ここに書かれてる事は、今の病院の現状を良く表してる文章だと言えるでしょう。この事は病院のみならず在宅にも言えることで、口腔ケア(歯磨き指導)の大事さを書いておきたいと思います。
口腔ケアの重要性や意義、実技については、10年以上前から歯科からの活発な情報発信がなされています。一方で、看護系の諸誌をひもといても、口腔ケアについての看護研究はここ数年質量ともに充実の一途をたどっています。しかし、臨床の現場で口腔ケアがシステムとして定着した、という報告を目にすることは少なく、少数の熱心なナースたちによって、種々の困難を克服しながら続けられているのが現状ではないでしょうか。
口腔ケアに関するさまざまな報告を読んでいくうちに、私たちはあることに気づきました。歯科がこれだけ口腔ケアの啓蒙・流布に懸命に取り組んでいるのに、肝心のナースたちにこれらの情報発信が届いていないのではないか、という点です。歯科領域には「歯科衛生士」という職種があります。臨床検査技師や栄養士、放射線技師、視能訓練士、言語療法士などと同じパラメディカルスタッフで、歯科治療の際に歯科医師の直接・間接の介助や患者の口腔衛生指導を主業務としています。
歯科においては、この歯科衛生士たちが口腔ケアの主な担い手になっています。歯科を開設している総合病院においては、この歯科衛生士が勤務している施設も次第に増えてきています。しかし、病棟で患者の近くにいる看護師たちと、口腔の専門職である歯科衛生士たちが、各々の特質を活かした有機的連携の下に口腔ケアを行っている、という実例が、まだまだ少ないのです。
試みに、日本看護学会の種々の分科会での演題を、「口腔ケア」というキーワードで検索してみると1)、約60件の発表がヒットします。しかし、これに「歯科衛生士」というキーワードを追加すると、該当する発表は一件もありません(1996年〜)。
また、病院内に歯科の診療部門があることと、歯科衛生士が配置されていることが、結果的に病院の口腔ケアの重要度認識には影響していなかった、という報告2)もあります。病院内の歯科が他の診療科や病棟に対し、歯科保健の重要性を効果的に発信していないことがうかがわれます。
病院内で、あるいは在宅看護の場で、患者たちに先ず接するのはナースたちです。彼女らが口腔ケアに取り組みたいと思ったときに、何が問題になるか、歯科はその中にどう接していけばよいのか、そのような視点で書かれたものは、確かにそう多くはありません。
現状では、ナースと歯科衛生士の共通言語がないし、共通の活躍の場も限られています。歯科衛生士という職種をご存知ないナースも少なくないかも知れません。