愛>恋>好きの物語。初めてのデートの前のみほの文化祭の日。11月3日

秋のマラソンは50kmなので、7時半学校集合で、スタートが8時である。よって、朝5時に起きる。外はまだ、暗い。

マラソン大会

1年の春のマラソンは10kmで、ほとんど最後尾からのスタートだったから、細い道で1000人近い生徒を追い抜くのに手間がかかり、100番だった。1年の秋は35km地点で足がつり、その後、歩いたり走ったりで30番だった。2年の春は、3年生にまぎれ込んで先頭からスタートし、10番だった。今回は一桁が目標である。

去年、山岳部の2年の先輩は完走して10番だったから、完走が必要条件である。ただ、先輩が言うには完走すれば、十分、10位以内に入れるとは限らないらしい。完走は十分条件ではない。

山でも、息は苦しくないのに、足がつる事が良くあった。そういう体質なのかもしれない。つらない事が最低、必要条件である。という事で、朝はでんぷん質のご飯と、果物を食べた。果物が「つり対策」に効果があるかどうかは、雅夫の知識では分からなかったが、なんとなく、そうした。途中のエネルギー補給と「つり対策」におにぎり2個と、みかん1個を持っていく。給水所は5km毎にあるが、スペシャルドリンクなどはない。必要なものは個人が腰に巻き付けて走る。去年のかかとの傷は完治していたので、バンドエイドは持っていかない。 マメができたら、完走はあきらめるだけだ。(エイドaidの意味は助けるだ。バンドエイドは傷の治りを助けるバンドという意味かな。)

学校から出発地点までぞろぞろと、20分ぐらい歩く。スタート1分前から、秒読みが始まる。心臓はドキドキ、アドレナリンの分泌が高まっている。

20km地点は40番で通過した。35km地点まで来ると、上位の者でも歩き始める者が、ちらほらでるので、30番に順位が上がった。去年はこの辺で足がつったが、その兆候(indication、sign)はまだ、なかった。疲れてはいるが、みほのことを考えて走っている訳ではなかった。山の事を考えながら走った。

【男にとって大切な人と大切なもの】

(天の声)
には、大切な人と大切なものが同時に存在する事がある。
普通のには分からない。「と○○とどっちが大切なのよ。」とか言う。
「それは、の方が大切さ。でも、こっちも大切なんだ。」
なんて、説明ではたいてい納得してくれない。
そんな事が原因で、20年後、雅夫は離婚の危機を迎える。
相手はみほとは別人の洋子さん。
(/天の声)

来年の3月には北岳に登るんだ。これぐらい、なんて事はない。
冬山では40kg以上の荷物がある。今は空身だ。
利根川の橋にかけての上り坂。ナンダサカ。コンナサカ。
コンチキショウ。コノヤロウ。マッタク、モウ。ブツブツ。アーア。
高橋尚子はエライ。
悪態をついたのが災いして、後7kmという所で、やっぱり、来てしまった。
また、歩いたり、走ったりで結局24位だった。

ゴールは小学校の体育館で、ほとんどの者が寝っ転がって休んでいる。
待機しているだけなのか、校庭には白い救急車が止まっていた。
山岳部には寝っ転がって休む習慣は無かったし、雅夫には、大事な約束があった。
トン汁を食べ終わると、近くの駅へ歩き始める。帰りは電車だ。
疲れてはいたが、この時は何ともなかった。
50kmというと電車で1時間ぐらいかかる。
そのうちに、体が冷えてくる。電車を降りると、たいてい階段がある。
アーツルツル。階段にバナナの皮があったわけではない。

足をひきづりながら、浦和のはずれにある、みほの高校に着いた時は、2時を過ぎていた。
「今、赤いレンガの校門。」「すぐに行くから、まっててね。」
5分ぐらいして、みほが現れた。
疲れ切った雅夫にはみほの笑顔はマリア様のようだった。
「遅かったから、心配したわ。昨日、救急車の夢を見たの。」
みほの目がうるんだようだったが、みほはくるりと振り返り、雅夫を見ずに校舎の方へ歩き出した。
「大変だったでしょ。50km。」あわてて、雅夫も後を追う。
足をひきづらないように努力して。
「いや、そんな事ないよ。走るの好きだし。3月に登る北岳に比べれば。」
雅夫は本当にそう思っていた。しかし、

(天の声)高校生の女の子からすれば、そこまでして来てくれたことに感激していたかもしれませんね。
雅夫は気づいていなようですが。(/天の声)

「山、気をつけてね。」
「大丈夫だよ。」
「父も、そう言っていたわ。もう、悲しい思いはこりごりだわ。」
(シュン)気まずい沈黙の時間が流れた。
(なんとか、この空気を打開しなくては)
「実行委員長の方はいいのかい。」
「今は何も仕事ないんだけど、3時から、後夜祭があるの。それが終わるまで、待っててくれる。」
「うん、いいよ。校門の所で待っている。」

次文化祭の帰り道-恋の予感9へ続く

最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。