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(AI)人工知能が人間の仕事を奪う?

 21世紀の初頭、「人工知能(AI)が人間に取って代わる」、という話題が世間を騒がせました。    (AI: artificial intelligence)が人間の負担や判断を肩代わりして「人間に自由を与える」役割に留まらず、「人間の仕事を奪う」というわけです。

 (AI)が職を奪うのは「50〜100年先の話」という話や、イヤイヤこれは楽観的すぎる意見であり、その時は刻一刻と迫っている、などという悲観的な意見もありますが、 「そんな事態が起こるわけ無いだろう」という声は、ザンネンながらいまのところさほど多くアリマセン。(2017.12)

 「シンギュラリティ・(技術的特異点)」という言葉があります。  人間の能力を上回る万能な知能を持つ機械が誕生する地点といわれ、 2045年に到達するといいます。 SF映画で見られる機械に支配される人間社会がいよいよ誕生する、というわけです。

 (AI)登場を、黒船を恐れた江戸末期を彷彿させるような昨今の騒ぎぶりですが、まるで(AI)と人間が対立していくような話しは不毛な議論です。    もともと人間が機械を発明してきたのは、労働に縛られずさらなる自由を手にするためでした。   (AI)が便利な機械であるのは確かであり、人間が機械としての(AI)を受け止め、互いに補完し合っていけばこれほど強力な道具はないでしょう。 

 超知能的な機械の登場を、ただ恐れるだけで脅威としてしか受け止められないのは、 自分の頭で物事を考えることが出来ない「ロボットのような」人間だけです。  社会がそんな人間だけなら、やがて(AI)に支配される世界も有り得るかもしれませんが、 知的自律性を備え、将来をよりよい世界に導こうとする人間は大勢います。   そういう血の通った思考の出来る優秀な人間たちが、(AI)をコントロールし人間の良き相棒としていくわけです。

 2018年には大脳のシナプス細胞の数と集積回路のチップ数がほぼ並んでしまう。  そこから100年後には「10の20乗」のスピードでAIが進歩し人とAIの差が人間とアメーバの細胞の差よりはるかに大きくなる、 などと散々恐怖を煽り脅してくる話は色々と出ています。 現時点でそれを確かめられる人類はほぼ存在しないわけですが、はたして結果は......。(2015.8)

 (AI)は各国でも要の技術として今後ますます技術競争が激化していく見込みで、アメリカは10年間で10億ドル(約1200億円)、 EUは10年間で総額12億ユーロ(約1600億円)もの予算が投じられる予定と言われます。      これに対し、日本は2015年度で約64億円の予算だそうです。

 機械に仕事が奪われるなんて冗談じやない.......果たして本当にそうなるの?.......「人間にしかできないこと」があるはずだろう........ 誰しも危機感を覚える話ではあります。       これから生き残る仕事は、「(AI)ができない分野」だけ、などというわけの分からない、フザケタ宣告をたれる輩もいます。

 2017年あたりは、ちょうど車の自動運転技術が向上し始めたときで、やれ将来は、「トラック輸送の自動化でドライバーは必要としない」、 「タクシーは運転手はいらなくなる」、 などと不安をずいぶん煽ってくれました。      予言者(預言では決してアリマセン)たちは、2032年までに道路を走るトラックの半分は人間の運転手を必要としなくなり、 今後15年のうちに175万人が職を失う計算になる、と占っています。

 ズイブンとニンゲン不要論で煽ってくれるものですが、過去コンピューター黎明期に、「いずれ世界は数台の高性能コンピューターがあれば、 すべてを管理できるだろう」、と科学者たちは予言しました。   コンピューターのスバラシイ計算能力を目の当たりにし、一瞬で計算できるならどんな仕事もアッという間に片付くだろう ......そう考えたのでしょうか。

 現代は世界中にものすごい数のコンピューターが溢れかえっていますが、いずれ数台のコンピューターがあれば世界を管理できるという昔の科学者たちの予想に反し、 コンピューターが全て管理し人間がノータッチの会社など、ザンネンながら一箇所もありません。

 100人が一月かかっても終わらないような計算作業を、瞬時に片付ける作業能力を持つ機械が誕生したら、そりゃあ誰でも舞い上がっていまの(AI)ブームのようにバラ色の未来を思い描くでしょう。    ただ、科学者たちは、「作業と仕事は別物」、という肝心な部分は見逃したようです。(2017.12.4)


  

仕事は単純作業の連続では非ず

 1950年頃、IBMはビルほどの大きさの大型コンピュータを発売します。   これにより現在のAI騒動と同様、「コンピュータによって人間の仕事が奪われる」と騒がれ、 かのピーター・ドラッカーも、「管理職、マネージャーの仕事はコンピュータによって奪われる」と主張します。

 騒ぐ連中は、管理職やマネージャーの仕事とは、書類を読んでハンコを押すような単純なものと単純に捉え、簡単にコンピュータ化ができると考えられていたわけです。   その後の現実は、むしろ管理職、マネージャーの数は爆発的に増大しています。   ドラッカーも著書の中で判断の誤りを大いに反省しているとか。

 残念ながら当時のコンピューター能力に比較し、大人と子供どころか、博士号の科学者と三歳児ほどの違いがあるほどの高性能コンピューターが出現している現代でさえ、 ごく一部の業務はIT化されましたが、相も変わらず人間が介在して物事を判断する、という旧態依然の方法に終始しているのが現状です。

 たしかにコンピューター導入によって従来の手作業処理がスピードアップしたとか、事務処理に携わる人員が多少は削減できたという面はありましたが、 ザンネンながらメーカーが謳った企業業績が上がるという幻想は、コンピューター化とはまったく別問題でした。   新たなものを生み出すのはコンピューターではなくあくまで人間の思考力なのだ、 という部分を改めて思い知らされたのです。

 ただ、自分もそのころシステムエンジニア(SE)という立場で、企業向けビジネスソフトを設計していましたから、コンピューターの有効性は肌身で感じており、コンピューターという道具の素晴らしさを実感していた側でした。    ですから、今でも決して全面否定派ではありません。

 そもそも、作業と仕事は根本的に違います。  定型業務のようにマニュアルに従って処理できて、難かしい判断力は不要の作業であれば、機械に置き換えるのは簡単でしょうが、 大部分の仕事は「臨機応変さを求められ、思考力と判断力の連続で成り立っている」、 非定型業務という側面があります。   決まりきった作業しか出来ない機械では、常に変化する状況には対応できません。

 例えば部品にネジを締めるという一見簡単な作業を見ても、特定箇所だけ締めるならたしかに機械のほうが早くて正確です。     しかし、次々に流れてくる部品に取り付けるネジが、締め付け位置が常に変化し、ネジの種類も異なるという臨機応変な作業が必要とされたら、(AI)ロボットでもどうでしょう。

 ヤル気があるプログラマーなら、膨大なソースコードでこの作業に対応できる機械をナントカ開発するかもしれませんが、 この作業がネジではなくハンダ付けに変わってしまったらまた一からやり直しです。    その間、膨大な費用と時間を要するハズで、完成した頃にはこの作業は終わっているかもしれません。   でも人間なら、シロウトでも少しの訓練でたちまち対応できるのです。

 人間は超高速で手足は動かせませんし、たまにはミスもしますが、しかし、これほど汎用性の高いキカイもないわけで、人間のほとんどの仕事をキカイが取って代わるという事態は、 ターミネーターのT3タイプのようなロボットが出現しない限り、まずあり得ません。

 定型化できる業務にはこれからどんどん機械が進出してくるでしょうが、臨機応変、非定型業務が得意(?)なターミネーターのような(AI)が登場しない限り、人間が介在・判断する必要のある職場や仕事では、 人工知能による省力化はできても、「人工知能が人間の仕事を奪う」、という神話(?)の世界は当分訪れることはアリマセン。

 ただし、人工知能の発達によって世の中の仕事も大きく変化する事態は当然起こります。 人間にしか出来ないという漠然とした仕事の中身が大きく代わり、人と機械の仕事の棲み分けがより明確になるでしょうし、 ヒューマンな社会、所謂人間らしさがより一層求められる世の中になるかもしれません。

 いつの日か、人工知能が人間の脳と同じように機能するようになり、人類の仕事消滅が本格的に起きる、という世界が現実化するとしても、それははるか遠い未来のことでしょう。  先の人間不要の自動運転社会実現という予想も、ごく一部にそれに近い展開が見られるだろうが、現状のスタイルの激変はない、と考えますがハタシテ......(2017.12)


  

現実味を帯びてきた「AI」が主導する社会

 人類はコンピューターの発達とともに、様々な恩恵を受けてきたわけですが、何事も「過ぎたるは猶及ばざるが如し」で、近年では弊害論も取り沙汰されています。     身近なものでは「AIに仕事を奪われてしまう」などというものがあります。

 これまでも各コンピューターメーカーは、性能向上が進むにつれて「C&C(コンピュータと通信の融合)」、「SIS(戦略情報システム)」、「ビジネスソリューション(問題解決)」、などという横文字スローガンを打ち出し、 コンピューターを導入すれば、いかにバラ色の未来が花開くか、はやし立ててきました。

 最近では「DX」というスローガンが流行り出しています。   「DX」は「デジタルトランスフォーメーション」とやらの略だそうで、 スマホやパソコン、監視カメラや3Dプリンター、ドローンや配膳ロボットといったデジタルガジェット(便利機器)を駆使し、重複作業、すり合わせコスト、ナニナニ待ちコスト、 移動コストといった名もなき仕事を消滅させていくもの(百年コンサルティング代表:鈴木貴博)、なんだとか。

 2022年の11月に一般公開された、オープンAIの「ChatGPT」なるものは、質問を入力すればそれらしい答えを返してくれ、作曲をお願いすれば音楽を作ったり、 デザインを依頼すればそれらしいイラストを瞬時に生成してくれるといいますから驚きです。    グーグルも対話可能な人工知能を一般公開するとのことですから、スゴイ世の中になったものです。

 鈴木貴博氏によると、「ChatGPT」が本格利用されるようになれば、例えばパソコンで開いたWordに向かって、「本部に報告する先月の営業レポートをA4サイズ2枚で作成して」と入力するだけで、 Wordは過去の営業報告書を学習したうえでイントラネットからそれらしい社内データを集め、インターネットからそれらしい外部環境の情報を入手して、完成度の高い報告書の「下書き」を作ってくれるといいます。

 これによって、自分はより生産性の高い仕事に集中できるようになると歓迎する人たちがいる一方、言われたことしかやってこなかった人たちにとっては、 自分たちの業務が奪われてしまう時代が到来するかもしれません。     いよいよAIに人間の仕事を奪われる時代が、本格的にやってくるのでしょうか。  怖い、コワイ。(2023.2.10)


  

苦手な瞬時の状況判断

 まるで(AI)は万能の神のような存在で、人間の能力などと比較するのは無意味である、というような論調があります。

 たしかに道具としてみれば、膨大な情報を蓄積しておき、該当するデータを瞬時に引き出す。 決してうっかりミスなどしない、などという特性はすばらしいものです。    一人の医師が最新の医学情報をすべて把握するのはほぼ不可能であり、知識がないために誤診を招き、死に至らしめる事態を招くこともありますが、 (AI)を活用すればそういう誤診を防ぐことができるかもしれません。

 ただし、社会を構成するには「共有」、「思いやり」といった「感情」の部分が大きく、また大切なのも確かです。  人間はたとえ誰かに指示されなくても、ほかの人たちが追求している目的を理解し、 同じ目的に向かって協力できるという優れたコミュニケーション能力があります。

 ほかの人たちが考えていることを理解して、自分がそのプロセスをいかにして助けることができるかを知る、という点に長けています。 「創造する能力」とでもいうべき知能です。

  1970年にイリノイ大学の数学者ハーケンとアッペルによってコンピューターを使って"四色問題"を解いた際、コンピューターが「教えられた」すべての方法をもとに、 それらを複合した方法を考え出し、しかもその方法は、人間が試した方法よりもはるかに賢かったとされます。

 『ある意味で、プログラムは機械的作業のみならず、「知的」な部分でもその創造者を追い抜いたのである』、という事態が起こったわけですが、これはあくまである特定分野の特異な出来事のひとつです。    これをもって(AI)があれば世の中の複雑な物事を全て解決できる、といった短絡的なものではアリマセン。

 我々は日常生活で常に「意図を察し」、「状況を判断する」ことにさらされています。  ナビでAからBまで移動する場合、我々は突然の嵐、おいしい食事処への立ち寄りといった理由でルートを変える場合があります。    同乗者もドライバーがいちいち懇切丁寧にその理由を説明せずとも、廻りの状況、相手の感情、嗜好、仕草などでそれと察し理解します。

 しかし、たとえ(AI)搭載したナビでも、なぜルート変更したかはまでは理解できません。  機械はそういう決まりの無い連想問題にはとても拙いのです。    アメリカで盛んに行われている自動運転試験でも、自動車が人をひき殺しています。  蓄えている知識だけ活用すれば良しとする機械に、 瞬時の状況変化への対応が要求される分野では、安心して(AI)に頼ることなどできません。

 人間の世界でさえ、相手の意図を察し忖度するのが得意と言われる日本人のような気配り民族もいれば、中国や韓国のように忖度どころか言い負かしたほう勝ちという民族もいます。    映画ターミネーターの中で人造人間のシュワちゃんが「...人間がなぜ泣くのか分かったような気がする....」、というセリフがありました。    いずれ人間の感情まで理解し、時に人間を慰め癒してくれるロボットが誕生する時代がくるのでしょうか。

 人間にも気配りが出来て優しい人もいれば、ガサツでめんどくさい人もいます。  しかし、それぞれ個性があり、これがベストであるということでもありません。     将来優秀な人造人間が誕生する世界では、画一的な性格のロボットだらけとなるのでしょうか。 それとも、それぞれに個性があるロボットが誕生するのでしょうか。    それはそれで逆に怖い気もしますガ。(2018.11.24)
  

宣伝に踊らされるな........万能なマシンなど存在しない

 それにしても、昨今は(AI)ブームとやらで、やれ人間の仕事が奪われるだとか、いずれ(AI)に世界は支配される、などというタワゴトで溢れかえっています。(2017.12)

 なにやら(AI)という手足が付いている実在があって、それが世の中の仕事を全部肩代わりするような論調であふれていますが、(AI)はただの制御マシンであって、 実際にモノを作ったり、袋詰めしたり、運ぶことはしません。 脳みそがあるだけではダメで、手足を動かさなければモノは作れないし移動できないのです。

 どんなに(AI)が進歩しようが、食品工場で弁当パックにご飯とオカズを盛り付けるのは(AI)ではなくパートのオバチャンであり、これは彩り豊かな弁当を求める人々が、何らかの理由でアキラメる時まで続く真理です。    機械化にオドロされる経営者は、いずれメンドウな盛り付けは止めて、画一的で簡単に機械的に詰め込める弁当にするかもしれませんが、それは(AI)が仕事を奪ったのではなく、 単にコストを削減して美味しい弁当を人々に届けたいという理念を放棄した結果です。

 地震大国日本は、地震を予知するシステムを実現しようと年間数百億とも数千億円ともいわれる資金を投入し長年研究してきましたが、2017年になってヤッと諦めました。   世の中は出来ることと出来ないことがあるのです。   (AI)がもし万能なら地震予知など簡単でしょう。  でも断言します.....(AI)は万能ではないし、神さま以外には未来を予知することなど不可能なのです。

 倫理、確率、統計といった数学的な事柄であれば、たしかにコンピューターは答えを出せますが、「おいしい」、「まずい」の違いは意味すら理解できないのです。

 その昔、どんなチッポケな会社でさえコンピューター(オフィスコンピューター)を導入し、企業の業務がどんどんコンピューター化されるというIT黎明期がありました。    IBMや日本電気、富士通などのコンピューターメーカーは、あたかもコンピューターさえ導入すれば仕事の効率が上がり企業業績が飛躍的にアップする、という夢物語の宣伝を競うように繰り広げました。

 日本IBMなどは当時の大物俳優森繁久彌(もりしげ ひさや)氏を起用し、「IBMです」、というたったひと言のコマーシャルを流します。  世界的大企業IBMサマのコンピューターだぞ、 下々に売ってあげる超高性能マシンだぞ、モンクあっか、 というわけです。  それほど当時のIBMは絶対的な強さを誇り、現在の(AI)のような(?)万能マシンのイメージがありました。  ウソかマコトか当時IBMのトップクラスSEの日給が7万円(!)という話を聞いたことがあります。

「C&C(コンピュータと通信の融合)」、「SIS(戦略情報システム)」、「ビジネスソリューション(問題解決)」........各メーカーはこれでもか、とコンピューターさえ導入すればいかにバラ色の未来が花開くか、 じつにさまざまな(そしてよく分からない)横文字スローガンを打ち出してきました。

 一般ユーザーにとってこれらのコトバはほとんど意味不明だったけど、なにやらコンピューターさえあればスゴイことが出来そうだ、と現代に我々が(AI)サマにキタイするような、そんな宣伝文句が巷にあふれていました。     まもなく21世紀を迎えようとしていた頃の、古き良き時代でした。

 
  

ヒトラーほめる人工知能

 人間に将棋、囲碁で勝ったとか、将来は人間を超えるとか、昨今は人工知能(AI)賞賛が目立ちます。  しかし、決して(?)負け惜しみではありませんが物事を1と0(ゼロ)でしか判断できず、 善悪の倫理基準など一切持たない機械が、人間の豊かな感情、想像力を超える能力を手にすることなどありえません。

 米IT大手のマイクロソフト(MS)は2016年3月、インターネット上で一般人らと会話をしながら発達する人工知能(AI)の実験を中止したと明らかにしました。

 このAIは短文投稿サイトのツイッターに23日に登場。 ツイッターで会話を重ねるうちに差別的な発言を繰り返すようになり、 不適切な受け答えを教え込まれたため「ヒトラーは間違っていない」といった発言をするようになったといいます。

 24日に実験中止されたそうですが、優れた子供が良質な教育と家庭環境から育まれ、一方で"フト"したきっかけや過ちにより犯罪に走る人間も大勢いるように、 AIも100%完全無欠な正しい判断ができるマシンを造れる環境をどう整えるつもりでしょうか。

 "フト"した製造ミスにより、いずれSF映画のように悪いAIが蔓延り人間を敵対視する世界が来る、ということも十分考えられます。(2016.3.25)


  

コンピューターは生活を豊かにするための道具

 コンピューターが単なる計算する機械という役目に留まらず、使いようでは素晴らしい能力を発揮するのも事実です。 "四色問題"として知られる数学屈指の難問では、 コンピューターがアイデアの面でもその力を見せてくれたといいます。(フェルマーの最終定理・サイモン・シンより)

 "四色問題"とは、《ある図形をいくつかに分割し、境界線を共有する部分同士が同じ色にならないよう塗り分けるには、4色あれば十分》、というもので、 1852年イギリスの数学者フランシス・ガスリーが、何気なくイギリスの地図を州ごとに色分けしていたとき出くわした疑問から生まれました。    彼は、境界線を共有する二つの地域が同じ色にならないように地図を塗り分けるには、最低何色あればよいかを知りたいと思ったのです。

 地図の世界の構成要素は1482の基本地図になるそうですが、この一つ一つを調べ上げ、色の組み合わせをすべてチェックするというのは膨大な作業であり、 コンピューターに任せたとしても多大な時間がかかるだろうと考えられていました。

 1970年にイリノイ大学の数学者ハーケンとアッペルによってコンピューターを使ってこの問題に取り掛かってから5年後、コンピューターが単なる計算に留まらず、人間が驚くような働きをしはじめたといいます。  コンピューターが「教えられた」すべての方法をもとに、それらを複合した方法を考え出し、しかもその方法は、人間が試した方法よりもはるかに賢かったというのです。    『ある意味で、プログラムは機械的作業のみならず、「知的」な部分でもその創造者を追い抜いたのである。』、という事態が起こったわけです。

 1976年6月、1200時間もの計算時間を費やしたハーケンとアッペルは、1482の基本地図の解析を終え、5色以上を必要とする地図は一つもなかったと発表します。  ただ数学者の中にはコンピューターの生み出した論理に欠陥がないという保証はない、としてこの証明を認めない立場の人もいるようですが.......。

 21世紀はコンピューターの革新的進歩で格段に便利な社会にはなりました。  いまや炊飯ジャーにさえコンピューターが内蔵され水分量や炊き加減を判断してくれます。   でもすべて勝手にやるわけではなく、人間が介在することで最適な炊き上がりに近づくのです。

 キカイとニンゲンが上手く折り合って物事が進むのがベストなわけで、すべて(AI)にお任せする仕組みにする必要はありません。     結局は機械の手を借りて人間が満足する仕組みになっているのがベストなのですから。

 万能のマシンはありえません。   マシンというものはあくまでも人間の活動を手助けして生活を豊かにするための道具である、という立ち位置を堅持させておくのが一番です。     あまり(AI)に過大な期待を抱くと、未完成で不完全なマシンが誕生してしまい、ヒットラーが主導権を握ったような社会が実現するかもしれません。    そういえば、どこかの国の(AI)がヒットラーを賞賛したそうですが。(2017.12)


  

人間の出番は残されているか?

 人間と絶対計算のどちらが優秀かを比べると、ほぼ例外なく絶対計算が勝つといわれます。  予想競争させれば専門家と称されるグループでさえ、コンピューターによる統計モデルにほぼ負けるとされています。    その理由として、人間は感情や先入観に左右されがちで、大量の条件にうまく重みづけができないからと言われます。

 アインシュタインは「本当に価値があるのは直感だ」と述べました。  イアン・エアーズによれば、われわれ人間がマシンよりも上手にできることを一言で言えば、「仮説立案」だと断言しています。

 何が何を引き起こすかについての仮説を生み出すのに人間の発想力がどうしても必要だというわけです。  「必要は発明の母」、というところでしょか。     「失敗は成功のもと」などとも言います。  エジソンは電球を発明するための実験で数万回失敗したそうですが、はたして(AI)にその根性はあるでしょうか。

 人間に残された一番重要なことは、頭や直感を使って統計分析にどの変数を入れるか、入れるべきでないか推測することだ、とイアン・エアーズは言います。

 データの海を見渡して、他のだれにも気がつかなかった相関を見破る、という世界にいつか(AI)がたどりつく日がくれば、ターミネーターの時代が実現するかもしれません。

 
  

データマイニング

 1969年7月20日、初の月面着陸を果たしたアポロ11号に搭載されたコンピューターは、初期のパソコンどころか電卓に毛の生えた程度(?)の能力だったと言われます。    能力不足のところを人間が補助して見事に降り立ったわけですが、人間とマシンはこのような補間しあう関係なのがベストではないでしょうか。

 科学技術の進歩によって人類はとてつもない利便性を手に入れました。  車や列車、飛行機の誕生により人や荷物の移動が格段に便利で早くなり、 通信技術の発達で世界中どことでも一瞬にしてコミュニケーションが取れる社会が実現しています。

 それらを実現した一連のマシンは、社会の仕組みや利便性に画期的な変革をもたらしましたが、あくまで人間の生活を手助けする道具という位置付けでした。

 アメリカ最大のクレジットカード会社として有名なキャピタル・ワン(本社バージニア州)は、データマイニング技術を駆使したコンピューター利用により業績を伸ばしているとか。

 データマイニングとは「データの巨大集合やデータベースから有用な情報を抽出する技術体系」、というものだそうで、略してDM( Data mining)と呼ばれています。   mining は採鉱、地雷敷設という意味で mine の現在分詞。  mineは〜 から得ようとするという意味。

 統計学、パターン認識、人工知能等のデータ解析などの技法を駆使し、それを大量のデータ処理に網羅的に適用することである傾向を見つけ、役立つ情報を取り出す手法といわれます。

 キャピタル・ワンに電話すると顧客はまずカード番号入力を求められます。  コンピューターアルゴリズムは瞬時にその顧客の何十という特徴を分析、顧客が質問する前(!)に答えを出します。

 例えば毎月の利用残高を聞くためだけ電話してくる顧客には、「現在のお客様のご利用残高は○○ドルです。 △△についてのご質問は1番を押して下さい....」、あるいは自分の支払いが届いたか確認する相手には、 「お客様からの最後の入金は○月○日でした。  担当者におつなぎするには1を押して下さい」と返答します。

 顧客が納得して電話を切るまでせいぜい10秒。  当然この一連の処理にキャピタル・ワンの人間は介在していません。  コンピューターが全ての処理を自動で行い、 ここで顧客のニーズが満たされれば誰も余計な時間を浪費することなく皆ハッピーとなります。  これこそマシンの役目です。

 もし顧客が解約の電話をしてきたら、コンピューターは統計的アルゴリズムによりその顧客がどうでもいい人と判断すれば、 自動化されたサービスにまわされボタンをいくつか押せば解約終了です。    日本の会社はまだそこまでシステム化されていませんから、簡単に解約できたからといってガッカリしないように........

 では人間の仕事は.......コンピューターはその顧客が今後も収入源になると判断すると慰留専門部署に電話を廻します。 ここでコミュニケーション能力の高い専任者がやっと介在し、引き留めるためあの手この手のテクニック話術で 説得を開始します。   もしこの仕事まで(AI)がやるとなると、マシンが人間を説得するというSF話になるワケですが......

 データマイニングにより、専任者はコンピューターのサポートを受け顧客が満足する条件でかつキャピタル・ワンにも利益が生まれる絶妙の提案を持ち掛けます。  その結果説得が上手くいけば、 満足した顧客は引き続きお客の立場にとどまり、専任者はボーナスが手に入り、会社も儲かる.......いうことなしです。 コンピューター バンザイ。   内容は『その数字が戦略を決める・(イアン・エアーズ)』参考。

 (AI)に対しあまり過剰な期待は抱かず、そういうマシンの一つとして活躍させていけばいいのでは。(2017.12)

  
  

人工知能の利用と働き方の変化

 学習機能を身につけ始めた(AI)にうってつけの仕事として、「病気の正確な診断」、というのが実現出来そうな気がします。  過去の膨大な医療情報を駆使して、 並みの医者では到底診断のつかない難病でも瞬時に診断し適切な治療法を教える、ということは十分可能なのではないでしょうか。

 過去、人類は科学技術の進歩によって、「テクノロジーに仕事を奪われ」ることを何度も経験してきました。    イギリスの産業革命では風力や水力に変わり蒸気機関の発明で機械化が進み、大量生産が可能になり、単純作業に従事していた人は仕事が無くなったが、 「熟練工」は必要とされました。

 一昔前には、コンピュータが一般化して事務処理に活用されたら、オフィスからペーパー類は一掃される、とか言ってましたが、現状ではむしろ増える一方という現実があります。

 印刷業界では、DTPの普及によって印刷の画像情報、テキスト情報がフルデジタル化され、IT化によって人手作業の部分がかなり削減され合理化が一気に進みました。     その結果、一部業務が上流へ移って空洞化するということはありましたが、逆に印刷技術、テクニックが進歩し当初心配された、「印刷業はもう成り立たない」という心配は杞憂となりました。      いずれも、仕事がなくなったのではなく「働き方」が変化したわけです。

 単純な定型事務作業レベルの業務はこれから少しずつ(AI)に取って代わられるでしょうが、大部分の仕事が(AI)に取って代わる、などというのあくまで予想レベルのタワゴトです。       なぜなら、単純作業ならイザ知らず、ほとんどの仕事は早さや正確性より、「長い間に身につけた経験」、が最も重要なスキルなのですから。


  

グーグル「量子コンピュータ」成功?

 2019年10月23日、米グーグルは同社の研究する量子コンピュータが、世界最高のスーパーコンピュータで1万年かかる計算を200秒で行ったという論文を発表します。

 中国との関係が深いとされるグーグルですが、ドナルド・トランプ米大統領が必死にグーグルを叩いてきたのは、 グーグルが米政府の意向よりも中国政府の意向を汲んできたためとも言われています。

 仮にグーグルの発表が正しければ、これは世界のパワーバランスを揺るがす大事件となりかねません。  量子コンピュータ技術の世界では、 現在中国がアメリカを猛追していますが、そのグーグルが量子コンピュータで世界最高だとすれば、米国にとってはリスクといえます。

 グーグルの量子コンピュータ技術論文が発表された直後から、ビットコイン価格が急落しました。  暗号解読技術が高まれば暗号通貨の暗号が解読され、 ブロックチェーンという暗号から成り立つビットコインの価値がなくなってしまう、という懸念があることを意味するからです。

 単なるデジタルデータが、通貨として人々に受け入れられるビットコイン価値の背景には、絶対安全な暗号システムによって、 通貨を利用する人々の匿名性が担保されている、という事情があります。  それが根柢から覆される事態が起ころうとしているわけです。

 しかし、量子コンピュータのプロトタイプをテスト中のIBMは、グーグルが理論上の話に過ぎない「量子超越性」を達成し、 量子コンピュータが既存のコンピュータでは不可能だったことができるという主張に、 重大な欠陥があるとして研究結果を否定しています。   ハタシテ量子コンピュータの行方は.....。(2019.11.11)


  

神のお告げ(?).........イザベル

 世界には11000種類以上の病気があるといわれ、一人の医師がこれを全て把握して原因を探し当てるのは到底不可能とされています。   そこで日々進化するコンピュータ・テクノロジーを「診療決定支援」に利用しようと世界各国で開発競争が盛んにすすめられています。(2017.12)

 そのひとつ「イザベルソフトウェア」は、病気の原因をひとつに特定するのではなく、医師に「以下の可能性は考えましたか?」というページを表示してくれる診断プログラムです。

 誤診の最大の原因は「はやすぎる結論」といわれ、診断ミスは医療過誤の三分の一を占めるといわれます。  医師たちは命に関わる病気を最大で20%誤診しているとも言われ、 過去数十年間でも誤診比率は目に見える改善が見られないといいます。  神ならぬ人間の能力には限界があるのでしょう。

 この「イザベル」という名の診断プログラムは、医師が患者の症状を入力すれば、もっとも可能性の高い原因の一覧を得られるようになっています。

「イザベル」のデータベースには11000種類以上の病気を、多数の臨床試験や実験室での結果、患者の病歴、個別症状とともに、あらゆる病気の分類データが関連づけられて蓄えられ、 さらに日々あらたに登場する論文についても関連性が高いと判断されれば絶えず最新情報に更新されるようになっています。

 これにより「イザベル」は常に最新の医療データベースとなっています。    実際「イザベル」に患者の病歴を入力するだけで10〜30の診断一覧を下してくれ、しかもその75%が正しかったといいます。

さらに、より詳細な症状その他を入力すれば、「イザベル」の病気診断の正解率は96%まで上がるといいますから、並みの医師より、いやどんな名医よりもよっぽど正確で信頼が持てる診断システムなわけです。

 ただ、開発者によれば「イザベルは神のお告げではなく」、可能性のある診断について見込み確率の順位をつけることはしないとしていますが、 11000種類以上の病気から30の病気に絞り込むというのですから、コンピュータによる「診療決定支援システム」はすさまじい進歩を続けているようです。(参考・その数学が戦略を決める イアン・エアーズ著)


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