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日本語の「言い回し」

 社会人のあなたが電車で知り合いの人を見かけたとします。  その人が喪服を着ていたので「誰か死んだんですか?」と聞くようでは 日本語のボキャブラリーが不足しているどころか今後相手にされなくなるかもしれません。   「エッ、どうして?」と思われた方にはこの記事は大してお役に立たないでしょう。

ここは「どなたか亡くなったんですか?」あたりが一般的ですが、もう少し気の利いた人は「死」を連想させる言葉は避け 「どなたかにご不幸でも?」という婉曲(えんきょく)表現が自然に出てくるかもしれません。

周囲と波風立てず和をもって尊しとする日本民族には、同じことを表現するにもさまざまな「言い回し」があります。    謙遜でもない、自慢でもない「微妙なニュアンス」表現も含め、これらを自在に使いこなせたら仕事では周囲から一目置かれ夫婦喧嘩も(タブン)減ることでしょう。

こういう「言い回し」はなかなか一朝一夕で身につかず数々の経験から学んでいくものでしょうが、ここでは幾つかのサンブルを取り上げています。

「言い回し」は古くから日本で使われてきた趣のある表現で物事を言い表す、または言い換える言葉の使い方で、慣用句はひとまとまりの言葉や言い回しのこと。    耳学問の初歩にチョッピリでも役立てていただければ............


葬儀の受付

 社会人ともなると仕事がらみの葬儀に列席することもあるでしょう。  受付を仰せつかる事態も考えられます。     そのとき差し出された香典を受け取って「どうもありがとうございます」などと言ったら 「アイツは常識知らずだ」と周りから評価されてしまうかも........

香典は遺族のために持参したわけではなく、あくまで故人の霊前にそなえるものですからここは 「お預かりします」または「恐れ入ります」、とするのが正しい対応となります。

また会葬者から「この度はご愁傷様でございます」と言われ、「ありがとうございます」と返すのもいただけません。 社会人はつい「お疲れ様でございます」などと口にしがちですがコレもNG。

「ご愁傷様」は不幸にあった人に対する「お気の毒に...」という挨拶なので「恐れ入ります」などの「言い回し」がふさわしいわけです。


  

気になる・注意したい「言い回し」

「言い回し」 説   明
「省略」と「割愛」 会議の説明などで時間が足らず資料の一部を飛ばしたいとき「申し訳ありませんが○○は省略させていただきます」、 「申し訳ありませんが○○は割愛させていただきます」などの「言い回し」があります。

ここは「割愛」を使うのが正解。 「省略」では単なる時間短縮という意味合いになってしまい真摯な説明態度と矛盾してしまいます。
「割愛」とは惜しいと思いながら捨てたり譲ったりすること。 大事な資料なのですが.....という本気度が伝わってきます。
天地無用 届いた精密機械の梱包ダンボールに張ってある「天地無用」シールを見た新入社員。     先輩に「この運送会社に注意したいと思います。 だって『上下逆さにしてよい』シールを貼ってくるんですから....」。

コレよくある話かも知れません。 たしかに「上下は気にせず」と捉えることもできますからね。   でも「天地無用」とは「天を地として用いること無かれ」 からきていますから本来は「さかさまにしてはいけない」という意味なわけです。
昨今は「注意! この面が必ず上になるように」などとわざわざ大きな字で書くこともあるようです。

たしかに皆が正しく意味を理解していないという事情もあるからかも........
人に何か依頼するとき たとえ同僚後輩でも用事を頼むときは「時間を割かせて申し訳ない」という気持ちが大切です。  「急な用事で悪いね」、 「いま時間大丈夫?」などの一言が欲しいところです。

上司やお客様に何かを依頼するときに「お手をわずらせて......」という「言い回し」を使えば「申し訳ありませんが....」という気持ちが伝わります。
お客様なら「お手をわずらせてすみませんが、こちらにご記帳をお願いいたします」、 「お手をわずらせて申し訳ありませんが、こちらの契約書にサインをお願いいたします」 などの言葉遣いが印象を良くします。

職場の先輩なら「お使い立てして悪いのですが、ついでにこの書類を送ってもらえませんか」、 同僚後輩には「お使い立てするようで悪いけど......」などの言葉が自然に出てくればアイツ言葉遣いを知ってるな、と一目置かれます。
"藁(わら)にもすがる気持ち" 金策に行き詰り絶体絶命のピンチで援助してくれようとする相手に「....藁にもすがる気持ちだったけど助かりました......」などと言ったら相手は怒り出し援助は御破算になってしまいます。

「溺れる者はワラをも掴む」とは「溺れる者はワラのような頼りないものでも掴む、つまり切羽詰ったら頼りにならないものでもすがる」、という意味です。

せっかく貸そうとしてくれた相手を頼りにならない「ワラ」扱いしたわけで、これでは「恩を仇で返された」気分にさせてしまいます。    意味を取り違えているとトンデモない事態になるかもしれません。
とりつくヒマがない? 取引先の部長さんとなかなか面会アポが取れないとき上司から聞かれた部下が「○○部長さんは取り付くひまがなくて.....」などと言い訳したら、 上司は「エッ、相手を怒らせてしまったのか」とあわてます。

単に部長さんとなかなか連絡がとれないことを言いたいのでしょうがそもそも「取り付くひまがない」ではなく「取り付く島がない」であり、 この意味は「けんもほろろ」と同義語の「相手がつっけんどんで言い出すきっかけがつかめない状態」のことですから上司が心配になるのも当然です。

慣用句やことわざは意味をよく理解して使わないと言い間違えたり誤った使い方をするケースがありますから注意しましょう。
一縷(る)の不安? 取引先との商談で「もしかしてライバル社と契約する気では......」などと不安になったとき「一縷の不安を感じる......」などと表現していませんか。

この場合「一抹(まつ)の不安を感じる」というのが正しい使い方で、「一縷」も「一抹」もほんのわずかの量を表す言葉ですが 「一縷」は不安や疑いというマイナスイメージの言葉ではなく「一縷の望みにかける」などプラスのイメージに使われます。
砂を噛むようなつらさ? 一生懸命営業していてもなかなか契約がとれないときなど「砂を噛むよう」なつらさです、などと言ってはいませんか。

「砂を噛むよう」とは「物事に味わいやおもむきがなく、無味乾燥な感じがする様子」ということで 「結婚したけど性格が合わず毎日砂を噛むような思いです.....」などの使い方が正しいわけです。
的を得た発言 たとえば上司が部下に「君の意見は説得力があって実に的を得た発言だ」などと言うケースがあるかと思います。
物事の核心を的確にとらえている」という意味で言ったとしたら、正しくは「的を射た発言」が正しい使い方です。
これは弓から放たれた矢が的の中心を的確にとらえる様子から生まれた言葉です。

「当を得る」のほうは「理に適っている」といった意味で、どちらもよく間違う慣用句ですから「的外れ」な言葉遣いにならないよう注意したいものです。
四月は小春日和で.... 小春とは陰暦十月。 ここから冬の初めはるのように暖かい穏やかな気候を小春日和という。
春の温かい日のことではない。
昔日(せきじつ)の感が深い 昔はああだったたけどいまは随分変わってしまったなあ...などというときに間違いやすい使い方。   昔日を使うなら「...昔日の面影....」など。
今と昔を比べた変わりようを表現するなら「....今昔の感が強い」。
十年ぶりに子どもができた 接尾語のぶりは「...のようす」という意味。 「久しぶり」などある時をおいて同じことがまた現れることを示す。
したがって初めての子どもなら「十年目に.....」となる。 
年賀状を100枚ください 年賀状とは新年の挨拶が書かれているハガキ。  この場合は「年賀ハガキを100枚ください」となる。
耳ざわりがいい 「さわる」には単にふれるという意味の「触る」と、悪く作用する「障る」がある。   耳で聞いて不快な感じを「耳障り」というが「耳ざわりのよい」という表現はそもそもおかしい。  









間違いやすい「言い回し・慣用句」

   

間違いやすい「言い回し・慣用句」
言葉 使い方 説    明
一姫二太郎 ×うちは女の子一人、男の子二人です
○うちは最初の子が女の子、次が男の子の一姫二太郎です
数を指しているわけではない。 子供を育てるのは、最初が女の子で次に男の子が生まれるのが理想という意味。  昔から女の子は育てやすく比較的丈夫だったといわれていた。
敷居が高い ×あの店は高級すぎて敷居が高い
○借金をしているので、実家の敷居が高い
「敷居が高い」のもともとの意味は「不義理や不面目なことがあってその人の家に行きにくい」ということ。  「入りづらい、高そうな店、上品そうな店」という意味で使われることが多いが間違い。
寸暇(すんか)を惜し〜 ×寸暇を惜しまず仕事をする
○寸暇を惜しんで仕事をする
「寸暇」とはわずかな暇。 「寸暇を惜しむ」のは、そのちょっとした暇さえ大切にしてなにかに打ち込むという意味になる。  「惜しまず」という使い方では、わずかな暇は大切にしない、という意味になってしまう。
薀蓄(うんちく)を〜 ×薀蓄をたれる
○薀蓄を傾ける
「薀蓄」とは、たくわえた知識や深い学問のことで、それをすべて注ぎ込むという意味が「薀蓄を傾ける」。  「薀蓄をひけらかす」などと知識を見せびらかす意味で使う人も多いが間違い。
まだ未定 ×いつ発表になるかは、まだ未定です
○いつ発表になるかは、今のところ未定です
よく聞く言い方だが、未(いま)だに定まらない、まだ決まっていないのが「未定」の意味なので「まだ未定」は正しい日本語の使い方ではない。
抜け目がない ×課長は抜け目がない。さすがですね
○あの人は抜け目がないから油断できない
「抜け目がない」は自分の利益になることに関してずる賢く立ち回る様子を表す言葉で「さすが」といったホメ言葉とは結びつかない。
役不足 ×私では役不足ですが、□□の大役を務めさせていただきます
○あなたには役不足かもしれませんが、□□をお願いできませんか
「役不足」と「力不足」を混同していると間違えた使い方をしてしまう。  「役不足」とは役者などが与えられた役に満足しないことや、能力に対して役目が軽すぎること。  自分に使うと「私の実力に見合わない簡単すぎる役」と宣言したことになってしまう。
勝手に ×機械が勝手に動き出した
○彼が勝手に決めてしまった
「勝手に」は人の行動を表す語で物には使わない。
火を見るより明ら ×この企画が成功するのは、火を見るより明らかだ
○この企画が失敗するのは、火を見るより明らかだ
「火を見るより明らか」は疑う余地がないほどはっきりしている様子に使われるが、悪い結果や希望に反する場合に使う。「成功する」とは結びつかない。
馬の耳に念仏 ×部長にいくら説明しても馬の耳に念仏さ
○後輩にいくら説明しても馬の耳に念仏だ
相手が愚かでいくら言っても聞き入れてもらえない、効き目がないという意味なので、目上の人には使えない。  目上の人に使うなら「いくら説明しても馬耳東風だ」。
激を飛ばす ×社長が社員に「もっと気合を入れろ」と激を飛ばした
○社長が全国の支部に「一致団結せよ」との激を飛ばした
本来「激を飛ばす」とは自分の主張を述べて同意を求め行動を促す文書で、はっぱをかけたり元気づけることではない。  それに「飛ばす」が結びつくことで自分の主張を強く訴え同意を求める、という意味になる。
すべて一任する ×□□にすべて一任する
○□□に一任する
「一任」とはすべて任せる、ということなので、「すべて」を前につけるのは重複表現。  「元旦の朝」という言い方もよく聞くが「元旦」がそもそもそ「元旦の朝」なのでそれに「朝」をつけてしまっては重複表現になる。
過半数を超える ×過半数を超える
○過半数を占める
「過半数」とは全体の半分より多い、または半数を超えた数のこと。 「過半数を超える」では意味が重なってしまう。  「半数を超える」や「過半数を占める」という言い方が適切。
汚名挽回 ×汚名挽回
○汚名返上
挽回は「もとの状態に戻すこと。回復」という意味。 これでは汚名の状態に戻ってしまう。 挽回しなければならないのは名誉なので「名誉挽回」。 汚名は返上するもの。
裏腹 ×病気と貧困は裏腹
○言うことと行いが裏腹
裏腹とは「あべこべ、正反対」という意味なので病気だと貧困にならない、ということになってしまう。 病気と貧困は相関関係。
口を濁す ×口を濁す
○ことばを濁す
濁すとは、はっきりいわない、あいまいな言い方をする、ということで対象は言葉になる。  口はにごさない。
心血を傾ける ×心血を傾ける
○心血を注ぐ
傾けるのは「全力」で心血ではない。  「全力を傾ける」
仕事に目星がついた ×仕事に目星がついた
○仕事に目鼻がついた
「目星がつく」のは見当がつくということ。 物事が大体できあがる、というときは「....目鼻がついた」。
公算が強い ×公算が強い
○公算が高い
公算とは確実性を意味するので「高い」「小さい」という表現になる。 「強い」「弱い」は可能性を表すとき。   また「濃い」「薄い」は「見込み」を使うとき。
元旦の朝 ×元旦の朝
○元日の朝
元旦の「旦」は、下の線が地平線を、上の日は太陽を表し「地平線から昇る太陽」を表現した漢字。
元旦とは元日の朝・夜明け・日の出頃という時間的な意味も含まれるため、「元旦の朝」というよりは「元日」の朝と言った方が無難。
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この内容は日本語力向上会議の『デキる人は「言い回し」が凄い』を参考にしています。


ネカティブな言葉

 頭文字がDから始まる6つのネカティブな言葉、いわゆる「D言葉」と呼ばれるものがあります。

【D言葉】

 この「D言葉」は相手を否定するニュアンスを含み、相手をイラつかせ、不愉快に感じさせます。  否定されて気分のよい人はいません。   友人や家族はモチロン、仕事で得意先や上司・同僚などに対して使うのはタブーでもあります。

 日常生活で無意識にこの「D言葉」が口癖になっているとしたら、言い訳がましいヤツというレッテルを貼られ、相手の意見を素直に聞けないヒネクレモノというイメージを与えてしまいます。

 こういう口癖の人は得てして相手の話にすぐ感情的に反応してしまう傾向が見られます。  まずは相手の話にすぐに反応せず、相手を否定する言葉は控え、 意識してポジティブな相づちを打つように心がけたいものです。

【上手な相づちの例】

 相手の目を見ながら大きくうなづくアクションを入れるよう意識し、相手を肯定し同調する気持ちを持てるようになれば、おのずと上手な相づちもスムーズに出るようになるでしょう。




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