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時代のあだ花だった「アイドリングストップ」

 日進月歩の技術の世界では、実を結ぶことなく、はかなく消え去っていく技術が沢山あります。   2020年あたりから、アイドリングストップ機能を装備しない車種が増え始めてきました。    その理由の一つに、2017年からカタログに記載される燃費の計測方法が日本独自の「JC08」から世界基準の「WLTC」に変わり、計測モードの変更によって 停止状態の燃費が全体の燃費数値にあたえる影響が小さくなった、というものがあります。

 また、全体的な燃費性能が底上げされ、アイドリングストップ機能を装着しなくても良好な燃費を引き出せるようになり、その結果、アイドリングストップ機能に頼らなくても、 低燃費車購入時の税金優遇制度を受けられるようになったことも大きな理由のようです。

 ただし、これらはいずれも表向きのものであり、結局は「アイドリングストップ機能はユーザーのメリットにならない」ということが明らかになった、というのが理由なのです。    ゴー・ストップの多い市街地を頻繁に走行するのであれば、アイドリングストップ機能により多少はガソリンを減らせるでしょうが、問題はそれ以外の出費です。

 まずデメットの一つ目は「バッテリー交換の出費がかさむ」です。   アイドリングストップ搭載車用のバッテリーは高価です。   少しずつガソリンを節約しても、 バッテリー交換で一気にガソリン節約で浮いたお金以上が消えてしまうのです。

 機能面でも、アイドリングストップ状態から発進しようとすると、まずエンジンを始動する時間が必要です。    つまりアクセルを踏んで発進するまでわずかなタイムラグがあり、それが運転の違和感となるのです。  だからアイドリングストップ機能はオフにしたままの人が多いのです。   さらに、この機能にもコストがかかっており、車両価格に上乗せされています。

 このように、一時はもてはやされていても、メリットよりデメリットが多い技術は自然淘汰されていくわけです。  あれほど持て囃されていたEVも、最近はやっとデメリットに目が向けられ始めたようで、 販売にもブレーキがかかってきたようです。(2024.9.4)


自動運転技術の課題と限界

 2018年1月、テスラの電気自動車(EV)が、高速道路を走行していて停車中の消防車に追突する事故を起こしました。  また、4月には自転車を押して道路を横断していた女性を撥ねて死亡させる事故も起こしています。   車社会の革命的技術などと期待されている自動運転システムが、真正面に止まっている赤い大きな消防車を視認できなかったり、目の前を横切る歩行者を認識しないのはなぜなのでしょう?

 どうやらこれは故障などではなく、「オートパイロット」機能の“弱点”ともいえる部分が影響していると考えられています。   実は、このシステムはそもそも「静止している障害物を無視するようにデザイン」されている といいます。

 事故を起こしたテスラのモデルSのマニュアルには、「警告:トラフィックアウェア クルーズコントロールは、物体を検知できない場合があり、 静止した車両と衝突しないようにブレーキをかけたり減速したりできなくなることがあります。特に時速80km以上で走行しているときに追尾していた車両がいなくなり、 その代わりに静止した車両や物体などが前方に現れると、この現象が起きやすくなります」、と警告されているそうです。

 高速道路上を走るクルマは、頭上の高速道路標識や転がっているホイールキャップ、速度制限の標識など、気にかける必要のない多くの物も検知してしまいます。  設計者はクルマにこれらのものを無視させ、 代わりに道路上の動くもの、つまりほかの走っているクルマに重点的に注意を払うように特化したシステムを構築するほかありません。

 高速道路で必要なく急ブレーキをかけることは、必要なときに止まらないことと同じぐらい危険性があります。  設計者によれば、「あまり必要のないときにブレーキをかけることと、必要なときにブレーキをかけないこと、 この両者のバランスを常にとらなければならない」、というわけです。

 ボルボの半自動運転システム「パイロット・アシスト」マニュアルには、「目標車両が移動中の車両から静止車両に変わった場合には、Pilot Assist は静止している車両を無視して、 設定されている速度まで加速します」、と記載されているそうです。

 つまり、ボルボ車の前を走るクルマが車線変更をしたり道からそれたりして前をさえぎる物が何もなくなったような場合、システムは目の前に急に現れた停止車両を避けるためのブレーキをかけないかもしれない、 というわけです。   オソロシイのです。  だからマニュアルには「運転者は注意を怠らず、必要に応じてブレーキをかけてください」とも書かれています。   自動運転ではなくあくまでも半自動運転システムなのです。

 「テスラ車で使われているレーダーは動く物体の検知を前提にしたもので静止した物体を検知することは苦手」、という意見もあるようです。   自動運転技術はまだまだ発展途上のシステムなのです。

 完全な自律走行車を可能とするために使われるセンサーには、レーダーやカメラに加えレーザーなどがありますが、いまのところその技術だけで本当に自律走行が達成できるのかは誰にもわかりません。      AIをそれらと組み合わせ全自動で目的地まで安全に走行する、という夢のシステムが実現するのははたしていつのことでしょうか。(2018.1.29・産経ニュース抜粋)


まだまだ道半ばの自動運転技術

 「自動運転先進国」アメリカでは、すでにGM(ゼネラル・モーターズ)傘下のクルーズ(Cruise)などが、交通量の多い大都市サンフランシスコで、 世界に先駆けて完全自動運転タクシーの有料サービスを提供しています。     ところが、2023年10月に起きた自動運転タクシーが関与した人身事故により、同社はカリフォルニア州の規制当局からサービスの停止を命じられる事態となります。

 クルーズはアルファベット(グーグルの親会社)傘下のウェイモ(Waymo)と並んで、黎明期にある世界の自動運転ビジネスをリードしてきましたが、それがサービス開始から僅か3ヵ月足らずで運航停止に追い込まれたわけで、 同社のみならず業界全体に悲観的な雰囲気が広がっています。

 そもそも試験期間中にもトラブルは多発していたとされ、なかでも問題視されたのが消防車に対する妨害ともいえる不具合でした。 何らかの理由で制御不能になったクルーズの自動運転車が、 消火作業中の消防車の近くまでフラフラと迷い込んでしまったりと、今年1月からの7ヵ月間に、サンフランシスコ消防局の消防車が(市街地を試験走行中などの)自動運転車によって進路を妨害されるなどのトラブルが55件発生したといいます。

 今年の8月に開かれた公聴会で証言した市役所職員によれば、自動運転車が理由もなく突如停車したり、右左折やUターンなどの交通違反をしたりするケースがこれまでに600件以上報告されていたといいますが、 警鐘が鳴らされたにもかかわらず、カリフォルニア州の規制当局はその3日後となる8月10日、サンフランシスコ市内での自動運転タクシーのサービスを大幅に拡充する許可を出し、 この日を境に両社とも24時間を通じた有料サービス、つまり(未だ小規模ではあるが)自動運転でお金を稼ぐ事業化へと乗り出したわけです。

 ところが、晴れて有料サービスに転じてからも、完全自動運転タクシーによるトラブルが相次いで発生します。  サービス拡充を許可した翌日には、 同市ノース・ビーチ近辺の路上でクルーズの完全自動運転タクシー10台以上が停車したまま動かなくなり、周辺の交通を約15分間にわたって麻痺させます。 さらに消防車と衝突し乗客1人が軽傷を負うなどトラプルが頻発。    度重なるトラブルや事故を受け、カリフォルニア州運輸局はクルーズがサンフランシスコ市内で運営する完全自動運転タクシーの台数をそれまでの400台から200台へと半減することを命じます。

 結局、その後も深刻な人身事故を引き起こすなど事故が続き、陸運局はクルーズに完全自動運転タクシーのサービス停止を命じ、これに従って同社は10月24日にサンフランシスコ市内での運行を停止します。     さらに「他州のサービスも危ないのではないか」という批判を受けて、26日にはテキサス州など他の地域における自動運転サービスも全て停止したのです。

 クルーズは巨額の資金を投じてこの分野の先頭を走るウェイモ(グーグル)の背中を追いかけるように、自動運転の開発と商用化を進めてきたわけですが、クルーズの場合自動運転車といっても、 オペレーション・センターにいるスタッフ(人間)がクルマの走行状態を常時監視し、何かトラブルが起きたときは遠隔操作などで対処しているわけで、 まだまだオペレーターの介入を必要としているわけです。  これに要する人件費や設備費などのコストを考えれば、自動運転車は高くつくのです。

 その一方、クルーズとは対照的にウェイモの完全自動運転タクシーはこれまでのところ人身事故など重大なトラブルを起こしておらず、有料サービスも当初と同様に継続されています。    一口に自動運転と言っても、どの会社も同じレベルにあるわけではないようです。

 ただ、ウェイモも市街地を走行中に突如停止したまま動かなくなり、周囲の車に迷惑をかけるなど完全無欠というレベルには程遠いようで、世界のトップを走る米国の自動運転全体が、 かなり深刻な状況に追い込まれていると言えそうです。(2023.11.9 現代ビジネス)






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