「しごと」と「労働」に関するよもやま話(renewal)

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いわれなき別れ (初出 2010.3.28 renewal 2019.9.15)

【補注】
私は2001年(平成13年)4月から、わずか2年間だったが、出先で労働相談を担当した。
当時はリストラの最盛期で、雇用保険が逼迫し、自己都合退職と会社都合退職とで給付に差ができたところだった。 そんな時代なので、労働法の本をひもとくと、真っ先に出るのは「整理解雇」の説明。
ところが、実際に相談を受けると「普通解雇」というのが圧倒的に多い。そこで、退職の説明が必要と感じ、本稿を作った。
20年後の今では「退職させてくれない」という相談がトップになっているという。ずいぶん、世の中変わるものだと感じる。

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一言で仕事を辞めるといっても、種類はいろいろある。 しかし、こうした分類は、その後の取扱上の都合によって決められた部分が多い。百人の離職者がいれば、百通りの離職理由がある。 それは、男女の別れ話の場合と同じだ(たぶん?)。

離職 自己都合
退職
転職 他にいい会社が見つかったので、退職する。
ハッピーリアイアメント(悠々自適の隠居) 年齢もそれなりになったし、蓄財もそこそこだ。だったら、残りの人生は自分の好きなように生きたい、という幸せな退職(毎日が日曜日というのも、辛いかもしれないが・・・)。
わがまま(本当の自己都合) 「理由はないけど・・・。今の会社・仕事が気に入らないから辞めます。先の計画はありません。」
「やむを得ず」の退職 まだまだ働きたいけれど、「自分の病気」「家族の病気」「出産育児」などで手一杯。退職しなくてはならない。
当然失職 定年退職 会社の定めにしたがって、定年退職になる(だけど、自分としてはまだ働けるんだが・・・)。
雇用期間満了による離職 例えば1年契約で働いていた従業員が、1年終了により職を解かれる (※ただし、更新を繰り返していると、「期間の定めないない」労働契約と同等とみなされる)。
休職期間満了による失職 病気休職者・失踪者が期間満了まで職場復帰できず、職を失う。
採用拒否 内定取消 採用内定していた者がいたが、経営の急変などのため採用できなくなる。
(会社側は“内々定”という、よくわからない制度を作って、対抗)
本採用拒否 試用期間の仕事ぶりから判断して本採用できない(留保解約権の行使)
解雇 普通解雇 大きな問題を起こしていないが、職務遂行能力の不足などのため、これ以上は雇っていられない。
整理解雇 企業の業績不振などが原因で、従業員の数を減らさなければならない。
懲戒解雇 従業員がしでかした不祥事を理由に解雇する場合。

景気が悪くなると、雇用問題に関する本が多く出る。
その場合、まず最初に扱われるのは「整理解雇の四要件」だ。

<整理解雇の四要件>
  1. 人員削減の十分な必要性があること
    どうしても人員を整理しなければならない経営上の理由があること。単に経営が厳しい程度ではだめ。
  2. 解雇回避の努力義務を尽くしたこと
    残業の削減、希望退職者の募集、新規採用の中止、役員報酬のカット、出向、配置転換、一時帰休の実施、資産売却など、 解雇を回避するためにあらゆる努力を尽くしていること。
  3. 解雇対象者の選び方が公正・妥当であること
    年齢、勤続年数、勤怠、成績の優良・不良などの労働力としての評価、労働者の生活への影響などの評価が行われる。恣意的な選別はだめ。
  4. 労働者・労働組合へ説明・協議手続きを尽くしたこと
    労働組合、労働者に対して、経営内容、人員整理の必要性、時期、規模、基準について十分説明し、誠意をもって協議を行うことが求められる
とはいえ、会社の解雇理由がどんなに「四要件」と食い違っていても、会社がどんどん傾いていく状況では、救いになってはくれない。

むしろ、解雇をめぐったもめ事となるのはほとんど「普通解雇」の場合である。
“解雇”なるものはそもそも「普通」じゃないものなのだが、「普通解雇」という名前がついている。その辺からしておかしい。「普通離婚」とか「普通別離」というのは、ないわけだし・・・。

具体的には、
  1. 勤務成績不良
  2. 勤務態度不良・協調性の欠如
  3. 能力不足
  4. 私傷病による労務不能
などが該当する。
要するに「あんたとは、もうこれ以上、お付き合いできないっ!」ってヤツだ。

日本的経営には、三本の柱があるといわれていて、その一つが終身雇用である。
解雇はこれと相容れない概念だから、企業としてはきっぱりと「クビ」というのを躊躇する。この曖昧さが、後々のもめ事の原因となる。

このことと関連して、「自分から退職した」のか「会社が退職を強要したのか」がはっきりしないという点が、たびたび問題となる。
この問題には、雇用保険の取扱いが深く係わっている。
上司と諍いがあり、売り言葉に買い言葉で辞表をたたきつけて辞めるケースがままあるのだが、その後、ハローワークで失業給付を申請すると、 「自己都合退職」として扱われて、待機期間があったり、給付日数が減らされたりすることがわかる。
そうなったときに、「あれは辞めたくて辞めたんじゃない」と主張するので、もめるのだ。

         
  自己都合で、給付制限がある       
    自己都合だが、やむを得ない事情が認められたので、給付制限がない      
      会社都合で給付制限はないが、年齢や加入期間が短いため、給付日数は自己都合と同じ      
        会社都合で給付制限がなく、給付日数が上乗せされる      
               
               
               

続く→