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不案内な案内~データからインフォメーションへ (初出 2010.6.5 renewal 2019.9.15)
【補注】
ここで「オレオレ詐欺」が出ているということは、ずいぶん前から流行っていたのだな。
ちなみに、日本人の好きなランチェスターの法則は文中にあるものだが、この法則にはその前提となる第一法則がある。
それは「大海原で戦った場合は、戦力がわずかでも大きい方が勝つ」というもの。日本人はどうしても「小が大に勝つ」という話が好きなのだが、
やはり世の中、そううまくはできていないのだ。
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2.インフォメーション
デパートなどの案内窓口も、インフォメーションと表記されることがある。
インフォメーションでは、「○○売場でしたら、○階のエレベータを下りられてから、右手に進んで・・・」「化粧品売場は、1階奥の・・・」
「催事場では、○○の特選品販売を行っております」とかの情報を随時提供している。
<インフォメーション>は、データに、一定の方向づけや関連性を加えたものといえる。
単なるデータよりは、幾分進歩している。このため、人は与えられたインフォメーションを鵜呑みにしがちだ。 しかし、インフォメーションの内容が、常に正しいとは限らない。人に間違った道を教えることもある。
慎重な人でも、インフォメーションに騙されてしまうのは、その一部に「真実」が含まれているからだ。
「オレオレ詐欺」を見れば、よくわかる。
「あなたの息子さんの件ですが、実は、いささかまずいことになっていて・・・」とサギ師が持ちかけても、息子のいない人には通じない。
息子のいる人は、ドキッとする。
しかし、もっと判断に悩むのは、「どちらも正しいが、いずれかを選択しなければならない」場面に出くわすことだ。
日常の経営判断では、こちらの方がはるかに多い。
A、Bふたつの選択肢があって、一見理論的にはAの方が正しく見受けられるが、実はBが正しかったりすることもある。
次の2種類のインフォメーションは、いずれも正しそうだ。
[情報1] | A社への投資は利回りがいいが、リスクが高い。B社はA社ほど有利ではないので、うまみは少ないが、手堅い。
どちらを選ぶか? ――→Bを選ぶ可能性大 |
[情報2] | 低金利の時代だから、資金を効率的に回転させなければ意味がない。
A社、B社を比較すると、A社の方が、わずかながら有利である。どちらを選ぶか? ――→Aを選ぶ可能性大 |
要するに言い回しの違いである。下線の部分がポイント。手堅い人生を歩いてきた人ほど、ここに騙される。
ちなみにあのリーマンブラザースの倒産は、一攫千金のような話が崩壊したためではなく、 リスク回避の仕組みが逆にリスク増大を招いたところに原因があるらしい。
心情的に選択したい方が、理論的には不正解の場合もある。
医療の世界では、酸素吸入器が1台しかなくて、助かる可能性がある老人と、助からない可能性が高い子どものの2人がいた場合は、
迷わず老人に酸素を与える判断をするという。
さらに、インフォメーションの内容に「権威づけ」が行われると、さらに迷いやすくなる。
(1) ランチェスターの法則によれば、小規模企業は差別化戦略を取るべきであり、ニッチな市場で、一対一で接近戦を行い、力を集中させるべきである。 |
(2) きわめて少数な者にしか売れない商品も、インターネットの普及による、いわゆる「ロングテール」効果により、かなりの販売が期待できる。 |
この二つの主張は、最近とみに流布されている経営法則であり、正しい。
しかし、(1)は「仮に力の弱い者が強い者に勝つことがあるとすれば・・・」という注釈つきであり、
大手がニッチな市場に強い戦力を投入してきたときに、勝てる保証はない。
(2)も、「同じようなネット販売をする企業が出現しない」という前提が必要である。
誰もが同じことをすれば、利が薄くなる。
加えて、社会全般に景気が落ち込むと、まず購入が後回しにされるのは「ニッチ」で「ロングテール」な市場において販売される商品である。
それは、デパート→スーパー→コンビニ、という順番で販売低下が波及する様子からしても、うなづける。
となれば、(1)(2)の教えを全面的に信じて経営戦略を立てた会社は、失敗する。
要するに、本当に成功するためには、情報にプラスαが必要になるのである。続く→