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わたしは神経内科医をもう26,7年遣っています。ALSの研究から始まって、この20年間はALS患者の療養サポート、ケアに関してのことを一生懸命考えてやってきました。17年前から在宅人工呼吸療法を手掛けてきて、大勢の患者さんと接してきた中で、今までやってきたこと、考えてきたこと、わかったことがたくさんありました。ですから今日は、皆さんがALSの説明の本を読んでもあまり書かれてないようなこともお話したいと思います。
公立八鹿病院神経内科部長 近藤清彦先生
わたしは神経内科医をもう26,7年遣っています。ALSの研究から始まって、この20年間はALS患者の療養サポート、ケアに関してのことを一生懸命考えてやってきました。17年前から在宅人工呼吸療法を手掛けてきて、大勢の患者さんと接してきた中で、今までやってきたこと、考えてきたこと、わかったことがたくさんありました。ですから今日は、皆さんがALSの説明の本を読んでもあまり書かれてないようなこともお話したいと思います。
公立八鹿病院神経内科部長 近藤清彦先生
そして、ALS独特のものとして、胃に空気を飲み込んでしまう『呑気症』があります。胃袋に空気が入ると骨盤の中まで胃が拡張します。食事が飲み込めない状態になっても、なぜかカラ嚥下のような状態か、食道が勝手に動くのか、空気が胃に入って、胃がパンパンに張って苦しくなる。その影響で腸管麻痺とか、麻痺性イレウスになって、致命傷になる方もあちこちで居られると聞いています。もし少し研究しないといけないのです。
胃瘻を増設して入る方は一番遣りやすい。直前に空気を抜くことを繰り返すだけでこれは防げます。鼻から胃に入れた経鼻管では空気がなかなか抜けないので、今その辺は検討課題です。
耳に水がたまって聞えなくなる事があります。浸出性中耳炎です。経過が長いと、まず必発と思ったほうが良いでしょう。嚥下動作が出来なくなった頃に起こりやすく成ります.嚥下動作のときに、耳と喉を結んでいる耳管で気圧の調整が出来なることが関係しているのだろうと思った。耳が聞こえているかどうかは、常に注意してあげてください。耳鼻咽喉科の先生に水を抜いてもらえればすぐに聞こえるようになります。
70代の人工呼吸器の方ですが、八鹿病院では2番目平成3年に在宅療養に移られた方です。昔のパソパルPCという意思伝達装置を使って、奥さんが準備されて本人が瞬きをしながら、文字を打つのですけれども一見すると寝たきりの高齢者に見えるような方ですが、『今月は孫に、小遣いをヤレ』、そういったことをすべて指示される。そう言う事から見ると、この家の中で何かをするときは必ずこの人の許可が要るのがわかる。意思伝達装置を使いこなすことで、この人が家の中の主と言うか家長を保てるということを示しています。
八日病院のケア体制を今日は十分お話しする時間が有りませんが、1ついえることは多くの職種の協力が必要だということです。院内のチームも必要ですし。院外の体制も必要です。先ほどからおはなしてきたような独特のノウハウも必要ですから、その蓄積をしていって、それを広めていくというのが私たちの今の役割です。
八鹿病院ではALSの最初の患者さんをサポートするためにチームが必要だと言う事で平成2年にチームが出来ました。出来たというより費用名人が集まったら、だんだんメンバーが膨らんでいって、医師や看護師、リハビリスタッフに加えて、薬剤師、栄養士、歯科衛生士、ソーシャルワーカー、訪問看護師、臨床工学士、音楽療法士、まで加わりました。臨床心理士がいないため募集をしているんですが、
たとえば栄養士さんの役割として、経管栄養の患者さんにも、人工栄養材だけでなくて、1つには自然のものも注入したいですし、自然のものをミキサー食にするのだったら、元の形を患者さんに見て頂いてから注入したい。食べる楽しみを保ちたいので、入院中の患者さんには昼ご飯だけは、配膳のお盆を見て頂いてから、注入しています。これは栄養士さんの努力で続けられています。
八鹿病院では去年までで40名の方が呼吸不全に成られましたが、気管切開して人工呼吸器装着をされた方は36人、90%です。呼吸器は要らないと言われたのは、ゆっくり振興した一人の方だけですから、40人中39人は人工呼吸器装着を希望されていた。
ただその時の条件として、人工呼吸器装着した後在宅療養もサポートしますし、もしそれが無理な場合は長期入院も可能ですということを、八鹿病院としてお話したうえで、選んでいただいている状況があります。但馬の中でならその位のベッドはあるだろうと思っています。ただ、神戸の方から転院された方が次々と出始めている。
36人が気管切開をして人工呼吸器装着、そのうち26人の方は在宅療法を長短ありますが経験されています。どうしても家庭的な事情で在宅療法が無理な肩も4分の1位は出てきます。将来は長期入院が必要になると思いますが、後在宅療養を支えるために一時入院できる病院があれば、4分の3の方はサポートできるのではないかと思っています。
意思伝達装置の給付が早期に受けられるとか、リフトも必要ですし、先ほど言ったカフマシンなども道具として準備できないと、病院としては難しい。そして一番問題なのは、ALSの患者さんが呼吸器をつけて入院できるのは、夜勤の看護師の人数ぐらいが妥当だろうと、よく言われるのです。2人夜勤だったら、2人しか看られないのではないか。八鹿病院はいま準夜と深夜は4人ずつになりましたけれども、いま8人とか10人の呼吸器の方が入院されて、大きなリスクを負いながら続けています。
いま医療機関は大変です。普通に管理できて当たり前、もしトラブルがあったら新聞やマスコミに徹底的に叩かれるわけですから、そういうことを考えたら、入院してもらわないほうが安全だということにすぐなってしまう。だからそのあたりの安全性を高めていくことももちろん必要なわけです。
ALS患者が在宅ケアを行う場合に必要なものですが、1つには医療機関、病院ですね。特に入院機能を持つ病院側の努力が必要です。退院指導もできたほうがいいですね。レスパイト入院できる病院も必要です。長期入院もできるほうがいい。往診できる開業医の先生がおられて、カニューレ交換をしてもらえると大変ありがたい。こういう先生はいま増えています。訪問看護ステーションもどんどん力をつけてきています。ディサービスセンターは、呼吸器をつけた方の入浴もしてもらえるようになっていますし、移動入浴サービスもできるようになっています。ヘルパーさんも研修で吸引できる技術をもたれると思います。保健所も兵庫県はとても頑張ってくれて連携の要となりつつあります。スイッチがうまく使えなくなったり、食事をどうしようとか、そういうことを相談できる公的なところがなかなかなくて、むしろ近畿ブロックに頼っている状況もあります。
退院後は、診療所の先生や、開業医の先生に、カニューレ交換をお願いしています。最近は、40代、50代のバリバリの開業医の先生が、養父郡のほうでも随分増えてきまして、カニューレ交換はほとんどお願いしています。月に1回、私が訪問診察をしまして、入院の時期とか、レスパイト入院はいつかとか、そういった相談をしています。私はどちらかというと「励まし訪問」みたいなことで、実務は診療所の先生にやっていただいています。診療所の先生が、この肺炎は在宅では無理だと診断されたら、病院側が入院のベッドを用意しますと、そういう約束の下に在宅療養を続けていただきます。
呼吸器を着けて療養された方もほとんどが間歇的な入院を繰り返しながら療養されています。
入院となった理由は
いま八鹿病院では8人が在宅療養をされていますので、融通をつけながら交代で入院しています。
ALSの患者さんが大勢入院している病院はありませんから、病院もその都度いろいろ迷うことがあるわけです。そういう医療機関からの相談も受けなくてはいけない。そしてレスパイト入院できる病院を増やすことが何より必要で、必ずしも神経内科でなくてもいいと私は思います。 ALSのケアは、呼吸器管理と栄養管理とコミュニケーションと、その3つに尽きますから、熱心な先生がおられれば内科でも外科でも出来ます。
兵庫県では県立病院になかなか入院させてもらえないことが多くて、県立病院の関係の方がおられたら申し訳ありませんが、県立病院は高度医療を目的とするといわれるのですが、県立病院こそ、こういう慢性の病気の方も受け入れるベッドを作るべきだといま盛んに言っているところです。ただ医療機関に受け入れてもらいやすくするためには、ALSケアのノウハウをある程度伝達して、サポートしないと、いきなり引き受けてもらっても、入院した患者さんがかわいそうです。そうならないように、技術的なことや、ALS独特のノウハウを伝える研修会を開こう医療関係者、福祉関係者も含めた情報交換をインターネットで行えるようなメーリングリストを作ろうということで、いま動き出しています。
近藤清彦先生のこのレポートは、ALS患者の生活環境を一転させるようなレポートで、昔ながらの伝説を信じてる医師が多い中、ALS患者に一筋の光が射してきた。このレポートは迷っているALS患者にとっては一番の参考資料に最適だと信じます。
この資料は、ALS患者の気持ちを解ってくれる唯一の先生です。今なを、患者の立場で全国を公演のため、掛け捲っておられます。ALS患者の生活向上に、多大なる貢献なさってお見えになる