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つまずかない人生:三度目の正直 (初出 2011.8.7 renewal 2019.9.15)
【補注】
ここからは、東京都の職業能力開発センターで行った「社会科」の講義ノートになる。
労働相談情報センターの職員は、能開センターの訓練生に労働法の講義を行うことになっている。
しかし、訓練生は一般の学生とは違う。ほとんどは、会社経験を有する人たちだし、中には講師よりも年上の人もいる。
そういう人に労働基準法のイロハを教えても、世の中はそのとおりに動いていないことは十分知っている。
若造が偉そうな話をしても聞いてもらえるはずはない。だから、退屈で居眠りする人が出てもおかしくない。
私が20代の頃、最初に講義したときは、教室に紙飛行機が飛びかっていた。
この講義ノートは、退職前の最後の講義ノート。何とか寝かせないで乗り切ろうと、苦労した。
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この春(2011年・平成23年)の異動で、私は古巣の労働相談情報センターに戻ってきた。
2回目は、46歳のとき。
労働相談の仕事をしていたが、まだまだ経験不足。それに、現実と理屈とが違うことを知っただけに、いざとなると気後れするばかりだった。
それでも、何とか切り抜けたのは、受講生の皆さんの忍耐力によるところが大きかったと思う。
今回は3回目。
だから、もう少しはいい内容にしたいと思った。
しかし、労働相談の仕事からはすでに5年以上も離れている。
そのうえ、あらためてよくよく考えてみると、私たちには守秘義務があって、職場で交わされている相談内容などをぺらぺらと解説することは許されていない。
どういう風に話をすればいいかを、あれこれ悩んだあげく、思い切って労働問題とは違う内容にしようと決めた。
そこで付けたタイトルが「つまずかない人生の歩き方」。このテーマを縦糸にし、労働法や商工行政での経験を横糸にして、講義を組み立てた。
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振り返れば、36年間、都庁で働いてきた。
今現在は、労働相談情報センターというところにいて、労働法の普及啓発の仕事をしている。
センターは文字通り労働相談を受けるところだ。
今は、労働相談は受けていないが、10年前に2年間労働相談を担当した。
労働問題はいつの時代もある。
そして相談者は私たちのところに来る頃には、ボロボロに疲れ果てている。
それでも自分をクビにした会社に「せめて一太刀」できないか、という思いから、逃れられずにいる。
会社は労働者の権利を認めていない。だから、労働者の主張は正当。
しかし、会社にも言い分はあり、双方の泥仕合になる。
司法や行政が仲介すれば、少なくとも「法的」な部分は解決するだろう。
しかし、事が決着すると、労働者は「会社をやっつけてやりたい」という、人生最大の目標を失う。
相談担当をやっていてつくづく思ったことは、「すでに起こってしまった労働問題を解決するよりも、問題が起こる前に食い止めることが大事だ」ということだ。
そんなわけで、今日は「つまずかない職業人生の歩き方」というタイトルで話をさせていただく。
1時間半ご辛抱願いたい。
まずは、自己紹介代わりに、これまでやってきた仕事の一部をご紹介する。