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“カルバリオのイエス ZWV62

Gesù al Calvario

編成:SSAAA, soli; SATB, ch.; 2Fl.; 2Ob.; Chal.; 2Bn.; 2Vn.; Va.; B.c.

作詞:Michelangelo Boccardi

1735~1736年、宮廷楽長のハッセがドレスデンを不在にします。そのためこの時期はゼレンカが実質的な宮廷楽長の役割を果たしていました。そのため1735年の受難週にはゼレンカ作曲のこのGesù al Calvario. ZWV62が演奏されて、なかなか評判はよかったようです。

ただこの年はゼレンカにとってはあまり良い年ではなかったようです。というのはこの時期ゼレンカがドレスデンの実質的な宮廷楽長だったわけですが、どうも宮廷のイタリア人歌手とあまりそりが合わなかったらしく、仮病を使って歌うのをサボる人もいたようです。多分ゼレンカはそういう歌手たちに強いことを言うことができず、このあと体を壊したというのももしかしたらこのへんの心労があったからなのしれません。

そのへんはともかく、この作品は後期のゼレンカのギャラント風への挑戦の過程を示す作品としてかなり興味深いところがあります。
ゼレンカの紹介のところでも触れましたが、彼はハイニッヒェンの没後、宮廷楽長を希望しはじめたころから、当世のイタリアオペラ風の作風を取り入れ始めます。宮廷楽長に関しては残念ながらなることはできませんでしたが、作品へのギャラント風要素の導入はその後もずっと続けていました。これはその過渡期の作品になりますが、筆者はわりともう上手になっているような気がしますがどうでしょうか?

この作品ですが、タイトルの通りキリストの受難の場面をストレートに表現したものです。カルバリオの丘とはキリストが磔にされた丘のラテン名で、ゴルゴタの丘といった方が有名でしょうか。
物語はその場にいた三人のマリア(聖母マリア、マグダラのマリア、クレオファのマリア)と福音史家の聖ヨセフ、それにイエス本人によるイタリア語の会話劇です。テキストはBoccardiという人が書いたもので、多分宮廷詩人のような人だったのでしょう。当時のカトリックの受難オラトリオは、バッハなどのプロテスタントの受難曲とは異なって聖書をまんま読むのではなく、このように独自に翻案された物語が上演されたようです。

さて、この物語を読んでみて興味深いところは、登場人物たちがほとんど最後まで非常に人間臭い反応をしているところでしょうか。

聖母マリアは十字架につけられた息子を見て終始嘆き悲しみ続けます。クレオファのマリアは罪人は自分なのだから代わりに私に罰を与えてくださいと祈ります。マグダラのマリアは、あんなイスラエル人たちに哀れみなど与えず、とっとと罰してくださいと憤ります。
キリスト本人は自らの死によって人々が救われるからだとは分かっているようなのですが、福音史家の聖ヨハネも目の前で起こっていることには最後まで納得がいかない風情です。
キリスト教的には罪なき人がこうして犠牲になることで全人類が救済されるというところが重要なのでしょうが、その部分は最後のヨハネのレチタティーボと終結合唱でさらりと流されています。

このあたりは要するにこれは娯楽作品だったからだと言えます。当時オペラは宮廷人にとっての最大の娯楽でしたが、受難週にはさすがにそういったものを上演するのは不敬であるということで、こういった“受難オラトリオ”が上演されていました。しかし結局それは多分、オペラの代わりに仕方なく、といった気分だったと思います。
そこで作品も難しいお説教ではなく、キリストの受難を見て嘆き悲しむマリア達の心情を歌い上げたものというような物になったのでしょう。

そしてその物語につけられたゼレンカの音楽には、まさにそこにいた人々の悲しみや怒り、戸惑いといったものが、最初のシオンの乙女たちの合唱から始まって、各登場人物のアリアだけでなくレチタティーボに至るまで見事に表現されています。
それを聞けばゼレンカは宗教曲だけでなく、このような人間的テーマを取り扱っても非凡な才能を示しているのは間違いありません―――というかむしろ、元々ゼレンカという人はそもそもそういった情感の扱いに長けていて、彼の作った宗教音楽にそれがあふれ出ているから、今私たちの心を打っているのではないかとも思います。

登場人物
イエス・キリストアルト
聖母マリアソプラノ。イエスの母親のマリア。
マグダラのマリアソプラノ。福音書内で何度も登場する。かつては娼婦であった罪の女とも呼ばれる。
クレオファのマリアアルト。聖書の中ではこの受難のシーンだけに名前だけ登場する。クロパの妻マリアとも。
聖ヨハネアルト。福音史家。ヨハネによる福音書を書いたと言われる。

歌詞対訳

1. Introduzione1. イントロダクション
2. Recitativo: 2. レチタティーボ:
--- Maria Vergine:
--- 聖母マリア:
O figlie di Sionne,おお、シオンの娘たち、
voi, che meste seguite悲しみに満ちて
i passi miei:私に従ってきたものたちよ。
Dite mie care,親愛なる人に告げてください
dite voi che vedeteあなたの見たことを語ってください
in tante pene激しい苦痛に
avvolto il Signor vostro,あなたの主である
il mio bel figlio:私の美しい息子が苛まれています:
Oh Dio! Dite vedeste maiああ、神様! あなたが今までに見た中で
un tormento maggior最もつらく苦しいものが
del dolor mio?私の悲しみだと言ってくださいますか?
3. Coro: 3. 合唱:
--- Figlie di Sionne:
--- シオンの娘たち:
Misera Madre,哀れな母が
ecco, sen vieneここにいる
Gesù languente主イエスは衰弱し
fra le catene鎖につながれて
e i passi al monte山への階段を
drizzando và.上っていく。
Cinta di spine茨の冠が
la bella fronte美しい顔の上に
dal pondo atroce酷く重たい
della sua croce十字架を担い
Ahi I' innocenteああ、罪なき者が
già opresso sta.疵付けられてしまった。
4. Recitativo:4. レチタティーボ:
--- San Giovanni:
--- 聖ヨハネ:
Fiero dolor mortale死ぬほどの嘆きがわき起こり
con simpatia d'amore愛の共感とともに
le sue agonie mi fàその苦しみは私を
piombar nel core.心の底までうち沈める。
Ahi! perchè non posso io,おお、どうして私にはできない?
popolo ingrato e rio!恩知らずで邪悪な人々より
sollevar di sue spalle彼の肩から
il giogo atroce!酷いくびきを取り去ることを。
Giogo! che sul suo dorsoくびき。その背にあって
an fabricato i peccatori, e tutti!すべての罪人の証となるもの。
sopra di lui l'iniquitàその肩の上に
di ei porta.彼が背負っているもの。
Ahi! che veggo soccombeおお!私の見たものは
un altra volta il mio Signorわが主が初めて犯した
sùl pondo troppo ingiusto不公正きわまりない
e crudel della sua croce.残酷な十字架。
Or ch' esanime e lassoもう疲れ果てているのに
il suo bon Dioわが良き主は
mira volgere il passo,歩みを続けている。
il pertinace mondo ancor頑なな世界を壊してしまうような
non frange l'ostinato suo cor冷徹な心はないのだろうか
a tanto amore?愛してやるのではなく?
No, non v'è fede nel mondo.そう。世界に信仰はない。
O pure l'uom人々は
a di macigno il core.石の心を持っているのだ。
5. Aria: 5. アリア:
--- San Giovanni:
--- 聖ヨハネ:
Se in te fosse viva fede,あなたが信仰の中で生きていたならば、
al veder d'un Dio le pene,神の苦しみを見たがゆえに、
peccator saresti santo.罪人は聖人となるだろう。
Ma si pecca e non si crede,しかしそれを信じないことは罪であり、
che si perda un sommo bene,私たちは最高のものを失い、
e il peccar l'offenda tanto.その罪はあなたがたを深く傷つける。
6. Recitativo: 6. レチタティーボ:
--- GESÙ:
--- イエス:
Madre! Figlio!母よ! 子よ!
Siam giunti al fatai locoわれらは運命の場所に至った
dove amor olocausto死はどこにあったのか
e sacerdote quest'oggi adempia今日土に還り
il grande sacrificio cruento,偉大な血の犠牲により
e solva il patto契約が行われる
sul banco de la croce,それは人類の救済なのだ。
col sangue mio,十字架と
del l'uman riscatto.私の血で購うことで。
--- Maria Vergine:
--- 聖母マリア:
Dunque nascesti, o Figlio,そのために生まれたのですか?わが息子よ。
a viver sempreこのような人生を生きるために
fra pene e giù affanni e tali?苦痛と悲しみに満ちあふれて。
Son del viver tuo le tempre,そんなあなたの命の証を
che più misero ancor morir ti vegga.いま私は悲しげに見守っています。
Una misera madreこの哀れな母親には
senza ottener pietà慈悲を与えてもらえないのですか?
da tuo gran Padre?偉大なる父からは。
O decreto fataiああ、なんと破滅的な定め
di amor tiranno.そんな愛は暴虐です。
--- GESÙ:
--- イエス:
Tregua, tregua終われ、終われ
o Madre al tuo affanno.ああ、母の悲しみよ
Tergi, tergi乾け、乾け
dal pianto il ciglio;涙はその目より。
nelle sue pene彼女が悲しんでいては
Amor non voi consiglio.愛は成就しない。
7. Aria: 7. アリア:
--- Maria Vergine:
--- 聖母マリア:
Ah, se tu costi tanto amorおお、あなたがそれほどまでに
di sangue e pianto血と涙を愛するのなら
sei pur tiranno a un cor,あなたの心は暴君のようです
sei pur ingiusto amor,あなたの愛は不当です
sei pur spietato.あなたは無慈悲です
Che tirannia d'amore暴力的な愛
soffrir tanto dolore;そんな痛みを与え
amar chi amor non à,愛していない者を愛し
penar per l'empietà邪悪な苦しみを与えるための
d'un core ingrato.恩を知らない心なのです
8. Recitativo: 8. レチタティーボ:
--- San Giovanni:
--- 聖ヨハネ:
Tanto amor che ti giovaそのような愛のどこが良いのです?
o mio Signor!おお、わが主よ!
con chi t'offende ogn'ora.あなたを侮辱する人にいつも
Ah! che più giusto foraあなたはよりよくしようとする。
d'ira e vendetta armato怒り、復讐してください!
l'empietà depunir邪悪を罰してください
d'un mondo ingrato.恩知らずな世界に対して。
Troppo avvezzo è Israelleイスラエル人は増長して
a la clemenza e pertinace,相変わらずあなたが慈悲深い
crede, o, che il suo Dio彼らの神だと思っているようだ
non sei, o non quel dessoだがそうではない。
che del vecchio delittoかつての犯した罪のために
già in Sodoma punillaソドムとエジプトで
ed in Egitto.罰せられたではないか。
--- GESÙ:
--- イエス:
Io non venni, Giovanni,私はそのために来たのではない。ヨハネよ。
al basso mondo世界を統べるためでも
per intendar del peccator la morte,罪人に死をもたらすためでも
ma affin cheそんなためではなく
si converta e sempre viva.永遠の生命を与えるためなのだ。
--- San Giovanni:
--- 聖ヨハネ:
Ma quando più ostinatoしかし彼らがこれほどまでに頑なならば
all'amor tuo resisteあなたのそのような愛をもってしても
in sua rovina?破滅は免れ得ないのではありませんか?
--- GESÙ:
--- イエス:
Pena per lui bastante十分に価値はあるのだ
e il suo peccato;彼らの罪をあがなうには;
ma verme s'avvicinaしかしもう近づいてきている
la turba armata.武装した群衆達が。
Addio! Giovanni, addio!さらば、ヨハネよ。さらば
Diletta, diletta Genitrice.私の母を愛し、世話をしてほしい。
in questi amplessi prendete, o cari,この抱擁は、最も価値のある
un pegno del piu dolce amor mio.私の最も深い愛の誓い。
Armati di costanza,忍耐をもって武装し、
o cara madre,ああ、愛する母よ、
lascarti è duopo,私はあなたから離れなければならない。
ed ubidir al Padre.そして私の父に従うのだ。
--- Maria Vergine:
--- 聖母マリア:
Turba crudel t'arresta,酷い群衆達よ
il mio figlio è innocente.私の息子は無実です。
Io la rea sono,私が罪人であり
io la vittima ancora!その犠牲になりましょう!
--- GESÙ:
--- イエス:
Non t'affanar di piu!恐れてはならない!
La legge è questa:これが定めなのだ:
Il reo si salvi,罪人が救われるために
e l'innocente mora.無実の人が死ぬことが。
--- San Giovanni:
--- 聖ヨハネ:
Io levar non posso私は納得できない
cosi barbari oltraggi;そのような恐ろしい不公正を。
questa legge, o Signor!わが主よ。その定めは
troppo è severa:厳しすぎませんか?
L'innocente si salvi,無実の者は助けられ
e il mondo pera.世界こそが罰せられるべきなのです。
9. Aria: 9. アリア:
--- San Giovanni:
--- 聖ヨハネ:
A che riserbanoああ、どうして天は
i cieli i fulmini,雷光を手にして
che non li vibranoそれを投げ落とさないのだ?
a l'empietà.その不信心者たちに?
Di madre misera,その哀れな母親に
gran Dio, le lagrime大いなる神よ、彼女の涙に対して
da te dimandano,送ってほしい
qualche pietà.ささやかな思いやりを。
10. Recitativo: 10. レチタティーボ:
--- Maria Maddalena:
--- マグダラのマリア:
Ed io, Signor,わが主よ、
che tanto misera me t'offesi!あなたを怒らせてしまって悲しいです
Impunita n'andrò nel mio perdono?私は自分の罰を免れることができますか?
--- Maria Cleofe:
--- クレオファのマリア:
Ah no! turbe spietate,違うのです。無慈悲な人々よ、
no, per pietà! vi fermate,違うのです。哀れみなき人々よ、
io l'empia sono,罪人は私なのです。
in me volgete l'ire;私に対して怒りを向けてください。
parla al favor.穏やかに話してください
La legge del'innocente e soloその人は無実であり
chi colpevole fu deve morire.罪ある者だけが死ぬべきなのです。
11. Aria: 11. アリア:
--- Maria Cleofe:
--- クレオファのマリア:
Si la morte確かなる死
è la mia pena,それが私の罰
io son la rea,私が罪人であり
Gesù è innocente!イエスは無実です
Pietosa gente,慈悲深い人よ
la morte a me!私に死を与えてください
Perchè più forteなぜそれほどまでに
non m' ange e svena私に負担はなく
il dolor mio?痛みにも苛まれないのですか?
Perchè mio Dioなぜですか? わが神よ
con me si buono?私にそんなに良くしてくれるのは。
S'io quella sonoもし私が
che fu ribelleそのような背教者ならば
tutto Israelleすべてのイスラエル人が
s'avventi a me.私の敵なのに。
12. Recitativo: 12. レチタティーボ:
--- GESÙ:
--- イエス:
Smanie di dolci affetti深い感情の混乱に
aquetatevi omai!気をつけなさい。
Bastan due stilleそこには二滴のしずくのような
di dolenti pupille,痛みに満ちた眼差しがある
A purgar ogni colpaすべての罪を取り除き
e Dio è contento,神が満足するそのときとは
quando nasce dal cor人々の心に
il pentimento.悔い改めの気持ちが生まれたときである。
13. Aria: 13. アリア:
--- GESÙ:
--- イエス:
S'una sol lagrima一筋の涙が
di pentimento悔い改めのために
mi desser tutti流されることで
di cor pentito,私は心に思う。
quanto contentoなんと幸せに
io morirei.死んでいけるのだろうと。
Se amante ogn' anima全ての魂を愛す
nel uom contrito悔い改めた人々の魂を
mi desser un soloただ一つの
segno d'amore,愛の証
tutto il gran duolo,さすれば大いなる痛みは
che m'ange il core私の心の中のそれは
sciolto vedrei.消え去っていくだろう。
14. Coro di Giudei14. ユダヤ人の合唱
Si crocifigga il Nazareno十字架にかけられたナザレ人
che d'ardir pieno傲慢さに囚われ
ribelle a Cesare,皇帝に刃向かった
di Giuda chiamasi il vero Rè.ユダヤの真の王
E poi a eternaそしてそれは永遠に
memoria incidasi刻み込まれる
il falso titulo間違ったレッテル
per cui si cerna本当はこう言われるべきだった
che tal non è.彼はそうではなかったと
15. Recitativo: 15. レチタティーボ
--- Maria Vergine:
--- 聖母マリア:
Spasimi del cor mio,私の心をかき乱し
pietosi alfin tiranni,思いやりを見せ
soccomber mi lasciate al mio dolore.その痛みに屈服させようとする。
Resister più non posso私にはもう耐えられません
a l'agonie d'un sempreその死の苦しみが
vivo e paziente amore.永遠の愛の名のもとに与えられることには。
Ma qual scena d'ogn'altraもうこの光景には
ancora peggiore.目も当てられません。
Soffre a miei lumi, o Dio,どんな責め苦なのですか。ああ神よ。
spogliato il mio bel figlio,愛しい息子が裸にされ
su duro infame legno十字架を引きずって
a strascinar vegg'io山を這い上っていく姿を見せられるというのは。
popolo indegno.邪な人々に強いられて。
--- San Giovanni:
--- 聖ヨハネ:
Mostri d'inquietà汚名の怪物、
furie d'abisso,地獄の憤怒、
cosi s'oltraggiaそしてあなたは報われる
il Signor vostro e mio.あなたと私の主に。
--- Maria Maddalena:
--- マグダラのマリア:
Come il soffrite cieliどうやって天国にいけるのです
che in mezzo al due ladron二人の泥棒の間にいる
si a croce fisso.十字架上の彼が。
--- Maria Cleofe:
--- クレオファのマリア:
Fra due ladroni二人の強盗の間にですよ
il mio Signor?主よ?
--- San Giovanni:
--- 聖ヨハネ:
Aita! Non vi bastòおお!それでもあなた方は満足しなかった。
crudeli d'averlo残虐な強盗の
gia proposto処刑を提案されたというのに
a un Barabasso!バラバという!
--- Maria Vergine:
--- 聖母マリア:
Da quai pungenti chiodiけたたましく釘が
traffiger mai veggio打ち込まれている
le mani e i piedi.その手や足に
Ogni colpo crude!,すべての残酷な打撃が
che il crocifige彼を十字架につけた者が
mi fere l'alma魂を傷つけ
e il core mi trafigge!私の心を刺し貫く。
--- Maria Maddalena:
--- マグダラのマリア:
Sagre membra adorate,聖なる選ばれた人々よ
che si pietose ogn'ora,あなたが常に思いやっておられる者達が
voi vi stendeste与えているのです
al peccator dolente.主の苦しみを!
E perchè mai,そしてなぜ
perchè lasciate neghittosiどうしてあなたは空しく立っているのです?
nel ciel i vostri fulmini,天空の雷撃で
che non puniteなぜあなたは罰っさないのですか?
lostinata gente,その頑固な人々を、
che si v'oltraggia?それであなたは報われるのですか?
Ah! in questo ceder dovriaああそれは与えられなければならなかった
la troppo umanità paziente;あまりにも愚かな人類に。
e rivestendo il suo divin potere,それは神によって示され
Armar tutte a lor danni彼らの懲罰を引き起こし
l'ire del ciel未知なる天の激怒は
più paventose e fiere.何よりも恐ろしすぎる
16. Aria: 16. アリア:
--- Maria Maddalena:
--- マグダラのマリア:
Se ingrato e ribelle恩知らずで手に負えない
t'offende lsraelle,無礼なイスラエル、
lascia la tua pietà哀れむのをやめなさい
cessa d'amar chi è ingrato恩知らずな者を愛するのを止めなさい
usa la crudeltà残酷さを示しなさい
con chi è crudele.残酷なる者達には。
Che giova, mio Dio,何が良いのですか、神よ、
per chi non lo sente分からない人々のために
amor si clemente;愛が寛容であるということを;
deh cessa esser pio,ああ、哀れむことをやめて、
deh cangia l'amoreああ、愛するのをやめて
in tanto furore激しい怒りをもって
e con chi t'è infedele.あなたに不誠実な彼らに対してください。
17. Recitativo: 17. レチタティーボ
--- GESÙ:
--- イエス:
Alzate pur il gran trofeo偉大な勝利がわき起こる
d'un paziente amor,永遠の愛によって、
misere turbe.惨めな人たちに。
L'innocente si specchi罪のないものはそれで認められ
e si consoli.そして自身を慰める。
V'affisi il guardo e tremi!彼らはそれを見て震えた
Il pertinace reo頑なな罪人達が。
che non s'arrende,それは重要ではないのだ。
e tanto sangue sparso彼らの血が
inutil rende.無駄に流されることは。
--- Maria Vergine:
--- 聖母マリア:
O figlio! O vista!我が子よ。何という光景
O crudeltade! O pena!なんてひどい、ああ、痛ましい!
--- GESÙ:
--- イエス:
Arder mi sento al core,私の胸で燃えている、
tutto di foco大変激しい炎が、
un sitibondo ardore.私は激しく渇く。
--- Maria Maddalena:
--- マグダラのマリア:
Il mio Signor à sete.わが主は渇いている。
--- Maria Cleofe:
--- クレオファのマリア:
Ma qual bevanda, o Dio,しかしどんな飲み物なら、神よ、
voi gli porgete?十分なのですか?
--- San Giovanni:
--- 聖ヨハネ:
Fermate o ciechi目を閉じなさい
egli arde sitibondo彼は苦しんでいる
d'una sete salubreその渇きは救いをもたらすのだ
a tutto il mondo.このすべての世界の。
--- Maria Maddalena:
--- マグダラのマリア:
E il popolo crudele残酷な人々が、
indiscreto無情にも
gli porge aceto e fiele.彼に酸っぱい葡萄酒を与えます。
--- GESÙ:
--- イエス:
O Dio gia opressa sentoああ、神よ。私は知りました
la frate umanitàこのはかない命
dal fier tormento.ひどい苦悩に満ちあふれた。
Eterno Padre, mio Signor e Dio,永遠の父、わが主、神よ
perchè mi abbandonasti?どうして私をお見捨てになったのですか?
--- Maria Vergine:
--- 聖母マリア:
Non ai piu strali amor,あなたがたには愛がありません。
non ai piu pene,あなたがたには思いやりがありません。
o tiranna empietà.なんと暴虐的で残酷な人たちでしょう。
Par mi che bastiもう十分ではありませんか。
questo crude! trionfoこの血まみれの勝利。
a lostinata tua perfidia,あなた方の頑固な怒り。
o Sionne.ああ、シオンの民よ。
--- GESÙ:
--- イエス:
Ecco donna il tuo figlio!女よ、あなたの息子を見なさい。
Ecco figlio tua madre!あなたの母の子を見なさい。
--- Maria Vergine / San Giovanni:
--- 聖母マリア/聖ヨハネ:
O voce! O amore!ああ、その声! ああ、その愛!
--- Maria Maddalena/Maria Cleofa
--- マグダラ/クレオファのマリア:
Tanto tu ascoltiあなたはこれを聞きました、
e non ti spezzi, o core?だからもう心を痛めることはないでしょう。
18. Duetto: 18. デュエット:
--- Maria Maddalena/Maria Cleofe:
--- マグダラ/クレオファのマリア:
Santo amor,聖なる愛
che tanto peni,それはあなたをひどく傷つけました。
deh m'accendi.ああ、なんと腹立たしい。
Rio dolor,なんと痛ましい。
che non mi sveni,私が不滅であることを
che pretendi,それをあなたは望んだのです。
or che sangueなのに甚だしく流れだした
in mar di sangue血の大海の中が
va languendo il mio Gesù.今の主イエスのいる場所なのです。
Ache fai,何をしているのですか?
se soffri tantoそんなに苦しんでいて、
mio Gesù私の主イエス様、
per colpa mia?私の罪のせいで。
Se peccai orもしできることなら
nell mio pianto,私は私の涙をもって
laverò洗い流すでしょう。
la colpa ria.私の重い間違いを。
E diròそして私は言うでしょう。
tutta dolore私の深い痛みの中で、
mio Gesù,私の主イエス様、
mio dolce amore,私の愛する人よ。
non peccherò,私はもう嘆きません
no, non mai più.これ以上はもう。
19. Recitativo: 19. レチタティーボ
--- GESÙ:
--- イエス:
Vinto da tanto amorかような愛ゆえに
l'antiche offese私は古い約定を
io spargendo忘れるために
d'oblio degne allorそしてあなた方に役立つように
vi farò del sangue mio.私の血を流したい。
--- Maria Vergine:
--- 聖母マリア:
lsraelle, che fai,イスラエル人よ、何をしているのです?
popolo ingrato, o Dio!不誠実な人々よ、ああ神様。
perchè non cangi,なぜあなた方は行こうとしないのです?
perchè non ti convertiなぜあなた方は変わろうとしないのです?
al tuo Signore?あなたの主の方に。
--- GESÙ:
--- イエス:
Perdona, o mio gran Padre,お許しください。わが偉大な父よ。
o Dio immortale,おお、不滅の神よ
perdona a questo popolo ciecoこの盲目の人々をお許しください
che non sa quelche fassi !何をしているか分からない人々を。
--- Maria Vergine/Maddalena/Cleofe/San Giovanni:
--- 聖母/マグダラ/クレオファのマリア/聖ヨハネ:
O Clemenza! O pietà!ああ、善と同情、
che non à eguale!それは同じものではない!
--- GESÙ:
--- イエス:
Gia s'affrettaそのときは近づいている。
il fatai momento estremo運命的な、最後の瞬間が。
in cui s'adempiaそのとき
il sagrificio appieno.犠牲は全うされるであろう。
Padre e Signor父、そして主よ
omnipotente e pio!全能で優しいお方よ。
nelle tue sante maniあなたの聖なる手の中で
io ricommando私は告げた。
con ultimo sospir私の最後の息吹で
lo spirto mio.私の思いを。
--- Maria Vergine:
--- 聖母マリア:
Ahi! soccombe al rigorああ、なんとひどいことでしょうか。
delle sue agonieその苦しみ
languendo il figlio mio,私の息子が死んでいきます。
l'estremo sfogo激しい苦悶と
del barbaro martiro酷い殉難の中で
io ne intesi scopiar崩れ落ちていきました。
in quel sospiro.ため息とともに。
Ahi che pur troppoああ、あまりにもひどい
dal dolor oppresso痛みに苛まれながら
esanime spirasti,息を引き取った
o figlio amato.愛する息子よ。
--- GESÙ:
--- イエス:
Si, si Madre,母よ
il sagrificio e consumato.犠牲はなされたのだ。
--- San Giovanni:
--- 聖ヨハネ:
A che piegandoなぜ傾けている
il capo sagrosantoその聖なる頭を
spoglio si fè di morte,死の餌食になったのか
il Dio di vita.命の神が?
--- Maria Vergine:
--- 聖母マリア:
E perchè non posso ioどうして私にはできないのでしょう?
con tanto piantoたくさんの涙と
tutto il sangue,全ての血
che resta spremerそれなら私の中にあるのに
da questo core私の心臓から
vittima delaltrui犠牲として
del mio dolore.私の痛みとともに捧げられないのでしょうか?
20. Aria: 20. アリア:
--- Maria Vergine:
--- 聖母マリア:
Che fiero martireなんとひどい苦しみ
d'un anima affiitta傷ついた魂
bramar di morire,死なせてください
morir di dolore痛みで死んでしまいます
e pur dover vivere生きていたとしても
per solo penar.苦しむだけですから。
Che barbaro sorte,なんと苦い運命
che nuovo tormento,その新たな苦痛
sentirsi刺し貫かれ
trafittaその身で感じている
nel' alma e nel core,魂と心臓で
più fiero di morte,死よりももっと悪いことは
soffrir quel ch'io sento私の見ている苦しみとともに
e in vita restar生き続けること
21. Recitativo: 21. レチタティーボ
--- San Giovanni:
--- 聖ヨハネ:
Ma di tragica scenaしかし暗闇の中で
al tetro aspetto inorridisceその光景に憤るだろう
il cielo e la natura.空と大地は
Squarciato al tempio il velo,寺院の垂れ幕が裂け
Trema la terra tutta,大地は振動し
e il sol s'oscura.太陽は暗くなる
Concavi specchi e cavernosiそして山の火口から
monti forman eccho,響き渡る
Lugubre al tetro suono.恐ろしい雷鳴
Da spaventoso tuono岩や石が震え
scosse le rupi e i sassiそのような轟音が
al' orrendo fragor.むごたらしい泣き声とともに
D'urli feroci si scatenano風が、伝える
i venti, e per ondose foci波打つような囁きを
vanno confusi e misti gli elementi.混乱した精霊の
Tutto reca spavento全てが恐怖し
e tutto è orrore.全ては戦慄した。
E sol nel uomそこでただ一人の男だけが
non si riscuote il core.その心を動かさない。
Ah! correte al sacro fonte,ああ、聖なる泉に急ぎなさい
anime sozze e immonde;穢れた罪深い魂よ
affrettatevi agnelle seあなたを子羊に向けて開き
fameliche siete e sitibonde,あなたが空腹で渇いているときに
il buon pastor vi chiama良き羊飼いがあなたに告げる
al monte.山へ向かえと。
22. CORO22. 合唱
Questo è il monte salutare,ここは祝福の山
dove pasce il buon pastore,良き羊飼いが葡萄畑を作るところ
questo è il sacro vivo altare,それは聖なる生ける祭壇
che d'amor v'accenderà.あなたを愛にて奮い立たせるもの
Qui ti chiama il pastorelloこの地で羊飼いがあなたに告げる
agneletta già smarrita;一度失った子羊を
Qui t'invita il sacro agnello,ここで聖なる子羊が招いている
che di se ti pascerà.彼の体とともにあなたを養うために

Gesù al Calvario. ZWV62翻訳の顛末

ゼレンカの作品のわりと重要な部分を占めるオラトリオ系の作品なんですが、以前の「バロックと古典派」の分析からも、この手の音楽を嗜むためには歌詞の理解が必須になってきます。
しかし最近は国内盤のCDなんて出てくる気配もなく、対訳を入手するなんてほぼ不可能です。そこで仕方なく自前で対訳を作成して公開したのが、数年前に作った曲目解説のオラトリオの章だったりします。

ところがそこで困ったのがこのZWV62でした。というのが、このCD(45)そのものは2001年くらいには出ていたのですが、そのライナーノートにはイタリア語からドイツ語への対訳しか書いておらず、確かドイツ語は第二外国語で取った気もしますが、完全に忘却の彼方です。ということでそのときは対訳作成を断念していたわけです。
ところが最近(2016年)になって、Goolgle先生の機械翻訳が結構マシになってきたという話を聞きました。そこでもしかして……と思ってやってみたわけですが……

2. Recitativo: 2. レチタティーボ:
O figlie di Sionne,シオンの娘たち、
voi, che meste seguite悲しい続きます
i passi miei:私の手順を実行します。
Dite mie care,私の愛するを教え、
dite voi che vedeteあなたはあなたが見ることを言います
in tante pene非常に多くの痛みで
avvolto il Signor vostro,あなたのマスターを包み、
il mio bel figlio:私の美しい息子:
Oh Dio! Dite vedeste mai神ああ!あなたが今まで見たこと
un tormento maggior最も苦痛
del dolor mio?私の悲しみの?
3. Coro: Figlie di Sionne3. 合唱:シオンの娘たち:
Misera Madre,惨めな母、
ecco, sen vieneここでは、SENがあります
Gesù languenteイエスの感傷的な
fra le catene鎖間
e i passi al monte山へのステップ
drizzando và.perking行きます。
Cinta di spineいばらの壁
la bella fronte美貌
dal pondo atroce凶悪ポンド語によって
della sua croce自分の十字架
Ahi I' innocenteAHI「無実
già opresso sta.opressoすでにあります。

―――このへんで頭痛がしてきました。

しかもそのあとも例えば pene という言葉があって、これは文脈からどうも痛みとか悲しみみたいな感じかなと思われるんですが、それをずっと PENIS(もちろんアレのことです)と訳してくれたりとか―――やっぱだめかあと思ったわけです。

ところがそこでふっと、機械翻訳はインド・ヨーロッパ語族間の方が正確なはずだから、それなら一度英語に訳して、それを自前で訳した方が上手くいくのではということに思い当たったわけです。
そこでやってみたら今度はかなり上手くいったのですが、それでもこのイタリア語は18世紀前半の、日本では江戸時代に当たる時代に書かれた半分古語といっていいような物でもあるので、やっぱり訳が分からないところは分かりません。

しかし、ここでドイツ語対訳が役に立ちました。こちらの方は現代のドイツ人に分かりやすく訳されているようなので、これだとかなり意味の通る英語になってくれたのです。
ということで上記翻訳はおおむね、元のイタリア語歌詞→ドイツ語→英語に機械翻訳→日本語といったプロセスを経て生まれたものです。

しかももちろん全てが上手くいったわけでもありません。そこで何かよく分からないところは、ほとんど文脈から創作じみたことをしてるところもあります(というか、受験英語の答案で分からなければ創作してでも埋めておけと言われたもんで……)

―――ということで、これまでのオラトリオテキストの翻訳もいい加減ですが、これはさらに輪をかけていい加減だということを念頭にお読みくださいw


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