60GHz 6MB 4GT/s 95W
X4 810 AM3 2.60GHz 4MB 4GT/s 95W
X4 805 AM3 2.50GHz 4MB 4GT/s 95W
X4 905e AM3 2.50GHz 6MB 4GT/s 65W
X4 900e AM3 2.40GHz 6MB 4GT/s 65W
Phenom X3(3コア内臓)
X3 720
Black Edition
AM3 2.80GHz 6MB 4GT/s 95W
X3 710 AM3 2.60GHz 6MB 4GT/s 95W
X3 705e AM3 2.50GHz 6MB 4GT/s 65W
X3 700e AM3 2.40GHz 6MB 4GT/s 65W
Phenom X2(2コア内臓)
X2 550
Black Edition
AM3 3.10GHz 6MB 4GT/s 80W
X2 545 AM3 3.00GHz 6MB 4GT/s 80W

まず、モデルナンバーの最後についているBlack Editionですが、これはそのモデルでも上位の製品につけられています。
そのため、各コアの最上位に位置するCPUの末尾についています。
もうひとつあるのが、末尾にeがついているCPUですが、これは低電圧版モデルの記号です。
そのため、同じシリーズのCPUと比較して、TDPが低く設定されています。
また、同じCPUの中にTDPが2種類記載されているモデルがありますが、これは発売時期によってTDPが変更されたため、2種類の同名モデルが存在するものです。

 それでは、PhenomIIの仕様に関して簡単にご説明します。

主な仕様

ソケット形状

 ソケット形状にはAM3とAM2+があり、それぞれ異なる仕様となっています。
AM3は938ピンの形状を採用、サポート可能なメモリは最高でPC2-8500およびPC3-10600のDIMMメモリ、メモリー・バンド幅は最高21GB/sのデュアルチャンネルとなっています。
AM2+は910ピンの形状を採用、サポート可能なメモリはPC2-8500・6400・5300・4200・3200のアンバッファード・メモリ、メモリー・バンド幅は最高17.1GB/sのデュアルチャンネルとなっています。
AM3の方が新しいため、性能は高められており、AM3対応CPUはAM2やAM2+のソケットにも使用できる下位互換を確保しています。

キャッシュメモリ

 PhenomIIのキャッシュメモリは、L1からL3まで用意されており、L1・L2キャッシュは各コアに対して用意されており、L3キャッシュは共有で使用する仕様になっています。
キャッシュメモリの使用方法は、AMDは伝統的にエクスクルーシブ方式を採用しています。
これは、L1からL3までの中で、上位キャッシュの内容を下位キャッシュが重複して持たないという方式で、データを多くキャッシュできるという特徴があります。

HyperTransportテクノロジー

 AMDではHTテクノロジーと呼んでおり、IntelのHTテクノロジーとは別のものです。
AMDのHTテクノロジーは、IntelのQPIやFSBにあたる部分の接続に使用されています。
HyperTransportはAMDだけが使用している技術ではなく、チップセットによってはノースブリッジとサウスブリッジをつなぐために使用している場合もあります。
また、ソケット形状によってスピードが異なり、AM3のCPUをAM2+に使用した場合、HyperTransportは3.6GT/sに制限されます。

Cool'nQuiet 3.0

 CPUの消費電力を低減するための機能で、CPUの動作クロックを4段階で変化させます。
まず、Smart Fetchはアイドル時のコアを休止状態にして電力を節約、これに加え動作周波数を変化させることを可能にしたことで、計4段階の消費電力削減が可能になっており、作業の内容によって電力消費量を抑えることができます。

Black Edition

 Black Editionは、主に同一シリーズの中でも動作周波数の高いものについている名前ですが、それ以外にも倍率ロックが解除されており、オーバークロック用途を意識した仕様になっています。
倍率ロックがある場合、オーバークロックするためにバス周波数などを上昇させるため、CPU単体ではなくチップセットやメモリへの負荷があり、CPUだけではなく他の周辺部品のオーバークロック耐性が求められます。
これに対し倍率ロックが解除されていると、CPU単体への負荷だけでオーバークロックが可能となり、周辺部品の耐性を考慮する必要がない分、簡単に操作できるというメリットがあります。

PhenomIIのダイアグラム

 ここで、簡単にPhenomIIのチップセットや周辺部品への接続方法を図解します。

PhenomIIのダイアグラム

 AMDでは、早くからメモリへのアクセスをCPUから直接行う方式をとっていました。
デュアルチャンネルでのメモリアクセスが可能なため、2枚のDDR3メモリを記載しています。
使用できるメモリの規格はCPUに依存し、PhenomIIの場合はDDR2にも対応可能です。
どちらのメモリを使用できるのかは、マザーボードに用意されているソケットによって左右されます。
グラフィックボードへの接続はチップセット経由で行い、チップセットへの接続はHTテクノロジ(ハイパー・トランスポート・テクノロジ)を使用しています。
HTの接続速度はCPUに依存しており、PhenomIIシリーズの中にも4GT/sのものと3.6GT/sのものがあります。

PhenomIIに関しての、ちょっとしたお話

 PhenomIIには、いくつか面白い噂があります。
以下の内容に関して試されてうまくいかない場合、また不具合が起こった場合など、一切の責任は負えませんのでご容赦ください。

PhenomII X4 810・805のL3キャッシュメモリ容量の変更

 PhenomII X4 810・805のL3キャッシュは、上記にもありますように4MBとなっています。
しかし、一部の話では、このL3キャッシュを6MBに変更することが可能なようです。
ということは、6MBが搭載されているということなのでしょうか?
方法は、BIOSのACCをオンにすると、L3キャッシュが6MBになることがあるようです。
ただし、場合によってはうまく動作しないキャッシュを停止して出荷している可能性もあり、CPUや周辺機器に悪影響を及ぼす可能性もありますので、十分にご注意ください。

PhenomII X3 720 Black Editionの4コア化(一部ロット限定)

 PhenomII X3は3コアのCPUですが、一部ロットのCPUとマザーボードの組み合わせで、4コア化できる場合があるようです。
これは、X3 720 Black EditionがX4と同じコアを使用して、1コアの動作を停止しているためらしいのですが、変更方法は、BIOSのAdvanced Clock CalibrationをAutoにすると4コアになり、Disabledにすると3コアになるそうです。
しかし、この操作は通常使わない予定で機能を停止しているコアを動かすことになり、危険性が高めの行為と思われますので、十分にご注意ください。
また、動いたとしても、定格以上のTDPになる可能性などもありますので、これらを考慮して操作する技術も必要かもしれません。

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