対鴎荘

たいおうそう

東京都多摩市連光寺1丁目

写真

聖蹟桜ヶ丘駅よりバス
「対鴎荘前」停留所下車徒歩約2分

川崎街道を稲城方面に向かい連光寺の坂を上っていくと、「対鴎荘前」というバス停があります。しかし近くを見渡してもそれらしい建物は見当たりません。

しゃれた名前だけど、多摩丘陵までカモメは飛んで来ないのでは?と思った方もいるのではないでしょうか。実は1980年代の中ごろまで、バス停の近くに「対鴎荘」という歴史的建造物が実在していました。

幕末に活躍した三条実美(さんじょう・さねとみ)という公卿がいます。日本史上最後の太政大臣であり、明治天皇の側近として明治維新をかげから支えたともいわれる人です。

三条実美は、隅田川沿いに「対鴎荘」という別邸を持っていました。現在の白鬚橋のたもとです。実美の死後、対鴎荘を購入した豪商が保存のため多摩の連光寺に移築した経緯があるそうです。往時には聖蹟記念館とともに多摩の名所として賑わいました。

戦後、対鴎荘は人手に渡り料亭になりました。最初は風雅な店だったようですが、老朽化が進み閉店しました。

次第に建物は荒れ果てて幽霊屋敷のようになってしまったそうです。対鴎荘を存続するか取り壊すかが市議会で議論され、結局取り壊されました。

対鴎荘が建っていたのは、大規模開発でライオンズマンションが建設されている敷地の一番上あたりです。最近、公園が整備され、対鴎荘の歴史を示す碑が立てられました。

(2005年8月)