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内法物.....鴨居・長押

 「内法物(うちのりもの)」とは、一般的に柱の取り付く面、上下にあたる造作材を指し、敷居や鴨居・長押などの部材全般。

長押・鴨居の撤去  長押(なげし)は和室の壁面をぐるりと囲む化粧部材で、元々は柱を固定するための構造材としての役割があったのですが、工法の変化・発展によりその役割がなくなったものです。

    今でも書院造りの装飾要素として欠かせないものになっており、さらに、長押の上部の出っ張った部分にハンガーなどをかけたり、長押フックを使って帽子やバッグをかけたり、長押の上に写真や絵を立てかけて飾ったりと、 装飾面でも実用性もある、壁面を有効活用できる部材です。

 長押と混同しやすい部位が、長押の下部にある鴨居(かもい)。   鴨居は襖や障子などの建具を滑らせ開閉させるための溝が掘られた、 上部に取り付けられた横木のこと。  下部の敷居と対になっています。

 大黒柱にホゾ差しで組み込まれる、高さ1尺、幅4寸5分以上ある「鴨居」は「差鴨居」と呼ばれ、構造上重要な部材となっており、 撤去はできません。  しっかり施工された「差鴨居」があれば柱の本数を減らすことができ、伝統工法の壁のない開放的な開口部を設けることができます。

 一方、築50年前後の在来工法に見られる鴨居は、「薄鴨居」と呼ばれ建具を開け閉めするために取り付けてある薄い材料にすぎず、構造に影響しません。  ユーチューブのDIYリノベーションで、 派手にぶっ壊している鴨居は、このタイプです。

 鴨居の語源については諸説あるようですが、よく言われているのは、下に敷いてある「敷居(しきい)」に対し、上にある事から「上居(かみい)」と呼ばれていたものが変化したとする説。     また、引き戸が倒れないように、溝が噛んでいるという事から、「噛む居(かむい)」だとする説や、アイヌ語の神がいる場所を意味する「カムイ」から来ているという説もあるようです。(2022.9.12)


畳の間(和室)の「薄鴨居」の取付

 古民家の鴨居は「差鴨居」と呼ばれ、高さ1尺、幅4寸5分以上ある太い材で、大黒柱にホゾ差しで組み込まれ、構造上重要な部材となっており、撤去はできない。

 一方、本格的な在来工法ではない、一般的な軸組み工法の建物に使われる鴨居は、建具を開け閉めするために取り付けてある薄い材料にすぎず、構造材としては影響しない「薄鴨居」と呼ばれる。

     

【鴨居の高さを出す】

一般的な鴨居の厚みは一寸五分(45mm)。  上等品は55mm。

鴨居の床からの高さは1800mmが一般的だったが、現在は1900~2000mmが主流となっている。

床の間に入るのは鴨居と言わず、「落とし掛け」といい、隣り合う場合、隣の鴨居の高さから、指3本分あげて取り付けるのが一般的。

近年は「和室」といういい方は少なくなり、「畳の間」というのが一般的。
【柱に鴨居が入る「メチ穴」を彫る】

平均6~7mmの深さに柱に「メチ穴」を彫り、このメチ穴に鴨居を差し込んでいく。

柱のクセに合わせ、鴨居を「ひかる」り、長さを決める。  そのとき、鴨居を載せておく「鴨居ストッパー」を昔は「半役」と呼んだ。

一間半(3000mm)の鴨居に溝を3本入れ建具を3枚入れると、2/3が解放されることになる。
【鴨居の端を加工する】


柱に入れたメチに押し込むよう、鴨居の端を加工する。



【ジャッキで柱間の距離を広げる】


鴨居を入れる柱間を広げるため、横ジャッキを使い広げてやる。

構造材の補強金物を使っていたら、一旦緩めて、開けるだけ開いて鴨居を入れてやる。

【鴨居を「ひかる」】

柱と鴨居端は、必ずしも直角に接しておらず、わずかな隙間がある場合がある。

柱のクセに合わせ、鴨居の端の形状を柱との接触面に合わせ、長さを決めて鴨居の端を加工する。  柱のクセ、長さを測る作業が「ひかり」。



【鴨居の取付】

鴨居を取り付ける際に、玄翁の丸い頭の方で、鴨居の端を叩いて木殺ししておく。

また、鴨居が入る柱のメチを水で濡らしておくと、乾燥後膨らみ隙間無く綺麗に取り付く。

鴨居が収まったら、3本のビスで斜め止めして固定。




長押(なげし)

 和室の襖や障子などの建具の、開口部のすぐ上にある長押が内法長押(うちのりなげし)。  和室の壁面をぐるりと囲む部分を、一般的に長押と呼んでいる。

 長押はもともとは、柱と柱を繋ぐ形で、水平に取り付けられた化粧材を指し、柱を固定するための構造材としての役割もあったが、その後工法の変化や発展によりその役割はなくなり、 現在では装飾的なものとなっている。    

【長押をはめ込む柱の加工】

長押は柱との絡みがあるので、柱に切り込みを入れる加工を行う。

加工口は表から見える部分なので、ピッタリ合うようのこぎりはまっすぐ引く。

長押はリフォームでは取り外してしまうのが一般的のようだが、はずしてしまうと和室として使う場合、バランスが悪く貧相な和室になってしまう。
【長押ビス止め道の加工】

長押裏側に、長押を上面からビス止めするための切り欠き加工を施しておく。

ビス止めでは、長いビットが必要になる。

一説によれば、寺院建築は大陸から導入されたが、長押は中国・朝鮮のどの時代の建物にも用いられていないとされる。

長押は日本独自の部材なのかも。
【雛留め】

「雛留め」は、鴨居上部に取り付けられる、化粧材の長押(なげし)の、柱の取り合い部分に見られる納まりで、木材の小口を見せないように仕組んで納める工法。

長押は、当初窓や扉を収めるための補助材(造作材)として使われたが、平安時代頃から横揺れを防ぐ「構造材」としての役割を果たすようになったという。

中尊寺金色堂も「構造材」として長押が使われている。
【雛留めに嵌め込む長押端の加工】

図は床の間柱に嵌め込まれる長押の端。  床の間は長押は廻さずそこで止めるが、材を切断しただけの小口では、年輪が見えてしまう。 そこで木口化粧が必要。

同じ長押材の端を45度で切り落とし、90度回転させボンドで密着させる。  仕口を同一材の表目で覆うので、小口が綺麗に収まる。

同一材をカットした綺麗な表面が小口になるように加工するのが、長押加工のキモ。 図は長押の左端。

【木口化粧を施した長押を、柱に差し込むと綺麗に収まる】

平安末期、中国大陸から、柱に開けた穴に「貫(ぬき)」という細い部材を貫通させ、柱と柱を繋ぎ止める、構造的に非常に優れた工法が導入された。

「貫」は東大寺再建時に重源が用いたとされ、細い材でも支持力が強く、現代でも東大寺南大門は堅固な姿で残っている。

「貫」の登場で、長押の構造材としての役割は終えたが、伝統的な様式を示す大切な部材としてその後も生き残っていく。



【長押の直交箇所の柱の加工】

現代の長押は構造に影響は与えないとされるが、柱側も長押側も、ちゃんと欠きこみをした上で嵌め込むので、柱が転ばないよう機能は多少ある。

構造を支えるうえで重要な役目を果たしている長押もあるので、古民家リフォームでは、取り外すときは専門知識のある人に確認が必要。

【長押の入隅部の収まり】

長押の小口は、平安時代までは長方形の断面だったが、その後は三角形に加工する「長押挽き(なげしびき)」が主流となっていく。

鎌倉時代までの長押の小口形状は、背の低い三角形だったが、桃山時代以降は、縦長の三角形となり、中世以降は現代の形状になったとされる。



【長押の直交加工】

入隅部の長押を直交させるときの加工例。

女木に溝を掘り、男木と嚙合わせる。

江戸時代以降、長押は幅を広くして床柱への納め方を重厚な「枕捌き(まくらさばき)」にしたり、二重に長押を廻したりと、権威を象徴し格式の高さを醸し出す重要な造作材となっていく。
【長押の直交加工・「男木」部分】

長押は、江戸時代には禄高の高い旗本の住まいだけに設置が許されていたとされる、由緒のある部材。

封建社会から解放されて、やっと庶民は今まで付けられなかった長押を付けるようになったわけで、リフォームで和室を残すのなら、修理して大切に使いたいもの。

【長押の直交加工・「女木」】









床の間の工事

     
【敷居を設ける】

床の間と押し入れが隣り合わせの施工例。

押し入れの敷居と床の間の敷居(床框)を、畳の面のラインと正確に合わせ、前面の縁を面一にして取り付ける。

【床の間・床框が入る欠き込み】

床の間両側の柱に、床框が入る欠き込みを入れる。

立てた柱に欠き込みを入れるとき、床框材の端をカットし、その端材を使い現物合わせで寸法をとる。 メジャー目盛りでは不正確。

鋸とノミで欠き込むが、ピッタリ加工するのは難しい。 床框端材を入れ込んで確認しながら行う。
【加工前の框を入れ込んで寸法取り】

欠き込み加工する前の框を、実際に柱の書き込み部に入れてみて、柱の面を框材に写し取る。



【床框の欠き込み加工】

写し取った柱面分の寸法をもとに、床框の欠き込みを正確にを加工する。

欠き込み寸法が短くても、長くても接合部が汚くなる。

【寸法取りが正確なら隙間なく入る】

入れ込んだら、合口を水で浸す。  乾けば合わせ目がさらにぴったりする。

裏から床框をビスで柱に斜め打ちして固定する。

【床板のベース】

四隅の柱を利用し、新たに床を造る。

L字に加工した受け材を柱に固定し、根太材を載せてビス止めしていくのが基本工法。

四隅の柱の同じ高さに、横材(105mm)をはめ込む切り込みを入れる。  建っている柱に切り込み加工するとき、マルチツールがあると便利。
【根太の据え付け高さ】

根太の据え付け高さは、実際に床材を当ててみて、框より2mm下がった位置に床がくるようにしてから固定する。

框と床板のちり(段差)は、框が痩せたり床板が狂ったりするので、無垢材は2mm。  ベニア建材は1mm程度。

【床板を張っていく】

四隅の柱を利用した架台に、330~450mm間隔で根太を張り、床板をボンドとネイルガンで張っていく。

特に框と接する床板は絶対に離れないよう、念入りに縁までボンドづけしておく。

裏の根太方向からも、下から床板をビスで固定する。
【内壁張りの準備】

床の間の周囲に、内壁を固定する胴縁を廻す。  奥の壁面に壁板を張ったら、次は両脇の壁面も壁板を張る下地材を取り付ける。

内壁はボードを張って漆喰壁で収める。

【周りに耐火ボードを張る】

耐火ボードを張った後は、後付けの廻り縁を張り廻す。

広さと四隅の柱の形状に合わせて、耐火ボードの大きさと角を加工する必要がある。






押し入れの工事

     
【押し入れの敷居を設ける】

後ろはビス止め。  前方も畳に隠れる箇所をビス止めするが、畳が引っかからないよう頭部分を彫っておく。(釘彫)

柱の面と鴨居の面が面一になるよう、柱面を欠いておく。

【押し入れの床板】

押し入れの床板は、根太は使わず左右の受け材に直接固定する。

床の間の床材と違い、見た目は気にすることはないので節がある材でも問題なし。

床板厚さが30mmあるので根太なしでも強度はある。

【押し入れの壁】

押し入れの壁板は、10mm厚の節あり加工板(本ザネ加工)。

柱と胴縁に、ボンドと4mmタッカーで固定していく。

4m長さを、左から中、右と同一材を使い、目地を統一させる。

【押し入れの中段を造る】

中段は床板と同様の作りで、後ろ枠は載せるだけ、手前の枠はL字の欠き込みを施しておく。

900mmの高さに根太もなく枠を直接ビス止めするだけ。 

本ザネ加工された棚板を枠にビス止めしていく。  壁との境に打つ雑巾ずりは、基本背使いで打つ。





床の間と押し入れの天井工事

     
【天井を張る】

天井周辺に枠木を張り渡しておく。

床の間と押し入れの天井は同じ部材を使って張っていく。

【天井板を張っていく】

ネイルガンで天井板を枠木に打ち付けていく。

床の間は、照明器具用の配線穴を天井に開けておく。








サッシの障子付き掃き出し枠

     
【縁側サッシに、障子枠を設ける】

障子は断熱効果がありながら、明かりを入れてかつ視覚を遮るという優れた建具。




【障子枠】

サッシ枠は、基本柱にメチは彫らず、鴨居も敷居も芋助でビス留め。

障子枠は予め四方を組んで、ひとつにしてから組み込む。

枠は収めてから見える側をビス止め固定できないので、裏からビス固定できない場合ボンドで固定する。

寸法は余裕を持たせずキチキチに収まるようにする。  ビス止めは材の端に打つので、割れを防ぐため下穴を開けてからビスを打つ。
【障子枠を収める】

障子枠を収める前に、サッシ枠とまぐさの隙間にウレタンを打っておく。

収めたら見えない裏側から柱と枠を斜めビス止めする。








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