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つまずかない人生:展示会への思い (初出 2011.8.7 renewal 2019.9.15)
【補注】
「社会科」の講義ノート続き。
通常は自己紹介から入るのだろうが、自己紹介をだらだらやるより、
訓練生と関連のありそうな自分の経験を話す方がいいと考え、昔話をすることにした。
これは、品川校、ファッションリテール、配管、DIY(2011.7.27)で使ったものだ。当時、配管工の試験などもビッグサイトでやっていた。
他の項目と重複する部分がある。
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●東京ビッグサイトの思い出
品川シーサイドから臨海線に乗って、3駅ほど行ったところに国際展示場がある。
「東京ビッグサイト」という名前だ。
私は、17年前(初出時2011年・平成23年からみて)に、この運用計画を作ったメンバーの一人である。
運用経費は私が積算したが、当時のコンピュータはまだ「Windows3.1」だった。
私の主な仕事はPR担当で、国際展示場の愛称募集の事務局長をやっていた。東京ビッグサイトという名前は最初からあったわけではない。
PRをかねて、愛称を募集することになっていた。
名前を公募したところ、6432通の応募案があった。6000通のリストを見るだけでも1日がかりの仕事だった。
そのときの応募案で、一番多かったのは「東京メッセ」だった。しかし、さすがに、ライバル施設の名前をつけることはできない。
ただ、そのとき、私たち事務局は「東京」というのが、自分たちが考えているよりも強いブランドイメージを持っているのだな、と実感した。
6432通の中から、私たち事務局は200の名前を厳選した。これを、6人の選考委員に提供した。
選考委員には、その中からおのおの20件の候補作を選んで、持ち寄ってもらった。だから、だいたい100の候補策が残った。
そして、選考委員会でさらに吟味し、最終的に20件の候補策を残してもらった。
さらに、その候補策を、私たちが商標登録にかけた。
建物そのものは「商標」にはならない。
しかし、建物の絵柄を利用して、文房具やトレーナーなどの衣料品、まんじゅうなどのお土産用お菓子を作る構想は当初からあった。
商標チェックの結果、候補策は半分に減った。
その中で一番上位に残ったのが、鎌倉の主婦Mさんの応募作品である。
「祭都」と書いて、サイトと読ませる提案だった。展示場の“場”とは、siteのサイトである。インターネットのサイトというのと同じだ。
これを選んだのは、国際展示場の設計を行った「佐藤総合計画」の社長だった。
その後中止になってしまうのだが、国際展示場は“世界都市博”のメイン会場になるはずだった。 設計会社の社長は、「設計上のコンセプトに祭都というのがよく合っている」とのコメントだった。しかし、ただの「祭都」では味気ない。そこで、私たちスタッフは、東京というブランド名を頭につけることにした。「東京祭都」。 どうせなら、日本で一番大きな展示場なんだから、東京「大」祭都にしよう、つまり『東京ビッグサイト』になった。
加えて、事務局ではサイトの英語名に当て字で、sightとつけた。「外国人が見たら、スペルミスではないかといわれる」と内部からはずいぶん苦情もあったが 、私たちは展示場を単なる“場”ではなく、将来の“展望”を見つける場所だという思いを込めた。 と同時に、新しい“展”示場に“望”みを託したのだ。
ところで、東京ビッグサイトで行われるイベントで一番人が集まるのが「コミックマーケット」。
通称“コミケ。1日に10万人の人が集まる。このイベントが盆暮れに2度ある。
コミケには、コスプレという、さながらテレビゲームから出た主人公のような衣装をまとった人たちも、集まる。
これを見ると、私たち公務員は、カルチャーショックを受ける。そういうイベントが今年ももうすぐある。
とはいえ、展示場は、新技術の見本市会場だ。
オープンした当時は、まだ、携帯電話も普及していなかった頃。「インターネットって何?」って時代だった。
当時、初めて、「液晶テレビ」というものを見た。メーカーの人に「これを買うとすれば、どのくらいの値段になりますかね?」と聞いた。
「とても値段なんてつけられない」「つけても車1台より高くなるだろう」と、担当は言っていた。
今から思うと、ずいぶん時代は進んだものだ。
工作機械の大きな展示会も開かれる。日本の工作機械の技術は世界有数。
金属を溶接するレーザーの工具が出品されている。
私のような素人にしてみると、レーザーとかプラズマとかはSFの世界の話なんだが、どこにでもいるような町工場のオヤジが、
当たり前のようにメーカーの担当者と専門的な話をしている。
隣には、ウォータージェットの切断機が出品されている。
説明を聞くと、「厚手の服地をレーザーで切断すると臭いがひどいけど、ウォータージェットだとそうはならない」という話をしている。
「服地を水で切るのか」。とても想像できない世界だ。
そんな仕事をしたこともある。
東京ビッグサイトは、おかげさまで今でも繁盛していて、利益を出し、独立採算が成り立っている。都にとっては優等生だ。
と、まぁ、こんなことばかり話しているとすぐに1時間半が経ってしまうので、前置きはこのくらいにする。
続く→