【だおけ】
共通語 (馬草など家畜の)餌桶
用例 夏だけんたんびにだおけを洗って馬草をやれよ。
用例訳 夏だからたんびに餌桶を洗って馬草をやれよ。
採取者 森山[湖陵]
【たかたかいび】
共通語 中指
用例 ほぁ、(指の中で)えちばん背のたけのがたかたかいびだでね。
用例訳 ほら、一番背の高いのが中指だよ。
採取者 金沢[松江]
共通語 おろし金
用例 (芋の)とろろつくー けん、だえこんおろし取ってごしない。
用例訳 とろろを作るから、おろし金を取ってください。
採取者 金沢[松江]
【たいたい〔2〕】
共通語 相対、対等
用例訳 よーし、今度は相対でやろうか。
採取者 金沢[松江]
【だめつめる】
共通語 談判する、議論する
用例訳 隣 に怒鳴り込んで談判した。
採取者 f-k[加茂]/【だめちめする】f-k[加茂]
【たける】
共通語 (強い刺激物が目や鼻に)しみる
用例 このワサビ漬、上手にこっさえ ちょらい けん、目鼻にたけて涙だしながらよばれ ちょーますわ。
用例訳 このワサビ漬、上手にこしらえ ておられる から、目鼻にしみて涙だしながらいただいていますよ。
採取者 森山[湖陵]
【たかしゃっぽ】
共通語 中折帽子、山高帽子
用例 ちーと場違いじゃーねーか。いまどきたかしゃっぽなんかいかべー もんはおら んよ。
用例訳 すこし場違いじゃないか。いまどき山高帽子なんか被る ものはい ないよ。
採取者 児玉[横田]
【たかもり】
共通語 椀などに食物を高く盛り上げること、大盛り
用例 まあ、またたかもりにしてごい たてて、よう食わん じ。
用例訳 まあ、また大盛りにしてくれても、よう食わない よ。
採取者 児玉[横田]
【たきさし】
共通語 木の燃えさし、燃え残りの薪
用例訳 風呂(釜)の木の燃えさし。気をつける のだ よ。
採取者 f-k[加茂]/【たきくさし】児玉[横田]
【たりする】
共通語 (家の)助けになる
用例 こな子も卒業しましただ けん、こーからちたたりしてごし ましょ ぞね。
用例訳 あの子も卒業しました から、これから少しは(家の)助けになってくれ ましょう よ。
採取者 金沢[松江]・f-k[加茂]
【たけざ】
共通語 竹製のすのこ、竹製すのこを用いた床几状台座
用例訳 今夜は蒸すから、竹製のすのこで涼んでくる よ。
採取者 f-k[加茂]
【だだけん】
共通語 だから、〜のだから
用例 (人の会話を受けて)だだけん、いけん てて えっただら がや。
用例訳 だから、いけない と 言っただろう が。
解説 【だけん】の強調語
採取者 金沢[松江]
【たけんま】
共通語 竹馬
用例 たけんまでだーがいっち なが ね乗っとーかきょうそ しょ こい。
用例訳 竹馬で誰が一番 長く乗っているか競争 しよう よ。
参考 「たけんま」は「たけうま」の出雲訛り。太田柿葉氏著「明治・大正の出雲(1962年)」によると明治・大正期、松江・能義地方では竹馬を「たかし(高脚)」とも呼んでいたようだ。
採取者 f-k[加茂]
【だだける】
共通語 駄々をこねる、我儘を言って騒ぐ
用例訳 おもちゃを買ってやらなかったら、駄々をこねていけない よ。
採取者 f-k[加茂]
【たじねる】
共通語 探す
用例訳 もっと、よく探してみてごらんなさい。
採取者 坂本[加茂]
【だつなぎば】
共通語 牛の係留場
用例訳 係留場の牛にも、蚊いぶしをてやれよ。
参考 厩や係留場で小さな焚き火の上に青草を被せ燻し蚊いぶしにした。
採取者 森山[湖陵]
【たちみ】
共通語 収穫量の査定
用例 台風で稲が倒れたけん、明日たちみしーけん 出てごしなはい。
用例訳 台風で稲が倒伏したから 明日収量査定するから出かけてください。
参考 戦中戦後の米などの強制供出の時代、「たちみ」で収穫量を予測して供出量を割当てた。
採取者 森山[湖陵]
【たちもん】
共通語 建築物
用例 やっぱし大家だのー。たちもんがどこそこ上品な が の。
用例訳 やっぱし大家だねえ。建築物がどこそこ上品だ よ ねえ。
採取者 児玉[横田]
【たちまんま】
共通語 立ったまま
用例訳 この歳になると、立ったままの仕事はどうも無理だよ。
採取者 児玉[横田]
【だちんま】
共通語 駄荷を負う馬、馬車馬、駄馬
用例 だちんまがへこえた。なんぼ こえた。とー こえた。 とーの山超えて、まちが三本転んで、しけかえて起こえた。 (昭和10年代の悪童の戯れ歌)
用例訳 駄荷を負う馬が屁をした。いくら した。10(回) した。10の山越えて、松が三本転んで、支柱を取り付けて起こした。
参考 駄賃馬。駄賃馬は本来、駄賃を取って荷物を運ぶ馬のことですが、大正〜昭和初頭には姿を消していました。しかし昭和10年代はまだ、馬車馬や駄馬など馬一般を「だちんま」と呼ぶことがありました。悪童が馬を見つけると、用例の戯れ歌を囃し立て、ふざけ合ったものでした。
採取者 f-k[加茂]
【だごえ(だーごえ)】
共通語 人糞尿肥料
用例 むかしゃだごえちかっとったけん、よー もしがわえて、もしくだし飲んだもんだ わ。
用例訳 昔は人糞尿肥料を使っていたから、よく (回虫などの)虫が湧いて、虫下しを飲んだものだよ。
採取者 f-k[加茂]
【だら〔2〕】
共通語 (腰にさす煙管用の)煙草入れ
用例 おじじが、まただらわしれてえかえたわ。また、さわぎんなー わ。
用例訳 お爺さんが、また煙草入れを忘れて行かれたよ。また、騒ぎになる よ。
解説 皮製や布製の外、恵比寿さんや大黒さんの頭部を象った桐材の【だら】などもあった。
採取者 f-k[加茂]
【たながわる】
共通語 (果菜類など)一代雑種ができる
用例 西洋カボチャと日本カボチャふつけて植えたけん、たながわった。
用例訳 西洋カボチャと日本カボチャをひっつけて植えたから、一代雑種ができた。
参考 果菜などは異品種を近づけて植えると風や虫の媒介で一代雑種(F1と言う)ができやすい。親より優れたものは少ない。
採取者 森山[湖陵]
【たてつめる】
共通語 (襖・障子などの)建具を隙間なく閉め切る
用例訳 そんなに(建具を)隙間なく閉め切ってしまうと息が詰まる ようだ よ。
参考 出雲弁では、襖・障子などを閉めるのを【たてる】といいます。
採取者 f-k[加茂]
【たてわけ】
共通語 (1)区別 (2)わきまえ、分別、道理
用例 (1)え もんとぼろをたてわけしとく けん の。
(2)まーじ、たてわけのわからん子だの。
用例訳 (1)良い ものとボロ(不良品)とを区別しておく から ね。
(2)本当に、道理の解らない子だね。
参考 (1)の語意では【たなわけ】といういい方もありました。
採取者 f-k[加茂]
【たてる〔2〕】
共通語 あおって米麦などの塵をとりのぞく、風選する
用例訳 この種籾は塵が混じっていていけない。唐箕で風選しようか。
参考 少量のときは、板箕(薄い板で作った塵取りのようなもの)でするが、能率が悪い ので唐箕を使うことが多かった。
採取者 森山[湖陵]
【たながし】
共通語 種籾などを水に浸す
用例訳 苗代をし なければならない から、種籾を水に浸しておくか。
採取者 森山[湖陵]
【たのし】
共通語 〔貝〕タニシ
用例訳 タニシの串焼きは硬いけれども うまい よ ねえ。
採取者 奥野[平田]
【たばね】
共通語 軒、屋根の先端、瓦屋根の一番先の瓦
用例 去年の豪雪の時にゃーたばねの折れた家がたくさんあったのー。
用例訳 去年の豪雪の時には軒の折れた家がたくさんあったねえ。
採取者 児玉[横田]
【だらんだらん】
共通語 だらだら
用例訳 あんなに、だらだと歩くんじゃ ない よ。
採取者 奥野[平田]
【ためてみる】
共通語 確かめてみる、よく調べる
用例訳 それはよく確かめてみないことには分からない よ。
採取者 児玉[横田]
【〜たれ】
共通語 〜なやつ(人や者に相当する接尾語で、人を見下げて言う)
用例訳 あれは思いがけない欲なやつだたねえ。
採取者 児玉[横田]/ 【〜たら】児玉[横田]
【だらずばなし】
共通語 みだらな話
用例 だらずばなしが嫌いなもんはほんのこたーおる ん わの。
用例訳 みだらな話が嫌いな者は本当のことはい ない よ。
採取者 児玉[横田]
【だらきりなし】
共通語 区切りなし
用例 そげん、まい ててだらきりなしにたべーとかわきやまいがさばー じね。
用例訳 そんなに、うまい といって区切りなしに食べると糖尿病になる よ。
採取者 岡[平田]
【だらずばら】
共通語 大食漢
用例 こな やち ゃ なんぼ食っても 、まだごせいっ〜ちょーがだらずばらだ ね かや。
用例訳 あいつ ら はいくら食っても、まだくれと言っているが大食漢では ない かい。
採取者 岡[平田]
共通語 他愛がない、前後を忘れる
用例 あいちゃ、一所懸命教えたててたわいこくたいもない、すぐ忘れー けん のー。
用例訳 あいつは、一所懸命教えても他愛がない、すぐに忘れる から ねえ。
採取者 岡[平田]
【たらいのき】
共通語 〔植〕タラヨウ
用例 たらいのきの葉に熾きを置いてみー 。おもっせ模様が出ーぞ。
用例訳 タラヨウの葉に熾きを置てみなさい。面白い模様が出るぞ。
参考 タラヨウの葉がハガキの語源だそうですが、字を書いたことはありません。子供頃風呂焚きをさせられると、庭からタラヨウの葉をとってきて、炬口より大小の熾きを乗せ色々な模様が出来るのを楽しみました。年寄りの言うにはタラヨウの木で盥 (たらい)を作ったから、たらいのきだと言っていましたが真偽は不明です。庭木には最高です。
採取者 森山[湖陵]
【たらんかばち】
共通語 足りないくらいに
用例訳 カレーが余ると困る から(少し)足りないくらいに作る。
採取者 森山[湖陵]
【たてがあわん】
共通語 対抗できない、かなわない
用例訳 あの人にはかなわない よ。
採取者 松井[大社]
【だまし】
共通語 (川や海などにできた)深み
用例 だましがあー けん、危ないけん、そばへよっちゃーいけん ずね。
用例訳 深みがあるから、危ないから、そばへ寄ってはいけない よ。
採取者 岡[平田]・松井[大社]
【だる〔1〕】
共通語 疲れる
用例訳 歩き過ぎたようで足が疲れたようだ よ。
採取者 児玉[横田]
【だる〔2〕】
共通語 ゆるむ
用例訳 ネジがゆるんでしまって機械ががたがたする よ。
採取者 児玉[横田]
【たんか】
共通語 短気
用例訳 あいつは、少し短気のような こと は ない かい。
採取者 奥野[平田]
【だんらだんら】
共通語 だらだら
用例訳 暑くて汗がだらだらと流れる ような よ。
採取者 奥野[平田]
【たんころ】
共通語 痰
用例訳 タバコを止めたら痰が出ない ようになった。
採取者 奥野[平田]
【たんぽ〔2〕】
共通語 尾が短い犬や猫
用例 うちのミケちゃんはたんぽだよ。
用例訳 うちのミケちゃんは尾が短い猫だよ。
採取者 森山[湖陵]
【たわたわ〔2〕】
共通語 しなって揺れるさま
用例訳 竿竹がしなって揺れているが危ないことはない かい。
採取者 岡[平田]
【だわだわ】
共通語 揺れるさま
用例 物干し竹がだわだわしちょー けん、もて もんのせー だないが。
用例訳 物干し竹が揺れている から、重たい 物を載せる ではないよ。
採取者 岡[平田]/【だわんだわん】岡[平田]/【だんわだんわ】奥野[平田]
【たくねる〔2〕】
共通語 横取りする、奪い取る
用例 えかげんなことえって 、とーとおらのもんたくねてしまったが。
用例訳 いい加減なことを言って、とうとう俺のものを横取りしてしまったよ。
採取者 f-k[加茂]
【たないけ】
共通語 (屋敷内に設けた)小さな池
用例訳 メダカを掬うといって小さな池に 落ちた。
参考 野良帰りの農具を洗ったり、種籾の浸漬等に使った。防火用水にもなった。
採取者 森山[湖陵]・f-k[加茂]
【だる〔3〕】
共通語 垂れ下がる、たるむ
用例 障子の建てつけがわりと思ったら、鴨居の真ん中が三分ほどだ ーちょう わ。
用例訳 障子の建てつけが悪いと思ったら、鴨居の真ん中が三分ほど垂れ下がっている よ。
参考 垂る(たる)/f-k[加茂]
採取者 森山[湖陵]・f-k[加茂]
【たいした】
共通語 大変な、おびただしい、ずいぶん
用例 たいしたさむが、雪がふっちょ せん かや。/奥野[平田]
用例訳 ずいぶん寒いが、雪がふってい ない かい。
参考 共通語では連体詞として使うが、出雲弁では副詞としても使う
採取者 森山[湖陵]
【たきな】
共通語 〔植〕ウワバミソウ
用例 ころあいに歯ざわりがあって、このたきなーまい が の。/児玉[横田]
用例訳 ころあいに歯ざわりがあって、このウワバミソウはおいしい よ ね。
採取者 松尾[横田]
【だんぎり】
共通語 大鋸(横引き用)
用例 腰鋸では無理だぁー。だんぎり持ってこい。
用例訳 腰鋸では無理だ。大鋸を持ってこい。
参考 腰鋸:小さな手曲がり鋸は鞘に入れ腰に吊るす
採取者 森山[湖陵]
【たなへじ〔2〕】
共通語 台所の汚水。汚水を流す溝。また、その汚水を受ける貯めます
用例 たなへじね なんぞ せかっとー へんか 。 えらぇ 流れがわりが。
用例訳 台所の汚水の溝に なにか 引っかかってい ないか。えらく 流れが悪いが。
採取者 f-k[加茂]
【たなんと】
共通語 炊事場
用例 たなんとでおっけな音がしたが、のしと猫はっちょー せ んか。
用例訳 台所で大きな音がしたが、野良猫が入って い ないか。
採取者 森山[湖陵]
共通語 高下駄
用例訳 雨だから高下駄で行きなさいよ
採取者 金沢[松江]