「しごと」と「労働」に関するよもやま話(renewal)

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つまずかない人生:備忘項目 (初出 2011.8.7 renewal 2019.9.15)

【補注】
「社会科」の講義ノート続き。
いろいろと自分を守るための項目を挙げたが、今のような世の中で、それがどこまで有効か、自信が無い。
本稿を書いた頃は、こういうことをしっかり押さえておけば、役に立つと思っていた。その考え方には変わりはない。
だが、これからの世の中、会社自体が生き残っていくかどうか、確信できない。

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これだけは覚えておいてほしい。

今は忘れてくれてかまわない。何かあったとき、これだけは思い出してもらいたいことを話す。

<最低賃金>

最低賃金というのがある。 1,013円(令和元年10月1日効力予定)。 時給1,013円というと、月額16万円~17万円程度になる。
昔は安すぎて意味をなさなかったが、最低賃金はここ数年でずいぶん上がり、実勢賃金に肉薄した。
生活保護に比べて低すぎるといわれたからだ。

アルバイトだろうと、パートだろうと、最低賃金は適用されるが、
次の労働者には適用されない。
都道府県労働局長の許可を条件とした適用除外(最賃法8条1項、最賃則4条)
(1) 精神又は身体の障害により著しく労働能力の低い者
(2) 試用期間中の者
(3) 職業能力開発促進法に基づく認定職業訓練を受ける者のうちの労働省令で定める者
(4) 軽易な業務に従事する者その他の労働省令で定める者
・所定労働時間の得に短い者
・軽易な業務に従事する者
・断続的労働に従事する者

適用除外許可を受けようとする使用者は、それぞれの所定様式による申請書を3通作成し、所轄の労働基準監督署長を経由して都道府県労働局長に提出する。
ちなみに、最低賃金以下で人を雇うと、50万円以下の罰金(40条、20年度改訂)になる。

<減給>

月給の10分の1を超えられない。
よく、「ペナルティ」と称して、賃金のかなりの部分を減額する会社がある。言及には制限があることを覚えておいてほしい。

  <会社倒産で未払い>

立替払制度がある→すぐに労働基準監督署へ。

会社倒産の場合、賃金には「先取特権」がある。しかし、学問上の話だ。先取りできるのは極めて幸運な場合。いくらかでも確保するなら、国の立替に期待する。
もたもたしていて、機会を失う前に、まずは監督署に相談すべきだ。
なお、会社の経営が悪くなって賃金不払いが生じた場合は、まずは、いくら払われていないのか、書面に書いてもらうことをお勧めする。
蛇足だが、「辞めるといったら、うちの会社には退職金はないといわれたが・・・」という相談もある。 退職金については、法律の定めはない。退職金制度のない会社もあるし、一般的には採用3年目くらいまでは出ないことが多い。

<労働時間>

週40時間が原則だが、例外も多い。時間外労働には割増賃金が必要。 変形労働時間を取る場合には、労働者代表との協議が必要であるが、その手続上の不備が多い。「ウチは変形だから・・・」の一言で、残業を出さない会社もある。

<いざというときのために>

最後に、これから会社に就職する皆様のために、気をつける点を書いた。
一言でいうならば、記録を残せということだ。

(1)求人票の写しや求人広告などは、すべて取っておく。
(2)会社からもらった書類は、すべて取っておく。就業規則、雇用契約書(雇入通知書)、退職金規定。
(3)働く条件は、きちんと確認する。
(4)会社が説明した条件(賃金の決め方・賞与・昇給など)は、記録しておく。 説明の日時や場所、説明した人の氏名なども書いておくこと。
(5)残業代の支払いに疑問がある時は、勤務の記録(タイムレコードのコピー等)を取っておく。 そうしたものがない場合には、手帳に仕事の内容、勤務終了時間などを記入しておく。
(6)給与明細書は、必ず保存しておく。

本当ならこれに、「怪しいなと思う会社には就職しないのが一番」と付け加えたいところだ。
しかし、雇用環境はきびしく、そうそう会社を選べない。
毎年たくさん採用している会社がある。そういう会社には就職しやすい。 しかし、そういう会社はあぶない。毎年たくさん採用する会社は、毎年たくさん退職者を出している会社だと疑った方がよい。

就職して「いい会社でよかったな」と思っても、会社自体が倒産することもある。

できることなら「正社員」で雇われる方がいい。しかし、なかなかそうも言っていられない。
おそらく「契約社員」という選択肢しか選べないことも多い。
であれば、その「契約」の内容によく目を通してほしい。

当たり前だが、労働保険や社会保険にきちんと入っている会社の方が安心だ。
以前、偽装請負というのが流行ったことがある。
「給料を少しアップするから、来年度から国民健康保険に切り替えてほしい。」と提案されて、退職扱いとなって、 会社とは請負契約関係になる。会社が負担する社会保険料が浮く。 今、年金の負担額は給料の16%、その半分が会社負担になる。この金額は大きい。
会社から渡されるお金は増えるが、いつ解雇されても文句がいえない身分にされる。続く→