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ジャニーズ「性加害事件」騒動

 2023年3月、イギリス・BBCは、2019年に死亡したジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川(前社長)が、 デビュー前の10代を中心とする多数の少年(ジャニーズJr)たちに対し、 長期間にわたって性加害を繰り返していたとする記事を発信。   これにより日本国内は大騒ぎとなります。

 イギリスBBCは2023年3月18日から20日にかけて、ジャニー喜多川の性加害を取り上げたドキュメンタリー 「Predator : The Secret Scandal of J-Pop(J-POPの捕食者 ~秘められたスキャンダル)」をワールドニュースで計4回放送します。   調査報道に定評がある“世界のBBC(イギリスの公共放送)”が、1999年の「週刊文春」の報道の後追いであることを隠さず、 文春側の協力も得ながら日本の地上波ではけっして放送されないジャニーズ事務所の性虐待スキャンダルに迫った番組で、BBCは独自に被害者を探し出し、 顔出しでインタビューに応じてもらったことで、信ぴょう性のある証言を引き出したのです。    この外圧がかかったことによって「忖度、ことなかれ主義、隠蔽体質」が骨の髄まで染み付いた 『日本社会の悪しき文化』が、徐々に暴露されていくことになります。

 当時13~16歳だった証言者たちは、「我慢してました」、「だって、みんなやられてたから」、「みんなで『初体験はジャニーさん』って笑って話してました」と当時の心境を吐露しています。    後の再発防止特別チームによる報告書でも、元ジャニーズJr.たちは、性被害後に「性加害を受け入れるのが当たり前で通過儀礼だ」、「おめでとう」 などと仲間たちから言われた、と証言しています。

 BBC記者はジャニーズ事務所の元少年たちを、「被害を乗り越え、生き残ってきた者たち」という意味で「性的虐待のサバイバー」と呼びました。   デビューさせてもらったという恩義と引き換えに、永遠に口をつぐむ。  自分だけじゃない、みんな同じ目に遭っていたから、むしろあの頃のジャニーズ・ジュニアの仲間も全員、 秘密を共有した特別な絆や愛着のようなものすら感じている.....。これらをまとめて、BBCのアザー氏は「まさにこれがグルーミングなんです」、 「ジャニー喜多川は、パワーバランスを利用して巧みな心理操作をする人」と厳しい口調で非難します。 (文春オンライン) 

 ただ、BBCの報道が大きな話題になっても、これまでも芸能界で巨大な影響力を持つジャニーズに忖度し所属タレントのスキャンダルは見て見ぬふりしてきた大手マスコミは、 性加害を大きく報道することはありませんでした。  その後、5月14日、藤島ジュリー景子社長が動画と文書で「創業者ジャニー喜多川の性加害事件について、 世の中を大きくお騒がせしておりますことを心よりお詫び申し上げます」などと謝罪しますが、「叔父に対する小児性愛の告発は叔父が亡くなっているため立証できない」、 「知らなかった」と断言。  誰の入れ知恵で行ったビデオ配信か知りませんが、知らぬ存じぬでは世間が納得するはずもなく、お粗末振りを発揮しブーイングを浴びます。

 そしてとうとう7月24日、国連人権理事会の「ビジネスと人権」作業部会が、日本において元タレントや事務所の代表者に聞き取り調査を行った結果、 「事務所のタレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」という見解を発表。   これで【潮目】が大きく変わっていきます。

 この世界的な外圧がかかった時点で、やっと大手マスコミもいつまでも頬かむりを続けるのはマズイと踏んだか、少しずつ報道し始めるようになったのです。    ジャニーズ事務所もこの事態に知らんふりを決め込むのは無理と観念したか、調査員を人選し再発防止特別チームを立ち上げます。   その後国連人権理事会調査を後追いしたチームは8月29日、ジャニー喜多川が13歳から15歳の思春期の少年などジャニーズJr.のメンバーを含む 数百人の未成年者に対し、1970年代前半から2010年代半ばまで前社長の自宅や合宿所、公演先の宿泊ホテルなどで長期間にわたって性加害 を繰り返していた、という驚愕の調査結果を公表します。  また、再発防止特別チームは「問題が広がった背景にマスコミの沈黙があった」とも指摘します。(2023.9.2)


 

「性加害」は何十年も前に裁判沙汰になっていた

 性加害は1950年代から行われていたとされますから、ジャニー喜多川は世界でも類を見ない、まさに稀にみる『性嗜好異常者』で、 恐るべき「芸能界のプレデター(捕食者)」だったのです。  こんな重大な問題が永年放置された異常事態にはただただ驚くばかりですが、 そもそもこの問題は1965年頃から世間では知る人ぞ知る話でもありました。

 すでに週刊産経 1965年3月29日号で報道されており、1967年には『女性自身(1967年9月25日号・光文社)』が「ジャニーズをめぐる“同性愛”裁判 東京地裁法廷で暴露された4人のプライバシー」というタイトルで、 4ページにわたって詳報しています。  昔から裁判沙汰にまでなっていたのです。   ただ、この裁判は元々は金銭的な訴えだったのが、その後思わぬ方向へ発展。    「ジャニーズ(当時4人のグループ名)が学院から出て行った直接の事情はワイセツ行為です」などというショッキングな証言が出たりしています。   ジャニーズの4人組が証言台に立たされますが、法廷でタレントたちは“いかがわしい行為”については、「おぼえてません」などと否定しています。(デイリー新潮)

 『週刊現代』も(1981年4月30日号)で、「たのきんトリオで大当たり 喜多川姉弟の異能」という記事で、 ジャニー喜多川に体を触られたという匿名の元タレント証言に触れています。  『噂の真相』は1983年11月号で「ホモの館」として、寮(合宿所)のグラビアを掲載しています。

 匿名の証言だけでなく、1988年には「フォーリーブス」(1967年結成、1978年解散)メンバーの一人が当時16歳の自身がジャニー氏から受けた性被害 を赤裸々に綴った本『光GENJIへ』を出版、大変な話題となり大ベストセラーにもなっています。  これが大きな契機となり、出版から1年ほどは『アサヒ芸能』、『週刊文春』(文藝春秋)、『FOCUS』(新潮社)、『週刊大衆』(双葉社)、 『微笑』(祥伝社)などに匿名の元タレントらの証言が掲載されています。  しかし、被害者たちが勇気を出してジャニー喜多川のホモセクハラを告発したというのに、 ワイドショーは見向きもせず、どの大手マスコミもこの件を完全スルーします。

 『光GENJIへ』で性加害を実名で告発した北公次氏は翌年9月に発売されたビデオ「映像版『光GENJIへ』」で、「だから、騙すのはよくねえッつんだよ! 子供だけじゃなくて親までも騙してさ。   俺の告発なかったらどうなる? やめろよ、もう。 もう繰り返しはやめろよ!」涙を浮かべて叫んでいます。  また、「正直言ってね、書いてくれんの、何社しかいないよ!」 という悲痛な叫びを残しています。(北公次氏は2012年死亡)  被害者たちのほとんど相手にされない八方塞がりの閉塞感はいかばかりだったでしょう。

 そんな中、「週刊文春」が1999年10月から14週にわたってこの疑惑のキャンペーン報道を開始。   複数の元所属タレントらの証言をもとに、 性加害を含めた様々な疑惑を掲載して反響を呼び、当時自分も「週刊文春」記事に驚いたものです。  この疑惑は国会でも審議されることになり、自民党の阪上議員が「児童から信頼を受け、児童に対して一定の権力を持っている人物が、 その児童に対して性的な行為を強要する。 もしこれが事実とすれば、 これは児童虐待に当たるのではないか」と質問したのに対して、厚労省の担当者は「性的な行為を強要した人物がこの手引き(「子ども虐待対応の手引き」)に言う親または親にかわる保護者などに該当するわけではないので、 手引で言うところの児童虐待には当たらないというふうに考えている」と回答しています。(東洋経済ONLINEより)

 「週刊文春」に対しジャニーズ事務所は即座に口封じに動きます。  キャンペーン開始直後の1999年11月、名誉毀損の損害賠償を求め訴えたのです。     しかし、2003年の東京高裁判決で『セクハラに関する記事の重要な部分について真実であることの証明があった』と 性加害が認定され、翌年、最高裁で確定しています。     ただ、損害賠償請求という恫喝は効果があったようで、その後この事件を後追いするメディアは現れず、いつの間にか沈静化が図られ、 その後10数年間は雑誌でも、“みだらな行為”、“いかがわしい行為”疑惑は報じられず、マスコミの沈黙は続いたのです。(2023.9.2 msnニュース参考)

 元「週刊文春」の記者でジャーナリストの中村竜太郎氏は、10月8日放送の読売テレビ「そこまで言って委員会NP」で、当時ジャニーズお抱えの同業者から恫喝されたり、「家に帰ると、 私には覚えのない吸い殻が山盛りになっていたこともあった。  さすがに背筋が凍って、家族はしばらく避難させた」 と不可解な経験談を明かしています。(スポーツニッポン)(2023.10.9)


噂レベルではみんな知っていた「ジャニーズ性加害」

 その後、芸能界の大御所たちも堰を切ったように続々と「昔からみんな知っていた」、「触れてはいけない風潮があった」と証言を始めます。   タレントの上沼恵美子氏も、「こんなん昭和の40年代から言うとったのに、今ごろ慌ててバタバタってこんなことすんねんなあと思ってます」、「イギリスのBBCが問題にして、 国連まで行くような話になって、それで日本のマスコミが慌てたんです。 だから(今ごろジャニーズ批判に転じているのは)みっともないって言ったら、 みっともないんですわ」などと、問題化されるのが遅すぎたことを嘆きます。

 歌手の美川憲一氏は、記者から「長い芸能生活で性加害の話を耳にしたことは?」と問われ、 「ずっと知ってましたから。 どっぷりでしたよ」とズバリ返答。 「それをみなさん暗黙の了解で、見てみないふりをして。   マスコミの方たちもそうだったと思います」と続け、「あの時代はみんなそういう気持ちで、『触れてはいけない』『言ってはいけない』という時代でしたから。 早めにこうやって事件になっていたら、 もっと被害者が出なかったと思います」と語っています。(日刊サイゾー)

 脚本家・倉本聰氏はジャニーズ事務所がやっと「性加害」を認めた後のコラムで、「ジャニーズの問題が遂に、というか漸く表沙汰になった。 かなり前、 そう10年、20年ではすまない昔から僕らの業界では当たり前のように知られていた話だが、漸く断罪される時が来たらしい」、「何年前だったか、ある売り出しの女優を番組に起用しようとしたら、 テレビ局から待ったがかかった。  その女優がジャニーズのタレントと一寸トラブッたことがあったらしく、その女優を使うなら今後おたくの局から全ジャニーズ関連のタレントを引き揚げる と脅されて、だからその女優は使えないのだと申し訳なさそうに局から言われた。   その横暴さに?然としたことがある」と暴露しています。

 当時、芸能リポーターとして活躍していた梨元勝氏は、 「視聴者が最も興味のあることを局の自主規制で止めようとすることは納得できない」とテレビ局の姿勢を厳しく批判。   ジャニーズ事務所に限らず、大手プロダクションの醜聞をタブー視する番組には厳しい言葉で糾弾します。  しかし、「ジャニーズに関する問題を取り上げるな」 と番組側から求められ「出番」はなくなっていきました。(2023.9.10)


 

「性加害事件」の背後にあった悍ましい事実

 『週刊文春』がジャニー喜多川氏による少年たちへの性加害を最初に報じた1999年から、24年もの時を経てやっとこの事件が日本社会全体で論じられるようになったわけですが、 この悍ましい(おぞ-ましい・ぞっとするいやな感じ)事件の背後には、驚愕の事実がありました。  「週刊現代」元編集長・元木昌彦氏によれば、 現ジャニーズ事務所社長・ジュリー景子氏の母親メリー喜多川氏は、早くから弟(ジャニー喜多川)の「病」を知っていたといいます。

 2004年の判決が出た際、彼女がジャニー喜多川を叱りつけ一時的にタレントたちの宿泊に歯止めがかかったそうですが、 せめてこのタイミングでメリー氏は弟に対し治療なり施設入所といった対応策を講じるべきでした。  しかし、結局最後まで弟の異常すぎる 「少年に対する性愛障害」という性癖を放置してしまったのです。

 元木氏は、《姉の弟への“偏愛”がすべての始まりだった》、《弟のジュニアたちへの性加害が明るみに出れば、 帝国は崩壊する。 メリーがもくろんだのは、この国の主要メディアを支配することだった》と、 この事件の本質をズバリ語っています。  さらに元木氏はジャニーズ事務所が名前を残そうと足掻くことについても、《メリーなら別会社などつくらず、 即刻、自らの手で汚れちまったジャニーという名を永遠に葬ったはずだ》ともしています。

 ジャニーズ事務所が調査委託した再発防止特別チームは、ジャニー氏が「性嗜好異常(パラフィリア)」だったと報告しています。  こういう背景を知ってしまうと、 ジャニーズ事務所は「猛獣に与えるエサ場」だったという恐ろしい見方さえ出来てしまいます。    この事件は単なる性加害事件どころではない、もっとドロドロした「悲劇・狂気」さえ感じます。(2023.10.9)

 「ネスレ日本」は我先にジャニーズへ草木もなびく(すべてのものが従う)中、一度もジャニーズのタレントをCMや販促に起用しなかったメーカーです。     元代表取締役社長兼CEOでビジネスプロデューサー・高岡浩三氏は、「ジャニー喜多川氏が元々性癖があってジャニーズ事務所を開設したという噂は かれこれ20年以上前から噂として知っていた。 メディア関係者も絶対私以上に知っていたはず。  なぜなら、 私が知ったのは業界関係者とメディアだから」、「ただ、ジャニーズが人気絶頂の間は嫌われたらジャニーズのタレントを使われなくなるから、 怖くてニュースにも出来ないとテレビ、新聞等のメディアは蓋をしてきたわけだ」として、単なる性癖問題ではないと見抜いた洞察力で 「エサ場開設の動機」にも触れています。  ★「ネスレ日本」は高岡氏が社長退任後の2021年、TOKIOを起用しています。(2023.9.10)


 

徹底的した「ムラ社会」で行われた通過儀式

 ジャニーズ事務所は、ジャニー喜多川がタレントのプロデュースを、会社運営の全権はメリー喜多川氏が担い、あらゆることをこの二人だけで決定していたとされます。  誰も任された役割以外の会社管理・ 運営に対する発言は、できない状況だったといいます。

 巧みなプロデュース力を持つジャニー喜多川に気に入ってもらえさえすれば、それまでまったく無名の少年が ステージに立たせてもらい、やがて人気を得て、音楽番組、ドラマ、 映画とスターダムを駆け上がっていく道が開けます。 たとえジャニーの毒牙にかかろうと、少年たちは夢を実現させるため口を閉ざしジャニーズ事務所に忠誠を誓ったわけです。

 ジャニーズ事務所とビジネスで深くつながるメディアや広告代理店も、「金の生る木」ジャニーズ事務所にしがみついている限り、雑誌は売れ視聴率はアップし儲かります。 自分の評価も上がります。    「ムラ」の秘密を黙ってさえいれば全員がそれに見合う恩恵を受けられたのです。

 所属タレントも社員も、テレビ局やスポーツ紙のジャニーズ事務所を担当する者も、皆がジャニーとメリー氏が支配する強固な、そして絶対に表ざたにはできない秘密を抱える「ムラ社会」の一員に組み込まれ、 互いに顔色を窺いながら、金儲けの絆で結ばれていたわけです。

 その悍ましい「ムラ社会」では、少年たちは芸能界の捕食者・ジャニー喜多川への貢物でもありました。  性加害はただの「通過儀礼」であり、一部の少年らが被害を訴えると、 スタッフは、「デビューしたければ、我慢するしかない」、「我慢すれば、いい夢が見られる。 皆、通っていく道だ」と答えたといいます。

 1975-1976年・ジャニーズJr.として活動した杉浦城之氏は、 「ジャニーさんに嫌われたら、その先がない。 そう考えたら、もうそれしかないわけです。   ジャニーさんのやりたいようにやらせるしかない。 だって、みんなデビューして名を馳せたいんです。 だから逆らえない。   一切逆らえない。 実力社会じゃなく、やっぱりそこはおかしいよね」と述懐します。

 後に東山氏は「勇気を出して告発しようとした人は事務所に残れなかった」という意味の発言をしています。   井ノ原氏も、「得たいの知れない、触れてはいけない空気」と表現します。 その禁断の「ムラ社会」から抜け出そうとしても、「声を上げた時に失うものが多すぎる」 ことを皆察知し、口を閉ざしているのです。(文春オンライン)

 ジャニー喜多川の犯行は“合宿所”と称された都内のマンションに誘われ起こることが多く、寝泊まりを経験していないJr.は被害に遭うこともなかったのではとか、 喜多川は「抵抗しない少年には行為をエスカレートさせる一方で、 明確に“拒否”反応を示された場合はあきらめて退散することもあった」ともいわれており、 必ずしも事務所の全員が性加害を受けたということでもなさそうです。

 ある元ジャニーズJr.は「デビューしているジャニーズタレントは『ほぼ100パー』被害に遭っており」、 「稀」に被害に遭わずデビューしたJr.もいたが「それは親が有名人であるパターンで、親が一般人の場合(喜多川からの行為を)受け入れるか、(デビュー前に事務所を)辞めるか」 という二択が迫られるような状況だった」としています。(2023.10.10 日刊サイゾー)


 

性加害事件を見て見ぬふりしてきたマスメディア

 「児童に対する大規模性加害」を、「社会の木鐸」であるべき新聞・テレビは一切報じないという恐るべき忖度ぶりを発揮し続けたわけですが、 事件がここまで隠蔽されてきたのは、「メリー氏の"弟を守る"という強固な目論見」によって支配されたメディアの姿勢があります。   視聴率第一主義のテレビや儲け至上主義のマスメディアにとっても、ジャニーズ事務所のタレントを起用すれば視聴率が取れ雑誌が売れるため、 飛ぶ鳥を落とす勢いで芸能界に君臨してきたジャニーズの恩恵を受けようと、公然の秘密を知りつつ臭いものに蓋をし見て見ぬふりしてきたのです。

 大手マスコミはこれまでも政治家や大手企業といった権力者には商売優先で逆らおうとせず、利益のためなら平気で手を握り、醜聞は知らぬ顔して隠蔽してきました。     ジャニーズ事務所に対しても昔から一切逆らえず、したがって被害者の悲痛な声には耳を塞ぎ、「ジャニーズに忖度しまくって」きたわけですが、 今回は外国放送局と国連人権委員会という外圧がかかったのでシブシブこの事件を報道し始めたのです。   「悍ましい未成年への性加害事件」は、もしこの外圧がなかったら決して表ざたにならなかったのです。

 ある報道関係者は「決してジャニーズ事務所に対する忖度で取り上げなかったというわけではなく、ニュースバリューを感じなかったから。  社会も、 芸能界の性の問題を“性加害”としてではなく、“枕営業”として被害を軽く見ていた面はあるはずだ」とコメントします。  安住紳一郎アナウンサーも 「当時は捜査当局も動いていないし、これほど大きな事件であるという認識がなく、法律上も強制性交の被害者は女性に限定している時代で、 ただの芸能ニュースのひとつだろうと考えて、ニュースとして取り上げないという認識の人が多かった」 と周辺のマスコミ関係者に聞いた見解をのべています。

 しかし、いくら知らぬふりの言い訳を重ねようが、そもそも1999年の『週刊文春』による告発キャンペーンを受け、2000年の時点で『ニューヨークタイムズ』、 『ガーディアン』なども「ジャニーズ事務所に牛耳られ、意向に従わないと切り捨てられたテレビや新聞」の実態を報じていました。

 ニューヨーク・タイムズ紙は当時の日本のメディアの姿勢についても報じています。 この中で日本の芸能記者が「ジャニーズ事務所に従わないと、 ジャニーズの人気タレントを番組に出させてもらえず、バラエティ番組の視聴率が下がる」、「出版社も同じだ」と語り、「私を含むマスメディアが、特に最初に本が出た時、 被害者の訴えについてかなり前からきちんと調査をしていれば、他の少年が性的被害に遭うことを避けられたかもしれない」と今から23年前に証言しているのです。(仏フィガロ・レジス・アルノー氏)

 これは2003年の東京高裁判決で「児童に対して性的な行為を強要した」ことが確定していた性加害事件です。  本来なら"警察が動くべき事件" だったのです。  それなのに、元木昌彦氏や高岡浩三氏のような洞察力などもちあわせていないマスコミは、見て見ぬふりの知らぬ存じぬの態度に終始し、しかも、この期に及んでも隠蔽ぶりを見せつけているわけです。    そんな彼らに「真摯に反省し再発防止に動く」ことを期待するなど無理なのです。(2023.9.10)


 

「沈黙の責任」をミスリードしようとする言い訳

 この事件の背後には《姉の弟への“偏愛”》という「悲劇・狂気」さえ感じる恐ろしい背景があったわけですが、報じてこなかった側の人間は、 「ただの芸能ニュースのひとつと考えた」、「“枕営業”として被害を軽く見ていた」、「ニュースバリューを感じなかった」、「捜査当局が動かなかった」など様々な言い訳を並べ立てます。    しかし、この事件は2003年の東京高裁判決で「児童に対して性的な行為を強要した」と確定していた「リッパな犯罪」であり、 週刊誌などは何十回となくジャニー喜多川の性加害事件を記事にしてきました。  見て見ぬふりはできないと、仕事を失ってまでジャニーズ事務所の醜聞を糾弾し続けた 芸能リポータ・梨元勝氏のような人もいたのです。

 性加害事件を報道しなかった側は、まるで報道する価値がないかのように「昔から皆知っていた」と言い張ります。  しかし、 それは噂レベルの話を聞いたが無視していたということであり、元木昌彦氏や高岡浩三氏のような鋭い洞察力で「性加害事件」の背後にあった悍ましい事実を見抜いたわけでもなく、 また立花氏や文春が大変な苦労で得た情報発掘(後述)の姿勢と真逆の、地道な取材とは無縁の報道姿勢で生きてきた者が発するただの強がりです。  反省どころか、 いまだにこんなお粗末な言い訳で批判の矛先をかわそうとしているのです。

 このような自分に不都合な話は縮小視する態度こそが、 報道に携わる人間として失格であり、11歳で被害にあった少年もいた性加害事件を「芸能ニュースのひとつ」で片づけようとするやり方が、 今回の問題が永年見過ごされてきた遠因でもあるわけです。  しかも、この期に及んでも新聞やテレビは他人事の様な薄っぺらい報道姿勢を取っているのです。

 「マスコミの見て見ぬ振りする姿勢」が集中砲火を浴びる中、「大手マスコミが手のひら返し報道」をやりだしたのは 「忖度ではなく人権問題」になったから、と主張する報道関係者がいます。   同じ犯罪なのに、ある時までは「忖度という隠蔽」をしておきながら、 外圧がかかり見て見ぬ振りはマズイとなって慌てて報道したことを、「近年人権が騒がれだしたから」と言い張るわけです。   いまさらマスコミがどう態度を変えようが勝手ですが、この事件の中身は昔から何ひとつ変わっていません。

 「人権問題になったからマスコミが動いた」とする妙なロジックこそ、これまで権力者には一切逆らえず「忖度しまくってきた」 大手マスコミを擁護し、「過去を検証し真摯に反省する」 動きを封じようとする、マサに日本をダメにするミスリード(誤解させること)であって、 こんな意見が日本社会で多数を占めるようなら、 被害者の悲痛な声に耳を塞ぎ、自分に不都合な話は縮小視してきた「マスコミの忖度と隠蔽」体質はこれからも永遠に変わら無い、ということです。  「芸能界にありがちなスキャンダルの一つ」という声もありますが、それは「世界的な児童性加害犯罪」という大事件の本質から目をそらさせる、 味噌も〇〇も一緒の筋違いの暴論です。(2023.9.21)


 

ジャニーズの権力にひれ伏してきたメディア

 このような事件の背後には「度が過ぎるパワーモンスター」が必ず存在します。  「ビッグモーター」であれば創業者の息子の副社長。   ジャニーズでは副社長でマスコミ対応を担うメリー喜多川氏(2021年死去)でした。  ジャニーズ内で絶対的権力を握っていたメリー氏は誰も逆らえない空気を作っていたとされ、 朝と夜では指示が180度変わることもしばしばで、芸能界でも絶大なジャニーズタレント人気を笠に着て恐るべき権勢(権力に裏付けられた威勢)ぶりを発揮したとされます。    メリー氏の「弟を守るため主要メディアを支配する目論見」は、次第にエスカレートしていったわけです。

 メリー氏はSMAPが国民的な人気グループになってからさらに横暴になったとされ、ドラマの共演者が気に入らないとその放送局の社長に直接電話をかけ外すよう テレビ局に圧力をかけたり、ジャニーズをやめたタレントを起用しようとしたら「よく考えて」と脅され、 それでも配役を決行したらジャニーズ事務所から出禁的待遇にされたといいます。   このタレントの降板を武器にキャスティングを思いのままにする ジャニーズの手法について、アメリカ・ニューヨーク・タイムズ紙は2000年の記事で、「ジャニーズ事務所に従わないと、番組に人気タレントを出させてもらえず視聴率が下がる」 テレビ局の実態を報じています。

 ジャニーズ事務所はタレントパワーを背景に自分の意のままに強引な条件で取引を仕掛け、番組内容に口を挟み競合他社を妨害、自分たちの意にそぐわない記事を書こうものなら「取り消さないと裁判沙汰にする」と恫喝、 通常の商慣習上のルールではあり得ない「傍若無人の滅茶苦茶な商売」を行ってきたとされます。

 すでに何十年も前からマスメディアはメリー氏の剛腕ぶりに完全に牛耳られ、事務所にネガティブな報道は徹底的に封じ込められてきたのです。   とくに視聴率が最優先の各テレビ局はジャニーズの権力にひれ伏し、腫れ物に触るような対応に終始してきたのです。  報道する側が ジャニー喜多川の性加害を見て見ぬふりし問題を正面から取り上げてこなかったことが、数百人にも及ぶ被害者を生む大きな要因となったことは間違いないのです。

 当時ジャニーズJr.だった数名が警視庁に被害届を出した際も、警察は抹殺(無視、否定)しまったく相手にしなかったといいます。   このときジャニーズ事務所のマネージャーが同席しており、 警察の人間と親しげに話しているのを見て少年は驚いたそうですが、ジャニーズは人気タレントの「一日署長」などで警視庁にしっかり恩を売っていたのです。  したがって 警察が捜査に着手することはなく、テレビ・新聞もダンマリを決め込んでいたため世間から事実関係の調査を求める社会的な機運は高まらず、 多数の元ジャニーズ・ジュニアの証言によれば、これ以降も性加害は続いたのです。

 警察は被害者が声をあげていたのですから、その時点で法令を厳格に適応して対応していれば、ここまで被害は大きくならなかったでしょう。 なぜ警察が動かなかったのか、 二度と同じような問題を許さないためにも、徹底した厳しい検証は必要です。  このまま警察が何の対応もしなかったら、過去ストーカー事件で警察に頼ってきた被害者たちの声を無視し、 見殺しにしてきたことの繰り返しです。

 多くの関係者がジャニーズ事務所にメシを食わせてもらい「忖度、ことなかれ主義、隠蔽体質」が骨の髄まで染み付いた『日本のムラ社会』においては、 その秩序と安定を乱すのは「悪」であり盾突けば即座にスポイルされ追い払われます。  デビューのため『親にも絶対言えない』ジャニー喜多川の欲望に耐えてきた ジャニーズ所属の有力タレントたちは誰一人声をあげません。

 つまり、この構図は『巨大な力への忖度・利益優先・結果至上主義』が蔓延る日本社会の風土において、 「ジャニーズ事務所とビジネスで深くつながるメディアや広告代理店、警察までも、寄ってたかって性加害を“黙殺”し "放置と隠ぺい"に終始した」というドラマでよく描かれる腐敗事件なわけで、ヤバい取引先と認識しながら、ビジネス的なメリットを優先させ見て見ぬふりするのは、 高岡浩三氏もジャニーズ問題と同様の癒着問題だと指摘する、保険金の不正請求などさまざまな問題が発覚した「ビッグモーター」と損害保険大手「損保ジャパン」のズブズブの関係 にも見られます。(2023.9.20)


  

メディアは性加害事件をどう報道したか

 2023年9月7日、ジャニーズ事務所が会見を開き「ジャニー喜多川の性加害はあった」ことを認めます。  しかし、 これまで散々ジャニーズの威光にひれ伏してきた各テレビ局の腰の引けた報道姿勢は変わらず、 基本的には被害を訴える元ジャニーズJr.らでつくる『ジャニーズ性加害事件当事者の会』の話をそのまま伝え、フリップで説明して、 専門家やコメンテーターが意見を述べるだけで、それ以上踏み込んだテレビ局は一社もありませんでした。

 そもそも、2000年4月に自民党議員がこの問題を取り上げたときや、最高裁で2004年に性加害の事実が認定された時点で大手マスコミや警察が動いていれば、 それ以降の未成年者に対する性加害は防げた可能性もあったのですが、裁判で事実と認定され一部の雑誌や書籍での告発 も長く続けられてきたにも係わらず、「権力による威嚇」に腰が引けた大手マスコミは、これまでも消極的報道ぶりでしたが、 事ここに至ってもその姿勢を変えなかったのです。

 しかし、騒ぎは一向に収まる気配もなく、それどころかネットで報道姿勢に批判が出始めたことで、やっと恐る恐る若干は踏み込んだ報道をやり始めます。    ただ、テレビ局の報道ぶりにはかなりの温度差があり、ベッタリぶりの差異を見せました。  笑えるのが、これまで散々この問題をスルーしてきたくせに、『マスコミの姿勢にも問題があった』、 『真摯に向き合います』、などと突然テレビ局が手のひら返しのコメントを、恥ずかしげもなく出してきたことです。    性加害が世界的な事件となった今、このまま知らん振りもできなくなったため、取りあえず「報じなかったことだけを詫びて」逃げ切ろうとしているのです。

 戦時中マスコミは『鬼畜米英』と散々相手を罵っていたのに、敗戦後は『アメリカ万歳』とシッポを振りました。    昔から手のひら返しは得意ワザであり、 今回も本当は権力に対する忖度ぶりを存分に発揮し、巨大芸能事務所の威光にひれ伏し、見て見ぬふりする はずだったのが、たまたま国連という世界的組織が動いたから仕方なく報道しているだけなのです。    頭を下げたフリで嵐が過ぎ去るのを待つのは常套手段なのです。

 この期に及んでも、ジャニーズ事務所に忖度しまくってきたテレビ局の対応はまだまだ甘く、フジサンケイグループ代表の日枝久氏に至っては、すでに最高裁において性加害が確定され、海外メディアが動き、いま被害者が勇気を振り絞り次々に証言を重ねている中、 「10人が何言おうが、事実かどうかわからないからね」と平然と性加害を否定し被害者を切り捨てる発言をしています。     こういう姿勢のトップが君臨している業界では隠蔽が常態化するのは当然であり、これでは芸能界の性加害事件の防止など望むべくもありません。

 テレビ朝日はジャニーズ新社長に就任した東山紀之氏が報道番組『サンデーLIVE!!』のメインMCを務めていましたが(9月3日降板)、10日の放送で“身内”が新社長に就任し 性加害を認めたジャニーズ事務所会見を、報道番組であるにもかかわらず、 一切触れないという恐るべき忖度ぶりを披露してくれました。  それどころか17日の放送でも性加害事件には一切触れないという3週連続スルーの荒業を見せます。     さらにTOKIOの城島茂氏がメインパーソナリティーを務める16日の「週刊ニュースリーダー」でも性加害ニュースを取り上げませんでした。  これには「二度と人権語るな」の批判が殺到します。

 テレ朝は東京・有明埠頭に『東京ドリームパーク』なる地上11階・地下1階の複合施設を2026年に開業予定で、その目玉がジャニーズタレント専用の『ジャニーズ劇場』だというのですが、 こんな「ズブズブの関係」では性加害報道に消極的なのも当然です。(FLASH)

 不思議なのは、これほどの事件であれば加害者とその関係者らにはタダでは済まない批判が殺到し、根掘り葉掘り事件の内容が暴かれるはずなのに、メディア報道にせよ会見にしろ、 この「前代未聞の性加害事件」の中身は完全放置され、ヤレ事務所の名前がどうダ、どのスポンサーがCMを止めたといった些末な報道ばかりで、 事件の解明と被害者に寄り添う動きが全く見られないことです。

 これについて、仏フィガロのレジス・アルノー氏は、「50人規模の東京オリンピックに対する反対デモや、各大臣の靖国神社参拝、カルロス・ゴーンの釈放などを撮影するためにヘリコプターを使う。 だが、 ジャニー喜多川の被害者には金を使って取材をしようともしない」、「日本のテレビ局の幹部らは、今すぐ自分の名刺に『弱きを挫き、強きを助ける』 と刷るべきだろう」と、自分に害が及びそうもない相手には情け容赦なく過剰に報道するくせに、強い者には及び腰の日本のマスメディアを痛切に批判しています。(2023.9.20)


  

ジャニーズに最も「忖度」していたのはNHKだった

 人気者の動静を記事にして視聴者の関心を集めてナンボのメディアとしては、相手のご機嫌を損ないソッポを向かれてしまったら商売になりません。    だからこそアングラメディアは兎も角、マスメディアは「忖度して」相手が触れてほしくない部分は隠蔽する、というスタイルになってしまうのはある意味当然です。

 例えば、後に「105日間の新婚生活」と騒がれることになるスケーターの羽生結弦氏の場合、普段から「インタビュー取材などは、すべて羽生さん側のチェックが細かく入ります。 事前の取材内容から始まり、言葉のニュアンスまで、本当に一字一句です。 特にスケート以外の話を聞くのはご法度で、少しでも聞こうものなら、 “取材拒否”されかねない雰囲気があるんです。 まるで、旧ジャニーズ事務所がメディアをコントロールしていた問題と同じような構図ですよ」という状況だったそうです。(2023.12.5)

 「皆様のNHK」も紅白歌合戦は"ジャニーズ枠"を5~6枠も与える 「ジャニーズ祭り」と化し、本部がある渋谷の放送センター西館7階にジャニーズ専用の部屋を用意するという最優遇をしてきました。    視聴率獲得に躍起になるNHKが頼ってきたのは旧ジャニーズのタレントたちで、彼らがいなければ紅白は成り立たない状況になっていたとされます。  テレビ局で最も旧ジャニーズ事務所に「忖度」をしていたのはNHKだったわけです。

 問題なのは、紅白の制作費の原資は国民から強制的にかき集めた受信料であるにもかかわらず、詳細がいくらなのか公表していないことです。 近年では紅白の司会まで旧ジャニーズ勢の 「指定席」となっていたわけで、ジャニタレなど全く興味のない年寄りからも強制的に徴収した受信料から多額の紅白制作費が注ぎ込まれ、それでジャニーズ事務所もガッポリ稼いでいたというのですからやり切れません。

 そんなベッタリの関係だったNHKは、 「『人権、人格を尊重する放送を行うこと』を定めており、性暴力について、『決して許されるものではない』という毅然とした態度でこれまで臨んできたところであり、 今後もその姿勢にいささかの変更もありません」と恥ずかしげもなくシャアシャアと語るだけで静観を決め込んでいます。

 では「性加害が決して許されないことは当然」と言い切るNHKは 「その性加害を知りながら長期間隠蔽してきた」自らの不徳(人の行うべき道に反すること)についてどう申し開き(自分の行為の正当性を主張)するのでしょうか。(2023.9.23)

 そのNHKからして、“役員待遇”だった元理事がジャニーズ事務所からハワイ旅行接待を受けていた疑惑や、2022年にジャニーズ事務所に顧問として “天下り”していたことが明らかになります。     こんな“爆弾”を抱えていては、性加害を追及するどころか同じ穴の狢なわけで、これで「毅然とした態度でこれまで臨んできた」 などとよく恥ずかしげもなく言えるものです。  マア、これがマスメディアの正体なのです。  果たして「その姿勢にいささかの変更もない」NHKは、 この事実をいつ報道するでしょうか。  乞うご期待です。(2023.10.12)

  
 

「マスメディア沈黙の実態」が赤裸々になった大事件

 ことなかれ主義の日本においては、これまで「権力にひれ伏す沈黙文化」が社会を覆ってきたわけですが、海外にまで知られた今回の性加害事件は、 そんな日本式忖度など吹き飛ばすパワーを発揮しました。    このジャニーズ性加害事件によって、出来の悪い三流ドラマで繰り広げられる絵に描いたような 「悪役同士のズブズブのもたれあい」が一気に表面化し、視聴率のためなら悪事でさえ平気で隠蔽する「テレビ局の醜悪な正体」が赤裸々になりました。    「マスメディア沈黙の実態」が、国民にこれ以上ないほどわかりやすい形で示された事件と言えます。

 今回の事件以外にもテレビ局にはジャニーズ関連の醜聞ネタが腐るほど転がっているとされますが、これまで大手メディアは 「正義より商売としておいしい方」を優先させ、ジャニーズ事務所にとって好ましくない報道は控えてきました。   こんな大騒ぎになってもジャニーズとウィンウィンの関係だったメディアは、 過去のメリー氏の横暴ぶり には一切触れようともせず、相も変わらず表ざたにならない限り隠蔽と忖度」を続けているのです。

 芸能界であれ政界であれ、大きな権力を持ち誰も逆らえない勢力は(一時的にせよ)存在しますし、ろくに顔も知らない相手には情報は出しません。  報道側としてはそこに 「食い込む」には密着が必要で、相手の嫌がることを訊くのはタブーという縛りもあり、ある程度は目をつぶらざるを得ない場合もあるでしょう。    そこの線引きが難しいわけで、 正義よりビジネスを優先するほど相手に取り込まれ相手の不都合な面は見て見ぬふりする、というパターンに陥り 「マスメディアの沈黙」が起きるわけです。

 この後遺症か、各テレビ局ともこの期に及んでも、世界を驚かせた大規模性加害という不適切行為を行ったジャニーズの 社会的責任を追及する態度は全く見せません。    ズブズブの関係のテレビ朝日に至っては、「タレント自身に問題があるとは考えておりません。 これまで通り番組の企画内容などを踏まえ、ご出演頂きたいと考えております」、 と世間の感覚と真逆な独特の企業倫理を表明しています。   普段タテマエでは人権だ、企業の社会的責任だ、 などと偉そうなご高説を垂れるテレビ局は自らの「性加害事件を見て見ぬふりしてきた責任」には一切触れず「そこは沈黙を貫き」、 それどころか「世紀の児童虐待で繁栄してきたジャニーズ事務所」の所属タレントを起用した番組をこれからも続けようとしているのです。    恐るべき「順法精神の欠落ぶり」です。

 まさに、ドラマで描かれる「金のためなら悪魔にでも魂を売る」悪役そっくりの行いを、現実社会で演じているわけですが、ジャニーズと取引を続けることは 性加害を容認するということと同じ、という思考は働かないのです。 サスガ、「10人が何言おうが、事実かどうかわからないからね」 と言い放つトップが居座る業界だけあり、コンプライアンスとは無縁の「典型的ムラ社会」の本性を見せつけてくれました。 「見て見ぬふりも責任を問われる」アメリカだったら、 とっくに後ろに手が回っている事態です。

 集団レイプなどの場合、周りで傍観している人間も性的虐待に加担していると見なされ罪に問われます。  アメリカでは児童虐待を目撃しながら通報を怠るのは重罪です。   元ジャニーズJr.の被害者は「加害者の罪を重くすることはもちろんだけれど、傍観者、つまり周りで見て見ぬふりをしていた大人たちも同罪にしてほしい」と語っています。     口では社会悪と戦う報道などと言っておきながら、実態は視聴率欲しさでジャニーズにひれ伏し忖度しまくってきた各テレビ局の人間たちは、 この言葉をどう聞くのでしょうか。

 仏フィガロ・レジス・アルノー氏の、「5冊の著書、国会傍聴、そして文春の度重なる報道にもかかわらず、 なぜジャニー喜多川の破滅的な性犯罪をもっと取り上げないのだろうか?」、 「今に至っても薄っぺらな反応しか示さないことで、日本のテレビ局はジャニー喜多川のような人物を守る沈黙の陰謀に加担しているのだ。
ここでメディアが変われない限り、日本の芸能界が、彼のような怪物にとって理想的な遊び場であり続けることは間違いない」という指摘は、 日本のメディアと捜査機関、そして社会にどこまで届くのでしょうか。(msnニュース)

 ジャニーズ事務所の次期社長として所属タレントの名前が浮上していますが、 渦中の真っただ中にいた可能性のある人にかじ取りを任す「ムラ社会の発想」のままでは、ジャニーズ事務所に自浄作用が働き再発防止への動きが広がることなど望めないでしょう。     これはジャニーズ事務所の意向を忖度し牛耳られてきた、ある意味共犯者ともいうべき立場のテレビ局にも言えます。(2023.9.21)


 

100年経っても変わらない「再発防止」に無縁の日本社会

 この大規模性加害事件は、「触らぬ神に祟りなし」で無用なトラブルは避け、「権力者の横暴は見て見ぬふり」し「強い者にひれ伏す」 日本社会の、まるで縮図のような出来事でもあります。  外国であればこの機会に、見て見ぬふりして臭いものに蓋をしてきた マスコミの体質にメスが入れられ、再発防止策が議論され改善策が実施され忖度まみれのマスコミが生まれ変わる試金石となったはずですが、 日本人はそういう「スクラップアンドビルド」に消極的で、失敗から学ぶことが出来ない民族なのです。      これをやれたら、日本社会に「巨大権力にひるまず正しい方向に動く」力が芽生えるようになるかもしれないところですが、望み薄です。

 それどころか、この期に及んでも、マスコミは「ジャニー喜多川の破滅的な性犯罪」がなぜ見過ごされてきたか深堀りしようともせず、テレビ朝日のような 「ジャニー喜多川のような人物を守る沈黙の陰謀に加担する」テレビ局さえ存在している始末で、まさにレジス・アルノー氏が指摘する、 「日本の芸能界が、彼のような怪物にとって理想的な遊び場であり続けることは間違いない」日本社会の異常さを世界に見せつけています。

 先の大戦で日本が敗戦への道を突っ走った要因のひとつに、作戦指導部の硬直した思想に基づく場当たり的な戦法と、上位階級者に絶対逆らえず忖度しまくった部下の資質があったとされます。   このため上層部は自らがどんな失策を重ねようが言い訳で誤魔化し、長いものに巻かれたままの周囲からは批判の声は一切上がらず、したがって過ちが表面化することなく 反省もないまま問題解決の道は閉ざされ、破滅に向かうまで誰も口出しできなかった 日本軍の例があります。   「権力者への忖度」、「声の大きなもの・言ったもの勝ち」の文化、誰かに煽られ一旦走り出すと止まらなくなる烏合の衆気質、その場限りの思考しかできず 先のことまで考えるのは不得意で、 前例をそのまま踏襲したがる国民性も相まって悲惨な結末へ追い込まれたわけです。

 大東亜戦争で作戦参謀だった人物は、 日本軍に「失敗の経験を再発防止へ繋ぐ」動きが皆無だった背景について、「本来なら関係者による研究会で 問題点を洗いだすべきだったが、突っつけば穴だらけであるし、皆十分反省していることでもあり、 その非を十分認めているので、いまさらほじくり返す必要がないと考えた」としています。    昔から日本人には「失敗の経験から積極的に学びとろう」という姿勢が欠落していたわけです。

 ひるがえって、敗戦から約80年後に起こった今回の性加害事件でも「反省すべき当事者が揃って口を閉ざしたまま」で、 過去を検証し二度と同じ過ちを繰り返さないよう改善する、という動きは一切見られません。  テレビ局はじめマスメディアは 「なぜ知っていながら報じてこなかったのか」一切語らず、自らの振る舞いについて何らの検証もせず反省もないまま、 この期に及んでもガバナンスの問題を抱えたままのジャニーズ事務所と取引関係を続けると堂々と宣言しています。   驚くべきテレビ局の倫理観の欠如ぶりですが、 視聴率最優先のテレビ局にとっては、人気芸能事務所に忖度するのは当たり前であり、 どうせ今回の事件のほとぼりが冷めたら、「児童性加害事件」など無かったかのような姿勢に戻るのは明明白白(めいめいはくはく)なのです。

 はたして「世紀の大規模性加害事件」の共犯者とされた 「忖度と隠蔽まみれ」のテレビ局は、どこまで踏み込んだ反省の態度を世間に示し、どういう形で責任を取るのか。  そして、 事務所内での性加害が常態化していたジャニーズ事務所の闇がどこまで明らかにされ、被害者はどう救済されるのか、期待せず見守りたいのです。

 日本人の気質は100年近く経っても変わっていないようなので、「問題が広がった背景にマスコミの沈黙があった」と指摘された体質については 「何も変わらない」に1000点上げておきます。  既に「皆様のNHK」からして、お気楽な反省(風)番組放映により「禊(みそぎ・罪が許される)」 は済ませた気になっているのですから。(2023.9.20)


 

やっと「性加害」を認めたジャニーズ事務所

 これまで現社長の藤島ジュリー景子氏は「性加害は知らなかった」と言い張っていますが、一説では、ジュリー景子氏の母親メリー喜多川氏は、 弟(ジャニー喜多川)の「病」を娘にも口外しなかったとされます。  ジュリー氏が「性加害事件」の背後にあった悍ましい事実 をどこまで把握していたかは本人のみぞ知るというわけです。

 いずれにせよ、この事件は1988年の「フォーリーブス」メンバーの暴露本や1999年の『週刊文春』の特集によって日本中の関心を集め、2004年に最高裁で「セクハラを訴えた週刊誌記事は真実」 という判決まで出ている話です。 ジャニーズ上層部のジュリー景子氏が「ジャニー喜多川の性加害」を全く認識していなかったはずはありません。   また、 スタッフがジュニアたちをホテルに送るなど性加害は事務所ぐるみで行われ、ジュニア担当スタッフがタレントに手を出していたことまで発覚しています。(2023.9.4)

 2023年9月7日、ジャニーズ事務所が会見を開き「ジャニー喜多川の性加害はあった」ことを認めます。  会見の席で東山紀之氏の新社長就任が発表されましたが、 最古株でもある東山氏については、かつて所属タレントに対して性加害を行ったという疑惑も浮上しており、 過去にも元タレントによる書籍にそのことが描かれています。   東山新社長はそれを記憶にないと否定していますが、 10月7日に放送された「報道特集」(TBS系)では、元ジャニーズJrが、合宿所にいた当時、東山から「おまえやられてこいよ」と言われたと証言しています。

 性加害の反省から誕生した次の責任者も、実は似たような性加害をやっていたというのではもうどうしようもないわけで、一歩間違えば新たな大スキャンダルへと発展しかねません。   はたして東山氏の醜聞はジャニー喜多川と同様またしても封印されたままとなるか、東山新体制の前途は多難のようです。(東洋経済ONLINE)

 会見場に集まったメディア関係者のほとんどは、これまでジャニーズとドップリだったわけで、当然ながら性加害について踏み込んだ質問は一切出ず、「前代未聞の性加害事件」の割にはなんとも中途半端な会見でした。   この席でジャニーズ側は「ジャニー喜多川の性加害はあった」ことは認めたものの、 口をそろえて「うわさでは聞いていたが、見たことはないし、所属タレントから直接聞いたこともない」と発言します。  しかし、これでは被害者の主張とだいぷ距離があり、 重要な事実関係について「あった」、「なかった」という事務所側と被害者側の間の争いが生じ、 補償と救済に関しての話し合いの着地点をみるのが難しくなってしまう可能性があります。

 所属タレントとしても喜多川の欲望に耐え今の地位を手にした彼らからすれば、これはある意味「墓場まで持っていく」個人的な事案でもあるわけで、 本人が被害者ではないと自覚している限り「性加害はあったとは口が裂けても言えない」話かもしれません。   またオープンにした途端、 周囲から好機の目で見られ二次被害(セカンドレイプ)に繋がる恐れもあります。  実行犯はすでに死亡しており「真相は藪の中のままの話し合い」となれば、 問題の全貌解明は難しく被害者が納得できる解決の道は遠そうです。

 このような事件は「法的時効」という壁があり、未成年男児への虐待などの犯罪の時効は3年、凶悪事件については5年とされ、今回の事件は民事でさえすでに法的に訴えることが困難になっています。    少なくとも日本の現行法では誰かが気づいた時点で積極的に救済に動くなり通報するなりしない限り、加害者は野放しにされてしまうわけです。 (生命・身体の侵害による損害賠償請求権については消滅時効期間を20年へ延長)     東山新社長は会見で「法を超えて」被害者に寄り添うことを表明しています。

 普通の感覚をもち「なんでそこまでして売れたいのか」疑問を抱いた一部のタレントたちは、ジャニーズ事務所を抜け出し 喜多川による性加害の実態を勇気を出して告発してきたのです。  しかし、SNSでは「デビューできなかった嫉妬」、「売名行為」などといった数万件に上る事実無根の内容が書かれ、 誹謗中傷を受けているといいます。(2023.9.23 msnニュース引用)


 

雪崩を打って退散し始めたスポンサー企業

 ジャニーズが「性加害の上に成り立って繁栄した会社」という実態が明らかになった今、コンプライアンス (企業活動において社会規範に反することなく公正・公平に業務遂行すること)を重視している企業であれば、起こす行動は決まっています。    「人権侵害企業と取引はしない」外国に進出する会社であればなおさらですが、もしこのままテレビ局やスポンサーたちが我関せずの態度で何も変わらないとしたら、 日本社会は終わっています。(2023.9.5)

 9月7日の会見で藤島ジュリー景子前社長らがジャニー氏の性加害を初めて認めたものの、ジャニーズ事務所という社名は変えず藤島ジュリー氏も社長は辞任するが役員にとどまるという 「現状維持の対応」を見せたため、「再発防止特別チーム」の示した改革案に従ったらタレントとの契約を継続するつもりだった 「国際的企業各社」は、危機感を覚え相次いでジャニーズ事務所と距離を置く姿勢を示し、 ジャニーズタレントとの契約を見直す流れが一気に生まれ有力スポンサーの撤退ラッシュを招きました。

 この動きに、昔からジャニー喜多川の噂を知り一度もジャニーズのタレントをCMや販促に起用しなかった「ネスレ日本」元代表取締役社長・高岡浩三氏は、 「今更、ジャニーズ事務所のタレントと契約しないという大手クライアントこそ、この手の問題を知っていたはずだし、 知らなかったとしたら恥ずべきことだ。 それ以上に、日本のメディアはクライアントの不祥事や人気芸能事務所の問題に蓋をして、 事が起こってから白々しく報じる体質だと理解しておくべきだ」と耳の痛い指摘をしています。

 文春関係者によれば、今回の騒動前はジャニーズの圧力に迎合し、文春に広告を入れないことにしたクライアントもいたといいます。  散々ジャニーズに忖度してきた報道側も手のひら返しで 「メディアとして反省した」とコメントしていますが、もし今後またジャニーズ事務所のような力のある組織が犯罪的行為を恒常的に行っていることが判明したとき、 はたしてクライアントや報道側はこの組織が広告やタレントの出演を通じて圧力をかけてきても、本気で抵抗する覚悟があるのかはなはだ疑問です。

 ほとんどの企業は「問題を(噂レベルでは)知りながら取引を続けてきた」と言えますが、コンサルタントの石川慶子氏は「遅きに失したが、 取引先が被害者対応や人権重視のメッセージを積極的に示したのは良いこと」と評価。  これを機に「企業の社会的責任として、子どもの居場所づくりなどの社会課題に取り組んではどうか。 企業価値の向上にもつながる」と子ども支援を表明することを提案します。

 世界的企業の人権に対する取り組みを調査し採点している「企業人権ベンチマーク(CHRB)」の指標で、平均以上の得点を得た日本企業22社中7社だけというヤバい点数をつけられています。  日本企業の人権尊重の低さが指摘されている中、世界的にも稀な性犯罪を犯したジャニー喜多川の名前を冠した 「人権意識が欠如したジャニーズ事務所」の所属タレントを使おうものなら、企業の人権感覚が問われ、ヘタしたら国際社会から抹殺されかねません。    特に外資系企業や海外に展開するグローバル企業が自社の宣伝に使えないのは当然であり、スポンサー企業の姿勢をウンヌンするのは筋違いな話です。(msnニュース)

 スポンサーがCMのジャニーズタレント起用を次々中止することについて、一部から「消費者に頭が上がらないスポンサーは、ジャニーズファンを甘く見ないほうがいい」 という筋違いの声が上がります。    たしかに一昔前であればスポンサー企業も「おっかなびっくり」の対応をしていたかも知れませんが、いまや海外マーケティングを重要視するグローバル企業にとっては、 それ以上に“世界から向けられる目”を気にしなければなりません。  海外からは性加害事件を見て見ぬふりしてきた日本の異常さ、 今なお一部で擁護の姿勢をとる鈍さ、各企業の対応ぶりが注視されています。   もはや「ファンの不買を“甘く見るな”」などという 旧態依然な世間とテレビ業界の常識レベルで測られる話ではなくなっているのです。 そもそも、ジャニーズファンだけが消費者ではありません。(2023.9.23)


 

見て見ぬふりした挙句「責任の押し付け合い」

 読売新聞特別編集委員の橋本五郎氏は、「企業が(ジャニーズ事務所のタレントをCMなどに)使ったことの責任はどうなるのか、それは触れないでいいのか」、と主張します。    しかし、それは「天に唾する(自分に害が及ぶ)」ようなもので、そもそも橋本氏は長年読売グループの報道番組製作の中枢にいた人物であり、 大手マスコミが「権力に逆らえず沈黙する」世界は十二分に承知しているハズです。    いま世間からは「自分たちが触れたくない疑惑」 は見て見ぬふりし、「報道すべき責任を放棄」してきたマスコミの姿勢に大きな批判が集まっています。  それなのに橋本氏は、 「ジャニーズ性加害に完全ダンマリを決め込んでいた」報道機関の問題点を追求するわけでもなく、今後どういう役目を果たすべきかの話もなく、 自らの不徳には目をつぶり、「批判の矛先をスポンサー企業に向ける」発言をしているわけです。

 たしかに、企業も(噂レベルでは知りつつ)ジャニーズ所属タレントのCM起用で儲けてきた面もあり、手のひら返しで切り捨てるという構図に多少の非難もあるでしょうが、 そこを指摘するなら、そもそも論として(性加害を知っていた)メディア(と関係者)が企業に所属タレントCMを売り込んできた、という構図が背景にあったわけで 結局メディアの責任の帰趨(きすう・行き着くところ)は明らかなのです。   この大事件の本質は「芸能界のプレデタージャニー喜多川の性加害を隠蔽してきたジャニーズ事務所」と、「それを一切報じなかった取り巻きテレビ局・新聞」 の責任と癒着ぶりにメスを入れるべき話であり、叩く相手を間違えてはいけません。

 いま大切なのは日本社会に「巨大権力にひるまず正しい方向に動く」力を芽生えさせることであって、報道機関に身を置く者が 「責任の押し付け合い」をやっている場合ではないはずです。  まだまだ「推移を見定めよう」と躊躇する企業が多い中、 高岡浩三氏の苦言や経済団体・一部企業トップの「極めて悪質な児童虐待を隠蔽してきたジャニーズの罪は許されない」という発言が、 これまで「見て見ぬふりし沈黙する日本社会・特にマスメディア」に一石を投じることを期待したいものです。

 そもそも、批判されるべきは世界中が注目する児童虐待事件を起こしておきながら、被害者救済は後回しにして「性加害を重ねて繁栄したジャニーズ」 という名前にしがみつき「生まれ変わる」のを拒否している関係者であり、これではコンプライアンスに厳しい企業の 「ジャニーズタレントを使うなら番組スポンサーにはならない」という流れを止められません。   社会悪を起こした企業が生き残るには、 「性加害に加担した人間に対する公正な処分」、「被害者への謝罪と適切な補償」、「具体的な再発防止策作り」 が不可欠です。

 ジャニーズ事務所の権威失墜によって「権力による威嚇」からやっと解放されたいま、報道に携わる人間たちに対し 「なぜ権力に歯向かわずに順応してきたのか」、「どうして性的搾取犯が見逃されてきたのか」、 という当たり前の疑問が突き付けられています。  しかし、その疑問に真摯に向き合おうとする日本のメディアは皆無です。

 大規模性加害事件がここまで隠蔽されてきたのは、飛ぶ鳥を落とす勢いで芸能界に君臨してきた絶対権力者ジャニーズ事務所に、視聴率第一主義のテレビや儲け至上主義の関係者が ビジネス的なメリットを優先させ言いなりになり、性加害を見て見ぬふりしてきたという構図にあり、 梨元氏のように業界にも勇気ある発言でテレビの不条理(良識や常識に反すること)に立ち向かった人はいたのですが、それは極々限られていたのです。   大手マスコミが「報道する責任を放棄」してきた罪は重大です。

 ジミー・サヴィルの例のように外国でも「見て見ぬふり・忖度」する傾向はあるようですが、 彼らは事が公然の事実となれば「マスコミは忖度と隠蔽を告白」、警察も「大規模な捜査」へ動きます。   自浄作用が働き同じ事件が二度と起こらないよう「反省と対策を疎かにしない」わけです。    ところが、権力者の不正に目をつぶり、ひれ伏し「社会の木鐸」の役割を全く果たしてこなかった新聞・テレビは、世間に対し「過去を検証し真摯に反省する」 動きを見せるどころか、「報じなかったことだけを詫びて」相変わらずのダンマリを決め込みます。  このメディアの無言は 「性加害を肯定した」と受け止められても仕方ありません。  残念ながら、忖度社会の日本は海外メデイアのような反省と対策へ動くのは土台無理な話なのです。(2023.9.29)


 

マスコミは「沈黙してきた責任」をどう取ったか

 国民から強制的に取り立てる受信料で成り立つ「皆様のNHK」は、9月11日の「クローズアップ現代」で「“ジャニーズ性加害”とメディア 被害にどう向き合うのか」を放映しますが、例によって関係者と称する被害者の悲痛な声に耳を傾けようともせず、 問題の本質は見抜けず、自分に不都合な話は縮小視する態度を取ってきたであろう、 報道に携わる人間とは程遠い資質の人物たちから「そのウワサは聞いたが深く捉えなかった」というお決まりの言い訳を聞いたフリでお茶を濁します。

 NHKはこれで幕引きをするつもりなのでしょうが、この(報道マンと自称する者たちの)忖度と隠蔽体質こそが、今回の問題が永年見過ごされてきた遠因であり、 その責任の所在を明確にしない限り『真摯に向き合った』コトにはなりません。  今更ですが彼らには仕事を失ってまでジャニーズ事務所の醜聞を糾弾し続けた芸能リポータ・梨元勝氏の 「爪の垢を煎じて飲ませたい」ところです。  他のテレビ局も事件のほとぼりが冷めつつあると踏んだか、まるで性加害などなかったかのような通常モードの番組を流し事件の幕引きを図ろうとしています。    世間からもジャニーズを批判する声はそれほど上がらなくなりつつあります。   日本人は昔から飽きやすいのです。

 一部からは「メディアが手のひら返してジャニーズを叩く」という声もありますが、会見でも報道でもメディアはヤレ事務所の名前がどうダ、 といったどうでもいいような話に終始し、肝心のジャニー喜多川の性加害を隠蔽してきたジャニーズ事務所」と、 「それを一切報じなかった取り巻きテレビ局・新聞」の責任と癒着ぶりにメスを入れるという、「事件の本質」に迫る 厳しい追及は何一つしていません。   児童性加害と言うハードルがあるにせよ、肝心な部分には触れない底の浅いアンバランスな報道姿勢 に終始しており、これではジャニー喜多川の性加害の噂は「耳にしたがよく知らなかった」 と言い張り「だから報じなかった」 と逃げてきた従来の姿勢と何ら変わっていません。  こんな体たらく(好ましくないありさま)の日本に 「真の報道マン・アンカーマン(ニュースをまとめる人)」が育たないのは当然です。

 こんな日本に海外からは「日本社会の反応の鈍さ」が指摘されています。  欧米諸国であればジャニーズはいまごろ世論から大きな圧力を受け、 閉鎖か大規模な改革を迫られるはずなのに「誰も責任をとらず」、世論は全く盛り上がらずにいることに彼らは驚いています。  たしかに、 この期に及んでもメディアの性加害報道は「ジャニーズの名前がどうした」、「誰がCMを降ろされた」といった些末な記事が散発的に出るだけで、 すでに「ほとぼりが冷めて」しまっています。

 「世界最大級の性加害事件」が起こった日本社会に今のところ目立った動きはなく、せいぜいどのスポンサーがCMからジャニタレを外したかが話題になる程度で、 「問題が広がった背景にマスコミの沈黙があった」ことについて、反省のハも出ていません。  当然「マスコミの責任を明らかにする」、 「報道は今後どうあるべきか」という姿勢は全く窺えず、これからもマスコミの体質は変わらないヨ、ということを見せつけているのです。(文春オンライン引用)(2023.9.20)

 マスメディアは「EV主体の脱炭素ごっこ」においても、 「真実を伝えようとする努力」と真逆の姿勢に終始しています。   世界で「気候変動(危機)」を支持する科学者は、政府や企業、さらには圧力団体におもねる「御用科学者」を除けば、実のところ少数派とされています。    ところが、マスメディアは「科学的根拠が無いまま」広められた「気候変動(危機)」についても、 良識ある科学者の意見は封印し、政府や企業、さらには圧力団体におもねる「御用科学者」の意見ばかりを取り上げています。    相も変らぬ「触らぬ神に祟りなし」の態度で「不都合な真実は封印」し、「見て見ぬふり」の姿勢をとり続け、「沈黙してきた責任」の再現を繰り返そうとしています。(2023.12.8)


 

「報道すべき責任」を放棄している日本のメディア

 この大事件によって新聞・テレビが「社会の公器」としての役割を全く果たしていない、ことが改めて浮き彫りになったわけですが、 これは今回の性加害に限った話ではなく、昔から彼らは訴訟リスクを過度に警戒するあまり、権力者や著名人のスキャンダルはよほど大事にならない限り知らぬ存ぜぬを決め込んできました。   今回の事件が明るみになったのも大昔に勇気ある週刊誌が訴訟リスクを恐れず記事にし裁判にまで発展させていた下地があり、 それが後年海外メデイアを動かす動機になり「外圧がかかった」からなのです。  政治家の醜聞ネタもしかりですが、 昔から「真実の報道は週刊誌などの雑誌が担っていた」のが実情なのです。

 1974年にも「大手マスコミの沈黙」が表沙汰(おもてざた・内密にしたいことが世間に知れ渡る)になったことがありました。  同年10月、当時「金権政治」とウワサされていた 田中角栄総理大臣について、文藝春秋(1974年11月号)にジャーナリストの立花隆氏が、 田中がどうやって資産を膨らませたかを克明に描いたレポートが掲載されます。   すでに田中の金作りの基が「土地」にあったのは知られていたのですが、 例によって新聞・テレビは田中の金作り(金脈)について一切触れず、知らぬふりを決め込んでおり、買い占めはもちろん、親しい実業家への国有地払い下げなどの実態が明らかにされたのは、 この記事が初めてだったのです。

 雑誌発売後も「新聞・テレビが沈黙」していたため大きな騒動にならなかったのですが、その後田中が日本外国特派員協会の昼食会に招かれた際、 海外メディアの記者たちが相次いで文春の記事について質問。  外国人記者からの忖度なしの追及に耐えかねた田中角栄は、会見を打ち切って逃げました。   これにより田中の金作り(金脈)が一気に注目された結果、流れは大きく変わります。   これまで弱腰だった日本のマスコミもやっと新聞がトップ扱いで報じ日本中が大騒ぎとなり、翌月、 田中総理は退陣を表明したのです。

 まず雑誌が報道し、これを海外メディアが取り上げる。 そこでやっと日本の新聞、テレビが報じることで、世論に大きな流れが出来る、 というのは今回のジャニーズ性加害騒動とそっくり同じ動きであり、まさにデジャブです。  当時も新聞、テレビに対し「なぜすぐ側で取材しながら、金脈疑惑を知らなかったのか」、 「もし知っていたら、なぜ、書かなかったか」世間から強い批判の声が上がります。     これにある記者は「勇気は残念ながら私にはなかった」と述懐しています。(文春オンライン引用) 

 大手マスコミは仲良しサークルともいえる「 記者クラブ」に所属し、「報道協定」とやらの縛りで国民の「知る権利」を規制し 、毒にも薬にもならない横並びの記事をタレ流す「権力の御用聞き」に成り下がっています。   いまや多くの人々はリアルタイム情報は旧態依然のマスコミからではなくネットから入手し、深堀情報は週刊誌・月刊誌から得ています。   もうとっくに報道の主役は新聞・テレビから週刊誌やネットに移っており、いまさら大手マスコミの無力ぶりに落胆する必要はないのですが、 新聞・テレビも少しは「報道機関」の本分(果たすべき責務)を思い出し週刊誌の報道ぶりを見習ってもらいたいものです。   今後も 文春砲の破壊力に期待しています。

 「公共の電波」を独占し「既得権益」を得ているテレビは「報道すべき責任」を負うはずですが、「報道の自由」をタテに「国民の知る権利」 は蔑ろにしているのです。     新聞も「消費税軽減税率」の適用を受けるからには「国民に真実を伝える義務」を負っているはずですが、 「不都合な真実」に平気で蓋をしてきました。  彼らが言う「報道の自由」とは 「自分に不都合な事実は隠蔽」し、逆らえない相手の不正は平気で見て見ぬふりすることであり、こういう報道姿勢がジャニー喜多川という 「世界最悪級の連続児童性加害者」を助長させてきたのです。

 ある意味大手マスコミは「幇助犯(犯罪実行者を手助けした者)」であり、 「弱者は徹底的に叩き強者の不正に目をつぶる」報道を続けてきたメディアについては、 第三者による検証委員会の設置などで厳しい責任追及がなされるべきで、これを機に報道の最低限のガイドラインが示されない限り、 今後もメディアの報道姿勢は変わりません。  本来であれば放送事業者は放送法で定められた番組審議会の監査を受け真っ当な報道を心がけてしかるべきはずなのですが、 こちらも審議会とは名ばかりで有名無実の存在だったようです。

 この騒動で日本人も大手マスコミはとっくに「報道すべき責任」を放棄 していることを再認識したでしょう。  人気アイドルが所属する事務所との関係性を重視し性加害は見て見ぬふりしてきたメディアは 「ジャニー喜多川の卑劣な性犯罪の共犯」といえます。(2023.9.20)


告発者に勇気を与えた性加害問題の実名証言

 大手メディアが権力者に委縮してしまい、たとえ事件性があろうがその人物の不都合な情報を隠蔽するという実態は、ジャニーズ性加害事件や田中角栄総理大臣の金脈問題でも存分に発揮されました。   大手メディアは自分の身に火の粉が飛んでこない限り、世の中の本当に知りたい情報を公表することはない、ということを見せつけてくれたのです。    似たような隠蔽話は世の中にまだまだ溢れているはずですが、その一つに現東京都知事 「小池氏の『学歴詐称』疑惑」があります。

 これはエジプト留学時の小池氏の全てを知る同居人だった女性が、小池氏は実際にはカイロ大学を卒業していない、という事実を公表した出来事です。   この小池氏の『学歴詐称』を知る数少ない人物のひとり(Aさん)は、「小池氏がテレビタレントの時代はまだよかった。   けれど、政治家となって権力の階段を上るにつれ、 自らが知る小池氏の学歴詐称の真実を公表するべきではないかと悩むようになった」としています。

 そして長年悩んだ末、真実を知る者の責務として、大手マスメディア宛てに小池氏の経歴詐称を告発する手紙を送ったといいます。  しかし、 例によって権力者に逆らう勇気など持ち合わせていない大手マスメディアはガン無視を決め込み、その義挙は徒労に終わります。

 メディアへの失望の中、Aさんは雑誌に小池氏のことを書いていたノンフィクション作家・石井妙子氏を知り相談。  2020年、石井氏は小池百合子東京都知事の半生を描いた 『女帝 小池百合子』を著し21万部を超えるベストセラーとなります。    2023年11月8日、その文庫版が発売されましたが、そこではAさんの「実名にすれば証言を重んじてくれるのでしょうか」という意思を尊重し、単行本では仮名〈早川玲子〉だったのを実名〈北原百代〉に改めるという決定的な改稿がなされています。

 石井氏によれば「北原さんはジャニー喜多川氏の性加害の被害者が実名で告発したことに感銘を受けたそうです。 そのことによって、 これまでないものとされてきた芸能界の権力者による性加害が明るみに出た。  実名証言が世間とマスメディアを動かすと実感なさったのです。 北原さんの勇気に敬意を表します」としています。

 「小池氏にとって、“カイロ大卒”は欠くべからざるエピソードであり、この物珍しい経歴こそが、メディアの注目を集めた所以であり、政界進出の代えがたい橋頭堡となった」(石井氏) 背景を小池氏は抱えているわけです。  小池氏が出世するにつれ、北原さんは周囲からも『権力者を批判してもいいことはない』と言われたこともあったといいます。    石井氏は、小池氏の“弱み”を知る北原さんの身に危険が及ぶのを危惧し、単行本では仮名で経歴詐称を告発したわけですが、 北原さんは性加害問題の実名証言に感銘を受け、今回実名での告発を決意したわけです。

 例によって日本の大手メディアは小池氏の学歴詐称疑惑の追及に消極的で、相変わらずの「外圧がかからぬ限り知らぬふり」を続けていますが、 学歴詐称(公職選挙法違反)は知事辞任に値する犯罪であるにも係わらず、不正行為の疑惑がある権力者に忖度する大手メディアは、 これまでと同様隠蔽体質を性懲りもなく国民に見せつけているのです。   北原さんの勇気が世間を動かし、新たな真実の発掘に繋がることを是非願いたいものです。(2023.11.21 「週刊文春」2023年11月16日号 )


 

「報道もやるエンタメ企業」で真の報道が出来るか

 一説では、テレビ局の報道側はジャニーズ事務所の性加害を表ざたにしたかったが、上層部の反対により実現できなかったなどと言う話も伝わっています。 「報道もエンタメもやる」テレビ局は もともとエンタメが収益の柱であり、ジャニーズ人気に便乗し収益を上げている現状では、「性加害」を報道するなどもってのほかで、「臭いものに蓋」してきたわけです。

 「報道機関という意識が高い」アメリカ3大ネット(CBS、ABC、NBC)は、日本と同じ民放テレビ局ですが、基本的に自社にエンタメ部門を持っていないそうです。 報道部門とエンタメ部門は分離されており、 自社で手掛けるコンテンツは、ざっくりと言えば報道とスポーツだけだといいます。 日本のように報道部門がエンタメ部門に牛耳られないよう自然とファイアウォール(業務の壁)が築かれているわけです。

 権力に屈しない調査報道で有名なCBSの看板報道番組「60ミニッツ」チームは、経験豊富なジャーナリストで構成されエンタメとは一切縁がないといいます。   ところが、日本は何を血迷ったか、報道のホも知らない、コメントはカンペ頼みでロボットのように話すだけのジャニタレを、愚かにも競ってキャスター起用してきた挙句、 報道すべき立場なのに「自分の事務所で世界的な性加害事件が起きたため何もコメントできない」というグダグダぶりを見せつけてくれました。

 巨大権力による介入を許さないためにも、報道機関を名乗りたいのならば、報道部門の独立性を担保しなければならないのは当然ですが、 2020年には検察ナンバーツーの東京高等検察庁・黒川検事長が朝日新聞記者と賭けマージャンをしていたことが、週刊文春のスクープで暴露され、 「報道機関が取材対象と癒着している」と大問題になりました。 これは「報道の独立性や公正性に疑念を抱かせる」事件だったのです。

 そういう事例があるにも係わらず、テレビ各局は巨大権力であるジャニーズのタレントを報道キャスターに抜擢したわけで、 これでは独立性が揺らぐどころか、報道キャスターが取材対象と一体化しているのですから癒着どころの話ではありません。  しかし、 日本のメディアではこんなバカな事が堂々とまかり通っていて、この状況は放置されたままなのです。

 嵐・櫻井翔氏も日本テレビの報道番組「news zero」のキャスターを務めていますが、社長は降板を否定しています。  この背景には櫻井の父・櫻井俊氏はテレビ等の電波・通信業を治める元総務省事務次官で、 電通に天下り、マルチメディア振興センター理事長を務める大物であり、歴代の日本テレビ上層部にも多大な影響力を持つため、これに忖度する日テレは息子を報道番組から降板させられない、という事情があるとされます。

 これでは「報道倫理」もなにもあったものではないでしょう。  やはりエンタメで収益を上げている企業はエンタメに徹すべきで、報道まで手を出したら「癒着・忖度」、 「見て見ぬふり」が横行するのは必至(ひっし・必ずそうなる)です。  ジャニーズ性加害問題で「報道もやっているエンタメ企業」の限界が露呈したのです。     報道機関として用を成さないメディア、ジャーナリストの独立性が弱すぎる日本の弱点が今回の事件で浮き彫りになったわけです。

 いま日本には、「権力と対峙できる」本物の「番犬ジャーナリズム(ジャーナリスト兼翻訳家・牧野 洋氏)」が求められています。 現状の「広告主頼み」、 「人気コンテンツ頼み」の民放テレビ局では、ジャニーズ性加害問題でも露呈したように、「真実の報道」など到底不可能です。    ここで出番となるのは「皆様のNHK」です。 民放が「やりたくてもやれない」調査報道をスポンサーに忖度せず行えるのは、国民から強制的に取り立てる受信料で成り立ち、 豊富な資金力と強力な取材力があるNHKだけです。

 NHKは大きく分けると、「報道」と「番組制作」の二本柱で成り立ち、後者のメインイベントは、いまや「ジャニーズ祭り状態」と化している大晦日の紅白歌合戦とされます。  今回、ジャニーズ性加害報道では、 NHKも民放テレビ局と大差ない「見て見ぬふり報道」を見せつけ、国民をガッカリさせました。 そもそも公共放送のNHKはエンタメなどやる必要はなかったのです。   そんなものは民放テレビ局が散々やっており、公共放送が手掛ける必要はありません。  逆にやり過ぎたら「民業圧迫の懸念」さえ出てしまいます。

 やはり、広告主を気にせず、権力に一切忖度せず、週刊誌に負けない取材力を駆使し、「弱きを助け強きを挫く」報道をやれるのは「皆様のNHK」しかありません。  NHKが「番犬ジャーナリズム」に生まれ変わり 「弱い者を救い、横暴な者を懲らしめる」強力な報道機関になれば、日本もやっと「巨大権力にひるまず正しい方向に動く」 国へ脱皮できるかもしれません。  是非、そういう姿を見てみたいものです。 そうなれば国民は納得してNHKに受信料を払うでしょう。

 もしこれが実現できれば日本に計り知れない変化と利益をもたらすのは間違いありません。  そもそも公共放送のNHKが民放のようなバラエティー番組を制作するなどお門違いの話で、 報道番組に撤すべきなのです。  アッ、「のど自慢」だけは残しましょう。 スキなんで。(2023.10.15)


 

「解体的出直し」を迫られるテレビ局

 これまでジャニーズの権力にひれ伏してきたメディアは、この期に及んでも隠蔽を重ねてきたことを反省する具体的な行動は一切見せず、 ジャニーズ事務所が社名を変えないことを遠慮がちに指摘する程度で、「事務所ぐるみの性加害の実態」について深堀する姿勢は全く見せていません。   それどころか、 おかしな方向へ向かわせようとしています。    「タレントに罪はない」、「企業がスポンサーを降りたのはケシカラン」という世間の筋違いの声を連日報道しているのです。     これは「事件の解明と処罰・被害者救済」という本筋とかけ離れる動きであり、スケープゴート(身代わり)を吊るし上げることで自分達への批判をかわし、 向けるべき矛先をズラし終焉へ向かわせることを目論む動きです。   反省どころかマスコミの「隠蔽体質」は変わっていないのです。

 忖度社会日本は、昔から自ら改革を起こすのは苦手で、徳川一強だった江戸時代は 「黒船来航」、大東亜戦争までの天皇絶対制度は「敗戦」 という大きな外圧がかかったことで、やっと社会体制が大きく変化したわけです。  大赤字を垂れ流したまま組合に牛耳られ倒産寸前だった日産をV字回復させたのも 「カルロス・ゴーン」という外圧でした。

 国連人権理事会が7月24日に「数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれた」と発表してから2ヶ月経ちましたが、「巨大権力にひれ伏してきた新聞・テレビ」から 「沈黙してきた」責任について「反省と対策」は一切出ていません。      この機会にヒョッとしたらマスメディアに大きな構造変化が起こるかも、と期待したのですが、この程度の外圧では変わらないようです。

 今後、ジャニーズ事務所に忖度してきた大手マスコミ、とりわけ加担してきたとも言うべきテレビ局が、この事件の落とし前をどんな形でつけるのかが、二度と同様の事件を招かない、 そして「報道すべき責任を放棄してきた大手マスコミ」が再び報道機関として機能できるかの重要なカギとなります。   立場の弱い者たちだけ矢面に立たされ、 権力のある者たちの責任は問われない、というアンフェアな幕引きは許されません。  いまやジャニーズのみならず 「テレビ局も解体的出直し」が必要なのです。

 所詮は視聴率頼みの営利目的企業であるテレビ局は、これまでジャニーズ人気頼みで散々稼がせてくれた、またこれからも旨みをもたらしてくれるかもしれないジャニーズを切り捨てることなど論外なのでしょう。    その一方で、ただでさえ広告収入が激減している現状では企業が番組スポンサーになってくれないとテレビ局にとって死活問題です。   現に、サントリーホールディングスの新浪剛史社長は16日、 今後数カ月の間に事務所の体制が改善されなければ、所属タレント出演番組のスポンサーを降りる可能性も「あり得る」と、「CM起用中止どころでないレベル」 の発言に言及します。(文春オンライン)

 「チャリティーの皮をかぶった偽善テレビ番組」 の代表ともいえる日テレが放送する『24時間テレビ』も、日産は『当面の間、所属タレントを起用した新たな販促物は展開いたしません』と、 ジャニーズ所属タレントが出演する番組と距離を置く姿勢をとります。   重要スポンサーからここまで踏み込まれ、ますます世間の風当たりが強くなってきたいま、 これまで「対応を見守る」、「タレントの人権重視」 などと他人事の姿勢に終始してきたテレビ局も、サスガにいつまでも「ジャニーズに忠誠を尽くしベッタリの姿勢」を続けるわけにもいかなくなりつつあります。

 いよいよ窮地に陥ったテレビ局が背に腹は代えらず「スポンサーの意向を理由にジャニーズ切りに走る」時が来るでしょうか。   そうなったら、 ジャニタレで溢れかえっていたテレビ界にも風穴があき、いよいよホンモノの芸能人が表舞台で活躍できる時代が来るかもしれません。   ゼヒ、そうなってもらいたいものです。(2023.9.16)


 

「本物のエンターテイナー」を排除したジャニーズ

 あまりにもジャニーズ事務所に忖度し過ぎた結果、ジャニーズ人気に便乗し事務所の威光にひれ伏すテレビ局は、 ジャニーズ事務所との窓口に「ジャニ担」という「御用聞き」まで設け、 「ジャニ担以外はジャニーズの話題に触れるどころか事務所に電話もしてはならない」という暗黙の了解のもと、 テレビをつければジャニーズ所属のタレント(ジャニタレ)で溢れかえる番組をタレ流す事態となったのです。

 その結果、「芸能界をダメにした」面も生じさせました。  歌番組だけならまだしも、"演技"のエも身についていないジャニタレが 主演級でドラマや映画に大挙進出、セリフは棒読み、演技は顔のクローズアップというのでは、茶の間の大人たちからソッポを向かれる のは当然で、視聴率はダダ下がりという負のスパイラルまで巻き起こします。

 性加害が社会問題化する前は、ジャニーズはタレントの総合デパートみたいな芸能事務所だったので、ジャニーズ勢のタレントがいないとドラマもバラエティも歌番組もつくれなかったといいます。    さらに「ジャニーズ事務所を辞めたら民放ドラマには出られない」という不文律まで生まれ、メリー喜多川などは局の幹部に自分で電話を入れて、退所者の名前を挙げ、 起用しないよう強く申し入れていたといいます。 「民放は旧同事務所の機嫌を損ねないよう最大限に配慮し、退所者は使わなかった」(大手芸能事務所幹部)わけです。

 いまはそうでもなさそうですが、もともとジャニーズという組織は少年たちの飲酒、喫煙を放置し、極めて安い賃金で深夜まで働かせ、深夜電車ギリギリで帰らせるなど、これだけでも十分児童虐待に当たりますが、 歌も踊りも演技も教え方が中途半端で、アイドルでなくなると仕事がなくなってしまうというのが実情だったといいます。

 ジャニー喜多川のセンスで抜擢され、個人の趣味により興味がなくなると捨てられるという構造がジャニーズ事務所の特徴だったわけです。 ところが、 いつの間にか同社のアイドルたちが社会的に絶対的な存在となっていきます。

 あるテレビ局の幹部は「ジャニーズがなくなったら困るのは、ジャニーズだけじゃない。 テレビ局もそうだけど、 彼らを表紙に起用してなんとか糊口をしのいでいるファッション誌・カルチャー誌などの雑誌、ゴシップ系メディアだってジャニーズのネタでPVを稼いでるでしょ」と話していたといいます。  メディアがあまりにもジャニーズ事務所に忖度し過ぎた結果、「日本のエンターテイメント界のレベルをダウンさせダメに」していったのです。

 それどころか、 何の報道経験も無いジャニタレを報道番組のキャスターに何人も登用するというバカバカしいことまでやりだし、 案の定「世界的な性加害事件を伝えるべきキャスターが、 事務所の問題なので何もコメントできない」というグダグダぶりを見せつけてくれました。     コメントはカンペ頼みでロボットのように話すだけのアイドルキャスターに 周囲は大変な負担を強いられたといいます。

 もし今回の事件が表ざたにならなかったら、いずれテレビ番組はおろか芸能界がジャニタレ一色になる悪夢が実現していたかもしれません。     現に2023年10月スタートのドラマが次々に発表されていますが、ジャニーズ事務所のタレントが半数近くの作品で主要キャストに起用されているといいます。

 茂木健一郎氏曰く「そのあたりにいる兄ちゃんたちが....たくさんテレビに出て....芸術性とは無関係な人気を定着させ」、「ほんもののアーティスト、 ほんものの芸能は日本のメディアから排除されるようになった」のです。   強大な力を持った独裁者の横暴というのは本当に恐ろしいものです。(2023.9.27)


 

音楽活動と演劇活動が両立できる日本

 欧米では、音楽活動しながらテレビや映画に俳優として出てくることは、ほぼないといいます。  当然、俳優が音楽活動もするということもまずないわけです。 それも当然で、 厳しい競争社会の演劇業界では、テレビはテレビ、映画は映画という具合に、若いころから演技を磨き、経験を積み、キャリアアップしてきたものだけが、 そのジャンルで活躍できるわけで、他のジャンルにまで手を出す余裕などないわけです。

 ひるがえって、日本では歌い手がちょっと有名になるとすぐドラマや映画の主役級で出たり、俳優がちょっと歌えると歌手活動をやりだしたりと、 とにかく演技や歌が多少下手だろうがなんだろうが、いったん人気が出て大衆に認知されればシメたもので、あとはテレビに出ずっぱりの人気者になれます。      したがってテレビ局としても手っ取り早く確実に視聴率をとるため、すでに認知されている歌手をドラマに出したり、人気芸人に歌わせようとするわけで、 これでは日本に本物のエンターテイナーが育たないのも当然です。

 週に何十本ものコンテンツを制作しなければならないテレビ局は、常に視聴率を稼げる素材探しに血眼になっているわけですが、ここに上手く食い込んできたのが、 若者受けするグループを何組も抱えるジャニーズ事務所でした。  そして次第に「テレビ局にとって不可欠」な存在となり、 テレビ局はジャニーズ人気に便乗しタンマリ稼がせてもらいました。  その依存関係は長く続き、その結果、ジャニーズ事務所の威光にひれ伏し言いなりとなり、 やがて完全に牛耳られ支配されていったのです。

 「性嗜好異常(パラフィリア)」のジャニー喜多川にとっては、ジャニーズ事務所は己の欲望が満たされる「最適なエサ場」でもありました。 それまでまったく無名の少年が、 ジャニーに気に入ってもらえれば音楽界でバックダンサーの出番が得られ、ステージに立たせてもらい、やがて人気を得て、音楽番組、ドラマ、映画とスターダムを駆け上がっていく道が開けるわけで、 少年たちはたとえジャニーの毒牙にかかろうと、夢を実現させるため口を閉ざしジャニーズ事務所に忠誠を誓ったわけです。

 さらに、年金生活者からも問答無用で受信料を徴収して成り立っている「皆様のNHK」でさえジャニーズ人気に便乗せんと、年寄りが楽しみにしていた紅白歌合戦の出演枠にジャニタレを5組も6組も出演させ、 「ジャニーズ祭り」と化していきました。   案の定、年寄りからソッポを向かれ視聴率がガタ落ちしていったのです。

 いったんNHKの紅白歌合戦に出演すれば、公演での観客動員も違ってくるし、テレビ番組への出演の機会も増え曲の売り上げも上がります。     アーティストの格付けをNHK紅白歌合戦が担っていたわけで、当然ながら、紅白歌合戦の番組制作者と、ジャニーズ事務所など大手の音楽事務所との 「黒い関係」は昔から噂されていました。  したがってジャニー氏のような大物とNHKの番組担当者との談合がなかったと考える人はいません。  要はNHKもジャニーズとズブズブだったのです。 (2023.10.15)


 

思わぬ火の粉を浴びてしまった山下達郎氏

 このような問題が噴出すると思わぬ事態へ飛び火することがあります。  ミュージシャンの山下達郎氏は渦中のジャニー喜多川について自身のラジオ番組で 『....音楽業界の片隅にいる私に、ジャニーズ事務所の内部事情など、まったくあずかり知らぬこと。    まして性加害の事実について、知るすべはまったくありません』。  『人間同士の密な関係が構築できなければ、いい作品など生まれません。 数々の才能あるタレントさんを輩出した、 ジャニーさんの功績に対する尊敬の念はいまも変わっていません』と宣言。

 『自分の人生にとっていちばん大切なのは、ご縁とご恩』などとジャニー喜多川を庇う発言をしたため、プチ炎上状態となります。     自分も山下氏の音楽は好きでこのラジオも聞いていましたが、これを聞いた瞬間「これはマズい発言」と感じました。  ジャニー喜多川の少年への性加害は 昔から業界で広く知られていた話であり、暴露本も何十年も前から多数出されています。  自分でさえ週刊誌報道でとっくの大昔に『ジャニー喜多川問題』は知っているのに、 芸能生活も長く博識で知られる山下氏が「噂レベルではみんな知っていた」この話題を「まったく知らない」はずは無く、 『不都合な問題を見てみぬふりした』と捉えられてしまったのは当然でした。

 山下氏としてはジャニー喜多川とは浅からぬ縁があり性加害は知らぬふりするしかなかったのでしょうが、「世界的児童性加害事件」 にまで発展しかねないこの騒動を世間が注目している段階で、義理人情の部分だけで擁護することは、一歩間違えれば自身も同じ穴のムジナになりかねないリスクがあるわけです。     案の定一部ファンからは『事なかれ主義』といった批判も出ているようです。

 さらに、『私の姿勢を忖度、あるいは長いものに巻かれていると解釈されるのであれば、それでも構いません。   きっとそういう方々には私の音楽は不要でしょう』、とまさかの開き直り宣言でファンを切り捨てるかのような姿勢をみせましたが、 いち山下達郎ファンとしてはザンネンな発言ではあります。  ただ、「性加害が本当にあったとすれば、許しがたい。 被害者の方々の苦しみを思えば、 第三者委員会等での事実関係の調査というのは必須であると考えます」とも語っており、山下氏も今回思わぬ形で騒動に巻き込まれたわけで、 つくづく人生は油断ならないものだということが思い知らされます。(2023.9.3)


 

性加害事件に対する各人のリトマス試験紙

 作家・伊集院静氏は「週刊現代」に連載する「それがどうした 男たちの流儀」9月23日号のコラムで、「あのジャニーズ事務所にこれほど男気があるというか、気骨のある人間がいたとは想像もしなかった。   東山紀之さんのことである」、「ともかく守り抜いたのである。 彼だけにしかできなかった。 他にジャニーズに人物がいたとしたら長瀬智也かキムタクくらいだったのではないか」と新社長をべた褒めします。

 東山新社長は就任したばかりであり、評価はまだ時期尚早ですし、ヨロシクないウワサも出ています。  ジャニーズも名前を変えることに難色を示すなど、前代未聞の性加害事件を起こした芸能事務所 にしてはお粗末な対応ぶりを見せており、このタイミングでこの意見は「事務所を擁護している」、「バランスを欠く発言」と受け取られかねないのも確かでしょう。    伊集院氏に対し「なんで他のタレントを批判するの?」、「筋違いだ」といった声もあがるのは当然かもしれません。

 落語家・立川志らく氏は9月24日、「性加害は許されることではない」としつつ、「我々同業者は、今いる現役のタレントが今まで通りできるように知恵を出し合うっていう。 芸能界が一緒になってやってあげればいいのに 、叩いてどうすんだと」と述べます。  これには、いままで事務所の忖度という“恩恵”を享受してこなかった立場からは、「これまで散々権力を振りかざし他の芸人を押しのけてきたのに、 なぜジャニタレを助けなきゃならんのか」、という声があがります。

 人それぞれ考えがあるのは当然ですが、今回の事件はある意味「性加害に対するリトマス試験紙(意見の是非)」の役目をしているようです。  いずれにせよ、 誰でも簡単に意見を発信できるネット社会では、ジャニーズを擁護しても批判しても炎上してしまうようです。(2023.9.27)

 伊集院氏の「週刊現代」での連載は、かなり露骨にジャニーズを擁護したため、SNS上では《山下達郎があれだけ叩かれたのに、よく書くな》、《ジャニーズ大好きおじさん》といった声が投稿され炎上します。    しかし、サスガ“無頼派”、伊集院氏のジャニーズ擁護発言は続きます。  『週刊文春』9月28日発売号でも、 連載中の人生相談コーナー「悩むが花」で、ジャニーズ問題にわざわざ触れ、『あの(ジャニーズの)中に物事の判断がつかない者は一人もいない』と擁護します。   性懲りもなくまた擁護発言をやったわけです。 ここまでのご執心(こだわり)ぶりに、つい何かあるのではと邪推してしまいます。

 《伊集院さんは作詞家の一面もあり、近藤真彦の『ギンギラギンにさりげなく』や『愚か者』の作詞を担当するなど、以前からジャニーズ事務所とつながりが深く、個人的な友人関係 もあったと聞いています。  そういった事情から擁護したのかもしれません》、という背景もあるのでしょうが、たしかに「度が過ぎるジャニーズ愛」を感じる傾倒ぶりではあります。

 ただ、『週刊文春』は筋金入りの「ジャニーズ性加害追及」メディアであり、その誌上で「ジャニーズ愛」を炸裂させてしまえば、大問題となるのは必然です。  そもそも、 伊集院氏のエッセーが掲載されている同じ号で、東山氏のパワハラ疑惑や、元マネージャーの性加害疑惑を報じているのですから。   そこに真逆のような伊集院氏の主張が書かれたわけで、これでは「ジャニーズ追及の急先鋒」を務める文春側としては到底容認出来る話ではないわけです。

 そういう絡みもあったのか、『週刊文春』で13年続いた「悩むが花」の連載が打ち切られる事態となったわけです。  もともと伊集院氏も以前から「もうやめたい」風なことは言っていたようですが、 今回の打ち切りはどうやら本人の希望ではなく『週刊文春』側の決断ではないかとされます。(2023.10.17 週間女性PRIME)   ★...11月24日、伊集院静さんが死去しました。  伊集院さんが「肝内胆管がん」と診断されたのは10月10日で、その時点でがんが全身に転移しており、「余命半年」と告知されますが、伊集院さんは延命の手術を望まずにすぐに死を受け入れたといいます。(2023.11.25)

 元週刊文春・月刊文芸春秋編集長 木俣正剛氏によれば伊集院さんは筋を通す人で、あるとき、伊集院さんの親戚筋にスキャンダルの噂が浮上したことがあった際、彼は一言も「記事掲載をやめろ」といった圧力などかけず、 「伝統ある直木賞の名折れになりますから、私が辞任します」と一言。  幸い、このスキャンダルは単なる噂だったので、ちょっとした騒動で終わったそうですが、「これが伊集院さんの流儀なんだな」と実感させられたといいます。

 伊集院さんが亡くなる直前に『週刊文春』の連載は終了していたわけですが、その前にも一時期、連載が中断していたことがあります。  文春は火のような勢いでジャニーズを攻撃していたわけですが、 その書き手は伊集院さんが以前に大変可愛がっていた編集担当のS君という社員だったそうです。  ジャニーズとも取引がある伊集院さんとしては可愛がっていたS君が取材して書いた記事に文句をつけることもなく、 ジャニーズにもケジメをつける。  これが、私たちがあとで知った伊集院さんの突然の連載中止の理由だったようです。 これもまた、侠気と言うのでしょう。彼は連載から身を引くことで自分の操を立てたのです。(2023.12.24 木俣正剛氏)


 

世論を二分する「タレントは無関係でむしろ被害者」論

 「タレントは無関係でむしろ被害者。 CMを打ち切るのはおかしい」という声も少なからず上がっています。    しかし、現在数々の不正が発覚しているビッグモーターからは、どんなにいい車であろうが、まともな神経の人であればまず買わないように、たとえタレントに罪はなくとも、 まともな企業が「世界最大級の性加害事件を起こしたジャニーズ」の商品(タレント)をCMに起用しない(使いづらい)のは当然です。   人権意識が高い企業ならジャニーズ所属タレントが出演する番組のスポンサーになるのも躊躇うはずです。

 この事件は「創業者が1000人以上ともされる未成年タレントへ継続的な性加害」を長年続けてきたという、 歴史に刻まれる大事件であり、もし被害者が未成年の少女たちだったら世界中が蜂の巣をつついたような反応を示したハズで、「大規模な性加害の上に成り立って繁栄したジャニーズ」 に所属するタレントたちは「末端にいて何も知らなかった」のだから、ジャニーズという看板を背負ったままテレビCMに出ることに文句を言うな、 というリクツは、テレビ局や熱烈なファンには理解されても一般社会やコンプライアンスを重視する企業には通じません。

 「補償や再発防止策が着実に実施されるのを確認するまでは、所属タレントの新規の出演契約は行わない」とされたジャニーズのタレントたちに 世間から「タレントに罪はないのに」と同情の声が上がっています。  過去ジャニーズ事務所を退所したタレントは大勢いたわけですが、 ジャニーズとテレビ局は去ったものは排除し、退所組は事務所を辞めただけで仕事を奪われました。  では彼らには何か罪があったのでしょうか。   いまジャニタレを擁護しているファンたちは退所組に対しても同じように同情の声を上げたのでしょうか。  ジャニーズタレントたちだけ特別扱いで「タレントに罪はない」から 救済しなければならないほど世の中は甘くないのです。

 性加害があったことは公然の事実(秘密でなくなった事実)となった今、いまなおジャニーズに忠誠を誓いジャニー喜多川を称賛する所属タレントたちが、 もし「性加害の実態を知った上で」そのような発言しているとしたら、また「後輩たちが性被害を受けるのを黙殺してきた」のなら、 タレントたちに全く責任がないと言い切れるでしょうか。

 ジャニーズ所属の現役アイドルたちは、セクハラを受けたことは自ら封印し、事務所の力でアイドルであり続けようとしています。  それを女性ファンたちが憧れの目で見ているのが現状です。   臭い物には蓋して表面的な人気だけ追い求めるようなファンが大勢を占める日本に、今後も本当の意味の人権感覚が芽生えることはありえません。

 喜多川の性加害は2010年代半ばには止んだとされますから、それ以降に所属したタレントはたしかに無関係でしょうし、 十分な判断能力がない未成年タレントの責任まで問うのは酷ですが、性加害を今なお見て見ぬふりしている「加害者性のあるタレント」もいるはずで、 それを明らかにせず曖昧なままで放置することは、加害者性がまったくないタレントにも疑念の目が向けられてしまうわけで気の毒な話です。  このまま十把ひとからげに 「責任はない」と結論付け終わらせては何の解決にもなりません。(2023.10.2)


 

加速する「ジャニーズ離れ」

 経済同友会の新浪剛史代表幹事は「ジャニーズのタレントを起用することは、 子供への虐待を認めることで、国際的に非難の的になる」との見解を示します。  アサヒグループグループHDの勝木敦志社長は「「取引を継続すれば 我々が人権侵害に寛容であるということになってしまう」、「人権を損なってまで必要な売上は、1円たりともありません」としています。(文春オンライン引用)    この言葉こそ、性加害を知りながら長期間隠蔽してきた自らの不徳は一切顧みず、この期に及んでもジャニーズ関係者やジャニーズ人気にしがみつこうと足掻く テレビ局が肝に銘じるべき発言ではないでしょうか。

 NHKは「現時点で新規契約を行わない」と明言しており、大みそかの紅白歌合戦についても「同じ方針」としていますが、そのほかのテレビ各局はいまだに ジャニーズ頼みの視聴率にしがみつき、「ジャニーズ事務所所属のタレントに罪はない」 と主張しこれまでどおり起用していく姿勢をとっています。  よほど未練があるようです。    一方、所属タレントを広告に起用している企業は、 契約期間終了後には更新を行わないことを次々に発表しており、スポンサーのジャニーズ離れは進んでいます。(2023.10.2)

 NHKの稲葉延雄会長は9月、被害者への補償などが十分と判断されるまで、新たな出演依頼を見合わせると表明していましたが、その方針通り11月13日、大みそかに放送される「第74回NHK紅白歌合戦」 の出演歌手が発表されましたが、出場歌手44組にスマイルアップ(旧ジャニーズ事務所)に所属するタレントは1組も含まれませんでした。

 旧ジャニーズ所属のタレントが紅白に出場しないのは1979以来44年ぶりということで、世間では少なくとも1、2組くらいは出るだろうと考えていたでしょうが、 『皆様のNHK』はまともな判断をしたようです。(2023.11.13)


 

「性加害」怪物は外国にも大勢いる

 このような事件での「見て見ぬふり」報道は、日本だけ批判される話ではなさそうで、海外でも昔から性暴力は起きており、フランスのカトリック教会では1950年代から現在に至るまで、 聖職者による少年への性的虐待が行われ犠牲者が33万人に上るという衝撃的な事件が起きています。  この事件では以前から聖職者による告発の声が何度も上がっていたとされますが、 カトリック教会は正面から向き合うこともなく社会問題化もしなかったとされます。

 ハリウッド映画界でも2017年、大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタインによる女性へのセクハラ問題の告発と、それに端を発して始まった通称「#MeToo」運動が起きています。 こういう歴史があったため、 欧米諸国は性暴力に対する司法の取り組みが強化されただけでなく、メディアは見て見ぬふりをすることは許されなくなったといいます。  日本もこれを機に変わっていくのでしょうか。

 イギリスではジャニー喜多川とほぼ同時期、人気司会者・ ジミー・サヴィルが何百人もの少女に性的暴行を加えていたという事件が起きています。  サヴィルの場合は1990年代から散発的に告発が行われロンドン警視庁(スコットランドヤード) にも匿名の告発の手紙が届いたものの、いずれも相手にされなかったといいます。   サヴィルは警察の上層部にも顔が利いたのです。  事態が大きく動いたのはインターネットが発達しSNSで告発が行われるようになってからでした。

 ジャーナリストたちが慎重に告発者に接触して取材を重ね告発が形になろうとしていた2011年、サヴィルは84歳でこの世を去ります。 死後すぐにBBCが性的虐待について調査を開始しますが結局放送されませんでした。 BBCは隠蔽したのです。    元BBC記者のマーク・ローソンは、サヴィルの疑惑に対してイギリスのメディアと権力が消極的だったことを認めています。

 葬儀の10カ月後、BBCのライバル局がサヴィル告発番組を放送しますがBBCは証拠がないとして告発番組を非難しています。   しかし、 サヴィルの性的虐待に遭った女性たちが生々しい被害の実態を語ったこの番組は衝撃を与え、ついにロンドン警視庁は捜査に着手することを決定します。     正式に記録した被害届は、強制性交2件、強制わいせつ6件、さらに30人以上の被害者が予測されますが疑惑はどんどん膨らんでいき、警察は400件以上の事案を捜査することになるのです。

 この事件に関しロンドン警視庁(MPS)は独立した組織による透明性の高い報告書を発表。  報告書はサヴィルが単独で犯した犯罪、サヴィルの周囲の人々が関与した犯罪、 サヴィルに関する公表の結果、名乗り出た人々への犯罪という3つの柱に焦点を当て、「最も早く報告された事件は1955年のマンチェスターで、最後に報告された犯罪は2009年である(中略)。   名乗り出た被害者(600人)の年齢層は、8歳から47歳(虐待当時)」と報告書は記しています。

 アメリカでも数々の「児童虐待事件」が明るみになっています。  ニューヨーク州弁護士の大橋弘昌氏によれば、ペンシルベニア州立大学アメリカンフットボール部のコーチだったジェリー・サンダスキーは 10人以上の少年に対する性的虐待で2012年に最短30年、最長60年の懲役判決を受けています。  さらに大学の学長、副学長なども行為を知っていたにもかかわらず隠そうとし警察への通報を意図的に行わなかったとされ、偽証、司法妨害、子供虐待、報告義務違反の罪などで起訴され有罪判決を受けています。

 米国の映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインは「希代の性的搾取犯」として事実上の終身刑となっていますが、その被害者数は約100人とされてます。  英国では9月16日、大物タレント・ コメディアンのラッセル・ブランド氏について性加害疑惑が急浮上しています。  ジミー・サヴィル事件が起きたイギリスでさえこうなのですから、どの国も性加害撲滅にはほど遠い現状があるようです。(2023.9.29)


 

いまだに社名を変えようとしないジャニーズ事務所

 事ここに至りながら、ジャニーズ事務所はいまだに社名を変えようとせず、社長のジュリー景子氏は引責辞任を発表しますが「性加害の補償への取り組み」を理由に、 代表取締役の留任を明かすなど旧態依然の経営を続ける姿勢をとっています。

 社名に拘るのは「相続税対策(後述)」以外に、 現在『ジャニーズファミリークラブ』というファンクラブは1000万人以上の会員がいて、入会費1000円、年会費4000円、 単純計算で年間400億以上の安定した収入源になっているとされますが、社名変更となればファンクラブの名称も変えなければならず、 そうなると会員離れで収入の大幅ダウンもあり得るため躊躇っている、ともいわれています。

 ただ、ファンクラブは重複会員もいて実数は半分以下と見られますが、これから退所者が相次ぐと見られ、その分会員も減るわけで、退所の動きが水面下で見え隠れする「嵐」まで出ていくとなると、 会員は一気に300万人は減るとされますから、太い資金源だったファンクラブも大分先細りしていきそうです。

 1000憶以上ともいわれる資産を築いたとされるジャニーズですが、所属タレントたちは人気や多忙さに対して待遇面で恵まれていなかったといいます。  昔からアイドルたちは仕事でいくらギャラが支払われているか知らされず、 あおい輝彦氏は「僕たちはワンステージ25万円とメリーさんから聞いていたけれど、実際は80万円の仕事だと後から知った」と証言しています。  国民的グループといわれる「SMAP」でさえ、 『がんばりましょう』などのヒット曲を連発していた1995年でもメンバーの月収は数十万円。 年収も1000万円に達せず、他のタレントも似たようなものだったとされます。    

 ジャニーズ事務所はタレントを安く使い荒稼ぎしていたわけですが、その一方、ジュリー氏はシャネルやエルメスなどの高級ブランドを愛用する金満ファッションぶりを見せつけていたようです。   これに不満を持った木村拓哉氏が事務所からの独立を匂わせたところ、 ギャラが一気に跳ね上がったとされています。(ピンズバNEWS ) 

 興味深いのは、1978年に解散したフォーリーブスが、2002年に再結成していたことです。  SMAPの例のように独立した人間に冷たいジャニーズ事務所では異例とされますが、 ジャニーズ事務所としては北公次氏に再び告発されると困るので仕方なく“アメ”を与えた、という見方がされています。  北公次氏は亡くなる直前 《....ジャニーさん メリーさん ありがとうございました 感謝しています。》と手紙を残しています。  胸中にはいろいろな想いがあったのでしょう。(2023.9.23 日刊ゲンダイ)


  

ジュリー景子氏「代表取締役残留」は相続税対策

 「外部専門家による再発防止特別チーム」は、性加害事件の背景に同族経営の問題があると指弾した上で、ジュリー景子氏は代表取締役社長を辞任し、 「解体的出直し」を図るべきだと提案していましたが、ジュリー景子氏は「代表取締役残留」を表明しました。  この背景には「事業承継税制」の特例措置で税優遇を受け 莫大な相続税を免除してもらう意図があることが「週刊文春」の取材で明らかになります。   ジャニーズ事務所も事業承継税制の特例措置を申請し適用されていると認めたとされます。

 性加害を起こした創業者・ジャニー喜多川は2019年7月に死亡していますが、ジャニーズ事務所の株はメリー喜多川氏とジュリー景子氏の2人で分け合い、50%ずつ保有する形に。  さらに2021年にメリー氏が亡くなると、 メリー氏の株がジュリー景子氏にわたり、彼女は全株を保有することとなります。   専門家が同業他社などの株価を勘案し、ジャニー喜多川が亡くなった時点での1株当たりの評価額を約200万円とした場合、 ジュリー景子氏が納めるべき株に対する相続税は約860億円と推計できるといいます。   しかし、驚くべきことに、この巨額の相続税をジュリー景子氏は一切、支払っていないといいます。    それは「事業承継税制」の特例措置を申請し、相続税の支払いを免れているからだというのです。

 税理士の板倉京氏によれば、「事業承継税制」とは「近年、後継者不足や後継者の重い税負担を理由に、黒字廃業する中小企業が後を絶たない。 そこで国は、2009年から中小企業の事業承継を後押しするため、 『事業承継税制』を導入しました。 2018年にできた特例措置が適用されれば、株式の相続税や贈与税の納税が猶予され、実質ゼロにできるのです」、「相続税をゼロにするには、 申告期限の翌日から5年間、代表取締役を務めないといけません。 また5年後以降は株を継続して保有する必要がある。  この税優遇の目的は、後継者が事業を円滑に次世代に繋ぐことを条件に、本来かかる税金を全額免除しますよ、というもの。

 なぜ、5年間かというと、後継者育成に最低5年は必要とされているからです。  ジャニー氏が亡くなった際の、相続税の申告期限は2020年5月。 そこから5年間つまり 2025年5月までジュリー景子氏は代表取締役を務める必要があるのです」という背景があったわけです。     ジャニーズ事務所が会見を開いたとき、どうしてジュリー景子氏が居座り続けようとしたのか疑問に思いましたが、この留任の理由は税金逃れに他ならず、彼女は性加害の被害者補償を名目に 2025年5月まで時間稼ぎをするつもりなのです。

 ジャニーズ事務所によれば、「事業承継税制を受けているのは事実です」と認めた上で、「中小企業が事業および雇用の継続等を行うための事業承継税制であり、当社は雇用を維持し、 事業を継続しております。  法律事務所、会計事務所と協議し事業を継続するためには、どのようにするのが一番良いか話し合った結果であり、 税金逃れと言われるのは大変遺憾です」としています。

 そもそも、制度の適用対象は非上場の中小企業とされていますが、はたして年間の売り上げが1000億円を超えるジャニーズ帝国は中小企業といえるのか甚だ疑問です。   それについては板倉氏によれば、「サービス業の場合、従業員100人以下、 もしくは資本金5000万円以下のどちらかに該当すれば適用対象となる。 同社の社員数は200人以上とされますが、資本金は設立以来ずっと変わらず、1000万円に設定されており、中小企業扱いとなります」、     「もちろん事業承継税制を申請すること自体は何ら違法ではないが、きちんと会見で説明すべき。 税逃れを隠して『被害者への補償・救済』へと目的をすり替えるのは、 悪質な手口と言わざるを得ません」としています。

 結局、ジュリー景子氏が代表取締役留任に拘った最大の理由は、もしジュリー氏が代表取締役を辞任したら、特例措置の認定が取り消しになり、それまで猶予されていた相続税に利子分を加えて納付しなくてはならず、 それを回避する「相続税対策」だったというわけですが、釈然としないものはあります。  もし今回、 ジュリー景子氏が代表取締役を辞任していたら、どうなったのか。  板倉氏は「精神疾患や要介護認定を受けるなど、やむを得ない事情を除き、特例措置の認定が取り消しになる。  それまで猶予されていた相続税に利子分を加えて納税しなくてはいけません」ということですから、ジュリー景子氏はなんとしても 2025年5月までジャニーズ事務所の代表取締役にしがみつかざるを得ない立場にあるわけです。

 被害者への補償と言う面からみると、肝心のジャニーズ事務所が倒れることになってしまっては元も子もないわけで、資産が目減りする事態を避けるためジュリー氏が代表取締役に残るという選択肢も捨てがたく、 まさに〝痛し痒し〟の状態にあるのです。(2023.9.21 文春オンライン引用)


 

「ジャニー喜多川」の痕跡が刻まれた「ジャニーズ帝国」

 ジャニーズ事務所は社名を変えようとせず、「世界的性加害事件を起こしたジャニーズの名」を今後も使おうとしています。     しかし、「世紀の大性犯罪事件」を犯した組織の名称を使い続けるという発想は理解できず、言語道断の話です。  その一方、それほど「ジャニーズ」という名前は関係者にとって絶大なブランドであり、 タレントたちもそれをエネルギーとプライドにして活躍できたのでしょうから、それと決別するというのはそう簡単な話ではないのかもしれません。(2023.9.27)

 この事件をザックリまとめれば、「ジャニー喜多川に少年への異常な性愛嗜好」という性癖があり、「ジャニーズ事務所を開設したのもそれが理由」であり、 かつ、姉のメリー喜多川氏はそれを知りながら「弟への“偏愛”」のため「ジュニアたちに対する性加害」を黙認し、それどころか表ざたにならないよう 「この国の主要メディアを支配した」というものです。  したがって、 ジャニー喜多川が創業したジャニーズという名前には、「悲劇・狂気」さえ感じるドロドロした「醜悪な人間模様」が刻まれているわけです。

 そういう驚愕の事実が白日の下にさらされた今、ジャニーズという名前を見るたび嫌悪感を抱き、被害者は悪夢を思い出してしまうでしょう。  イギリスでもジャニー喜多川とほぼ同時期、 人気司会者・ジミー・サヴィルが何百人もの少女に性的暴行を加えていた という事件を起こしていますが、「あの頃は良かった」と刻まれたサヴィルの豪華な墓石は撤去されています。

 ジャニー喜多川が犯した「前代未聞の児童性加害」は記憶と記録に永遠に残ります。  ジャニーズ帝国の痕跡をすべて徹底的に葬り去らなければ事件の風化は望めません。    名前を残すなどというのはどう考えても無理スジの手法でしょう。(2023.10.7)


 

やっと開かれた会見

 事件が公となって以降、ジャニーズ事務所はやっと9月7日に会見を開きます。  ただ、例によって報道陣と事務所の質疑応答ぶりは、「歴史に刻まれる児童性加害事件」 という割にはなんとも中途半端で、肝心の事件の実体や誰が何処まで知っていたかといった重要な部分には全く触れようとせず、 事務所の名前がどうだ、といったどうでもいいような内容に終始するお粗末振りを見せ、なんとも中途半端な内容となります。

 そんな中、さすがに「ジャニーズの名前を変えようとしない」件については厳しい声も出て、これまで問答無用で相手を従わせてきたジャニーズも、周囲を取り巻く変化に気づいたか、 やっと「社名の変更」に言及し今後の運営の方向性を探る動きを見せ始めます。

 21日発売の週刊文春によると、ジュリー氏は9月7日の会見後、その足でハワイへ飛び、海が一望できるトランプタワーの高層階コンドミニアム(約5億5000万円で購入)で過ごし、ショッピングを満喫したといいます。     再発防止特別チームから『解体的出直し』を提言されたものの、代表取締役を留任し、会社の株100%も保有したままで社名変更もなかったことから CMスポンサーの〝見送りドミノ〟を招いたわけですが、 このタイミングの海外豪遊旅行という行動には、サスガに周囲から呆れたという声が上がっています。

 やっとここにきて、何十年も「芸能界の絶対的権力者として君臨」し、「我が世の春を謳歌」してきたジャニーズも、 ついにスポンサー企業に愛想をつかされ想像以上のスピードで没落への道を辿っています。  日本には「驕る平家は久しからず」という諺がありますが、 今回の事件を通し我々はいい気になって勝手気ままにふるまう者は、長く栄えることなく滅びてしまう、という真理を目の当たりにしたわけです。    しかも、背景には《姉の弟への“偏愛”がすべての始まりだった》という「悲劇ともいえる家族関係」があったわけで、 なんとも後味の悪い話です。

 芸能界を睥睨(へいげい・にらみつけて勢いを示す)し、タレントたちもこれまではジャニーズの名前を付加価値にして人気と仕事を獲得しこの世の春を謳歌していたのが、急転直下の番狂わせで一気に先行き不透明の立場に置かれたわけで、 人間いつ何時どんな災難が降りかかってくるか、そしていつどんな幸運に恵まれるか、「(人間万事)塞翁が馬」といいますが誰もワカライことを見せつけました。

 芸人のホンモノの人気は本人の実力により生じるのが本筋なのですが、ぽっと出の芸人がいきなり認められるのは至難のワザで、当初は「周りが創り上げる」部分があるのも仕方ありませんが、 ジャニーズの場合、「ゴリ押しが強すぎ」さらに「実力もないのにいきなり主役級という横暴ぶり」が反感を買ったわけです。    中にはホンモノの芸があるジャニタレもいるハズで、今回の事件で葬り去られるのも気の毒な話です。  ジャニーズに所属したままでは今後の活動は制限されてしまうでしょうから、 実力のあるタレントたちは他の事務所で再スタート、というのもアリでしょう。  はたしてジャニーズが今後どんな形に変わるのか、所属タレントたちはどうなるか、要注目です。(2023.9.23)


 

会見でも明らかになった「お粗末すぎる報道ぶり」

 ジャニーズ事務所は9月7日に続き、10月2日にも会見を行いますが、そもそも追及する側からして「見て見ぬふりするどころか加担までしていた」わけで、 本来なら報道する側が加害側を厳しく追及するはずが、互いに脛に傷ある立場で「突っつけば大量のホコリが舞う」同士では、 相変わらずの緊張感など微塵も感じさせない会見となるのも当然でした。

 それどころか、会見はルール無視で感情むき出しの荒れたものとなってしまい、結果終始暴走ぎみの記者たちに批判が集まり、糾弾されるはずの加害者側は 「あんな変な記者たちに絡まれてかわいそう」となり、ジャニーズ事務所を利する格好になります。   相変わらずの「お粗末すぎる報道ぶり」を見せつけてくれたのです。

 相も変らぬメディアの罪深さがあらわになった瞬間だったわけですが、それにしてもこの会見は追及される側が会見ルールを設定したというのですから、 完全になめられています。   ジャニーズ側は、わずか2時間弱という質疑応答時間にもかかわらず、 特定の女性記者が延々と持論を喋り続ける「時間稼ぎ」まがいの行為まで許していたと見られ、ただ大人しくしている気はなかったようです。

 短い時間では報道側も我先に質問しようとするのは当然ですが、この一部の記者による「順番無視のルール違反」の質問や野次が続き騒然とする中、井ノ原快彦副社長(47)は「やはりこういう会見の場は全国に生放送で伝わっておりまして、 小さな子供たち、自分にも子供がいます。 ジャニーズジュニアの子たちもいますし、それこそ被害者の皆さんが『自分たちのことでこんなに揉めているのか』っていうのは、僕は見せたくないので。  できる限りルールを守りながら、ルールを守っていく大人たちの姿をこの会見では見せていきたいって、僕は思ってますので、どうかどうか落ち着いてお願いします」と制します。

 驚いたのは、井ノ原氏のこの発言に記者席から拍手が沸き起こったことです。  追及される側にいる人気芸能人が、騒ぎ立てる記者たちに まるでドラマのワンシーンのようなセリフで公開説教。  それを本来は性加害企業の責任を追及すべき側 の記者たちが大喜びして拍手喝采するというこの場面は、どう考えても違和感アリアリですが、ジャニーズタレントの人気を背景にメディアを取り込み黙らせてきたジャニーズと、 ひれ伏し忖度しまくってきたマスメディアのズブズブの関係が垣間見れたシーンでもありました。  拍手したのはジャニーズ・シンパのようですが、 追及の場でさえこんな調子なのですから、日本のメディアが長い間不都合な事実を隠蔽してきたのも当然なのです。

 9月7日の会見でも感じたことですが、井ノ原氏は顔見知りの報道関係者も多いようで、記者たちが「オレがオレが」と質問順を奪い合い騒然とする中、 冷静に『みなさん落ち着きましょう』、などと諭す場面が多く見られました。   正義感溢れるセリフで報道陣を一瞬で大人しくさせる井ノ原氏の姿勢には、これまで芸能界に君臨しメディアを牛耳り手玉に取ってきたジャニーズの、 ベテラン・タレントの「場慣れした余裕」、それと「傲り(おごり・慢心)」のようなものが見え隠れしている気がします。

 実際、追及する側からして、大手メディアではない質問者などは、『このたびは会見を開き機会を与えてくださってありがとうございます』、『(新体制でのタレントケアを)ちゃんとやってくれると思いますけれど、 心配なので質問させてください』という調子で、これではどちらが加害者か分かりません。(ライター田幸 和歌子氏)  そもそも、犯罪事件の会見で質問者が下手に出るなど言語道断であり、 これでは追及される側が追及する側を下にみて公開説教するのも当然です。

 結局、会見と言っても(性加害に加担したとされてしまった)報道側には、これまで通り事件の本質を究明しようなどとは誰ひとり考えておらず、 したがって単なる芸能会見の域を出ず、ジャニーズ側もそんなお粗末な取材陣の姿勢は先刻ご承知のようで、井ノ原氏に至っては、壇上から説教を垂れる始末です。  いずれにせよ 「名ばかりの会見」を何回やろうが、互いに「叩けば大量のホコリが舞い散る」 同士の質疑応答では何の進展も生まれません。

 「大勢の児童が性加害を受けた事件」 にどんなメスが入れられ、どんな対策が講じられるかについては、残念ながら先行きは真っ暗のようです。  日本社会にはいまだに「重大な人権侵害問題」という認識などなさそうで、 この事件もいまや報道される回数は激減しています。   いずれ「誰も話題にさえしない」時が来るのも近そうです。

 今後は被害者救済が重要な業務になるわけで、井ノ原氏には是非、会見で見せた「正義感」ぶりを存分に発揮していただき、 被害者全員が不満なく十分満足できる補償を行って「ホンモノのいいひと」であることを証明してもらいたいものです。  井ノ原氏の“神対応”に期待し注目していきたいと思います。(223.10.5)


 

ジャニーズ会見に感じる違和感

 ウンザリするような猿芝居会見でしたが、違和感を感じたのは前代未聞の児童に対する性加害事件を起こした当事者側で、社会ルールを破った 組織代表の一人でもある副社長の井ノ原氏が、騒ぐ報道陣に「ルールを守って落ち着いてください」と何度も諫めるシーンでした。     これにはネット上でも、《いのっち流石!!!》、《大人すぎる対応が素晴らしい》と、井ノ原氏の株が急上昇。 “神対応”ぶりを称賛する声が上がります。

 たしかに表面的には騒ぐ相手を正論で諫めた、という捉え方もできますが、この会見は前代未聞の性犯罪を犯した企業の責任者が、 真摯に反省の気持ちを表明する場であり、たとえ報道側が多少ルールを逸脱しようが、「追及する側を諫めよう」 とは加害者側は考えません。 というか出来ません。  追及を受ける側が報道側に意見(注意)するなど前代未聞の行為です。

 もし注意するのなら、その役目は司会者なり進行する側が行うのが筋であり、それを追及を受ける加害者側がやってしまっては、「オマエ、何様のつもりダ」、 「本当に反省しているのか」となってしまうのも当然です。  もしビッグモーターの会見で社長が「マア落ち着いて。 ルールを守って質問してヨ」 などと言おうものなら、会見は大炎上し紛糾は確実だったでしょう。

 そもそも井ノ原氏は、『大勢の子供に前代未聞の性犯罪事件』を犯し散々ルール違反してきた加害者側の一人として謝罪する立場のはずです。    それを「子供が見ています。ルールを守りましょう」とやってしまっては、「じゃあ、オタクの創業者が子共に性加害を加え、社会ルールを破ってきたことはどうする」 と突っ込まれるのがオチで、「加害者側が子供やルールをダシに追及する側を丸め込もうとしている」と見られても仕方ありません。

 少なくとも井ノ原氏は「子供に性犯罪」を行った企業側の責任者のひとり として会見に臨んでいるのですから、相手を黙らせる手段として、「子供達のために」、「子供が見ている」を連発するのは控えるべきでした。   あのような会見の場では悪口雑言にもジッと耐える東山新社長の態度が相応しいわけで、加害者側がドラマのセリフっぽさ連発の安っぽいパフォーマンス(人目を引く行為)を見せつけてどうすんだという話です。

 どうしても井ノ原氏には「真摯に反省し責任を重く受け止める」立場に置かれているというより、「ドラマの役を演じる」かのように、 『ルールや子供というフレーズを盾に、その場を収めよう』とする感が否めず、言葉の端々に『正論を纏った狡猾さ』が見えてしまうのです。    この席は謝罪に徹すべき場のはずで、せっかくの賢人ぶりも、時と場合、使い方によっては悪目立ちしてしまい逆効果です。     一部ファンから丁寧な口調と冷静なふるまいぶりが絶賛される井ノ原氏ですが、東山新社長の“盾”になろうという気持ちが空回りしたのか、 なかなかの策士ぶりを見せてくれました。(223.10.5)

 さらに彼は《「皆さん、ちょっと落ち着いてください。“一人一社一問”という話があった以上、すみません。(記者の抗議に)すごいですね。 みなさん冷静に、 冷静に話し合いしていきましょうね」》と呼びかけてもいます。  欠席したジュリー藤島前社長の手紙を長々と代読したりと、どう見てもこの日の主役は井ノ原氏でした。

(文春オンライン)は《そして2度目の会見中、ざわつく記者たちに井ノ原副社長が言った「冷静に話し合いしていきましょう」という言葉。 あの言葉にジャニーズ側の意図が全て集約されているように感じました。  会見は話し合いではないのです。 自分たちはメディアに全てを明かさなければならない側、あそこはメディアとうまいことやっていく場ではないのです。  ああやっぱり、「他人事」なんだなと思いました。》と正鵠を射る(ズバリ要点をつく)指摘をします。(2023.10.11)

 井ノ原氏の発言に違和感を感じた人は多いようで、元TBSのアナウンサーの小島慶子氏は、「『井ノ原さん、さすが』って思う人がいるのかもしれないけど、こういう場ではこのコメントは、 私は適切ではないと思うんですよね。 やっぱりここで開かれている会見の本質を、分かってないんじゃないかっていう」と疑問視。

 東京大学大学院の斎藤幸平准教授も、「明らかにトーンポリシング(議論の方向性を変え、自分に有利に話を進める手法)なんですよね」とコメント。   「ルールを破った加害者がルールを持ち出したり、 子供に対して性加害をした側が子供たちの名を出して『あなたたちがルールを守りなさいよ』と言うというのは、加害者の側が追及者を丸め込む方法なんです」と、 “論点ずらし”を指摘します。(女性自身)


 

新たな疑惑を提供してくれた『謝罪会見』

 10月2日の茶番会見は中途半端な形で終わり、世間をがっかりさせますが、ドッコイ、サスガ芸能事務所だけあって、キッチリ見せ場は残してくれていました。  NHKが10月4日放送の『ニュース7』で、 ジャニーズ側が会見で不都合な質問が出ないよう、「氏名NG記者(指名NG記者)」リストまで作っていたことを報じたのです。    やっと『皆様のNHK』らしい仕事をしてくれました。

 普段であれば“NG”記者は会見場に入ることも許されないといいますが、サスガにこのような事態ではそんな差別をすればどんな批判が上がるか知れず、仕方なく許したわけです。  ジャニーズ側は仕切りを任せた外資系PR会社が 独断でやったと言い訳していますが、慣れていない運営会社に発注したらしく、ジャニーズに確認しない限り 誰が本当にNGなのか知れるはずは無いわけで、シンパ(信奉者)以外誰もそんな話は信じません。

 しかも会見場で関係者が数名の顔写真が掲載された「指名NG記者リスト」らしきものを小脇に抱えている様子まで、バッチリとカメラが押さえてしまい、それが放送されてしまったのです。   のちに司会者も「私の手元に(リストが)ありました」と告白しますが、リストに従って指名したわけではないと弁明しています。    またNHKもニュース7内でNGリストに名前を挙げられながら、(なぜか)指名された記者もいたことは報道しています。

 逆に「指名候補記者リスト」も作られていたとみられ、“ジャニーズべったり”として知られる芸能リポーターの駒井千佳子氏は2番目に指名されています。   「アメとムチで統制したスポーツ新聞などの担当記者を揃えてヨイショ記事を書かせるのももはやお家芸みたいなもの。  従わない週刊誌、写真誌、夕刊紙はおおむねNG媒体と呼ばれて排除してきましたから。 メディアの選別は長年にわたって 白波瀬傑前副社長が差配していました」というのも納得です。

 ある大手芸能事務所幹部は、「外資系コンサル会社がジャニーズ事務所に忖度して勝手にリストを作成するなんて、この状況では冷静に考えてあり得ません。 これまで芸能人の謝罪会見をたくさん見てきましたが、 事務所の要望が一切含まれていない会見はありませんでした。 というか、それこそ業界に長くいる人間であれば、10月2日の会見こそ典型的なジャニーズのやり口だと思うでしょう。 藤島ジュリー景子前社長や、 白波瀬傑前副社長のマスコミ操縦方法なんです」と語っています。(日刊ゲンダイDIGITAL)

 ジャニーズ側は「事務所関係者はリスト作成に関与していない」と言い張っていますが、会見では『指名候補』に上がっていた記者が 真っ先に当てられ、NGリストに載った記者はほとんど指名されなかったとされています。 やはり当日は “可能な限りダメージの少ない質疑応答”となるようリストに沿った進行が行われていた疑惑が高まっています。(女性自身)

 「仕組まれた会見」を試みたジャニーズ側の思惑は、お粗末な舞台裏が露呈してしまい、泥沼に嵌まってしまったわけで、『会見を見ていた子供たち』に『ヤラセ会見』という 新たなルール破りまで見せつけてくれました。  まさに「断末魔」の様相を呈しています。  これでは井ノ原氏お得意の 『子供たちが見ています。ルールを守りましょう』という"神対応フレーズ"は完全封印され、 (マトモな神経の持ち主なら)二度と使えなくなりました。  もし今後ジャニーズ(名前は変わっているでしょう)が、『ルールを守りましょう』などと叫ぼうものなら、 『どの口が言うんだ(普通なら言わないことを言う)』となってしまったのです。

 まさか、いまだにこんな悪あがきのストーリーに東山氏や井ノ原氏が係わっているとは考えたくないのですが、ジャニーズ事務所に巣食う「隠蔽の闇」はかなり深そうです。   いったい事務所の誰がこんな悪手(あくしゅ・その場面で打つべきでないまずい手)を指示しているのでしょうか。

 10月2日は新会社設立を告知する場でもあったのですが、再スタートがこんな体たらくでは、スポンサーもますます信用しなくなり離れていくのは確実です。     《ジャニーズ再生にはジャニー氏の悪事と事務所が抱える課題の全容解明が必要です。   それなくして、性被害者への補償は的確には行えないし、スポンサーもタレントを起用したCMの解禁を再考することはできないでしょう。》(元週刊文春・月刊文芸春秋編集長 木俣正剛氏)

 これまで未練アリアリでいまいち及び腰だった民放各局も、さすがにNGリストまで発覚してしまうと、 忖度どころか配慮もなくなりそうで、これでヒョッとしたら、少しは性加害実態の追及に前向きになってくれるかも。(2023.10.7)


 

「旧経営陣の弾除け」にされた井ノ原副社長

 こういう八百長会見ぶりが報道側を怒らせ、一向に指名されない一部記者たちが怒声とやじを飛ばす騒動となったわけです。   そこに"神対応マン"井ノ原氏が例によって、「できる限りルールを守りながら、ルールを守っていく大人たちの姿をこの会見では見せていきたいって僕は思ってますので、 どうか、どうか落ち着いてお願いします」とお得意の"神対応"ぶりを発揮しシンパ・メディアの拍手を浴びたわけです。

 NGリストは会見の2日前に両者間で存在を共有していたそうですが、井ノ原氏は「これどういう意味ですか?絶対当てないとダメですよ」 と主張したといいます。 「ナンダ、リスト作成は知ってたのかヨ」、とか「すぐ破棄させるべきだったろう」というツッコミはさておき、したがって"神対応マン"としては 当てられない記者たちが騒いでいるのですから、『司会に当てるよう促す』べきでした。   本人が「絶対当てないとダメ」としていたのですから。

 しかし、井ノ原氏の口からは最後までそんな発言は出ませんでした。  「NG記者」がほとんど指名されていないことを知った上で"神対応"を演じていたとしたら、 大した役者ぶりです。 アッ、本職は役者でした。     会見を重ねる度、井ノ原氏の評価は「いいヒト」から「裏表のある人」へ転換しつつありますが、こんな事件さえ起きなかったら、ズッといいヒトのままだっでしょうが、 山下達郎氏の例にも見られるように、世の中どこでどんなボロが出るか分からないものです。

 ジャニーズ事務所が「全てに誠実にお答えする」としていた会見の中身は、実はコンサル会社に要請し事実上進行をコントロールしようとした。   ところが「指名NG記者リスト」の存在までバレてしまった。  それを素直に認めていればいいものを、今度は「それは勝手にコンサル会社がやったこと」と逃げ、さらに、 「井ノ原副社長がそのリストの存在を知って反対した」、「絶対当てないとダメですよ」と言ったなどと、余計なことまで言い出し傷口を広げてしまったのです。

 結局、井ノ原副社長は「NGリスト」を知り「当てないとダメ」と言っておきながら、会見では指名されない記者たちが騒ごうが、ガン無視した事実が明らかになってしまい、トンダ舞台裏のお粗末さを見せてくれたのです。   東山新社長も、9月7日の会見で「今後、事務所がメディアに圧力をかけることはない」と宣言していたはずですが、その舌の根の乾かぬうちに、 圧力はかけずとも『質問者のNGリスト』という別手段で不都合な質問を封じ込める手法を用いたわけです。     これで東山紀之新社長と井ノ原副社長の言行不一致(げんこうふいっち・口で言うことと行動が食い違う)ぶりが明らかになってしまい、ジャニーズ新体制の牽引役である彼らを見る世間の目は、 厳しさを増していきます。(2023.10.17「女性自身」)

 ただ、本来なら追及会見の場に立たされるべきは、長年性加害の隠蔽と放置に責任のある旧経営陣のジュリー氏や 「ジャニーズの闇を知る男白波瀬傑氏のはずで、東山氏と井ノ原氏はどちらかと言えば 「被害者側」ともいうべき立場でもあるはずです。 ところが、いつの間にか経営側に立たされ、旧経営陣の弾除けにされてしまったのです。

 結果、慣れない謝罪会見の場で心ならずもチョッと「演じて」しまった部分もあり、「当事者意識がない」などと批判を浴びます。 そこまでなら何とかなったのですが、 その後、マサカの(本人たちは無関係だったであろう)「NGリストの存在」まで暴露されてしまいます。  この旧態依然の事務所幹部が目論んだであろう「質問者のNGリスト」の登場は、 2度の会見でジャニーズ側にやりこめられた形となりモヤモヤしていたメディアを一気に勢いづかせます。  遠慮なくジャニーズ側、特に井ノ原氏を叩き出したのです。

 予期せぬ「NGリスト」の発覚によって、経営陣の東山氏と井ノ原氏は容赦ない火の粉を浴びせられる形となってしまいました。  この背景には、これまでジャニーズの権力に牛耳られてきたメディアの、 うっぷん晴らしという側面もあったのでしょう。  その結果、東山氏も井ノ原氏も、これまで芸能界で苦労して築き上げた自らのイメージまで毀損され、 タレント活動にも赤信号が灯ってしまったのですから、なんともお気の毒な話でもあります。    特に井ノ原氏は、2回目の会見の批判を受けたことで、 “加害者側である会社の幹部として会見に出席しているという意識が足りなかった”、と健気に反省しているといいます。 "いいヒト"は「弾除け」にされやすいのです。(2023.10.19)


 

これでは「徹底した事実調査をした」とは到底言えない

 ジャニーズ事務所側が調査員を人選した「再発防止特別チーム」は、藤島ジュリー社長にジャニーズの代表を辞任するよう勧告はしたものの、 実際にヒアリングした被害者は23人だけだったとされ、実態解明が何処まで行われたか疑問が残ります。  また、ジャニーズ側もこのヒアリング結果をもとに、 「徹底した事実調査をした」と言い切り、被害実態の把握調査は終えたとして、 これ以上調査をする気はなさそうです。

 そもそも、こんな表面的な調査では、数百人以上、ひょっとしたら1000人を超えるとされる被害者数の実態を把握するなど無理わけで、これでは真相は藪の中 であり「全容」は全く見えません。 しかも、再発防止特別チームの調査と言っても国連人権理事会が関係者から聞き取った調査をそのまま後追いしただけであり、 独自で被害者を探し出したわけでもなさそうです。  これでは全体のわずか数パーセント程度の被害者の聞き取り調査だけで幕引きを図っているわけで、調べは尽くしたとは到底言えません。

 法治国家・日本において勃発した「世界的大規模児童性加害事件」が、加害者側が依頼した調査チームがまとめた調査書ひとつで幕引きが図られ、 世紀の大性加害事件に蓋がされてしまうことが許されていいはずはありません。  このまま調査打ち切りとなれば、性加害の実態は闇に葬られ、 被害者は救われず、法治国家の名が泣きます。

 似たような事件では、ロンドン警視庁は400件以上の事案を捜査、何年もかけ独立した組織による透明性の高い報告書を発表しています。  日本もこれぐらいやらないとマズいでしょう。 ところが、警察は動く気配は全く見せず、メディアからも不完全な調査結果を追及する声は一切上がらず、 ジャニーズ側も現在300人を超える被害者から補償申請が出されている段階で、これ以上の被害者申請増加に歯止めをかける動きを見せ始めています。(2023.10.12)


 

ジャニーズ事務所幹部の刑事責任はどうなる

 それにしても、「芸能史上最悪の性加害」で重大な人権問題にも係わらず国も捜査機関も、いまだに動きが見られないのは妙です。 性加害が常態化しそれを隠蔽する風潮 が何十年も続いた組織において、その渦中にいたものが犯罪行為に加担もしくは犯罪行為を助長してきたとしたら、突発的な出来事でもない限り責任が問われるのは当然です。    それは所属タレントだけでなく芸能界・マスコミ・広告代理店など関係者全員にも連帯責任が課されるべき事案です。(2023.9.23 msnニュース引用)

 英国では性加害に公訴時効はなく、またジミー・サヴィル事件をきっかけに、社会的地位のある人物による性加害事件を専門に扱う部隊が警察内に立ち上がったといいます。   ジャニーズ性加害も、記者会見に姿は見せず、しかし事務所の枢要な決定を知るキーパーソンたちがいるはずで、彼らが児童に対する性加害を黙認していたとしたら、 それは共犯・ほう助であり、共犯に問われる可能性があります。

 元東京地検特捜部副部長の若狭勝氏は、ジャニーズ現職幹部について児童福祉法違反における共犯成立 の可能性を指摘しています。 また、統一協会の追及などで有名な紀藤正樹弁護士も、自身のX(旧ツイッター)で、「ジャニーズ事務所幹部に刑事責任の追及が今もできる」と、 若狭氏の指摘を支持しています。

 イギリスで多数の少女に性加害を行った「捕食的性犯罪者(predatory sex offender)」ジミー・サヴィルの場合、ジャーナリストが告発者を支援し、 警察が大規模な捜査に乗り出し、マスコミはこれまでの忖度と隠蔽を告白し、加害者の名誉は完全に失われる(財産も凍結された)顛末となりました。    「あの頃は良かった」と刻まれたサヴィルの豪華な墓石は撤去されています。

 自身もジャニー喜多川の性的虐待を受けたという元ジャニーズJr.の平本淳也氏は 性加害被害者数を2500人以上と推計します。   英国の事例を知った上で、 日本でジャニー喜多川の性加害事件が「刑事事件」として今後どのような推移をたどるのか、国民は注視していく必要があります。(2023.10.4)

 ただ、当事者はすでに死亡しており、果たして被害者側の証言だけで刑事責任を誰にどこまで問うかは不透明で、誰も法的責任を問われず罰せられず、「性犯罪」に対する正義は果たされない、 という可能性もあります。  たとえ全貌解明とまでいかずとも、事務所関係者は当然として周辺にも多くの関係者たちが性加害の隠蔽と放置に協力していたはずです。      すくなくても警察が本気で関係者から事情聴取を行えば、実際何がどんな形で行われていたかぐらい調べはつくはずです。


 

「ジャニーズの闇を知る男」白波瀬傑氏

 9月5日付で副社長を引責辞任した、"帝国を作り上げてきた1人"で〝ジャニーズの闇を知る男〟とされるキーマンで長年メディアを牛耳ってきた 白波瀬傑氏は48年の在籍歴を持ち、事務所が設置した再発防止特別チームの調査報告書で、ジャニー喜多川の姉・故メリー喜多川氏や、ジュリー氏らと共に、 ジャニー氏に対する監視・監督義務を全く果たさず、性加害の継続を許す要因になったなどと指摘された人物です。

 副社長を引責辞任した白波瀬氏ですが、事務所には引継ぎ名目で今も嘱託社員として残り、事務所にさまざまな影響を及ぼしている」 という情報も飛び交っています。  ウワサでは「指名NGリスト、指名候補リストの作成に白波瀬氏が関与した」という説も囁かれているとか。

 「いまだにメディアに目を光らせ9月7日の会見以降も報道内容について電話で抗議したという話が一つや二つではないといいます。 実質的に2日の会見を裏で仕切っていたのも白波瀬氏でしょう。  構造は全く変わっていないのです。」(日刊ゲンダイDIGITAL)

 10月2日の2度目の会見の最後、東山社長は「白波瀬さんにはやはり、説明責任があると思う。(会見の出席を)検討していきたい」と話していましたが、実現の可能性は低いようで、 ジャニーズ側は今に至ってもジャニーズの闇を知る白波瀬氏を表に出さないようにしているとされます。  東山社長は2日の会見で「説明責任はある」とも明言していますが、 「ジャニーズの全てを知る」白波瀬氏が説明責任を果たさない限り、この状況では全く変わっておらず、ジャニーズが性加害事件解明に正面から取り組んでいる とは決して言えません。   これでは本気で説明責任を果たす気はなさそうで、それどころか白波氏は「15日をもって嘱託社員としても契約終了の見込み」であるとしています。

 しかし、被害を申し出た人の在籍歴などを確認する必要があるこの段階では、〝ジャニーズの全てを知る男〟はまだ必要な人材なはずです。 それをこのまま退社させるというのでは、 〝白波瀬氏隠し〟、「本気で被害補償する気はない」と受け取られてもおかしくない話です。   果たして法の力により"すべてを知る男"白波氏が表舞台に立たされる日はくるのでしょうか。(2023.10.10)


 

「ジャニーズ帝国の逆襲」

 「指名NGリスト」の存在が発覚して以降、井ノ原快彦副社長は、10月7日に更新されたジャニーズファンクラブサイト『Johhny’s Web』内のブログで、《弱っている場合ではないので  きちんと戦わなければいけないなそう思っています》と綴っています。

 化けの皮が剥がれた以上、もういつまでも言われっぱなしにはさせないゾ、と言うことなのでしょう。  ジャニーズが平身低頭な姿勢なのをいいことに、これまで散々ヘイコラしてきたマスコミが、 ここゾとばかりに調子に乗って好き勝手な批判記事を乱発することに対し、さすがの"神対応マン"井ノ原氏も、「オマエら、いい加減にしろヨ」というところかも知れません。  そろそろ「衣の袖から鎧をチラ見せはじめた」ようです。 ★「衣の袖から鎧が見える」....【意味】うわべを取り繕うも本音がちらつくこと。

 ただ、ここにきて「戦う」という発言はどうなのでしょう。 何と戦うのでしょうか。   ネットでも《....事実と異なる部分は尊厳として守るとか理解をして貰うとか言えば反感を買わないのに....》、 《....加害者意識がないのね。 あなた方はあくまで性犯罪の加害者側の企業です...》などと井ノ原の宣言に違和感を抱く声が続出しているようです。

 さすがに言いたい放題の報道ぶりにジャニーズ側も堪忍袋の緒が切れつつあるようで、ここにきて平身低頭な態度は脱ぎ捨て、いいたいことは言う姿勢に転じてきています。   東山紀之新社長の「性加害疑惑」がまだ尾を引いている中、「タレントの名誉や信用を著しく毀損する事実無根の記事に対しては強く抗議する」という声明まで出してきました。    これまでの姿勢から一気に強気の態度に変わってしまったわけです。 テレビ関係者は「このタイミングで出す声明ではない。 マスコミに対するけん制の意味合いが強いのではないか」 と指摘します。

 たしかに共産党の機関紙「しんぶん赤旗」のように、会見で東山紀之新社長の過去のハラスメント疑惑について事実かどうか問うた際、《パンツがない方に『自分のパンツを履け』と言ったり、 電気アンマをしたり...。 ご自身の陰部を晒し『俺のソーセージを食え』って見出し取られてますよね?》などと品のないどころか無遠慮な、聞いてる方が恥ずかしくなる質問を浴びせる輩もいるわけで、 これでは質問される方は大変です。

 東山氏がそんな質問に答えられるはずは無いのを承知でやっていたら、タダのイジメでしょう。  ネット上でも《さすがにやりすぎ》、《オブラートに包むべき》という声が上がるのも当然です。

 2度目の会見では「指名NGリスト」が発覚したりと、なにかと不手際続きのジャニーズ側ですが、会見では「しんぶん赤旗」とまでいかずとも、事実関係を無視した突飛な質問、会見の目的とかけ離れた質問、 差別的・侮蔑的な表現などが乱れ飛ぶわけで、これでは「加害者は黙ってろ」と言われても納得は出来ないでしょう。  いよいよ「ジャニーズ帝国の逆襲」が始まりそうな気配となっています。(2023.10.14)


 

困難が予想される「被害者が納得できる解決の道」

 この「性被害」は、3月にイギリス・BBCが放送して以降、徐々に暴露されてきたわけですが、5月の段階では藤島ジュリー景子社長は「叔父に対する小児性愛の告発は叔父が亡くなっているため立証できない」、 「知らなかった」と発言していました。

 その後7月24日、国連人権理事会が「事務所のタレント数百人が性的搾取と虐待に巻き込まれるという深く憂慮すべき疑惑が明らかになった」という見解を発表。   そこでやっと事態が動き出し、8月29日に再発防止特別チームが「長期間にわたって性加害 を繰り返していた」実態を発表し、ジャニーズ事務所もとうとう観念し やっと「性加害」を認めたわけです。

 しかし、肝心の性加害の中身については、事務所側は口をそろえて「うわさでは聞いていたが、見たことはないし、 所属タレントから直接聞いたこともない」と発言しています。  喜多川の悍ましい性加害を受けたであろう売れっ子タレントたちも、長年にわたってジャニー喜多川の人格を称賛し、 思い出を楽しそうにテレビやネットで語り、口をそろえて「性加害疑惑など見たことも聞いたこともない」としてきました。

 喜多川の欲望に耐え今の地位を手にした所属タレントたちからすれば、これはある意味「墓場まで持っていく」個人的な事案でもあるわけで、 本人が被害者ではないと自覚している限り「性加害はあったとは口が裂けても言えない」話かもしれません。   またオープンにした途端、 周囲から好機の目で見られ二次被害(セカンドレイプ)に繋がる恐れもあります。

 いずれにせよ、加害者側であるジャニーズ事務所と所属タレントがこの態度では、被害者側の声と甚だしく乖離しており、どちらかが大ウソをついているわけで、 まことに不思議な話です。  ただ、当初は見ざる聞かざるだった所属タレント達も、サスガに、事が公になり事件性を浴びるにつれ次第に「聞いたことはある」へと変わってきてはいます。  たしかに、 警察の捜査が入ったら知らぬ存じぬは通用しないわけで、ここまできたら「性加害など聞いたことも見たこともない」とは言えなくなったわけです。

 実行犯がすでに死亡しているなかでは、このまま事務所側が真実に蓋をして口を閉ざしたままの状況を続けている限り、「真相は藪の中のままの話し合い」となってしまい、 重要な事実関係について「あった」、「なかった」という事務所側と被害者側の間の争いが生じるのは間違いありません。

 このままでは補償と救済に関しての話し合いの着地点をみるのが難しくなってしまう可能性があり、問題の全貌解明は期待できず被害者が納得できる解決の道は遠そうです。     やはり司法の厳正な捜査が必要なのではないでしょうか。(2023.9.27)

 被害者側も一枚岩ではないようで、融和的解決を求める側や、性加害への怒りが強く、未来の子供たちや日本社会のことを考えて法廷で戦う姿勢を示す人もいたりと、会の方針にもズレが生じているといいます。    想いも被害の程度も皆パラバラでしょうから難しいとは思いますが、出来るだけ全員納得する解決に向け進んでいってもらいたいものです。(2023.10.12)


 

性被害告発は「虚偽」と言い始めたジャニーズ

 東山社長は9月7日の会見で「法を超えて救済・補償が必要だと思っている」と発言していました。  10月2日の会見では「9月13日付で設置した被害者救済委員会の補償受付窓口に、 補償を求め325人(9月30日時点)からの申告があり、そのうち150人の在籍確認が取れた」と明かします。

 ところが、ジャニーズ事務所は10月9日、公式サイトで、『故ジャニー喜多川による性加害に関する一部報道と弊社からのお願いについて』と題し、「被害者でない可能性が高い方々が、 本当の被害者の方々の証言を使って虚偽の話をされているケースが複数ある」とガードを固め、「そのような事態を招かないためにも、報道機関の皆様におかれましては、 告発される方々のご主張内容についても十分な検証をして報道をして頂きますようお願い申し上げます」と報道側までけん制してきたのです。

 この背景には、10月9日、NHKが2002年に渋谷にある同局の放送センターのトイレで起きたとされる喜多川による性加害疑惑を報道したことが影響しているとみられます。   被害者は音楽番組『ザ少年倶楽部』への出演を目指し、ダンスの練習に参加していた男性で、当時高校生だったといいます。  この報道に対し、ジャニーズは同日、《被害者でない可能性が高い方々が(中略) 虚偽の話をされているケースが複数ある》と、声明を発表し、報道機関にも《告発される方々のご主張内容についても十分な検証を》と要望したのです。

 ジャニーズ側とすれば、こんな調子で被害者が続々現れる事態となっては、ただでさえ新事務所立ち上げや所属タレントの身の振り方でドタバタ混乱している現状では、 収拾がつかなくなるわけで、この時点でなにかしら歯止めをかける必要があったのでしょう。   ただ、苦し紛れに報道側に検証を求めても、 それで問題が解決するわけはありません。

 こんな事態は想定の範囲だったはずですが、加害者側が旗振り役不在のグダグダぶりでは、真摯に被害者を救済する動きなど到底出てきません。    心配なのが、ジャニーズ側が面倒なので被害者は切り捨てようという姿勢になることです。 現にそんな態度を取りつつあります。    このままでは、 ジャニーズ側の勝手な都合で大勢の被害者の訴えが闇に葬り去られてしまう事態も考えられます。

 東山新社長の「法を越えた救済」発言も、マサカこんな数の被害者が現れるなど想像できなかったからこそ口にできたのでしょう。  ところが、いまや被害者は千人以上とも言われるのを裏付けるように、 数百人単位の被害者が声を上げています。  ジャニーズ側としては被害を訴える申告者が爆発的に増えたことで危機感を感じているのでしょうが、 それは『法を超えた救済・補償』と宣言した時点で予想しておくべき話です。

 それ以外にウソの被害話で金をせしめようとする輩が出てくるのはジャニーズ側も想定の範囲のはずです。  だからこそ、当初ジャニーズ側は、事実認定は第三者に委ねるという、被害者に真摯に向き合おうという態度だったはずです。   したがって例え疑念がある人物が現れようと、そこは第三者委員会の判断を待つのが筋で、それをこの段階で「偽物は許さんゾ」とやってしまっては、 「ホントに被害者全員を救済する気持ち」はあるの、となってしまいます。

 この段階で「虚偽の話をされているケースが複数ある」というメッセージを出すことは、性犯罪の加害者側であるジャニーズが、まるで「多くの被害者の告発は虚偽である」というイメージを世間に与え、 さらに被害者側を委縮させようとする動きであって、それは責任回避です。 また、真の被害を告発した人たちへの誹謗中傷につながるリスクもあります。   誰かの入れ知恵なのか、 再び「巨大な力でメディアをひれ伏させてきた」強気な姿勢に転じようとしているわけです。

 それにしても、補償方法や補償額など何の進展もない中、加害者側がこれからは「本物」と「偽物」とを厳密にジャッジしていくからナ、と宣言するというのもスゴイ話です。   心配していた通り、「被害者全員を本気で救済していく」気はなさそうな雰囲気が漂い始めました。   被害者救済の道に暗雲が立ち込めてきたようです。(2023.10.11)(ジャニーズは10月17日「SMILE-UP.」に変更予定)


被害者はジャニーズ在籍者とは限らない

 これまで平身低頭な態度だったジャニーズ側は、井ノ原快彦副社長が、《きちんと戦わなければいけない》と宣言したとおり、言いたいことは言う姿勢に転じ、 「疑わしきは救済せず」の態度で臨む姿勢に転じ、被害者の選抜までやろうとしています。  メディアに対しても被害者が名乗り出ようが 「十分な検証をしてから報道せよ」と釘を刺してきました。 世間のバッシングが収まってきたと見たか、幕引きを図る方向へシフトし、 いよいよ被害者を切り捨てる動きに出たのです。

 しかし、いったい誰がどんな方法で「1000人以上ともいわれる被害者」を選抜していけるのでしょうか。  そもそも、被害者はジャニーズ在籍者とは限らない とされます。  有名男性タレントAさんは、「中学生の時に番組出演のためにNHKに行くとJr.を引き連れたジャニーさんを何度か見かけました。 その時に声をかけられたことがあります。  『今度、合宿所に遊びに来なよ』って」。

 被害者の1人は、「ジャニーさん本人から連絡を受け、レッスンに呼ばれて参加した初日に、会場のトイレで被害を受けたという子もいる。  オーディションという名の品定め のようなものです。  初日に性被害を受け、そのまま辞めた人間をどうやって在籍確認するのか。 そんな人間はたくさんいる。 これに判別できない虚偽申告者が加われば、 天文学的数字になりますよ」(FRIDAY)、という状況では、事実確認は困難を極めるでしょう。

 ジャニー喜多川はまさに所かまわずのプレデター(捕食者)ぶりを発揮していたわけですが、ジャニーズ側はその哀れな被害者が次々声を上げだしたら、「疑わしい被害者は切り捨てる」 姿勢に転じようとしています。  このままでは本当の被害者全員を特定・救済することなど、ほとんど不可能な事態になるということです。

 こういう事態を招いたのは、ひとえに「ジャニーズ事務所創業者の所業」であって、その後始末は、 それで栄華を極め大儲けしてきたジャニーズ事務所が負うべき責務のはずです。  それを自分たちの勝手なやり方で幕引きした挙句、逃げ得しようというのでは お天道様も許さないでしょう。  イギリスのプレデター・ジミー・サヴィルは名誉は完全に失われ 財産も凍結され墓石まで撤去されています。

 いずれにせよ、このままでは双方納得できる解決の道は遠く、埒が明かない事態も予想されます。  これまでの調査や会見のドタバタの混乱ぶりを見ている限り、 事件の実態調査や被害者救済の選別をジャニーズ事務所だけに任せるのは到底無理です。  被害者補償が長引けば、性加害が海外の報道によって暴かれたように、 国際社会から日本は社会的正義実現の動きが期待できないと批判があがり、結局国や警察がシブシブ動かざるを得なくなる、という愚行パターンの再現となるかもしれません。   もうとっくに国連人権理事会は7月24日、「政府が主な義務を担う主体として....」として国の関与を求めているのですから。(2023.10.11)


 

やっと「忖度」をポツポツ証言し始めたテレビ局

 ここにきて、やっとテレビ局もジャニーズ事務所の横暴ぶりをポツポツ証言し始めます。 日本テレビは10月4日、夕方の『news.every』で社内調査の結果を発表、 『怒らせたら面倒くさいな』ということで(ジャニーズ所属タレントの)対抗馬となる子たち 他のスターをつくらなかったことなどを紹介、同事務所に対して「忖度」があったことなどを認めます。

 TBS系報道番組「報道特集」は7日、OBを含む社員から取材した 「気に入らないことがあると『タレントを引き上げるぞ』と言うため、企画がガラッと変わるなど、振り回された」、「なぜ忖度するかというと 番組出演をなくされるのを恐れていたから」などの声を紹介します。

 他のテレビ局もこの調子で「ジャニーズの度が過ぎる横暴ぶり」を徹底的に暴露し膿を出し切り、 二度とこのような「権力でメディアを支配」し「見て見ぬふりさせようとする」勢力に牛耳られないよう、 再発防止策を講じてもらいたいものです。  それがこれまで散々「性加害事務所に忖度しまくり」、「性加害被害者が増えるのを黙認してきた」メディアの責務なのですから。

 さらに、薄っぺらい調査結果ひとつ出して幕引き、というのでは何の解決にもならないわけで、問題点を洗いだし責任の所在を明確にしない限り真の再発防止とはなりません。  大東亜戦争で作戦参謀だった人物は、 日本軍に「失敗の経験を再発防止へ繋ぐ」動きが皆無だった背景について、「本来なら関係者による研究会で 問題点を洗いだすべきだったが、突っつけば穴だらけであるし、皆十分反省していることでもあり、 その非を十分認めているので、いまさらほじくり返す必要がないと考えた」としています。      いまこそ日本人の『臭いものに蓋をして、見て見ぬふりする』性癖とおサラバし、「失敗の経験から積極的に学ぶ」ときです。(2023.10.8)

 ここにきて目立ってきたのは、「ジャニーズを叩きすぎ」という意見です。  そういわれてもメディアはせいぜい2回行われた会見の不手際振りに多少難癖をつける程度で、 組織ぐるみで性加害を行ったジャニーズ事務所の責任を厳しく追及する雰囲気は感じられず、これ以上深追いする気もなさそうです。  これのどこが「叩きすぎ」なのか知りませんが、 こういう意見の人は「ジャニー喜多川氏は死亡しているので事件は終わった」つまり、もうこの辺でいいだろうと幕引きしたいわけです。

 うまい汁を吸っていた業界人や熱烈なファンほどその思いは強く、当然、この世紀の大事件の本質を追及する気などサラサラないわけで、 「芸能界のプレデター・ ジャニー喜多川の性加害を隠蔽してきたジャニーズ事務所」と、「それを一切報じなかった取り巻きテレビ局・新聞の責任と癒着」 ぶりにメスを入れるべきである、などとは全く考えないのです。    そんなことより以前のようにジャニタレがテレビに出まくる姿をみたいのです。(2023.10.18)

 ズブズブの関係とされるテレビ朝日は11月12日、在京テレビ局としては最後に「テレビ朝日 旧ジャニーズ問題検証」を放送します。   その中身はリハーサル室が性加害の現場になったことに対する検証や、職員がハワイ旅行などの高額接待を受けていたことはスルーして、論点を「なぜ週刊文春報道に対する判決を報じなかったのか」に重きを置き、 「裁判があることを知らなかった」、「当時はオウム事件で忙しかった」といったコメント紹介でお茶を濁し、報道機関としての役割を放棄している実情を恥ずかしげもなく告白します。

 テレビ朝日といえば「ミュージックステーション」にほぼ毎週ジャニーズタレントを起用し、ジャニーズ専用リハーサル室を提供していたメディアです。   リハーサル室でのダンスレッスンをきっかけに、Jr.に昇格した少年も多く、Jr.が主役の番組「裸の少年」などもあり“Jr.の登竜門”的位置づけでもありました。

 そのテレビ局が言うに事欠いて、堂々と文春裁判は知らなかったと言い張るのですから、もう完全に報道機関として終わっているわけです。 いずれにせよ、 これで各局の「超薄味お手盛り懺悔放送」は出そろったわけですが、 旧ジャニーズに忖度しまくってきた脛に傷あるテレビ局としては正直な裏事情など言えるはずは無く、 そろってお粗末な言い訳に終始したのです。

 各局ともこれで禊は終わったということにするのでしょうが、これでは起きた事を反省し、再発防止に取り組むなどという姿勢とはほど遠く、 こんな調子では今後も社会悪と戦う報道などとても期待できません。  そもそもエンタメ重視のテレビに報道機関の役割を期待するのは土台無理なのだ、 ということは心に留めておいたほうがよさそうです。(2023.11.14 日刊ゲンダイDIGITAL)


 

性加害事件は日本の芸能界をどう変えていくか

 今回、ジャニーズ事務所創業者による世界的児童性加害というにわかに信じられない大スキャンダルが暴露され、あろうことか連日テレビで見る有名タレントたちが、 実は(本人の自覚はともかく)性被害に遭っていたという 衝撃的な実態が明らかにされました。  まさに、我々は世界の性被害の歴史に刻まれるであろう大事件を目の当たりにしているわけです。

 こんな醜聞が表ざたになった日本の芸能界に、はたして変化は訪れるでしょうか。  これまで日本の芸能界では、事務所からの圧力で芸名を使えなくなったタレントや、テレビに出られなくなったタレントたちが何人もいました。  「枕営業(性接待)」を求められたことを 告発しようとしたタレントが、口封じされてしまう例も少なくないとされます。

 そういう「芸能界の底知れぬ闇」みたいなものに、いつの間にか我々日本人は慣らされてしまっていたかもしれません。  海外では10代の子供たちを「スターとして育てる」いわゆる 「アイドル文化」などというものはそう多くないようです。  そのためか、海外においては、日本のエンターテインメント業界において子供たち (主に9歳くらいから13歳=ティーンエイジャーまでの年代)が搾取されているのではないか、との疑惑がこれまでしばしば報じられています。

 しかし、日本は「アイドル文化全盛」で、Y氏などは「〇〇48」などという「アイドルグループ」を量産し、安くこき使ってタンマリ金を稼ぎ、ラスベガスで大散財している、 などという(あくまで)ウワサもあります。   もしこれが事実なら、ふた昔前の「女衒(ぜげん・女性を金儲けの手段にする)」と大差ないことをして金儲けしているわけです。

 これまで子供たちをタレントとして売り出しこき使い、大儲けしてきた芸能界も、今回これだけの数の子供の被害者が出た以上、これを機にそろそろ外国のようにちゃんとした 大人の「演芸」を楽しむ社会にしていくべきではないでしょうか。  視聴する側の大人たちとしても、テレビをつければ 「アイドルだらけのエンターテイメント」はもうコリゴリで、ホンモノの「演芸」を観たいのです。

 海外でも性加害事件は昔から続発しており、彼らはそれを機に性暴力に対する司法の取り組みの強化を図り、メディアは見て見ぬふりをすることは許されなくなったといいます。 今後、 この出来事が日本の芸能界の今後にどういう変化をもたらすのか、このような大規模性暴力問題に対し日本社会がどのように向き合い、どんな対策を構築していくのか、課題は山積しています。(2023.10.12)


 

ジャニーズ事務所のその後の動き

 10月2日の会見では、9月7日の会見で指摘されていた「社名の変更」について、東山紀之新社長(57)はジャニー元社長と決別し、 今月17日付で新たな社名「SMILE-UP.(スマイルアップ)」で再出発することを発表します。  それによると、この会社は被害者の補償業務に専念、 タレントマネジメントおよび育成の業務から完全に撤退するとします。    これで1962年の創業から61年にわたり掲げてきた「ジャニーズ」の看板に幕が降ろされることになったわけです。

 藤島ジュリー景子社長はこの会見を欠席していますが、ジュリー氏について事務所側は「法を超えた補償を行うには、第三者の資本を入れるとできなくなる」ので被害者の補償・ 救済のため100%株主として取締役にとどまります」としています。

 ジャニーズは事業承継税制という制度の特例措置で、相続税の納税が猶予されていたわけですが、会見で代読された手紙の中でジュリー氏は、 「相続したジャニーズ事務所を維持するため、事業承継税制を活用しましたが、私は代表権を返上することでこれをやめて、速やかに納めるべき税金を全てお支払いし、会社を終わらせる」 と代表の座を降り、現時点では数百億円にも上ると言われる相続税を支払うと表明します。

 事業承継などに詳しい岸田康雄税理士は相続税を払うタイミングが肝だと指摘。 事務所が持っている現金や土地などの資産売却で補償を進めた後、 相続税の計算に用いる資産額や株式評価額などが安くなったところで相続税を支払う流れになると予測しています。 「会社の株価が下がった時点で廃業となれば、 何百億円という株価でなく、廃業時の株価は安いので相続税計算し直すと『数千万円でいい』という話にすると思う。   頑張って補償をしたらどんどん税金が安くなる。  最終的にジュリーさんは払える金額のタイミングで廃業するはず」としています(ワールドビジネスサテライト)。

 また、新たにエージェント会社を立ち上げ、希望する所属タレントと個別にエージェント契約を結ぶ予定で、社名はファンクラブ内で公募するとしています。   こちらも社長は東山氏が務めるとしています。  ただ、エージェント会社はタレントの代わりにテレビ局や広告代理店と営業や交渉を行うのでしょうが、 その実行役のスタッフがジャニーズ事務所からの横滑り組だとしたら、はたして従来通りの忖度 が二度と起きないと言い切れるか疑問です。(2023.10.4)

 なんにせよ、ジャニーズはこれまでさんざん若いタレントを(マサに)食い物にして荒稼ぎしていながら、所属していたタレントの被害届を問答無用で切り捨てようとしているわけで、 「無用となったタレントは守らない」組織であることがはっきりしました。  ジャニーズ側は新会社で再スタートしようとしていますが、こんな体たらくでは未成年タレントの育成などやめるべきだし、 成人タレントにとっても、安心して芸能活動できる環境は望めません。(2023.10.11)

 その後、有力タレントが旧ジャニーズ事務所のSMILE-UP.から次々に退所する動きが活発になります。  まずアイドルグループ「嵐」の二宮和也氏が「グループに籍を置きながら独立する」という裏技で抜けた直後、 櫻井翔氏も二宮氏に続き2人目の退所となるようです。 櫻井氏の場合、同社からの退所を条件にして、報道番組「news zero」のキャスター続投と主演ドラマ「大病院占拠」の続編への出演が確約されているといいます。

 人気がある「嵐」のタレントたちにすれば、ブランド力が落ちたジャニーズの新会社にこのまま居残りエージェント契約を結ぶ、というのではメリットは少ないわけですが、 かといって「嵐」を辞めてしまえばファンクラブからの収入が途絶えてしまいます。  そこで、世話になった事務所はアッサリ退所して独立するが、だけどグループには籍を置いておく、 というオイシイ形をドライにとったわけですが、これも実力があればこそ取れる手段なわけです。

 今後はますます有力タレントの退所ラッシュが続き、設立した新会社に残るタレントは最終的に木村拓哉氏だけ、というなんともサビシイ幕切れが訪れるのでしょうか。   『平家物語』は「栄華をきわめた平家の天下も長くは続かず、権勢を誇り驕慢になった者は必ず失脚するものである」としていますが、芸能界を牛耳り栄華を極めたジャニーズも、 このまま歴史上の権力者たちと同様哀れな結末を迎えるのでしょうか。(2023.11.13)


 

自殺者まで出た旧ジャニーズの被害者救済体制

 当初ジャニーズは10月17日付で『SMILE―UP.(スマイルアップ)』に社名を変更したうえで被害者の補償に専念し、その新会社の社長には東山紀之氏が就任するとし、 「9月21日以降、順次、社長の東山が被害に遭われた方と直接お会いして、性加害、それに関するこれまでのジャニーズ事務所の対応について謝罪させていただく」としていました。   さらに既存のタレントと新たに契約を結ぶエージェント会社を別に設立し社名はファンクラブを通じてを公募すると公表していました。(その新会社名は11月21日時点では発表されていません)

 しかし10月9日、同社は自社の公式サイトに《被害者でない可能性が高い方々が、本当の被害者の方々の証言を使って虚偽の話をされているケースが複数あるという情報にも接しており、 そのような事態を招かないためにも、報道機関の皆様におかれましては、告発される方々のご主張内容についても十分な検証をして報道をしていただきますようにお願い申し上げます》とのコメントを発表。   そう簡単には被害者扱いはしないゾ、という姿勢を見せます。

 さらに引退まで決意した東山氏が本当にやりたかったのは、補償会社(SMILE―UP.)ではなくエージェント会社の社長だったはずですが、経営面の問題からエージェント会社の社長就任は辞退します。    一説にはジュリー藤島景子前社長から打診を受けた際は月収5000万円を提示されていたものの、その後想定以上に補償金額が膨らむ見込みとなり、 会社がそれだけの報酬を捻出する原資がなくなってしまったとも噂されています。   補償に専念するとタンカを切った東山氏は、完全に貧乏くじを引かされた形となってしまいました。

 補償会社(SMILE―UP.)による被害者救済の運用体制の実態については、元裁判官の弁護士3人から構成される救済委員会が、被害を訴える関係者の聞き取りを行っている段階とされますが、 そんな中の10月13日、ジャニー喜多川氏から性加害を受けたと訴える『当事者の会』のメンバーだった40代の男性が、大阪府内の山中で首を吊って亡くなっているのが見つかるという最悪の事態が起きてしまいます。

 この男性は、旧ジャニーズ事務所に今年5月に電話で自身の被害について訴えたところ、同社からは“担当者が必ず折り返す”と伝えられていたといいます。  しかし、それから5か月間、 同社からは一度も連絡がなかったことを遺族は明かしています。  男性は今年9月にも一部メディアに実名で告発していたそうですが、その後も連絡がくることはなかったとされ、 こうしたSMILE―UP.社の対応に加え、未成年のときに受けた性加害によって抱えたトラウマが再燃したこと、世間からの誹謗中傷が過熱したことで、男性の心労は極限に達し、自ら命を絶ったとされています。

 現在の『SMILE―UP.』の被害者救済体制については、被害者の元ジャニーズJr.A氏によると、「僕は9月下旬にSMILE―UP.社の公式サイトにある補償申請フォームから被害内容を送ったところ、 11月中旬に都内の法律事務所で聞き取りをされました。  面談では、“SMILE―UP.社が直接やりとりすれば早いのだが、救済委員会が間に入ったことで遅れが生じている”との説明もありました。   弁護士からの聞き取りは、申請フォームに入力した被害内容をもとに確認していくという流れです。 被害については、かなり細かいところまで聞かれたうえで、現在抱えている悩みについても質問を受けました」。

 さらに補償金額について旧ジャニーズ側は会見で“法を超えた補償をする”としていましたが、これについてA氏は、「具体的な金額の提示はありませんでしたが “過去の日本の裁判例を上回る金額にはなると思う”と話していました。  1か月以内には、補償金額がいくらなのか連絡をしてくれるそうです」と話します。

 その一方、気になることとして「希望される被害者には東山さんが会って謝罪するとの話でしたが、 弁護士からは“もともとは東山さんが担当されていたけれど、新会社の社長を辞退されたことなどもあって事務局の方が対応することになった”とのことでした。  “具体的に事務局の人って誰なんでしょうか”と聞くと、弁護士さんもどんな人が対応するのかまでは把握していないようでした」という状況のようです。

 9月の会見で東山氏は、「長きにわたり、心身共につらい思いをさせたことを本当に申し訳なく思います。  今後はこの事実に真摯に向き合うため、私は年内をもって表舞台から引退をします。   今後は人生を懸けてこの問題に取り組んでいく覚悟です」と語っていましたが、どうやら被害者に対し“真摯に向き合う”姿勢は、早々に捨ててしまったようです。(2023.11.21 週刊女性PRIME)


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